……やめて石投げないで! ほら、あれですよ。実はこの小説次話で100話だから、それと皿割を合わせようと思っ(ry
臨海学校二日目。昨日までの修学旅行のような気分は消え去り、今日と明日の二日間は朝から晩までISに乗っての試験運用が行われる。当然全員が一日中ISに搭乗するわけではないが、専用機持ちでない生徒でも学園から運んできた訓練機六台を順に利用して各自データを採っていく。平均すれば一人当たりの搭乗時間は一日二十分から三十分程だが、残りの時間も各箇所のパーツ整備や取り付けの技能を学ぶ手筈となっており、朝八時には花月荘近くのIS学園が所有している専用のアリーナに集合することになっていた。
だが、これはあくまでも専用機を所持していない一般の生徒たちに限った話。一夏や鈴、セシリアといった専用機持ちたちの朝は更に早い。専用機の各種試験運用は当然のこととしてそのデータ採り、本国から送られてきた大量の装備の試験を行わなければならないのだ。装備はパッケージから単品のものまで数多くとても悠長に構えていられるような暇はない。そんなわけで専用機持ちたちは六時起床、素早く朝食を済ませて七時にはアリーナに集合する予定になっているのだ。
そういう予定を組んだのだ。三日目に行わなければならないテストとの折り合いを付けるためにも、二日目は多少強引にでも装備の試験運用は終わらせておかなければならない。だというのに、だというのに。
「悪いな。よく聞こえなかった、もう一度言ってくれるか織村」
「だからよ、あの皿式ってやつと模擬戦するから少しの間アリーナ空けてくれないか」
朝五時半。起床早々に俺と一夏の部屋を訪ねてきたのは、昨日の夜にこの花月荘に到着した織村だった。俺の予想では怒鳴り込んでくるもんだと思っていたが、予想に反して彼の様子は大人しかった。それはいいとして、今の織村の発言だ。一体何がどうしてどう転べばそんな話になるのか詳細に説明してもらいたい。
「お前と皿式の間になにがあったんだ?」
「おうコラそういやそうだ。お前よくもアイツと同部屋なんかにしてくれたな、おかげで寝つきも寝覚めも最悪だぜコンチクショウ!」
「学校行事で異性を同部屋にするわけにもいかないだろう」
「……本音は?」
「お前が悶えるのを期待した」
「よし皿式の次はお前だ」
昨日の出来事を思い出したことで俺への怒りが蘇ったらしい織村をどうどうと諌めて一先ず部屋を出ることにする。未だ眠っている一夏と束を起こすのは忍びない。と、部屋を出て廊下を歩き出したところで織村が目を細めて。
「……お前さ、俺には異性と同部屋がどうのとか言っておいて、今篠ノ之いなかったか?」
「…………」
「おい目を逸らすなこっち向け。そっちじゃねぇ窓ガラスに写ってる俺と視線合わせんじゃねぇ」
目敏い奴だな。織村の視界に束が入らないように直線上に立ってたのに。というか束が俺の部屋にいるのは俺の責任ではない筈だ。向こうが勝手に部屋にやってきてそのまま寝てしまったのだから。布団はもともとの人数分である二人分しか用意されていないので仕方なく束と同じ布団で眠ることはしたが。
「……まぁいいや。んで、アリーナは使えるのか?」
「無茶言うな。そうでなくても予定は詰まってるんだ。お前ら二人だけのためにアリーナを貸し切れるわけないだろう」
「へー、じゃあ篠ノ之のこと織斑に言ってもいいのか?」
ぐっ、こいつ一番厄介なことを……! そこは触れてはいけない領域であると理解した上で問答無用でジョーカーを切ってくる織村を睨み付ける。昨日のお返しだと言わんばかりのドヤ顔は非常に腹が立つが、自身の黒歴史の権化と言っても過言ではない少年との邂逅を仕組まれた織村に比べればまだマシだと割り切ることにした。
とは言え、昨日の今日でそうそう決められた予定を変更できるものではない。俺や織村たちだけの少人数で済むなら話は別だが、アリーナを使用するとなると一年生全員の予定が狂ってしまう可能性が高い。そんなことになっては臨海学校の意味がなくなってしまう。今日からが生徒たちにとっては本番なのである。どうしたものかと頭を悩ませていると、いつの間にやら広間に着いていた。
「朝食を摂りながらどうするか考えよう」
「時間帯は別に気にしないし、五分だけで構わないんだが」
その五分でも大変なんだよと返して用意されている朝食の前に腰を下ろす。流石は景子さんと言うべきか、教師と専用機持ちの生徒の分の朝食は既に配膳を終えていた。漆塗りの膳の上には白飯にアサリの味噌汁、出汁巻き卵に目の前の海で取れたのだろう鮭の切り身が並んでいる。
「いただきます」
「いただきます」
手を合わせて箸を手に取る。うん、美味い。味噌汁はアサリがいい出汁を出しているし、鮭の切り身は塩加減が絶妙だ。付け合せのサラダや漬物も自家製でその全てが手作りである。IS学園の食堂で出されるメニューもかなりのレベルだが、花月荘の食事は学園の食事と比べても遜色ないレベルである。しかもこれを作っているのが景子さんと梗子さんの二人だというのも驚きだ。たった二人で一学年分の食事を用意してしまえるスペックの高さには脱帽である。
午前五時五十分。時間が時間だけに広間にはまだ俺と織村の二人しか居ない。静かに味噌汁を啜る音だけが響く。
柔らかな朝陽を窓の向こうに一望しながら朝食なんて中々贅沢だななんて考えていると、段々と近づいてくる足音を耳が拾った。
「む、なんだ。もう来ていたのか」
「ああ。おはよう織斑先生」
ポリポリと漬物を齧っていると襖が開き、レディーススーツを着た千冬が入ってきた。因みに俺と織村は未だ旅館の浴衣姿のままである。私生活はずぼらなくせに生徒たちの前となるとこうもシャキッとするのはどういう訳なんだろうか。あれか、大好きな弟に女子力皆無なところなど見せられないということか。
「何かよからぬことを考えてはいないか? 更識先生」
「まさか。まぁ座りなよ」
そう言って織村とは反対の俺の隣りを勧める。断る理由もないからか、すんなりと千冬はその席に腰を下ろした。
「あれ、山田先生とナタルは?」
「まだ寝ているよ。起こしたんだがどうも眠りが深くでな、教師としてはどうかとも思うが朝食の時間までは寝かせてやることにした」
ああ、真耶絶対酔いつぶれたんだろうな。千冬に付き合って飲んだはいいが、それがまさか篠ノ之印の特製アルコールだなんて想像もしていなかったに違いない。というか普通にピンピンしている千冬の肝臓は一体どうなっているんだろうか。他の人間と構造が違うんじゃないか。
そろそろ千冬の酒の耐性に本気で疑問を覚えだした俺を間に挟んで、千冬と織村は久しぶりの対面を果たした。
「久しぶりだな織村。向こうでは色々と有名だそうじゃないか」
「初代ブリュンヒルデに言われてもな。まさかIS学園で教鞭取るなんて思いもしなかったぜ」
「お前が星条旗を背負ってモンド・グロッソに出てきた時は目を疑ったがな」
第二回モンド・グロッソの話をしつつ、千冬も用意された朝食に手を付ける。久方ぶりに再会したのだからもう少し悠長に会話を楽しみたいところなのかもしれないが、教師という立場上いつまでもくつろいではいられない。時刻は午前六時、そろそろ専用機持ちたちが起きてここにやってくるだろう。一夏たちが朝食を済ませてアリーナに来る前に設備の調整やスケジュール調整の確認を終えておかなくてはいけないのだ。
あ、そうだその前に。先程まで織村と話していたことを思い出して俺は千冬に尋ねる。
「織斑先生。短時間でいいんだがアリーナを貸し切ることって出来るか?」
「無理だな」
にべもない即答だった。
「だってよ織村」
「そこをなんとか頼めないか。五分、いや三分でもいいんだ」
「何だ、お前がアリーナを使用したいのか?」
顔の前で手を合わせて頼み込む織村の様子を見て面食らったのか千冬にしては珍しくきょとんとしていた。
「何でも皿式と模擬戦をしたいんだと」
「更識先生が焚き付けたのではないのか?」
「俺を主犯扱いにしないでくれるか。いや同室にしたのは俺だけどさ」
完全に俺が元凶扱いである。完全には否定できないあたり俺も強く反論出来ないが。それはそうと、やはりアリーナを貸し切ることは難しい。今千冬も断言したようにそれほどまでに予定はぎっしりと詰まっているのだ。
「ふむ。……ほんの少しだけでいいのか?」
少し考えるような素振りを見せて千冬は徐に呟いた。
「ああ、それほど時間は取らないし取らせない」
「ならばこの後、専用機持ちたちのみで試験運用を行う時間なら割けるかもしれん。八時まで一般生徒は来ないし、五分程で終わるなら専用機持ちたちの試験にそこまでの影響も出ないだろう。ただ専用機持ちたちにお前たちの模擬戦を観戦させることにはなるが」
「いいのか? 千冬」
「仕方ないだろう。このままでは織村も引く気はなさそうだし、折り合いさえつけば問題ない」
専用機持ちたちが利用する筈だった時間を少しだけ割いて模擬戦を行う。その間専用機持ちたちは観覧席でその模擬戦を観戦。千冬が言っているのはこういうことで、確かにそれが一番いいように思う。織村の戦いを間近で見られるのは生徒たちにとってもいい刺激になるだろう。なんだかんだで一国を背負う人間だ、その実力に関しては折り紙つきである。
「それでいいか、織村」
「ああ。ありがとよ」
「そうと決まればさっさと準備に取り掛からないとな、俺は先にアリーナに行ってるよ」
残っていた味噌汁を飲み干して立ち上がる。一夏や簪といった専用機持ちたちへの連絡は千冬に任せて一足先にアリーナへと向かう。模擬戦を行うという旨を管理者に報告しなければならないし、試験運用だということで下げていた遮断防壁の強度を上げなくてはならない。いや全くこんなことになるとは思ってもみなかった。そりゃ確かにからかうつもりで織村を皿式と同室にしたが、まさか直接戦うことになるとは。
一先ずは部屋に戻って着替えなくてはなるまい。ついでに潰れている真耶も起こしておくか。そう考えながら階段に足を掛けた。
◆
「模擬戦? 皿式が?」
広間に到着して開口一番に聞かされたことを思わず復唱するように聞き返した一夏が姉である千冬へと返答を求めた。
午前六時十分。既に他の代表候補生たちはそれぞれ腰を下ろして朝食を摂っている。どういうわけか真耶は時折ふらふらと頭を揺らしているが、今はそれよりも気になることが一夏にはあった。不思議なことに昨日の寝る間際のことがすっぽりと抜け落ちてしまっていることも気にはなるが、それは今は置いておくとしてだ。
「そうだ。それによりお前たちの試験運用の時間を五分から十分程繰り下げて開始する」
「模擬戦って、一体誰とするんです?」
「まさかナターシャさんですか?」
一夏と千冬の会話に割って入ったのは鈴だ。昨日の今日でかなり彼女に懐いた鈴は皿式とナタルが戦うことを危惧しているようだった。主に苛立ちが臨界点を突破してしまうのではないかという点において。
「いや、もう一人のほうだ」
「もう一人ってことは、織村さん?」
「ナターシャさんの恋人の?」
「世界で二番目の男性IS操縦者」
織村一華。更識楯無に次ぐ世界で二番目の男性IS操縦者にして自由国籍権を得てアメリカの国家代表となった男。V7に数えられる一人である。その実力は過去のモンド・グロッソで遺憾なく発揮されている。
「お前たちは模擬戦が終わるまで観覧席で観戦してもらうことになる。世界でも指折りの実力者である奴の戦いだ。しっかりと記憶に焼き付けておけ」
千冬をしてそこまで言わしめる織村一華という男の実力に、一夏は心の内で興奮しているのを自覚した。出来ることなら自分が戦ってみたい。未だ学園最強にすら届かない身でありながらも、世界最強クラスというのをその身を以てして感じたいと思わずにはいられない。
勝てないことは百も承知。単純な実力では師匠である更識楯無と同等、しかしそれでも確かめたいと思う。今の自分がどこまでやれるのか。その境地に至るまでに、何が足りないのか。
無意識のうちに拳を握る一夏の姿を、箒は横目で何も言わずに見つめていた。
◆
「あのな束。俺はもうアリーナに行かなくちゃいけないんだよ」
「やだぁ! 束さんほっぽってどこ行くのさかーくん!」
「だからアリーナだって言ってんだろ!」
先程から束が腰に抱きついて離れてくれない。折角アイロンをかけたシャツにさっきまでの皺一つない姿はなく無残にもよれよれになってしまっていた。ぎりぎりと腰に回された腕に力が込められる。
「束さんにはカタナシウムが不足してるんだよ! 迅速に摂取しないと生命の危機が!!」
「何だカタナシウムって! 人をカルシウムみたいに言うんじゃない!」
「主にその主成分はかーくんの精――――」
「はいアウトー!」
とんでもないことを口走りそうになる束の口を思わず手で塞ぐ。こいつは一体何を言うつもりだったんだ。この作品をR指定にする気か冗談じゃない。
「だってだって束さん的にはもう我慢の限界なんだよ! 昨日はお風呂から帰ってきたいっくんに一線超えるギリギリのところ見られるし! 大声上げるもんだから取り敢えず手刀で気絶させたけれども! おかげで最後まで出来なくて私はもう我慢できません!!」
「朝っぱらからなんちゅうことを宣言してるんだお前は……」
一概に束に全ての責任があるわけでもないので強く怒ることもできないのが悲しい。男の性には逆らえなかった昨日の俺は、あの時一夏が戻ってきてくれなければ一線を超えていただろう。教師としてやってきているこの臨海学校でそれはマズイ。気絶させられた一夏には申し訳ないがグッジョブだ。
が、そのせいで欲求不満に更に拍車がかかってしまったらしい束は全身からピンク色のオーラを噴出させていた。気のせいか周囲の空間が歪んで見える。
こうしている間にも時間は刻々と過ぎていき午前六時二十分。このままではアリーナでの準備が終わらない。
「束、臨海学校が終わったら家に来い」
「家ってかーくんの実家?」
「おう。積もる話はその時でどうだ、今は時間が惜しいんだ」
「ちゅー」
「……は?」
邪険にするわけではないが苦渋の決断で束を実家へと招待することで解決を図る。正直な話俺自身も生殺し状態なのでこのままいっそ押し倒してしまいたいところなんだが、その場合明日の朝陽を拝むことは出来ないだろう。千冬改め血冬が俺を消しに来る。それだけは回避せねばならないのだ。
そんな俺を前に、瞼を下ろして唇を突き出す束。
「ちゅーしてくれたら、我慢してあげる」
「あのな……」
「ちゅー」
頑として譲らない束を前に、俺は内心で葛藤する。が、そう悩んでもいられない。意を決して彼女の顎に指を添えて持ち上げ、一息にその艶やかな唇を塞ぐ。
きっかり二秒頭で数えてから、ゆっくりと口を離した。
「……えへへ」
目の前に頬を染めて恥じらう美女が現れた。
いかん。このままでは俺の理性が崩壊しそうだ。これ以上この場に留まることは危険だと判断し、ハンガーにかけてあった上着を持って部屋を出て行く。襖を閉める前に見えた束の蕩けたような表情が、いつまでも脳裏に焼きついて離れなかった。
◆
午前六時五十分。既に開放されたアリーナの観覧席には一年生の専用機持ち七人の姿があった。二列使って座っている一夏と少女六人はアリーナの中心に立つ皿式をぼんやりと見つめながら会話を交える。
「でもなんでアイツと織村って人が模擬戦するわけ?」
「さあな。二人に何かしらの諍いでもあったんじゃないか?」
不機嫌さを隠そうともしない鈴の言葉に箒がそっけなく返す。彼女たちにしてみれば試験運用の時間を削ってまで行うようなことなのかと疑問に思うのも当然の事。何しろ皿式という少年が大した実力を持っているわけでもないのは知っているし、逆に織村一華の実力がずば抜けていることも知っている。はっきり言わせてもらえば、こんな模擬戦に意味などないのではないかと考えていた。世界で二番目の男性IS操縦者と呼ばれる織村の戦いを見られるのは良いが、その相手があの少年では勝負にすらならないのではないか、そう思っているのだ。
「そういえば簪も一度皿式と戦ったんだよな」
「……一夏、そのことは思い出させないで」
一夏の言葉を受けてみるみるうちにテンションが下がっていく簪。余程思い出したくない過去であってらしい。
と、そんな会話を交わすうちに皿式が出てきたピットの反対側から一機のISが緩やかに飛行しながら出てきた。青と紺の中間のようなカラーリング。背中の部分に設けられたスラスターと中世の騎士を連想させる全体的にシャープなフォルム。ラウラのレーゲンや鈴の甲龍とは正反対のようなフォルムを持つそのISは、『蒼天使』。天災篠ノ之束が開発した第一世代型IS。全世界でたった二機、稼働を続ける第一世代機だ。
「あれが蒼天使……」
「間近で見るとすごいね。どこまでも無駄を削ぎ落としたみたいだ」
ラウラとシャルロットが感嘆の声を漏らす。
現行の第二世代とも第三世代とも異なるその外見。しかしそれはスペックが劣っていることを意味しているのではないと全員が理解している。世代が一つ違えば別次元とも言われるISにおいて第一世代で尚も戦えているという事実。それは篠ノ之博士が一から作り上げたものであるというのも勿論あるが、操縦者の技量が桁外れに高いことを意味していた。第三世代型に搭載されている固有武装なども無い。にも関わらず世界のトップランカーに名を連ねる織村一華という男。彼が出てきたことで今まで漂っていた緩んだ空気は一瞬にして引き締まり、誰もが彼へと視線を向けていた。
そんな視線の先、アリーナで向かい合う二人。織村は鞘無を見ながら口を開いた。
「それがお前の専用機か」
「ああ、Y・C開発の第三世代型『サンライト・トゥオーノ』だ」
「機体だけは一級品だな」
「……なんだと」
挑発を受けて鞘無の蟀谷に青筋が浮かぶ。そんな姿を見て、更に織村は口角を吊り上げた。
「操縦者と機体ってのは二つで一つ。掛け算なんだよ。いくら機体が良くたって操縦者が下手くそだと乗りこなすことも出来ない、今のお前みたいにな」
「言わせておけば好き勝手言いやがって……。幾ら先輩と言え、手加減なんてしてやらないからな」
「当然だ。負けたときの言い訳になんてさせるかよ」
試合開始前から繰り広げられる舌戦はオープンチャネルを通して一夏たちの耳にもばっちりと届いていた。
そんな会話を聞いて管制塔では楯無と千冬が頭を抱えていたりもするのだが、そんなことをアリーナの二人が知る由もない。
「……行くぞ、二番目」
「来いよ四人目」
試合開始を告げるブザーが、アリーナに鳴り響いた。
◆一日目夜の箒さんと簪さん 部屋にて◆
箒「なんだ簪、お前海には行かなかったのか?」
簪「……お兄ちゃん、穴埋めに必死だったから」
箒「折角一緒に砂浜でサグラダ・ファミリア作ろうとしてたのにな」
本音「ッ!!?」