BLACK PSYREN   作:どるき

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Call.43「ピクニック」

 午前十一時を回り、蓮太郎と影虎は本陣に帰投した。予定ではアルデバランとの戦闘真っ最中であり人影は少ないと思っていたのだが、その予想は悪い方向で外れていた。

 

「なんだこれは」

「ひでえ……」

 

 本陣に居るとそこに待っていたのは傷を負って暗い顔をした人々であった。本陣にてふんぞり返っていると思っていた長正らの姿は無く人数も予想よりさらに少ない。

 困惑する二人を出迎えたのは、アルデバラン討伐の為に出発していると思っていた木更たちアジュヴァントの仲間であった。

 

「お帰りなさい、里見君」

「木更さん? 前線に出ているはずじゃ……」

「細かいことは俺が説明しよう」

 

 蓮太郎と影虎は彰磨から現状の説明を受けた。アルデバランが放ったガストレアの集団により分断された後続部隊は撤退を余儀なくされたこと、そして前線の部隊はアルデバラン自らが囮になる大胆な敵の策により深く踏み込み帰ってこないことを。

 

「それじゃあ今頃、我堂長正たちは……」

「犬死とは思いたくはないが、苦戦しているだろうな。助けに行くにしても敵の護りを突破するには俺達だけでは力不足、どうしようもない」

「そうだ! 自衛隊の威力征圧、あれなら……」

「それは無理ね。こっちに戻ってから聖天子様にも要請してはいるけれど、昨日の被害が大きすぎて動かせる戦力は無いそうなのよ」

「なんてことだ」

「だが放っておいたら奴らは人里まで降りてくるぜ。こうなったら俺達でやるしかねえ」

「でも無理だわ。とてもじゃないけど傷ついたみんなを引き連れていくことなんて出来ないわ」

「だったら俺達が力を貸すぜ」

 

 堂々巡りをする蓮太郎たちの前に、誰かが割り込む。傷ついて満身創痍ではありながら、心強い男たちの声が。

 

「夜科さん……」

「今すぐとはいかねえが、一晩あれば回復出来るぜ」

「戻ったか、アゲハ!」

 

 戻って来たアゲハに対して青色吐息の表情で影虎も声をかける。先のプレヤデス戦での疲労がピークに達して影虎の表情はアゲハ同様にすぐれない。

 

「そういう影虎さんは珍しく顔色が良くねえな。何かあったのか?」

「ちょっとな……これくらいもう少し休めばどうと言うことはねえぜ」

 

 アゲハ達もまた回帰の炎から本陣へと戻ってきていたがその消耗は激しかった。先ほどの巨大ガストレアとの戦闘によりアゲハと朧以外は休息が必要なのは明白なほど傷ついており、到着するや否や桜子とドルキはベットに伏せて目を覚まさない。

 キュア役の朧もキュアの疲れで動けない程であり、キュアのおかげで全治二日とはいえその間は絶対安静である。

 

 最前線にいる長正らの心配もあり、辛うじて動ける少数で小隊を組む。アゲハ、彰磨、翠、将監、夏世、玉樹、弓月、鬼八、火垂の五組九人を救助のための斥候部隊として編制し、念のため長正の携帯電話へ連絡を入れる。

 

「我堂長正か?」

『誰だ?』

「誰だっていいだろう? 今から援護に向かう、状況を教えてくれ」

『状況? 状況だと?! 来るな、援護する気があるのなら自衛隊の航空戦力を動かせ』

「何があった」

『ワシもいつまで持つかわからんからこれだけは伝えておく。アルデバランはバラニウムでも死なん、殺すなら塵ひとつ残らずに消し去る以外にない。だから……』

「おい……おい!」

 

 アゲハはまるで遺言のように語る長正に呼びかけるが、電話は途中で途切れてしまった。リダイアルしても連絡が取れない。まさか長正を含めて全滅したのかと気分が悪くなる。

 

「どこまでいけるかわからねえが……助けに行くぞ、みんな」

 

 アゲハは気分の悪さを払拭するかのように将監らを連れて丘へ向かった。場所は長正の携帯電話から割り出したGPS座標を目掛ける。その道中、野獣の群れが障害となるものの木更たちに撤退を余儀なくさせた大型オオカミの姿は無く難なく目的地まで足を運ぶ。

 到着した場所にはヘッドセットが落ちているだけであったが、長正はそこからそう離れていない穴の中にいた。前線に赴いた生き残りたちが掘った塹壕である。

 長正の前に現れたアゲハの姿に、長正も先ほどの男であることにすぐに気が付く。

 

「さっきの男か、何をしに来た」

「助けに来たに決まっているだろう」

「何故? ワシらの事は捨て置けと……」

「おっさんはそれで良くても俺は気に食わない、そういう生き物なんだ」

「生き方か……」

 

 アゲハはつい長正の体を揺らすが、顔に浮かぶ苦悶の表情をみてふと気が付く。長正の右足はすっぱりとなくなっており、巻かれた包帯に滲む血は痛々しい。

 

「おっさん……」

「ワシもしくじったわ。愛刀できゃつの心臓を刺し貫いたことで気をゆるみ過ぎた。まさかバラニウムで心臓を貫かれても生きているガストレアがいるとは思わなんだ」

「なんだって?」

「その様子じゃお主も知らぬか……ワシも知らなんだ事だ当然か。事実しか言わんからよく聞け、アルデバランは普通では倒せぬ。

 今にして思えばワシはまんまときゃつにおびき出されて後続部隊とも分断されてしまった……それだけきゃつは己の再生能力に自信を持っている」

「もう一度確認する。おっさんは心臓を確かに潰したんだよな?」

「ああ、もちろんだ。ワシがきゃつの心臓を潰し、朝霞がきゃつの脳を砕く。そこまでは完璧だった。だがきゃつはそれでもなお死なん……おそらくバラニウムの力でも再生を阻害しきれなんだろう」

 

 長正の話を聞いてアゲハは思う。もしかしたらアルデバランを倒すには暴王の月で塵ひとつ残らずに削り殺す以外にないのではないかと。たとえ完全体が相手であろうとも削り殺し切れることは先の大亀との戦いでも証明したも同然である。だが先の戦いでの疲弊は思うよりも大きく、あの亀三匹分はあろうかという巨体を削り切るには不安がある。

 

「まずは陣に戻ろうぜ」

 

 アゲハは悩んでも仕方がないと頭を切り替え、長正を促して陣に戻った。それからアルデバランの進撃もなく夜になり、陣には篝火がかけられる。

 薬で体調を持ち直した長正が中心となり、これからの作戦を立てるために生き残った民警たちがテントに集まる。その中には当然のようにアゲハや蓮太郎も含まれている。

 

「諸君、アルデバランについてだが……知っての通りきゃつは不死身だ。頭と心臓を潰しただけでは倒せん。その上で皆に問う、なにか倒す方法は思いつかないかと」

 

 長正の相談にアゲハは口を開きかける。ただこの場にはPSIなど信じていない人間も多いだろうことを考えると言葉に詰まる。そんなアゲハの心情を察しているのか朧はアゲハの肩を叩いてから口を開き、暴王の月以外の案を提示する。

 

「EP爆弾を使うというのはどうかな?」

「ん? なんだそれは」

「司馬重工が開発中の限定範囲で高威力を発揮する爆弾さ。試作段階とはいえ航空爆撃用の爆弾の二十倍もの威力がある。これならアルデバランと言えども倒せるはずさ」

「しかし……すぐに用意できるのか? 試作品ということはキミの会社では用意できなんだろう?」

「それは……そろそろ出てきてくれたまえ」

「まったく……里見ちゃんと望月社長の頼みなら断れないねえ」

 

 朧の呼び声に応じて奥から蓮太郎に手を引かれて長正の前に少女が現れる。司馬重工の令嬢、司馬未織の姿がそこにある。長正も司馬重工の装備を愛用しているお得意様ということや、和風趣味の原点が司馬家への魅了にあることから互いに知った中ではある。だが顎で使うように呼び出せるような相手とは思っていないため、この場に現れたことには驚愕以外にない。

 

「こんなところに御出でなされたのですか」

「せや……それで、さっそくだけどこのEP爆弾を使えば理論上は倒せるはずよ。ただし、これをアルデバランの体内で炸裂させることが出来ればね。アルデバランの体内で炸裂できれば爆縮反応が強くなって倒しきれる、これはウチの化学班が解析した計算結果よ」

「内部からの高威力爆撃か……確かにまともに喰らえばひとたまりもない」

 

 EP爆弾の話を聞いた彰磨は一人で納得した様子で相槌を打つ。彼なりに思うところがあっての発言ではあるが、その言葉の意味を周囲は知らない。

 

「でもどうやって爆弾を仕込むか……それが問題だな。一度アルデバランの腹を切り裂いて、その上で爆弾を放り込む必要がある」

「ワシがやったようにきゃつに切り込むことは不可能ではないが……一筋縄ではいかんぞ」

 

 長正は痛々しい亡くした足を見ながら言う。彼の言葉はアルデバランに風穴を開ける役を追った人間は無事では済まないことを意味している。

 蓮太郎の頭の中には既に未織や朧と相談して決めた考えがあるようでそれを周囲に伝える。

 

「それなら俺に考えがある。作戦は二段構え……第一段階は俺達が囮としてアルデバランを引き付けたうえでの対戦車ライフルを使った狙撃、これはティナにやってもらう。木更さんは一人になっちまうが、いいよな?」

「いいわ」

「第二段階は保険だが……ライフルでも傷が浅い場合は、俺自身が弾丸となってアルデバランに食い込む」

「ワシや朝霞のように強化外骨格を使うのか? 確かに司馬重工なら即座に新しい強化外骨格の用意など容易いだろうが、あれはワシと朝霞のコンビネーションがあって初めてできたことで……」

「俺にはコイツがある」

 

 蓮太郎が言うコイツとは当然―――

 

「ここで改めてこの場で名乗らせてもらう。元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』里見蓮太郎。要求スペックは『ガストレアステージⅣを単独撃破できる攻撃力』。つまり、理屈の上では俺の攻撃はアルデバランにも通用するはずだ」

「いやあ、素晴らしいね」

 

 蓮太郎の名乗りに対して誰かが茶々を入れる。その場にいないと思っていた男の声に対して、蓮太郎は凍り付きそうになる顔を堪えて冷静に言葉を返す。

 

「……何の用だ、蛭子影胤」

「用も何も、私もこの戦いに助力しようと思ったものでね。そこでこのベースに立ち寄ったんだが、偶然キミが堂々と新人類について名乗る場面に出くわしたところと言う訳さ」

「そうか……だったらアンタら親子も俺に命を預けてくれ。正直言うとアンタの力はこの場では心強い」

 

 蓮太郎の言葉に周囲にどよめきが走る。いくら強いことが知れ渡っているとはいえ、蛭子影胤は悪名高い殺人者でもあるからだ。一度は東京エリアを滅ぼそうとした男が今度は東京エリアを守護しようと言われても信用できない。蓮太郎の言うように心強いほどの戦闘能力者であるからこそ裏切られた場合を考えた不安も大きい。

 それはアゲハも同様である。アゲハにとっては力の過多よりもその精神構造の歪さを警戒しての事ではあるが。

 

「テメー、ノコノコと……」

「おや、夜科君もここにいたか。だが安心してくれたまえ、今回はキミとも争うつもりはない。ぶっちゃけると私のイマジナリーギミックにとって天敵に近いキミには、今の状態では勝てそうもないしね」

「夜科さんも引いてくれ。万が一コイツが不穏な動きを見せた場合の対応はアンタに任せる。だから……」

「わかったよ」

 

 蓮太郎の言葉にアゲハもしぶしぶながらしたがって矛を収める。その様子を仮面の下で笑いをこらえながら眺めている影胤の態度は癪ではあるが、蓮太郎の表情を見て彼の本気を組んだ結果なのだから仕方がない。アゲハとて生粋の殺人者でもなければ人並みに狂人への脅威を感じる人間である。その危機管理本能が告げる危険な人間が相手であろうとも、それの排斥を妨げるものが蓮太郎の眼には会った。

 

「それじゃあ明日の陣形を発表する。アタッカーが俺と延珠をリーダーに薙沢ペア、片桐ペア、蛭子ペア、天童木更、望月朧、夜科アゲハ、雹藤影虎の十二人。スナイパーがティナ・スプライトをリーダーに水原ペア、しっとマスク二号、千寿夏世の五人。残りは動ける人間は後方支援に回ってくれ。少数精鋭でアルデバランを叩く」

 

 いつの間にか蓮太郎が会議を仕切っていたが、長正を筆頭にそれをとがめるものはいなかった。それぞれの思いは別にして蓮太郎が立てた作戦への一蓮托生は皆同じだからだ。

 決戦開始の火ぶたはアルデバランが三十二号モノリス跡地を目指すその時、急ピッチで進む復旧作業が終わるのが先か決戦が始まるのが先か、膠着状態のまま夜は更けていった。

 

――――

 

 夜も更け十時を回ると、次の戦いに備えて動ける人間ほど早々に眠りについていた。逆に怪我で戦うことが出来ない人間ほど眠れない不安な夜を過ごす。民警団を束ねる頭目である我堂長正もその一人であった。

 長正は篝火の熱で適度な暖を取りながら、夜空の星を眺める。元は片足切断の大怪我を負っており痛みで眠れないからとはいえ、脂汗が流れる長正の肌は冷えた汗でひんやりと冷めていた。

 

「なあ、蓮太郎……しばらく会わない間に凄い奴になったな、お前」

「急にどうしたんだ? 水原」

 

 テントで横になっていた蓮太郎は隣で寝ている鬼八にふと声をかけられる。凄いと言われるのはなんだかんだ慣れ始めていたが、自分でも実感が持てないこともあり蓮太郎の反応は淡泊である。

 

「さっきの会議なんか後半は全部お前が仕切っていた。それにお前自らが先陣を切って突撃するんだろう? 俺と火垂を脇にどけて突撃するだなんて、まさか俺達だけでも生きろとかそういう訳じゃ……」

「それはお前にはティナの援護をしてほしかっただけだ。お前らはティナに似て火器を使うタイプだから適任だしな」

「それくらいわかっているよ。それに一応は俺達スナイパーが最初の大仕事をするのが今回の作戦だ。だが俺には狙撃でアルデバランに穴をあけるだなんて気休めの考えにしか思えない。狙撃で歯が立たないのなら当然お前がアルデバランに風穴を開ける役目になるんだが……蓮太郎、お前死ぬ気か?」

「そんな訳ねえだろう……アルデバランはいつ来るかわからねえんだ、余計なことは考えないで今のうちに寝ておけよ」

「だよな。すまねえ、変なことを聞いちまって」

「この状況じゃ無理もねえさ」

 

 不安で寝付けない気持ちの昂ぶりの中でも積み重なった疲労は自然と二人を眠りへといざなう。

 その頃アゲハは影虎と共に夜空の月を眺めていた。二人とも蓄積したダメージでコンディションは最悪に近いが、眠るよりも気持ちの整理をつけたいことを優先している。アゲハは民警としての先輩として影虎に問う。

 

「さっきの会議だが……あれでよかったのかな?」

「どうした? お前らしくもない」

「いくらアルデバランが強いと言っても、俺が暴王の月を使って突っ込めばみんなが危険な目に逢うことは無かったんじゃないかって思ってさ」

「気にするなよ。他の作戦が無いのに切り札を出し渋ったわけじゃねえんだから。それにその様子じゃ普通の暴王の月ならまだしもノヴァは無理だろう? また前みたいに半年も眠りっぱなしじゃ雨宮の嬢ちゃんにも悪いぜ」

 

 影虎はアゲハの体調を見抜いて彼を慰める。自分と同様にコンディションが悪いアゲハにノヴァと言う無茶を使わせるわけにはいかない。それに影虎としても共に死線を潜ったことで彼なりの蓮太郎への理解も示している。そんな少年が自信をもって立てた作戦なのだから、人生の先輩としては成功させて彼を無事に帰還させることが役目であるとも考えているほどである。

 

「すまねえ、弱音を吐いちまって」

「いいってことよ。ただ実戦で迷って力を出し渋らなけりゃそれでいいぜ」

「違いねえや」

 

 夜が明けると、仮眠と栄養補給によりアゲハの体調も万全と比較して五割ほどまで回復していた。流石に桜子とドルキはまだ動けないが、元よりフィジカルに秀でる影虎と朧も同様に戦闘に支障が無い程の回復は見せていた。とくに朧は秘密裏に何かをしてきたのか昨日の状態からは信じられない程の万全の体調である。

 朝日を浴びてアルデバランも動きを再開したのかゆっくりと三十二号モノリスを目指して進軍を始める。司馬重工の衛星がとらえた影は巨大なアルデバランを中心に大小合わせて二百ほどのガストレアであり、ステージⅠ~Ⅳまでの見本市となっている。

 進軍ルートの道中にある湖畔を最終防衛ラインと設定し、前線指揮を執る蓮太郎が陣形を決める。昨夜の会議の時と同じ陣形ではあるが、違いは蓮太郎たちアタッカーチームに壬生朝霞が参加していることである。

 

「私も行かせてください」

 

 朝霞の参加は彼女のたっての希望によるものである。闘志を組んだ蓮太郎が認めたことではあるが―――

 

「それは構わないが、我堂はいいのか?」

「構わん。動けないワシに構うよりも戦場で武功をあげてくれる方がワシとしても本望だ」

「だったらその命、俺に預けてくれ。預けたからには死んでもアルデバランを倒すぜ」

 

 長正もまた朝霞の戦いを望んでいた。このまま怪我人の世話をさせるのは忍びないし、長正の脚を奪ったアルデバランへの報復を朝霞が望んでいることを彼も察していたからだ。

 

 陣を出発したアタッカーとスナイパーの各チームは湖畔に到着すると二手に分かれる。太陽に照らされる湖を眺めながらの弁当はちょっとしたピクニック気分ではあるが、それは一時の安らぎに過ぎないことは全員承知の上である。

 遊び気分などまっぴらといった態度で弁当を取らずに木の上で遠方を眺めていた影胤親子は何かに気が付き蓮太郎にオペラグラスを投げる。

 

「向こうを見たまえ里見君。やっと来たようだよ」

 

 蓮太郎も言われるがまま、影胤が指す方角をオペラグラス越しに眺める。見えたのは黒くて大きな物体とそれに追従する小さな物体である。小さいと言っても中心が大きすぎる為であり、一個一個は小さいものでも蓮太郎より大きい。

 アルデバランの軍勢のお出ましである。

 

「ティナは狙撃体勢に移ってくれ。水原達はサポートを頼む」

『もうすでにやっているぜ。ティナも奴らを捕捉していたからな』

「だったらなんで連絡が遅れた?」

『奴らが来るまでに昼飯を喰うくらいの時間はあったからな。あの子なりの思いやりだ、ありがたく受け取っておけ』

「そうか……」

 

 ティナは既に動いていた。後はアルデバランが引き連れる軍勢を蹴散らしてEP爆弾を仕込むチャンスを探るだけである。蓮太郎は化粧も既に剥げて漆黒の地肌を晒す右腕を左手に突き立てて鼓舞する。

 

「みんな、ここが正念場だ。何度も言うが、俺に命を預けてくれ」

 

 蓮太郎が中心となりアタッカーチームは一丸となる。イニシエーターを除けば一番の若輩者である蓮太郎に危険人物である影胤までも従うのは彼の経歴によるカリスマ性よるものかもしれないが、今はそれを問う時ではない。

 

『援護射撃、いきます』

 

 ティナたちによる火力支援によるアンチマテリアル弾がガストレアの頭蓋を吹き飛ばし、戦いの火ぶたが落とされた。




決戦直前までの話
今回のアゲハは前回での消耗が大きいので本調子ではないです
前回の亀公を派手にしすぎて次回はあっさりいきそうです

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