「「デュエル!」」
特待生寮の秘密地下室で誰に知られることもなく、吹雪と藤原のデュエルが始まった。
吹雪はらしくもなく追い詰められた表情で藤原優介というデュエリストに視線を送る。憮然とした藤原からはどことなく余裕のようなものが感じられた。
デュエルディスクが示した先攻デュエリストは吹雪。
はっきりいって有り難かった。いつもの藤原も強敵だというのに、今の藤原は底知れぬ力をもっている。先攻を譲ってしまっては何も出来ないままやられてしまう恐れすらあった。
だがこちらが先攻なら相手にターンを譲る前に場を整えることは出来る。
「僕の先攻、ドロー」
デッキが応えてくれたのか手札にはそれなりに良いカードが揃っている。この手札ならそう安々と負けはしないだろう。
相手が天帝と謳われるほどに才能溢れたデュエリストでも遅れをとりはしないはずだ。
「手札より永続魔法発動、未来融合-フューチャーフュージョン! 融合デッキの融合モンスターを一体選択。デッキより融合素材に指定されたモンスターを墓地へ送り、2ターン後のスタンバイフェイズ時に選択したモンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。
僕が融合デッキより選ぶカードはF・G・Dだ。僕はミンゲイドラゴン、真紅眼の飛竜、真紅眼の黒竜、ライトパルサー・ドラゴン、ボマー・ドラゴンを墓地へ送るよ」
「いきなりやってくれるじゃないか吹雪」
「………………」
吹雪のデッキは墓地にドラゴン族がいればいるほどに力を増していくデッキだ。それ故にいきなり五体ものドラゴン族モンスターを墓地へ送ることが出来たのは大きなメリットである。
いや吹雪のデッキからすれば最上の立ち上がりと言って良い程だ。だというのにやはり藤原の余裕は微塵も崩れる様子がない。
「僕はカードを一枚伏せターンエンド。そしてエンドフェイズ時、墓地の真紅眼の飛竜のモンスター効果発動。通常召喚を行っていないターンのエンドフェイズ時、このカードを除外することでレッドアイズと名のつくモンスターを墓地より復活させる!
墓地に眠る真紅眼の黒竜を攻撃表示で特殊召喚!」
【真紅眼の黒竜】
闇属性 ☆7 ドラゴン族
攻撃力2400
守備力2000
真紅の眼を持つ黒竜。怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす。
墓地から黒い影が飛び出して、デッキのエースカードであるレッドアイズのカードがフィールドに翼を広げて降り立った。
真紅の眼光が藤原の体を貫く。
「レッドアイズのお出ましか。属性は〝闇〟だったか……? 哀れなものだな、如何にレッドアイズといえど属性なんてものがあるからこそ多くに縛られる」
「なに?」
「教えてやるよ吹雪。多くを持つというのは多くの柵を受けること。強い力とは強い制約を受けてしまうもの。レッドアイズもその運命に抗うことはできない!
俺のターンだ、カードをドローする。……ククッ。お前にも見せてやろう。この下らない世界で『己』という存在に特定の個性という名の色を宿そうとする愚かさと空しさを」
藤原が手札から一枚のカードを抜くと、それをデュエルディスクのフィールド魔法ゾーンに置いた。
「フィールド魔法発動、無色なる世界。クリアー・ワールド!」
【クリアー・ワールド】
フィールド魔法カード
自分フィールド上に存在するモンスターの属性によって、そのモンスターをコントロールするプレイヤーは以下の効果を得る。
●光属性:手札を公開し続けなければならない。
●闇属性:攻撃宣言を行えない。
●地属性:1ターンに1度、自分フィールド上のモンスター1体を破壊する。
●水属性:エンドフェイズに手札を1枚捨てる。
●炎属性:エンドフェイズに1000ポイントのダメージを受ける。
●風属性:魔法カードを発動できない。
フィールド魔法が発動すると大抵は周りの風景が一変するものだ〝森〟のフィールド魔法なら辺り一面が森に、〝海〟ならば辺り一面が海になるといった具合に。だがクリアー・ワールドはそんなものとは次元が違っていた。周囲の風景がどこか現実感のない透明的な空間になるだけではなく、天上院吹雪という一人の人間を真っ黒に塗り潰そうとする嫌なプレッシャーが全身に降りかかってきた。
「ぐっ……! なんだそのフィールド魔法は、見た事がない」
「ふふふふふふふっ。それはそうさ。これがダークネスと契約した俺が手に入れた力なんだからな。まだダークネスを受け入れないお前の為に説明してやろう。
クリアー・ワールド、このカードは自分がコントロールするモンスターの属性によってプレイヤーは其々異なるネガティブ・エフェクトを受ける」
「属性によって変わる効果だって!?」
「そうだ。自分フィールドにいるモンスターが光属性ならば手札を公開し続けなければならず、闇属性ならば攻撃宣言を封じられ、地属性であれば一ターンに一度だけ自分モンスターを破壊しなくてはならず、水属性ならエンドフェイズ時に手札を一枚捨て、炎属性ならエンドフェイズに1000ポイントのダメージ、風属性なら魔法カードを発動できない」
一番軽いのは手札を公開し続けるだけで実害のない光属性のネガティブ・エフェクトだろう。だがそれにしても多くの情報アドバンテージを相手に与えることになる。
吹雪のデッキのモンスターは殆どが光属性と闇属性のドラゴン族モンスター。特に闇属性が多いが……闇属性のネガティブ・エフェクトがこれがまた面倒だ。なにせ攻撃宣言そのものを封じられては相手を倒すことが出来ない。
レッドアイズは闇属性モンスター。高い攻撃力もクリアー・ワールドが存在し続ける限り意味をなさないということだ。
「……どれも重いね、クリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトは。そのカードがある限り多くの属性のモンスターを並べれば並べるほど不利になっていく。
こんなんじゃ真っ当にデュエルをすることだって出来やしない。モンスターの展開という基礎に制限を設けられるわけだからね。だが藤原、それは君だって同じだ」
「何が言いたい?」
「クリアー・ワールドはフィールド魔法。よってその効果は藤原、君にも有効なんだよ。これがデュエルである以上、僕を倒す為にはモンスターを召喚しなければならない。それとも君のデッキにはモンスターカードが一枚も入ってないのかい?、
「ヒ……ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 吹雪ィ~! お前はそんなことを愚かにも! 愚図にも! 間抜けにも! 考えていたのかぁ~? だとしたら甘い。お前の頭はゴミ以下だ!!」
「な、なんだと!?」
「さっきから何度も言っただろう。個性を持つ事の愚かさと無意味さを。個性があるからこそ制限を強いられるというのならそんなもの僕は要らないねぇ!
未だに個性に執着するお前に拝ませてやる。これが……個性をなくし、ダークネスを受け入れた先にある力だ! 僕はクリアー・ファントムを攻撃表示で召喚!」
【クリアー・ファントム】
闇属性 ☆4 悪魔族
攻撃力1200
守備力800
このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、闇属性として扱わない。
攻撃表示のこのカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、相手モンスター1体を破壊して墓地へ送る。
その後、相手のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。
藤原の前に薄透明のクリスタルに全身をすっぽりと包み隠した
カードに示された属性は闇。よって藤原は『攻撃宣言ができない』というネガティブ・エフェクトを受ける事となる。
「ククククッ。クリアー・ファントムの攻撃力は1200。レッドアイズとの攻撃力は1200も離れている。しかしお前のレッドアイズには在って、俺のクリアー・ファントムに無いもの! それこそが勝敗を左右する。
吹雪、貴様は真理を悟るだろう。俺は装備魔法、アトリビュート・マスタリーをクリアー・ファントムに装備!」
【アトリビュート・マスタリー】
装備魔法カード
装備時に属性を1つ指定する。
装備モンスターは指定した属性のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずに戦闘する相手モンスターを破壊する。
「このカードは装備時に属性を一つ指定する。そして装備モンスターが指定した属性のモンスターとバトルを行う場合、ダメージ計算を行わずに戦闘する相手モンスターを破壊する。
俺が選択するのは真紅眼の黒竜と同じ闇属性だ。これでクリアー・ファントムは闇属性モンスターとの戦闘において無敵の強さをもった!」
「だ、だがクリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトがある! 闇属性のクリアー・ファントムが君のフィールドにいる限り君は攻撃できないはずだ」
「それはどうかな。バトルフェイズ、クリアー・ファントム! 真紅眼の黒竜を葬り去れ! クリーン・ナイトメア!」
透明なクリスタルから手を出したクリアー・ファントムが真紅眼の黒竜を不可視の波動で押し潰し破壊した。
ダメージ計算を行わなかったため吹雪に戦闘ダメージはない。だがモンスターが破壊された苦痛がそのまま吹雪を襲った。
「ぐ、がっ……こ、この痛みはやはり闇のゲームっ! だがどうして攻撃できたんだ……。クリアー・ファントムは闇属性のはずなのに」
「まだ分からないのか? クリアー・ファントム。こいつはフィールドに存在する限り闇属性としては扱わない。つまりこいつには元から属性なんてものがないのさ。
属性なんて……『個性』なんてないからクリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトも受けない。お前の愚かなるモンスターたちと俺のモンスターは違うんだよ」
「……ッ!」
確かに属性が無いならば、属性によってネガティブ・エフェクトを与えるクリアー・ワールドの効果を受けないのも道理というものだ。
これが藤原が手にした新しいカード。無色なる力、クリアー。クリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトで相手を苦しめ、自分は属性のないクリアー・モンスターで攻撃する。
ロックと攻撃を両立した恐るべきデッキだ。
「俺はカードを一枚伏せる。俺のターンはこれで終了だ。さぁ吹雪、お前のターンだ」
「僕のターン……」
真紅眼の黒竜は僅か1ターンで破壊されてしまった。しかし逆に考えればこれはチャンスだ。
闇属性のレッドアイズがいなくなったお蔭で吹雪は『攻撃宣言が出来ない』というネガティブ・エフェクトから逃れる事が出来ている。
ここは攻撃する絶好のチャンスだ。
「竜の霊廟を発動。デッキよりメテオ・ドラゴンを墓地へ送る。そして墓地へ送ったのがドラゴン族通常モンスターだった場合、更にもう一枚のカードを墓地へ送ることができる。僕はマテリアルドラゴンを追加で墓地へ送るよ。
更にカードを一枚伏せ、手札のアックス・ドラゴニュートとアレキサンドライドラゴンを墓地へ送り、墓地に眠るライトパルサー・ドラゴンをその効果により特殊召喚する!」
【ライトパルサー・ドラゴン】
光属性 ☆6 ドラゴン族
攻撃力2500
守備力1500
このカードは自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを
1体ずつゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
また、手札の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ墓地へ送り、
このカードを自分の墓地から特殊召喚できる。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分の墓地のドラゴン族・闇属性・レベル5以上の
モンスター1体を選択して特殊召喚できる。
地球上のものとは思えない鱗に覆われたドラゴンが光と闇、二つの力を受けて轟臨した。
ライトパルサー・ドラゴンの属性は光。攻撃宣言が出来ないというネガティブ・エフェクトは発動しない。
「クリアー・ワールドの効果だ。手札を公開して貰うぞ吹雪」
「……分かっているさ。ほら」
手札に残った黒竜の雛のカードを公開する。情報アドバンテージにはかわりないがたった一枚のモンスターカードを晒すくらいなら大した事はない。許容範囲内のことだ。
「バトルだ。ライトパルサー・ドラゴンでクリアー・ファントムを攻撃、ライトニング・カオス・ストーム!」
ライトパルサー・ドラゴンの吐き出したブレスがクリアー・ファントムを襲う。
装備魔法の力で闇属性相手には無敵となったクリアー・ファントムも光属性モンスターの攻撃には無力だ。あっさりと破壊される。
「リバース発動、ガード・ブロック。俺の戦闘ダメージを一度だけ0にしてカードを一枚ドローする。そしてクリアー・ファントムのモンスター効果、こいつが戦闘で破壊された時、相手モンスターを一体破壊する。失せろライトパルサー・ドラゴン」
「ならライトパルサー・ドラゴンのモンスター効果発動! このカードが場を離れる時、墓地よりレベル5以上の闇属性ドラゴン族モンスターを復活させる。
甦れ真紅眼の黒竜! ……そう簡単にライフを削らせてはくれないか。ターンエンド」
最初のクリアー・モンスターを破壊し、レッドアイズを復活することは出来たが……油断は出来ない。
藤原はデッキのエースとなる上級モンスターを一枚たりとも召喚してないのだ。本当の勝負は寧ろここからだろう。
「俺のターンだ。ドロー」
藤原の場にはモンスターがいない。対してこちらのフィールドには攻撃力2400の真紅眼の黒竜が一体。
如何に藤原といえどこれを簡単に突破することは出来ない筈だ。果たしてどうくるか。
「速攻魔法、サイクロンを発動。吹雪、お前がさっき伏せたリバースカードを破壊する」
「……ミラーフォースが」
強力な攻撃誘発、場合によってはこれ一枚で形勢を引っ繰り返すほどの力をもったミラーフォースもサイクロンの標的にされては為す術もない。
デュエルモンスターズにおける防御カードの代名詞ともいえるカードはあっさりと破壊された。
「ククククッ。俺はモンスターとリバースカードを其々一枚伏せる。ターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー! このスタンバイフェイズ時、未来融合の効果により融合デッキよりF・G・Dが融合召喚扱いで特殊召喚される!」
【F・G・D】
闇属性 ☆12 ドラゴン族
攻撃力5000
守備力5000
ドラゴン族モンスター×5
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードは闇・地・水・炎・風属性モンスターとの戦闘では破壊されない。
時間を超えて五体のドラゴンを融合素材にフィールドに降り立つFGD。デュエルモンスターズにおいて単純な攻撃力ならオベリスクの巨神兵などの4000を超える大型モンスターだ。
しかし攻撃力5000のモンスターを前にしても藤原はまるで動じない。
「忘れていないだろうな。FGDは闇属性、よってお前は攻撃宣言を行えないネガティブ・エフェクトを受ける。ご自慢の攻撃力も攻撃できなければ形無しだな。え? 吹雪」
「元より真紅眼の黒竜がいる時点でそれは同じだ。僕のデッキの性質上クリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトを逃れつつ戦うことは不可能に近い。しかし召喚する属性を統一すれば、犠牲は最小限で済む。ターンエンドだ」
その時、藤原が心底見下したように嘲笑った。まるでごみ溜めにある空き缶を見下ろすかのような視線に背筋が凍りつく。
「クッ、アーハハハハハハハハハハハッ!! 属性を統一すれば受けるネガティブ・エフェクトも一つで済むだって? 甘いんだよ、そんなチープでノロマな考えでお前は俺の前に立ち塞がっていたのか!
だったら改めてお前に教えてあげるよ。俺はお前のエンドフェイズ時、リバースカードを発動する。永続罠、属性変化-アトリビュート・カメレオン!」
【属性変化-アトリビュート・カメレオン】
永続罠カード
相手ターン中に1度、相手モンスター1体を選択して属性を宣言する事が出来る。
選択したモンスター1体の属性はこのターンのエンドフェイズまで宣言した属性になる。
カード名通りカメレオンのイラストが描かれた永続罠が発動する。
心臓が早鐘を告げた。属性変化、というカード名に記された四文字が示す効果とはつまり。
「アトリビュート・カメレオン。このカードは相手ターンに一度、相手モンスターの属性を俺が選ぶ属性に変更することができる永続罠カード。
分かるか吹雪。つまり俺はお前が受けるネガティブ・エフェクトを俺の思うが儘にすることが出来るんだよ。俺はFGDを選択、その属性を闇属性から地属性に変更!」
「地属性……そのネガティブ・エフェクトは『自分のモンスターを一体破壊』する……」
「その通りだ。クリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトによりお前はフィールドにいるFGDがレッドアイズか、どちらかを墓地へ送らなければならない!」
「……っ!」
FGDと真紅眼の黒竜の二体を見比べる。FGDは攻撃力は5000と非常に高いが、未来融合がフィールドから消えれば道ずれに破壊されてしまう弱点がある。対して真紅眼の黒竜はそんなデメリットはない。
FGDにある光属性以外のモンスターとのバトルで破壊されないという効果も属性がないクリアー・モンスター相手には無意味だ。
しかしFGDは融合召喚以外で特殊召喚することのできないモンスターだ。墓地へ送ってしまえば蘇生はできない。だが真紅眼の黒竜はドラゴン族通常モンスター。蘇生手段は幾らでもある。
「僕は、真紅眼の黒竜を墓地へ送る」
「俺のターン! FGDを残した、か。だが吹雪、幾ら攻撃力が高かろうと属性なんて個性があるうちは意味なんてないんだよ!
手札よりクリアー・レイジ・ゴーレムを攻撃表示で召喚する」
【クリアー・レイジ・ゴーレム】
闇属性 ☆4 岩石族
攻撃力1800
守備力1600
このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、闇属性として扱わない。
このカードが直接攻撃に成功し相手にダメージを与えた時、相手の手札1枚につき300ポイントのダメージを相手に与える。
クリアー・ファントムと同じ薄透明の
レベル4で攻撃力は1800。下級モンスターで効果もちとしてはそれなりのラインだ。当然、クリアー・モンスターで属性は無いためクリアー・ワールドのネガティブ・エフェクトも受けない。
「そして二枚目のアトリビュート・マスタリーを発動し、クリアー・レイジ・ゴーレムに装備。この装備魔法の効果は覚えているな。装備時、属性を一つ選択し装備モンスターが選択した属性のモンスターと戦闘する時、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊する。
俺が選ぶのは闇属性だ。よってクリアー・レイジ・ゴーレムは闇属性モンスターとの戦闘において無敵の力を獲得した」
最初にクリアー・ファントムにやられたのと同じことだが、状況は更に悪い。
今度は最初のように闇属性以外のモンスターでクリアー・レイジ・ゴーレムを破壊しようとしても属性変化-アトリビュート・カメレオンにより属性を変更されてしまえば攻撃宣言を封じられ、最悪の場合は自滅特攻になりかねない。
藤原を倒すのにはクリアー・ワールドか属性変化-アトリビュート・カメレオンのどちらかを消し去る必要がある。
「バトル。クリアー・レイジ・ゴーレムでFGDを攻撃、クリアー・ロック・パウンド!」
クリアー・レイジ・ゴーレムがクリスタルからその身を出すと、FGDに痛烈な一撃を与え撃破する。やはりダメージはないが、かわりに身を切る苦痛が吹雪を襲った。
最初といいやはり攻撃するその瞬間のみクリアー・モンスターはあの結晶から体を出すらしい。
「俺はターンエンドだ。お前のターンだ吹雪」
「僕のターン、ドロー。リバースカードを一枚伏せる。ターンエンドだ」
「へぇ。モンスターすら召喚せずにターンエンドとはねぇ。確かにクリアー・ワールドは場にモンスターがいなければ意味はない。モンスターを召喚しなければネガティブ・エフェクトもない。
だけどさ。そんな消極的なターンで俺を倒そうなんて随分とロマンチストなんだねぇ吹雪! 言っておくけど俺は攻撃の手を緩めたりはしない。バトルだ! クリアー・レイジ・ゴーレム、吹雪にダイレクトアタックを仕掛けろ!」
クリアー・レイジ・ゴーレムが真っ直ぐに突進してくる。
この攻撃、受けてもライフは0になりはしないが……素直に喰らってやる義理もない。吹雪はデュエルディスクに置かれたリバースカードを開くスイッチを入れる。
「トラップ発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを一度だけ0にしてカードを一枚ドローする!」
クリアー・レイジ・ゴーレムの攻撃が吹雪に命中するが、それは痛みもダメージも与えることはなかった。
ガード・ブロックの効果で吹雪は更に一枚ドローする。
「凌いだか。俺はモンスターをセットする。ターン終了だ」
自分の手札には今防御カードは一枚もない。次のターン、なにも退く事が出来なければ自分のもつ切り札を防御に使わざるをえなくなりどんどんと不利になっていく。
そのうち逆転すら出来なくなってしまうだろう。つまりこのターン、なにかを引き当てなければならない。クリアー・ワールドを攻略できるカードを。
藤原の使用するカードの悉くがOCG効果でもTF効果でもなくアニメ効果となっています。この世界のクリアーは不可能です。
そして祝☆100話達成!…………100話を費やしても原作にすら到達していないこの作品って一体なんなんでしょうね。初めの予定だと中等部から高等部までさらっとキンクリするはずが、I2カップやらネオ・グールズやら三邪神やらに寄り道していって気付けばこんなことになってました。