多忙でした、とだけ。言い訳はそれしかできませぬ。
そのわりに劇場版サイコパスだとかはちゃっかり見てましたが。
俺ガイル二期楽しみですね。今期は三つしかアニメ見ていないので来期はもう少し見たいところです。
では、久方ぶりですが始まります。
「レベルアップ……か」
デスゲーム開始から一月。既にこのゲームでの死者は二千人ほど出てしまった。
自殺を試みる者やベータテスターがその中の多数を占めており、ベータテスターに関してはベータテスト時の知識を頼りに狩り場を独占しようとして、結果死亡となっていることが多いようである。
俺はと言えば、極力無茶はしない方向で着実にレベルを上げていた。途中、ベータテスターの情報屋とやらと知り合うことができたおかげか情報面についても充実している。
……奉仕部の理念の元に動いて情報屋と知り合ってしまったせいか、情報屋を通して間接的に依頼をされることもあるが。
「やり過ぎた、かもな。まぁいい、いい加減進むか」
迷宮区。ここのどこかにボス部屋があり、そのボスを討伐すれば次の階層へと歩ける。
レベル上げも兼ねて攻略はしてるものの、おっかなびっくり攻略をする人間が多く思うように進まないのが現状だ。
フレンド欄にいるキリトやクラインはまだ生きてはいるようで、キリトに関してはあの実力だ。あいつも攻略をしているのではないかと思う。
メンタルに何もなければ、だが。
「――はっ、いろいろありまくりの人間が何を言ってるんだかな」
当たり前だが、約束の日までに俺は戻ることができなかった。
約束の日、発狂しそうな自分を抑えてモンスターを狩ってたが死にかけてどうにか冷静になることができた。
その際に見た景色が、どうしようもないくらいに綺麗で……あまりの綺麗さに言葉を失って……こんな紛い物の世界に目を奪われた自分が気にくわない。どんなに綺麗でも、認めてしまうわけにはいかない。
比企谷八幡は、比企谷八幡であるためにこのゲームを認めてはいけない。奉仕部の二人へまた会うために、それ以外を許容するわけにはいかない。
「ハチマン……?」
「あ?」
不意に後ろから声がかけられた。俺の名前を知ってる人間なんてそんなにいないから、必然的に誰かは搾られる。
振り向けば、そこにはキリトの服を着た少年が立っていた。
「お前、キリトか?」
「ハチマンなんだな! 良かった、無事みたいで」
「……まぁ、な」
およそ精神的には無事とは言い難いがこいつに言ったところで何も変わらないだろう。
にしても若いなこいつ。幼いって言えばいいのか?
とりあえず俺よりは年下そうだ。
「やっぱりハチマンも攻略に乗り出してたんだな」
「ああ。って、やっぱり?」
「アルゴからめちゃくちゃ足の速い曲刀使いの話を聞いてたんだよ。もしかしたらって思ってたんだけど、ハチマンがここにいるってことはそういうことなんだろうなって」
「あー、なるほどな。ってことはお前が盾を使わない片手剣使いか。なるほど、あの鼠を介してお互い情報だけは持ってたらしいな」
「なぁ、ハチマン。良かったらパーティ組まないか?
基本ソロで良かったんだけど、ハチマンなら問題ないし、攻略ペースも上げられそうだし」
キリトならまぁいいか。ゲームの理解度で言えば俺より上だろうし、間違いはないだろう。
「いいぞ。じゃあ次からは適当にメールでもくれ。攻略に付き合うから」
「おう」
それからしばらく、二人で延々と迷宮をさ迷うことになる。
一人でも安定して狩れるモンスターは、よりによってこのキリトと組んでるせいかよりいっそう楽に狩れている。
このデスゲームが始まって以来の、初めてのまともなパーティかもしれない。
「強いな、ハチマン。ベータテスターじゃないのが嘘みたいだ」
「ゲームは好きだからな。あと、思っていた以上に自分の理想に近い動きができるのが大きいな」
これはあれか、材木座的な黒歴史時代の名残なのか。
だとしたら喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。
「……はっ」
材木座、な。あいつは俺がこんなところにいたらさぞ羨むだろうな。本当におとぎ話のような場所だ。
……いや、あいつがそんなやつじゃないことくらいわかってる。らしくなく言えば、信じている。
はぁ、戻った時に泣いてたらマッ缶でも奢ってやるか。
「どうしたんだ、ハチマン」
「なんでもない。行くぞキリト。そろそろ一層くらい攻略しておかないとな。
……立ち止まってる暇なんてない。絶対に」
「ああ、やろうぜハチマン! 絶対攻略してやる!」
毎日毎日決意を新たにする。リセットではなく、同じことの上書き。
挫けそうになる精神を理性で圧し殺し上書きする。
今までにないくらい窮屈な心の内側に、雪ノ下や由比ヶ浜も同じような窮屈さを感じていたことなんてあったのだろうか、と想いを馳せる。
自分の心のゆとりがほとんどないことなんて、とっくに承知済みだった。
そういう意味で、こうして笑顔を貫いていられるキリトが少し羨ましくて、こいつとパーティを組めることに少し安堵した。
前回と比べ、八幡の精神はより不安定に。景色を見たときの感想の抱き方とか、前よりキツキツです。
モノローグでも原作よろしくなノリよりシリアスチックな口調になってしまっているのも精神の余裕のなさです。
これをどうするか、頑張って書けたらと思います。
ではでは、また改めてよろしくお願いします。