宍戸丈 LP3000 手札4枚
場 黒焔トークン×2
伏せ 無し
魔法 無し
万丈目 LP3000 手札3枚
場 アームド・ドラゴンLV7、おジャマキング
伏せ 三枚
おジャマキングの能力で、宍戸丈はモンスターカードゾーンを二か所しか使用することが出来なくなっている。よって二体の黒焔トークンが場に存在する現状、トークンを廃除しない限り丈が三体目を呼び出すことは不可能だ。
ただし黒焔トークンはあくまで生け贄のためのもの。このターン中に確実に最上級モンスターを呼び出してくるだろう。
万丈目の伏せカードにそれを妨害できるカードはない。
「俺のターン、ドロー。手札より魔法発動、ナイト・ショット。相手フィールドのリバースカード一枚を破壊する。これに対して相手はリバースカードの発動が出来ない」
「チッ……だがこれくらいは必要経費だ」
破壊されたリバースカードは融合解除。おジャマキングがやられる場合の保険ではあるが、それほど惜しいカードではない。
けれど宍戸丈がこの程度で攻めの手を緩めるはずもなく、猛攻は更に続いた。
「続いて魔法カード、ブラックホール。フィールドのモンスター全てを破壊する!」
「な、なにぃ!?」
これを通してしまえば苦労して呼び出したおジャマキングとアームド・ドラゴンLV7は二体揃ってお手て繋いで地獄逝き。そうなれば万丈目は一気に不利になる。
ブラックホール、このカードばかりは通すわけにはいかなかった。
「カウンター罠、マジック・ジャマー! 手札を一枚捨て魔法カードを無効にする!」
「そうだ、お前は戦線維持のためそうせざるを得ない。だがこれで俺もなんの躊躇いなくこれを使えるというものだ。永続魔法、冥界の宝札!」
【冥界の宝札】
永続魔法カード
2体以上の生け贄を必要とする生け贄召喚に成功した時、
デッキからカードを2枚ドローする。
冥界軸最上級多用における最大最強のドローエンジン。ブラックホールもナイト・ショットも、全てはコレを確実に発動させるためのものに過ぎなかった。
ナイト・ショットはまだしも、制限カードで切り札たりうるブラックホールまで囮にするあたり、丈のデッキにとって『冥界の宝札』の重要性は相当のものなのだろう。
「俺は闇属性モンスター、黒焔トークン二体を生け贄に最上級の帝王を召喚する。怨念に身を焼きし邪悪なる帝王よ、世界に滅びを齎すがいい。怨邪帝ガイウス、降臨せよ!」
【怨邪帝ガイウス】
闇属性 ☆8 悪魔族
攻撃力2800
守備力1000
このカードは生け贄召喚したモンスター1体を生け贄にして生け贄召喚できる。
(1):このカードが生け贄召喚に成功した場合、
フィールドのカード1枚を対象として発動する。
そのカードを除外し、相手に1000ダメージを与える。
除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、
そのコントローラーの手札・デッキ・エクストラデッキ・墓地から同名カードを全て除外する。
このカードが闇属性モンスターを生け贄にして生け贄召喚に成功した場合、
その時の効果に以下の効果を加える。
●この効果の対象を2枚にできる。
暗闇を溶かし込んだような黒い甲冑。闇の中で鋭く光る紅の双眸。波のように闇色の外套をはためかせ、それは舞い降りた。
現役時代の〝暴帝〟が愛用したことでも知られる帝モンスター。その中でも最強とされる邪帝ガイウスの最上位種――――怨邪帝ガイウス。
ソリッドビジョンでただの幻に過ぎないと理解していても、夥しい怨念が伝わってくるようだった。
「冥界の宝札の効果で二枚ドロー。怨邪帝ガイウスの特殊能力、こいつが生け贄召喚に成功した時、フィールドのカード一枚を除外し、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える。更にこいつが闇属性モンスターの生け贄で生け贄召喚された場合、効果の対象は二体となる」
「なんだと!?」
正しく邪帝ガイウスの上位種だ。あらゆる特殊能力が通常のガイウスよりも格段に強化されている。
「おジャマキングとアームド・ドラゴンには退場願おう。やれ、ガイウス。デス・ヘイト・リジェクター!」
怨邪帝ガイウスの放った黒いブラックホール染みた球体がおジャマキングとアームド・ドラゴンを呑み込んでいく。
破壊とは異なる問答無用の除外。二体のモンスターにこれに抗う術はなかった。
「くそっ!」
万丈目LP3000→2000
ライフも2000ポイントまで削られてしまった。除外されるカードが増えても、ダメージまで増えないのは不幸中の幸いだが、4000ポイントのライフで1000ポイントは痛い。
「バトルだ。怨邪帝ガイウスでクリッターに攻撃。デス・ヘイト・アヴェスター!」
「……クリッターが墓地へ送られたことで効果発動。仮面竜を手札に加える」
「バトルフェイズを終了。リバースカードを二枚セット、ターンエンドだ」
「くっ……!」
おジャマキングとアームド・ドラゴンを揃え、場には三枚のリバースカード。誰がどう見ても万丈目有利の戦況だっただろう。
だがあれだけ有利なフィールドを作り上げたのに、過ぎ去って見れば僅か1ターンであっさり形勢を逆転されてしまった。こうまで見事にしてやられると怒りすら湧いてこない。
これがデュエル・アカデミア史上最強と謳われた四天王の実力。あの『伝説の三人』にも届き得ると称された怪物達の強さだ。
「だからこそ俺が超える価値がある! 俺のターンだ、ドロー!」
そのためには手始めに怨邪帝ガイウスを倒して、おジャマキングとアームド・ドラゴンの仇をとる。
「速攻魔法、異次元からの埋葬。除外されているおジャマキングとアームド・ドラゴンLV7を墓地へ戻す!
更に貪欲な壺を発動、墓地のおジャマ・ブラック、おジャマ・グリーン、おジャマキング、アームド・ドラゴンLV3とLV7をデッキへ戻しシャッフル。カードを二枚ドローする。
罠発動、リビングデッドの呼び声。墓地のアームド・ドラゴンLV5を復活!」
デッキへLV7を戻し、場にはLV5。準備はこれで整った。ここからは万丈目サンダーによる逆転のターンである。
「魔法カード、レベルアップ! アームド・ドラゴンLV5をレベルアップさせ、召喚条件を無視してLV7を手札またはデッキより特殊召喚。再び来い、アームド・ドラゴンLV7!」
【レベルアップ!】
通常魔法カード
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つ
モンスター1体を墓地へ送り発動する。
そのカードに記されているモンスターを、
召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。
【アームド・ドラゴンLV7】
風属性 ☆7 ドラゴン族
攻撃力2800
守備力1000
「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
手札からモンスター1体を墓地へ送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
アームド・ドラゴンLV7と怨邪帝ガイウスの攻撃力は互角。このまま攻撃といきたいところであるが、このままでは相討ちにしかならない。
相討ちも一つの戦法ではあるが、宍戸丈相手にがら空きのフィールドのままターンを譲るのは下策だ。
「マジック・プランターを発動。リビングデッドの呼び声を墓地へ送り、カードを二枚ドローする」
【マジック・プランター】
通常魔法カード
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
デッキからカードを2枚ドローする。
リビングデッドの呼び声が破壊されるのは、蘇生したモンスターが『破壊』された時だけ。生け贄にされたり、破壊されずに墓地へ送られた時はそのまま意味もなく残り続ける。
しかしそんな役に立たない永続罠を残してやるほど万丈目は優しくはなかった。役に立たなくなったのならば、魔法を発動させる燃料として利用するまでである。
「――――ふふっ。どうやらツキは俺の味方のようだぜ、宍戸さん」
「……ほう」
「アームド・ドラゴンLV7を生け贄に、アームド・ドラゴンLV10を特殊召喚!」
【アームド・ドラゴンLV10】
風属性 ☆10 ドラゴン族
攻撃力3000
守備力2000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在する「アームド・ドラゴン LV7」1体を
生け贄にした場合のみ特殊召喚する事ができる。
手札を1枚墓地へ送る事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
アームド・ドラゴンの最終進化系。神に等しいレベルをもち、伝説の白き龍と同等の攻撃値をもつドラゴンが現れた。
ここまで進化したアームド・ドラゴンの特殊能力には、それまでにはあった煩わしい制限などはありはしない。
「LV10のモンスター効果、手札を一枚墓地へ送り相手フィールド上の表側表示カードを全て破壊する。消滅しろ、怨邪帝ガイウス! ジェノサイド・ビッグ・カッター!」
風のカッターが怨邪帝ガイウスをバラバラに切り刻む。アームド・ドラゴンをやられた仇は、アームド・ドラゴン自身の手で晴らした。
これでフィールドはがら空き。相手ライフは3000、アームド・ドラゴンLV10の攻撃力も3000。
「俺の勝ちだ! アームド・ドラゴンLV10でプレイヤーをダイレクトアタック! アームド・ビッグ・パニッシャー!」
「……罠発動。ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にして一枚ドロー」
必殺を誓って繰り出した一撃は、一枚のリバースカードによりあっさりと防がれた。
怨邪帝を消し去ることはできたが、肝心の丈のライフは無傷。この結果に万丈目は思わず舌打ちした。
「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ」
「エンドフェイズ時、メタル・リフレクト・スライムを発動」