宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第42話  裏・切り札

天上院 LP200 手札3枚

場  レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン、マテリアル・ドラゴン、ダーク・ホルス・ドラゴン

丸藤亮 LP5200 手札2枚

場 無し

 

 

 

 

 最上級と上級モンスターが三体も並ぶというのは壮観な光景だった。もしも丸藤亮がただの観客ならば素直にこのフィールドを作り上げた吹雪の技量に舌を巻き拍手の一つでもしただろう。

 だが亮は観客ではなく対戦者。

 吹雪のフィールドを突破し、そのそっ首を切り落とさねばならない。

 

(……幸か不幸か吹雪のライフは残り200だ)

 

 後一体。一体だけでもモンスターを戦闘破壊できれば、そのダメージで吹雪のライフに止めを刺す事が出来る。その為には亮もまた吹雪のドラゴン達に対抗できるような最上級モンスターを呼ばなければならない。

 

(俺の手札に今直ぐに吹雪のモンスターを倒せるようなカードはない。となれば)

 

 手札がなければ補充するしかない。

 亮は魔法カードをデュエルディスクの上に置いた。

 

「魔法カード発動、壺の中の魔術書。互いのプレイヤーはデッキから三枚ドローする」

 

 

 

【壺の中の魔術書】

通常魔法カード

互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。

 

 

 吹雪にも手札を補充させてしまう事になるが止むを得ない。なんにしても今は逆転のカードを引く事だ。

 

(……クッ、直ぐに一発逆転とはいかないか。ここは時間を稼ぐしか)

 

「魔法カード発動、光の護封剣」

 

 

 

【光の護封剣】

通常魔法カード

相手フィールド上のモンスターを全て表側表示にする。

このカードは発動後、相手のターンで数えて3ターンの間フィールド上に残り続ける。

このカードがフィールド上に存在する限り、

相手フィールド上のモンスターは攻撃宣言できない。

 

 

 

 亮と吹雪との間に三つの光剣が突き刺さる。この剣が存在する限りは吹雪がどれほど攻撃力の高いモンスターを召喚しようと、その攻撃が亮に通る事はない。

 

「モンスターをセット、ターンエンドだ」

 

「光の護封剣か。また厄介なカードを出してきたものだよ君は。僕のターン、レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンの効果により墓地から真紅眼の黒竜を蘇生、カードを一枚セット。ターンエンド」

 

 取り敢えずは安心だ。

 吹雪が魔法除去カードを引き当てていたら絶体絶命であった。亮の命運は首の皮一枚で繋がった。この一枚を無駄にはしない。

 

「俺のターン、セットしてあったプロト・サイバー・ドラゴンを反転召喚」

 

 

 

【プロト・サイバー・ドラゴン】

光属性 ☆3 機械族

攻撃力1100

守備力600

このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、

カード名を「サイバー・ドラゴン」として扱う。

 

 

 

「このカードはフィールドにいる時、カード名をサイバー・ドラゴンとして扱う。更におれはもう一体のプロト・サイバー・ドラゴンを攻撃表示で召喚。――――――そして魔法カード、融合。手札のサイバー・ドラゴンとフィールドの二体のプロト・サイバー・ドラゴン」

 

 

 

【融合】

通常魔法カード

手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた

融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を

融合デッキから特殊召喚する。

 

 

「フィールドの二体のプロト・サイバー・ドラゴンと手札のサイバー・ドラゴンを融合。吹雪、お前のレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンがお前の切り札だというのなら、俺が信頼する最高のモンスターを見せよう。三体のサイバー・ドラゴンを融合させ、融合デッキよりサイバー流最強モンスター。サイバー・エンド・ドラゴンを融合召喚ッッ!」

 

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

光属性 ☆10 機械族

攻撃力4000

守備力2800

「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 伝説のモンスター、青眼の究極竜にも似た三つ首のドラゴン。しかし胴体を覆うのは鱗ではなく鋼鉄。光り輝く黄色い計三つの双眸。

 サイバー・エンド・ドラゴン。

 丸藤亮が誇る最強最高のモンスターにして亮の魂ともいうべきもの。

 

『ここで丸藤亮! 自身の切り札であるサイバー・エンド・ドラゴンを召喚したぁぁぁぁぁぁぁああぁぁああッッ!! その攻撃力は4000ッ! キング吹雪のフィールドにいるありとあらゆるモンスターを上回ったぞぉぉぉぉぉッッ!!』

 

「サイバー・エンド・ドラゴンでレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを攻撃、エターナル・エヴォリューション・バーストッ!」

 

 サイバー・エンド・ドラゴンの三つの首から巨大なるエネルギーが吐き出された。その威力は数値にして4000。三幻神の一角足るオベリスクの巨神兵と同等の数値である。

 

「この瞬間、リバース罠発動。万能地雷グレイモア!」

 

 

 

【万能地雷グレイモア】

通常罠カード

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。

相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する

攻撃力が一番高いモンスター1体を破壊する。

 

 

 

「サイバー・エンド・ドラゴンは強力なモンスターだ。4000という高い攻撃力に加え貫通能力まである。一撃でも喰らえばそれだけでジ・エンドになりかねない。しかし弱点もある。その一つが魔法・罠に対する耐性が皆無ということだ」

 

 サイバー・エンド・ドラゴンの下にある大地が突如として大爆発する。爆発は攻撃をしている途中のサイバー・エンド・ドラゴンを容易く巻き込み、その体を木端微塵に吹き飛ばした。

 

「俺のサイバー・エンドが、こうもあっさりと」

 

 面倒な手順を踏んで漸くフィールドに解き放ったサイバー・エンド・ドラゴン。それがたった一枚の罠カードによってあっさりと破壊されてしまったという事実が、亮の心にずっしりと重いものを落とした。

 亮にとってサイバー・エンド・ドラゴンはただのモンスターではない。長きにわたるサイバー流道場での過酷な修練。それを乗り越え、免許皆伝の称号を得た時に尊敬する師父より託された正真正銘、丸藤亮の魂というべきカードなのだ。

 

(くっ……分かってはいた! これは俺のミスだ。サイバー・エンド・ドラゴンを無防備にただ出してしまった俺の!)

 

 自分で自分を叱咤する。

 されど既に起きてしまった出来事を改変することは出来ない。人間に過去は変えられない。変えることはできないのだ。

 

「……俺は」

 

 このまま終わってやることは出来ない。無残に散ったサイバー・エンド・ドラゴンの為にも一枚は殺ってみせる。

 

「魔法カード発動、ブラック・コア! 手札を一枚捨てモンスターを一体除外する」

 

 

 

【ブラック・コア】

通常魔法カード

自分の手札を1枚捨てる。

フィールド上の表側表示のモンスター1体をゲームから除外する。

 

 

「ブラック・コア。しかし僕のマテリアルドラゴンは手札を一枚捨てることで破壊効果を無効にできる」

 

「破壊ではない……除外してもらう」

 

「えっ?」

 

 問題はどのカードを除外するかだ。

 レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを除外すれば取り敢えずドラゴン族がノーリスクに展開されるのは防げる。しかし吹雪のフィールドには既に他三体のドラゴン族がいる。今更除外したところで手遅れだろう。となれば。

 

「俺はマテリアルドラゴンを選択し、そのカードをゲームから除外する!」

 

 黒い球体がマテリアルドラゴンを包んでいき、そのまま何処とも知れぬ場所へと消え去った。ブラック・コアに呑み込まれたモンスターは墓地という名の休憩所ではなく、除外という真の墓場へと送られる。レダメの効果も除外されたモンスターは対象外だ。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

「僕のターン、レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンのモンスター効果。手札からもう一体の真紅眼の黒竜を召喚、そして天使の施しを発動。デッキより三枚ドローし二枚捨てる。…………亮、多少残酷だと思いはするけどライフを一気に減らさせて貰うよ。僕は二枚の黒炎弾を発動! 真紅眼の黒竜の元々の攻撃力分のダメージ×2を君に与える」

 

「レッドアイズの攻撃力の二倍は4800……まさか!」

 

「君に4800ダメージだ!」

 

 丸藤亮 LP5200→400

 

 4800ものダメージを一気に受け亮のライフがごっそりと減らされた。

 危ない。もしもパワー・ボンドとマテリアルドラゴンのコンボが成立していなければ今頃ライフが0となり敗北していたところだった。

 

(しかし……なんて危険なカードを。あのカード二枚で先行ワンターンキルも出来るじゃないか)

 

 らしくもなく亮は吹雪の使用したカードを毒づく。しかしライフがいきなり4800も減らされたのだ。文句が言いたくなるのも無理はない。

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

「……俺のターン」

 

「この瞬間、罠カード発動。砂塵の大竜巻! 光の護封剣は破壊だ」

 

「……………」

 

 亮を守っていた護封剣が消失する。

 これでもはや丸藤亮を守護する壁は消え去ってしまった。

 

「どうするんだい? 自身を守る壁モンスターは皆無、光の護封剣も消失」

 

「それはどうかな」

 

「ほう」

 

「実を言うと…………俺も驚いている。まさかこのカードがくるとは。このタイミングで、この状況で! まさかこのカードが来るなどとは予想すらしていなかった。吹雪、サイバー・エンド・ドラゴンが俺の切り札ならばこのカードは俺の裏・切り札!」

 

「裏切り札?」

 

「違う、裏・切り札だ! 区切るのを忘れるなよ」

 

「忠告するけど僕のフィールドに伏せているカードは魔宮の賄賂。オーバー・ロード・フュージョンによるキメラテック・オーバー・ドラゴンの召喚は無意味だよ」

 

「安心しろ。そのカードではない。俺は墓地に眠る全ての光属性モンスターを除外することで手札より特殊召喚! 今こそ降臨せよ、我が朋友より授けられし新たなる力よ!」

 

 

【サイバー・エルタニン】

光属性 ☆10 機械族

攻撃力?

守備力?

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上及び自分の墓地に存在する

機械族・光属性モンスターを全てゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。

このカードの攻撃力・守備力は、このカードの特殊召喚時に

ゲームから除外したモンスターの数×500ポイントになる。

このカードが特殊召喚に成功した時、

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て墓地へ送る。

 

 

 

「俺の除外した光属性モンスターは八体。よってその攻撃力と守備力は4000ポイントッ! そしてこのカードが特殊召喚された時、このカード以外のモンスター全てを墓地送りにする! 消えされぇ、吹雪のモンスター!」

 

「全部墓地!?」

 

「これで邪魔者は消えた! サイバー・エルタニンの直接攻撃、ドラコニス・アセンション!」

 

 天上院吹雪 LP200→0

 

「俺の勝ちだな……吹雪」

 

「…………悔しいけど、僕の…負け、みたいだな」

 

 苦笑しながら吹雪は膝をつく。

 同時、観客席から勝者を称える声援と敗者の健闘をたたえる声援が降り注いだ。


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