宍戸丈 LP4000 手札6枚
場
丸藤亮 LP4000 手札0枚
場
伏せ 一枚
つい前のターンまでフィールドに並んでいた最上級モンスターの連合はもはや見る影もない。丈のフィールドは焼野原と化してしまった。いや、こうなるまでの経緯からすれば嵐によって更地になったとでもいうべきか。
「俺のターン、運命の宝札を発動! サイコロを振り、出た目の数だけカードをドローする。……俺が出した目は……くっ、2だ。デッキから二枚ドロー。……そして二枚のデビルズ・サンクチュアリを発動。フィールドにメタル・デビル・トークン二体を特殊召喚する」
【デビルズ・サンクチュアリ】
通常魔法カード
「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を
自分のフィールド上に1体特殊召喚する。
このトークンは攻撃をする事ができない。
「メタルデビル・トークン」の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、
かわりに相手プレイヤーが受ける。
自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。
払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。
相手プレイヤー、亮の顔をそのまま映し出した全身が鉄で出来たトークンが二体フィールドに召喚された。他多くのトークンと違い1000ポイントの維持コストを要求するデメリット効果はあるが、このターンでトークンを使い切ってしまえばそんな心配はなくなる。
「二体のトークンを生贄に、闇の侯爵べリアルを召喚!」
【闇の侯爵べリアル】
闇属性 ☆8 悪魔族
攻撃力2800
守備力2400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は「闇の侯爵ベリアル」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスターを攻撃対象に選択できず、魔法・罠カードの効果の対象にする事もできない。
巨大な大剣をもった最上級悪魔ベリアル。こんなモンスターを使っていると魔王という恥ずかしい仇名が定着してしまいそうで嫌なのだが、効果が強力なのは事実であるし真剣勝負で異名がなんだなんだとは言ってもいられない。
『魔王ジョー! フィールドが一掃されて直ぐに異名に相応強い最上級モンスターを召喚したぞぉぉぉおぉ! さすが魔王! 俺達には出来ない事を平然とやってのける! そこに痺れる!憧れるぅ!』
予想通り、会場中には魔王コールが響き渡る。この分だと大会が終わってアカデミアに帰る頃には完全に魔王が定着してしまうだろう。
(ええぃ! 考えるのは後だ! 亮のフィールドはモンスターがゼロ、今がチャンスなんだ!)
「闇の侯爵ベリアルで相手プレイヤーに直接攻撃、無価値なる断罪ッ!」
「速攻魔法、収縮! ベリアルの攻撃力を半分にする!」
亮が発動した速攻魔法によりベリアルの攻撃力が下がる。しかし収縮は攻撃力を下げるだけであり攻撃を防ぐことは出来ない。攻撃は続行されベリアルの振り下ろした大剣が亮の体を切り裂いた。
丸藤亮 LP4000→2600
「グッ……! だが、まだ俺のライフは半分以上残っている!」
痛い所を指摘された。本当なら丈は亮のフィールドが皆無なこのタイミングで戦いの趨勢をもっていたかった。亮が無防備な場を晒すなど、そう滅多にあることではない。その滅多な機会に丈はライフの半分も奪うことができなかったのだ。
この一撃で摂り合えるライフは自分が上回った。だが言い変えれば最初に自分の方が一撃を加えたというだけであり、まだまだ亮には余力が残されている。
(……待て、そうネガティブに考えるな)
自分に自分で活を入れる。不幸なことばかり考えると、現実に不幸になってしまうものだ。
半分のライフは奪えなかったものの亮のライフを2800未満まで削ることはできた。これでもうサイバー・ジラフなどがない状態でパワー・ボンドを使う事が難しくなるだろう。
「俺は一枚カードを伏せターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。運命の宝札!」
【運命の宝札】
通常魔法カード
サイコロを1回振る。出た目の数だけデッキからカードをドローする。
その後、同じ数だけデッキの1番上からカードをゲームから除外する。
「また宝札カードだって……このタイミングで」
手札0枚の状態から引いたのが強力なドローソースである運命の宝札。この引きの強さばかりは、出会って以来追い抜けた気がしない。この世界でデュエリストとしての腕を磨く最中、丈の引きも強くなってはきたがまだ亮のクラスには及んではいないだろう。
亮がサイコロを振ると出た数は最大である6。もはや呆れを通り越して笑いすら出てくる。
「運命の宝札の効果で六枚ドロー!」
「俺は二枚だったのに……運の良い奴」
「フッ。恨んでくれるなよ。運も実力のうちだ。魔法カード、オーバー・ロード・フュージョン発動!」
【オーバー・ロード・フュージョン】
通常魔法カード
自分フィールド上・墓地から、
融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを
ゲームから除外し、機械族・闇属性のその融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
「闇属性機械族融合モンスターの融合素材をゲームから除外、機械族融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する! 俺はサイバー・ドラゴン二体、サイバー・ツイン・ドラゴン、プロト・サイバーを除外ッ! 融合召喚、キメラテック・オーバー・ドラゴンッ!」
【キメラテック・オーバー・ドラゴン】
闇属性 ☆9 機械族
攻撃力?
守備力?
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
このカードの元々の攻撃力・守備力は、
このカードの融合素材としたモンスターの数×800ポイントになる。
このカードは融合素材としたモンスターの数だけ
相手モンスターを攻撃できる。
「出て来たか。サイバー・エンド・ドラゴンとは違う、亮のデッキのエース」
キメラテックと名のついたサイバー・ドラゴン融合体は亮のデッキにおいて奥の手ともいうべきモンスターである。パワー・ボンドや融合の連発でサイバー・ドラゴンなどが軒並み墓地に送られていて、手札の枚数が少ない時。そういったピンチでこそキメラテックはその真価を示す。
特にこのキメラテック・オーバー・ドラゴンが墓地さえ十分に肥えていれば、サイバー・エンドすら超える攻撃値を叩きだすことが出来る。
「キメラテック・オーバー・ドラゴンは融合素材としたモンスター×800ポイントが攻撃力守備力となる。俺が融合素材とした機械族は四体。よって攻撃力は3200ポイントッ! ベリアルの数値を超えたぞ、キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃、エヴォリューション・レザルト・バーストッ!」
「くそっ!」
ベリアルは自軍モンスターに耐性を付与することが出来るモンスターだが、自分自身には耐性がない。キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃を防ぐことは出来なかった。
宍戸丈 LP4000→3600
「追いつくには至らなかったか。だが流れは取り戻したぞ」
丈のデッキに眠る最上級モンスターの多くは攻撃力が3000止まりだ。そして亮のフィールドには攻撃力が3200のキメラテック・オーバー・ドラゴン。
たかが200と思うかもしれない。しかし、されど200だ。攻撃力の差が1だろうと100だろうと、数値が劣っていれば攻撃耐性でもない限り神のカードだろうと負けるのだ。
3000の壁、これをどうにかしなければ丈に勝ちはない。
「俺はカードを二枚セットしターン終了だ」