【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第十話 帰還

――エントランス

 

 湊が屋上より飛び立った後、状況を確認するためにやってきていた飛騨は、エントランスに到着し二人の帰還を待っていた。

 待っている間、かなり弱った様子の被験体らが個人単位で戻ってきているのを何度も見た。

 それだけ今日のタルタロスは危険な場所だったのだろう。

 子どもらを、使えない失敗作と呼んで憤っている松本に、一言物申してやりたい衝動にも駆られたが、それは自分の仕事ではない。

 そう、もしも、少女の救出が間に合わなかったそのときは、今は沈黙している転送装置から少年の姿をした、鬼が現れるはずだから……。

 そうして、湊がどちらの姿で戻ってくるか心配しながら見ていると、転送装置が勝手に起動し始めた。

 上のフロアから誰かが戻ってくるようで、他の研究員らもそれを見守っていると、現れたのは第四研に所属する被験体の男子だった。

 しかし、それで終わりではなく、続けて同じ所属の女子。さらに、ムスッとした表情のチドリ、年不相応に冷めた表情をした湊、その湊のシャツの裾をちょこんと摘んでいる金髪の少女が次々と現れた。

 何故、チドリを助けに行って他の女子が懐いているのかは不明だが、とりあえず無事の帰還を喜び、声をかけようとすると。エントランス内の研究員らに視線を送っていた湊が、ある一点に視線を固定したまま右手を一閃した。

 直後、薄っすらと光る刃が飛び、爆発音が響いた。

 

「っ、ぐあぁあああっ!?」

 

 一閃した右手から斬撃波が飛んだかと思うと、それは置かれていた機材を大破させ、その近くで湊らを見ていた松本に破片が直撃した。

 致命傷という訳ではないが、爆発の熱といくらかの破片が手足に刺さり、服だけでなく身体にも達していたようで、着ている物を赤く染めていく。

 手を一閃させる一瞬の間にタナトスを呼び出し攻撃を放った湊を、他の者は驚いた様子で見ているが、当の本人は冷めた表情のままだ。

 そして、他の研究員によって応急処置を施されている松本に向かって静かに口を開いた。

 

「……お前、そんなに殺されたいの? 自分はペルソナの素養すらないくせに鬱陶しい。自分らは安全圏にいながらごちゃごちゃ五月蝿いんだよ。先ずは戻って来た子どもらの容体確認と治療だろ」

 

 言い終わると湊はタナトスを消し、続けて永劫のカードを砕いてカグヤを呼び出して、回復スキルで子どもらの傷を治療していく。

 そして、回復の光が治まると、カグヤを消してから口を開いた。

 

「応急処置はしといた。あとは向こうに帰ってから、ちゃんとした設備で検査して治療を受けさせろ」

「エ、エヴィデンス。君は複数のペルソナを使えるのか?」

 

 アイギスのメモリーに映っていた湊のペルソナはオルフェウスだったのだが、前回の探索時にエントランスに現れたときにはタナトスを使役し。今日は研究員らの目の前で別のペルソナを召喚して見せた。

 前回の時点では、ペルソナは心の具現であるため、内面の変化によって姿が変わったという可能性もあり得た。

 両親を失った戦いから半年もの間眠り続け、変わり果てた自身の姿を見たのだ。何の感情の変化も起こらない方がおかしい。

 しかし、湊が今回見せたものは別だ。あれはどうみても複数のペルソナを所持し、自由に付け替えることが出来るとしか思えない。

 治療に加わっていなかった第五研の室長、ヘーガーはそのような思いから目の前で起こっていた事が信じられないとして尋ねると。

 湊はその返答として新たなカードを砕いた。

 

「バイフー、マハジオだ」

《――――――――ッ!!》

 

 呼び出されたバイフーは咆哮すると、湊の命令のまま頭上からマハジオを発生させ。ヘーガーを襲う。

 

「ぐあぁああああっ!?」

 

 突然の攻撃に加え、電撃という速度のある魔法だ。そんな物を避けられる筈もなく、ヘーガーは松本のように地面に倒れこみ、他の研究員らが駆け寄っていく。

 同じ室長でありながら驚きで動けなかったために攻撃の対象から外れていた沢永と幾月は、そんな様子を見て、自分も同じ目に遭っていた場合のことを想像し、引き攣った顔で嫌な汗が背中を濡らすのを感じた。

 

「何を聞いてたんだよ。治療と容体確認が先って言ったばかりなのに、ペルソナ“如き”のことなんて後で良いだろ。こっちは応急処置しかしてあげれてないんだしさ」

 

 冷たい金色の瞳を向けながら話す湊だが、本人も別にペルソナという力を軽く見たりはしていない。

 自分がペルソナを扱えるのは、両親が適性者であったために偶然にもその強い素養を引き継いでいただけ。

 また、多数のペルソナを使えるのも、アイギスが自分にデスを封印したことが影響しており。

 もっと根本的な問題として、ベルベットルームの人間の協力があればこそ強力なペルソナを得ることが出来ている。

 いくら強い力を得ようとも子どもの身で大切な人を守っていこうというのだ。

 それだけ他人の力を借りて得たものを、たとえ使えるのは自分だけだと言っても驕るようなことはなく。未だ自分はとても未熟で弱い存在だと湊は認識していた。

 ならば、なぜ湊は敢えてペルソナをくだらないもののように言ったのか。それはここにいる研究員ら全員に自分という存在を『絶対に逆らってはいけない者』として認識させるためであった。

 

「今日は満月だ。シャドウが凶暴になることくらい分かってただろ? それなのに態々探索させるなんて、本気でこの塔を調べる気ある?」

 

 背後ではチドリのついでに拾って来た第四研の二人が怯えているのだが、湊はより一層冷たい触れれば切れるような空気を纏いながら問いかける。

 ペルソナに限らず、シャドウのものであっても耐性のない普通の人間が魔法スキルを喰らえば相当のダメージを負い、数時間は動けなくなる。

 だが、湊は出力を抑えたのか少々の痺れは感じるもののヘーガーは支えられながら立ち上がることが出来た。

 それを見ながら話を聞く限りでは懲罰の意味で電撃を放ったようだが、その攻撃に一切の躊躇ないがないことから、自分たちは今この場において“生かされている”ことを研究員らに実感させた。

 

「子どもらを管理して自分達の方が偉いと思ってた? 残念だったね、俺が出てきたからには、研究所でのカーストは俺が頂点だ。今度勝手に今日みたいなことしてみろ、敷地ごと消し飛ばすぞ」

 

 それはハッタリでもなく、純粋な脅し。

 脅しをかけた張本人を近くで見ていた第四研の被験体の二人は、自分たちが逆らえない筈の研究員らが湊を怯えたような目で見ている事が信じられず。

 一方、傍らに立っていた二人の少女は、湊が自分たちのことで怒っているのだと理解し。それにより、湊への信頼を厚くする。

 所詮、非人道的な研究をしている悪魔の群れでも、表情一つ変えずに理不尽なまでに圧倒的な力を振るえる死神に勝てないのだ。

 そして、そんな死神を生み出したはぐれ悪魔が、表情を歪めながらも子どもらの容体確認と搬送に動く研究員らを横目で見つつ少年に話しかける。

 

「どうも、お疲れ様です。無事に少女を助けられたようで何よりです。ですが……何故、新たに少女が増えているのですか? そちらは別の研究室の所属でしょう?」

「うん。まぁ、途中で拾ったんだけど、なんか離してくれなくて……」

 

 困った表情をしている湊の後ろには、裾を掴んだまま飛騨から逃げるようにして湊の背に隠れる金髪の少女が立っている。

 チドリはそれが面白くないのか不機嫌そうに睨みつけているが、流石の飛騨も別の研究室の子どもを勝手に連れていく事は出来ないとして、どうすべきか悩みはじめた。

 すると、近付いてきた飛騨に怯え、不安そうにしていた少女がチョイチョイと服を引っ張り、湊を呼ぶ。

 

「ミナトと一緒がいい……」

「ダメ、あんたは別の研究室でしょ。うちは私と湊だけで良いのよ」

 

 チドリはそういって湊を見つめている少女を睨みつける。

 実を言うと、少女は今日の夜にチドリと訓練を行っていた相手で、自分を殺すと言っていたくせに今は一切眼中にないようで湊ばかりを見ている。

 今までの訓練で何度か顔は見ていたものの、名前も知らないような相手が自分よりも先に湊に会っていた次点で面白くなかったのだが、さらにいつまでもベタベタと纏わりついている事もチドリの気に障った。

 しかし、少女は湊と離れたくないようで、チドリの意見を聞きつつ別の案を出す。

 

「じゃあ、ミナト。一緒にいこ?」

「え? ていうか、キミ名前は? どこの子?」

「私、マリア! マリア、だいいちけん? ってところでペルソナの練習してる」

 

 自分の自己紹介を嬉しそうにするマリア。

 マリアの食堂や訓練時の様子を少しだけ覚えていたチドリにとっては、相手がこんなにも年相応の明るい表情をしているのは非常に驚くべきことだ。

 しかし、それでもやはり、第八研にまでこられて湊にベタベタされては嫌だと思ったので、ここは一つ年功序列で年下に命令してやることにした。

 

「あなた新参のくせに生意気なのよ。こっちは私と湊だけで良いって言ってるでしょ。子どもは帰って寝てなさい」

「ちょっとチドリ。小さい子にそんな言い方したら可哀想だよ」

「マリア、子どもじゃない! マリア、もうすぐ8さい!」

『……え?』

 

 湊とチドリは思わずポカンとしてしまった。

 明らかに自分たちよりも年下にしか見えないマリア。

 背丈もチドリの目線くらいまでしかなく、言動も幼稚園児のそれに近い。

 だが、マリアは自分がもうすぐで八歳。つまり、湊らと同じ小学二年生にあたると言っているのだ。

 小さな子どもの言う事をそれほど疑ったりするつもりのない湊も、流石にそれは信じられなかった。

 

「あのね、マリア。八歳って両手を使って数えるんだよ? マリアは本当はもう少し指を折り曲げないといけないよね? ていうか、そうじゃないと俺より数ヶ月年上になるし……」

「数字ちゃんと数えれるよ? 1992年の7月27日うまれ!」

 

 嘘を言っているようには見えない。

 何より、幼いわりにしっかりと西暦で誕生日を言えることが、マリアが本当に湊らと同学年であることを表していた。

 そうして、マリアが実は数ヶ月という僅かな差だが年上であることが分かった二人は少々落ち込むが、チドリもついでとばかりに自分のプロフィールを湊に教えておく事にした。

 

「……私、八月十二日生まれ」

「え? ああ、うん。俺は十月生まれだよ。けど、なんか悔しいから『有里湊』としては四月五日生まれにでもしておこうかな。飛騨さん、それで登録しておいて」

「別に構いませんが、少年に限らずうちの研究は公に出来ないものですから、全員戸籍を抹消して詳細プロフィールなんてものは残していませんよ。せいぜいが少年の“エヴィデンス”や少女の“被験体068”といった名称。それと発現したペルソナのアルカナと能力くらいですね。少年に至っては最初の時点で元の名前も分かっていませんし、本当に不思議なものです」

 

 少々呆れ気味に答える飛騨の言葉も尤もで、湊達のいるエルゴ研は、公には出来ないが仮にも桐条グループという世界有数の大企業の研究機関である。

 桐条の影響力と情報網はかなり大規模に亘り、時間はかかろうが被験体らの本当の親も探しだす事が出来る程だ。

 しかし、何故だか湊に関する情報だけは一切公開されていなかった。

 各室長らが桐条家当主の方に情報を尋ねても、教える事は出来ないという答えが返ってくるのみで、現在も非公開のままきている。

 乗っていた車のナンバープレートから身元を割り出そうと試みた者もいたが、爆発したときに海に落下したのか、それも不発に終わった。

 情報を秘匿するからには当主である桐条武治は湊の身元を理解しているようだが。どのような理由から隠し続けるのかは研究員らも分かっていない。

 そういった理由から、桐条に並ぶほどの家の者だという尤もらしい噂に、もしや桐条の隠し子ではないかという突飛な話が研究員らの間で囁かれていたのだった。

 

「へぇ、やっぱり俺の情報って名前も知られてなかったんだ……」

 

 以前、病院で自身の名がエヴィデンスとしか書いていなかった事で、その可能性を考えていた湊は予想が当たり小さく笑みを浮かべる。

 湊はそのうちチドリを連れてここを出るつもりだ。

 しかし、名前などを知られていると逃げた後で見つかってしまう可能性が高くなる。

 それを潰すために逃げる前に自分たちの情報を出来る限り消すつもりだったが、そもそも情報自体がないのであれば、その手間はかなり少なく済みそうだった。

 そんな思惑を理解していない少女二人が、湊の笑みの理由が分からず不思議そうにすると、不安を与えぬよう苦笑して「なんでもない」と返し、湊は話を戻す。

 

「それで、マリアには悪いけど俺はチドリと同じ所属でいるつもりだから移籍は出来ないよ」

「なんで? ミナト、マリアのこと嫌い?」

「別にそういう訳じゃないよ。単に俺はチドリを守るためにいるから、チドリのいないとこに行く気が無いだけで」

 

 泣きそうな顔で見上げるマリアの頭を撫でつつ答える湊。

 だが、やはり湊としては優先順位はチドリが上なのでチドリのいる研究室以外に移る気はなかった。

 一方で、チドリの方も湊がマリアに優しくしているのは気に食わないが、自分を守るために傍にいると言われ、無愛想ながらもどこか嬉しそうにしている。

 遠くでそんな輪に加わりたそうに湊を見ている第四研の少女も含め、分かりやすい相関図の矢印の向きに飛騨は苦笑しながら、子どもらを早く休ませるためエントランスの外へ出るよう伝え自分は車に乗りこんだのだった。

 

深夜――第八研・被験体用寝室

 

 タルタロスから戻ってきて影時間が明けると、湊はマリアを第一研へと送っていき。その間にチドリは入浴を済ませることにした。

 そして、湊も第八研に戻って入浴を終えると、以前と同じ被験体用の寝室のベッドでチドリと雑談を交わす。

 内容は主に今まで湊が何をしていたかだ。

 肉体に施した改造の全てを話したりはしないが、自分がどのように力をつけたか。また、瞳の色がなぜ変化しているかなどについては話した。

 最初は驚いていたチドリも、話が進むにつれ非常識な事柄のオンパレードに思わず呆れてしまう。

 

「……それじゃあ、ずっと引き篭もって戦う準備してたんだ。そんな近くにいたのに一切連絡もしないで」

「うん。まぁ、引き篭もってたというより、終わるまで出られなかったって言った方が正しいんだけど」

 

 不機嫌さを隠さず棘のある言い方をワザとするチドリ。本気でキレてはいないが、かなり真面目に怒っているようで、隣に寝ている湊の腕をかなり強く掴んでいる。

 対して、湊の方はチドリの怒りの理由と非が自分にあることは認めるので、敢えてその腕を解かずに好きなようにさせる。

 

「貴方、いなくならないって言ったわよね? で、言ってすぐにリハビリで二週間いなくなったくせに、今度は三ヶ月も消息不明。……ねぇ、私のこと舐めてるの?」

「別にそんなことはないよ。けど、一緒にいるために必要なことだったから」

「男が言い訳してんじゃないわよ、この黒マフラー」

 

 言って、チドリは湊の首に巻かれている黒いマフラーを掴むと自分の方へと強く引っ張る。

 湊のマフラーは肌触りはシルクのような高級なものでも、素材自体は現実世界のものではない。

 なので、いくら引っ張られようが湊が念じない限り伸びてしまう事はないのだが。今回はそれが悪い方に働き、巻いていた本人も一緒に引っ張られてしまった。

 

『痛っ』

 

 勢いよく引っ張られたマフラーにつられた湊は、そのままチドリの方へ移動し、お互いの頭をぶつける形となってしまう。

 だが、口ではつい痛いと言ってしまった湊は、肉体改造で防御力があがり、尚且つ現在タナトスを装備していることで打撃耐性がついていたことで、実はそれほどダメージはない。

 しかし、チドリは普通の女子であり、発現したペルソナに打撃耐性などついていなかった。

 そうして、チドリは思わずぶつけた個所を押さえて涙を滲ませながら悶絶しつつ、原因となった少年へと逆ギレした。

 

「なんで、ちゃんと耐えないのよ! それに、頭硬すぎ。どんな身体してんのよ、まったく」

「えっと、なんだろう。ゴメン……であってるのかな? まぁ、いいけど、大丈夫?」

「……目の前で痛がってるのに大丈夫に見えるなら、眼科行った方がいいんじゃない?」

「ああ、大丈夫そうだね。コブにもならないだろうし治療は必要ないかな」

 

 淡々とした口調で言いながらも湊は触診でチドリの容体を確認する。

 飛騨が医者だったこともあって、隠し部屋の方では暇なときに医学書を読んでいた湊。

 ペルソナやメッチーの力を使えない状態でも容体を判断して、怪我の応急手当てくらいは出来るようになるためにしていた事だが。その知識が初めて活かされたのが今だった。

 だが、そんな事を知らない者にとっては湊の対応は適当に流しているようにしか思えない。

 その結果、さらにチドリの怒りを増長し、本人はぶつけた額の痛みも忘れて起き上がると、湊にまたがり不良が襟元を掴むように両手でマフラーを掴み上げた。

 そして、暗闇の中で相手の目があるであろう場所を睨みながら口を開く。

 

「……急にいなくなるし、突然現れたと思ったら変な子連れてるし、今のだって適当に相手されてるようにしか思えない。私、そんなの……なんかイヤ」

 

 最初は凄みをきかせた声色だったが、徐々に小さく呟くようになり、最後はどこか泣きそうな印象の声色だった。

 痛みで涙が滲んだ事が原因ではないだろう。

 味方のいないこの場所で久しぶりに出会った同じ所属の少年。その少年は他の第八研に所属していた者たちのようにいなくなったりはしないと約束した。

 こんな異常な環境だからこそ、感覚が麻痺していたチドリは孤独にも慣れたように思っていたのだが、本心では寂しさを感じていたようで。そんなただの口約束が嬉しかった。

 

「もう、本当にいなくならないで」

 

 しかし、湊も他の者たちと同じようにいなくなってしまう。

 死んでしまったというなら、まだ諦めもついた。

 立ち上がれもしなかったのだ。

 守っていた自分がシャドウにやられれば殺されてしまってもおかしくはない。

 だが、飛騨は明確に死んだとは告げなかったので、その中途半端な対応が生きているかもしれないと単純に諦める事を躊躇わせていた。

 そうして、その僅かな希望が自分の命が失われる直前に現実となって現れた。

 自分を守るように敵との間に降り立ち、その後、敵を体術のみで倒すと柔らかい笑みで再会を喜んでいた。

 自分だけが会いたいと思っていた訳じゃない。

 湊も守るために力を得て、ずっと再会するのを待ち望んでいたのだ。

 

「……うん、約束する」

 

 その気持ちが相手に伝わるように優しく答えながら、湊は自分の上に座っているチドリを抱き寄せると、身体を回転させて横に寝かせ、抱きしめたまま頭を撫でる。

 取り付けられたカメラは既に破壊しているので、自分たちだけの時間を見られる事もない。

 再会した二人はお互いに抱きあうと、穏やかな気持ちのまま眠りについたのだった。

 

 

 


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