宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

182 / 200
第181話  血染メノ華

宍戸丈 LP4000 手札5枚

 

シグナー LP4000 手札5枚

場 無し

 

 

 

『先攻は私だ、ドロー!』

 

 ドローを宣言すると、六枚目の石版がシグナーの周囲に並んだ。

 五千年前に地縛神を操るダークシグナーと戦い、世界を救った五人のシグナー達――――の残滓というべきもの。彼がどんなデュエルをするのかはまったくの未知数だ。

 それでもデッキからドローした際に伝わってきた気迫は、まさしく一線級のデュエリストのそれである。丈はパラドックス、ダークネス、バクラ達と戦った時と同等の緊張感に心を痺れさせながら、シグナーの化身のプレイングに集中する。

 

『手札よりモンスターカード、エクリプス・ワイバーンを召喚する。さらにリバースカードを二枚伏せ、ターンエンドだ』

 

 

【エクリプス・ワイバーン】

光属性 ☆4 ドラゴン族

攻撃力1600

守備力1000

このカードが墓地へ送られた場合、デッキから光属性または闇属性の

ドラゴン族・レベル7以上のモンスター1体をゲームから除外する。

その後、墓地のこのカードがゲームから除外された場合、

このカードの効果で除外したモンスターを手札に加える事ができる。

 

 

 赤き竜の痣を持つ者だからか、シグナーの化身が最初に召喚したモンスターはドラゴン族のエクリプス・ワイバーン。

 石版から抜け出してくるようにモンスターが実体化する様は不気味だったが、モンスターそのものは一般にも流通しているものだった。丈の知り合いの中では吹雪が同じカードをデッキに投入していたと記憶している。

 だがホプキンス教授の学説を信じるのならば、まず間違いなくシグナーは自身のデッキに『シグナーの竜』の転生体たるモンスターを投入しているはずだ。油断はできない。

 

「俺のターン、ドロー。カードガンナーを召喚する。カードガンナーの効果、デッキトップから三枚までカードを墓地へ送り、送った枚数×300ポイント攻撃力をアップする。俺は三枚のカードを墓地へ送る!

 効果によりカードガンナーの攻撃力は1900となった。バトルフェイズ! カードガンナーでエクリプス・ワイバーンを攻撃する!」

 

 シグナーLP4000→3700

 

 自分のモンスターが破壊されても、シグナーは顔色一つ変えることはなかった。

 そして予想通りと言うように、淡々とエクリプス・ワイバーンの効果を宣言する。

 

『エクリプス・ワイバーンのモンスター効果。このカードが墓地に送られた場合、光属性か闇属性のドラゴン族レベル7以上のモンスターをゲームより除外する。私が除外するのはレベル8の闇属性モンスター、トライホーン・ドラゴン』

 

「バトルを終了。リバースカードを三枚伏せ、ターンエンド」

 

『エンドフェイズ時、針虫の巣窟を発動。デッキトップから五枚のカードを墓地へ送る。私のターン、ドロー。このカードは墓地の光属性モンスター1体を除外することで特殊召喚できる。私はエクリプス・ワイバーンをゲームより除外し、暗黒竜コラプサーペントを特殊召喚』

 

 

【暗黒竜 コラプサーペント】

闇属性 ☆4 ドラゴン族

攻撃力1800

守備力1700

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地から光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。

この方法による「暗黒竜 コラプサーペント」の特殊召喚は

1ターンに1度しかできない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「輝白竜 ワイバースター」1体を手札に加える。

 

 

 コラプサーペントの登場に、丈は厳しい表情を浮かべた。正しくは暗黒竜コラプサーペントそのものではなく、コラプサーペントの召喚のために除外されたエクリプス・ワイバーンに対して。

 エクリプス・ワイバーンは墓地へ送られることでデッキよりドラゴン族モンスターを除外するという、下手すればデメリットにすらなりかねない特殊能力をもっているが、その効果には続きがあるのだ。

 

『この瞬間、エクリプス・ワイバーンの効果が発動。エクリプス・ワイバーンがゲームより除外された時、このカードの効果で除外されたカードを手札に加える。私はトライホーン・ドラゴンを手札に加える』

 

「実質手札消費なしでの特殊召喚、いやコラプサーペントの効果を考えれば、むしろ――――」

 

『魔法発動、トレード・イン。手札からレベル8モンスターを捨て、二枚カードをドロー。私はトライホーン・ドラゴンを捨てて二枚ドローする。さて。どうやら私の用意は整ったようだ』

 

「……! 仕掛けてくるかっ!」

 

『私は手札よりこのモンスターを召喚する。チューナーモンスター、インフルーエンス・ドラゴン!』

 

「チューナーだと!?」

 

 

【インフルーエンス・ドラゴン】

風属性 ☆3 ドラゴン族 チューナー

攻撃力300

守備力900

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する

モンスター1体を選択して発動する事ができる。

選択したモンスターはエンドフェイズ時までドラゴン族になる。

 

 

 つい数日前に不動博士とデュエルをしたのだ。チューナーという言葉を聞き間違えるはずがない。

 シンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚に必要不可欠なチューナーモンスター。それを召喚してきたということは、シグナーの狙いはおのずと見えてくる。

 コラプサーペントとインフルーエンス・ドラゴン、レベルの合計は7。

 

『インフルーエンス・ドラゴンは自分フィールドのモンスター1体をドラゴン族にする効果をもっているが、この場においては関係ない。

 いくぞ、純黒の王よ。眼に焼き付けよ、五千年の時を経ても黄金色に輝き続ける我等シグナーの絆の力を! 私はレベル4、暗黒竜コラプサーペントにレベル3、インフルーエンス・ドラゴンをチューニング!』

 

 ☆4 + ☆3 = ☆7

 

 加速する、デュエルは終わりなき果てを目指し加速する。

 暗黒と風、二体のドラゴンが光輪に吸い込まれ力を同調。新たなモンスターへと新生していった。

 

『冷たい炎が、世界の全てを包み込む。漆黒の華よ、開け!』

 

 奈落の底にて咲き誇るは魔性の薔薇。美しくも恐ろしい、触れれば絶対零度の焔に、魂を犯し尽されてしまう血薔薇(ブラックローズ)だ。

 

『――シンクロ召喚。現れよ、ブラック・ローズ・ドラゴン!』

 

 

【ブラック・ローズ・ドラゴン】

炎属性 ☆7 ドラゴン族

攻撃力2400

守備力1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、フィールド上のカードを全て破壊できる。

また、1ターンに1度、自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外して発動できる。

相手フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して表側攻撃表示にし、

エンドフェイズ時までその攻撃力を0にする。

 

 

 生きとし生ける者、森羅万象一切合財を滅ぼすべく薔薇の竜がここに降臨した。風など吹くはずもない奈落の底に、肝を凍てつかせる冷風が吹き荒れる。

 危険でありながら、どこか甘く切ない。愛憎は表裏一体。深く憎むからこそ、深く愛している。愛しているからこそ、全てを奪い壊さなければ気が済まない。ある意味では最も情熱的な愛の具現。

 丈はここに確信した。このドラゴンは遊星のスターダスト・ドラゴンと起源を同じくするもの。シグナーの五竜で間違いないと。

 

「薔薇でありながら象徴する属性は華を焼き尽くす〝炎〟。自らを滅ぼすものを象徴するという矛盾。統一性の剥離こそが愛の一側面ということか」

 

『コラプサーペントが墓地へ送られたことで効果発動。デッキより輝白竜 ワイバースターをサーチする。ブラック・ローズ・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した瞬間、私はブラック・ローズ・ドラゴンの効果を発動する。ブラック・ローズ・ドラゴンを含めたフィールドの全てのカード、それらを破壊する! ブラック・ローズ・ガイル!』

 

「最終戦争や邪神イレイザーと同じリセット効果……! だがただではやられん。カードガンナーの効果、こいつが破壊されたことで一枚カードをドローする」

 

 激しい愛の行きつく先は自分すら含めた全ての死。冷酷なる真実を告げるが如く、ブラック・ローズ・ドラゴンが全てのカードを消し去っていく。

 ブラック・ローズ・ドラゴンが召喚された後、残るものはなにもない。そのはずだったのだ。だがシグナーの化身はその先をいった。

 

『言うまでもないがブラック・ローズ・ドラゴンの効果は私の伏せていたリバースカードも破壊する。しかしこの瞬間、私の伏せていた黄金の邪神象の効果が発動する。

 セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分フィールドに邪神トークンを特殊召喚する。現れよ、邪神トークン』

 

 

【黄金の邪神像】

通常罠カード

セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、

自分フィールド上に「邪神トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守1000)1体を

特殊召喚する。

 

 

 仲間の竜がフィールドをリセットしても、トークンを場に残す。これがシグナーの化身なりの絆の表現の一つなのだろう。なんとも不器用なやり方だった。

 そしてシグナーの手札にはまだコラプサーペントの効果でサーチしたモンスターがいる。

 

『墓地の暗黒竜コラプサーペントをゲームより除外、輝白竜 ワイバースターを特殊召喚する』

 

 

【輝白竜 ワイバースター】

光属性 ☆4 ドラゴン族

攻撃力1700

守備力1800

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地から闇属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。

この方法による「輝白竜 ワイバースター」の特殊召喚は

1ターンに1度しかできない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「暗黒竜 コラプサーペント」1体を手札に加える。

 

 

 シンクロ素材として墓地へ送られても、後続の特殊召喚モンスターを手札に持ってくる。シンクロ召喚を主軸するデッキにとって、これほど便利なカードはそうはないだろう。

 しかもこうしてブラック・ローズ・ドラゴンで場をリセットしてから、直ぐに追撃にかかれもするのだから。

 

『バトル。邪神トークンとワイバースターでダイレクトアタック!』

 

「ちぃ!」

 

 宍戸丈LP4000→1300

 

 一気にライフポイントの半分以上をもっていかれて丈は顔を歪める。

 二体のモンスターの攻撃がライフポイントと一緒に削っていったのは丈の生命力。予想は出来ていたが、これもやはり敗者が命を奪われる闇のゲームなのだろう。

 

『バトルフェイズを終了。私はこのままターンエンドだ』

 




 もう直ぐ……というか明日はARC-Vの放送日ですが、まさかの敗北を喫した黒咲さんはどうなってしまうのか。にしても黒咲さんの故郷のハートランドがもしもZEXALのハートランドだとしたら、融合次元はシャイニングドローの海老とかナッシュさん率いる七皇の皆さんとか時を止めるカイトのいる世界をどうやって滅ぼしたんでしょうね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。