そして三話で終わると言ったな、あれは嘘だ。
ドイツ軍特殊部隊、シュバルツェア・ハーゼ。
ISというものがこの世界に生み出されてから設立されたこの部隊は、ISでの軍事訓練、戦闘が主な任務として行われている。ドイツで開発、生産されたISは基本的にまずこの部隊の隊員へと割り当てられる事が多く、その理由は部隊員たちの殆どがIS適性Aランクという数値を持っているからだ。
IS適性値がAという人間は世界的に見てもそう多くはない。故に、このシュバルツェア・ハーゼの隊員の数は少ない。デスクワークなどの補佐的な人間を抜けば、その数たったの十一人である。
その十一人の一人であり、部隊を束ねる立場に立つ女性クラリッサは今日搬入される予定の専用機の到着を待っていた。とは言っても搬入先の格納庫などに居るわけではなく、個人に割り当てられている私室でだ。
クラリッサにとっては、今回で二機目の専用機となる。IS学園在学時に最初の専用機が与えられ、今回は隊長であるラウラとの姉妹機であるということで一機目が回収された上での新機体だ。
開発した技術者の話によればまだトライアル段階の新武装を幾つか積んでいるということだったが、別段問題はない。その実験段階の武装を実用段階にまで引き上げるのが自分の役目であるということは自覚しているし、その為に与えられるということを理解している。
ラウラは初めての専用機ということで柄にもなく舞い上がっているようだが、まぁ問題はないだろう。他の部隊員の前では無表情を装っているし。いや、若干口元がニヤついているのは皆気づいているけれど。
搬入予定時刻は午後七時。まだ一時間以上も余裕はあるが、今日片付けてしまわなくてはならない仕事はとうに終わらせてしまっているので手持ち無沙汰である。
先日死ぬ思いをして日本のビッグサイトに足を運んで手に入れた戦利品は全て読破、十分に楽しませてもらった。本棚を埋め尽くさんばかりのコレクションの数々も擦り切れんばかりに読み返したものばかりなので新鮮味は薄い。
要するに、今現在クラリッサは暇を持て余していた。
本来ならこういった時間はISでの訓練に当てるのだが、今日は専用機が届くということでフィッティングとフォーマットの都合で訓練が禁止されている。となれば何が出来るのか。部屋で出来ることと言えば読書と料理くらいのものである。
「一人分の料理だけ作るというのもな……、」
それこそ学園時代は金髪の同級生と一緒に料理をしていたものだが、今ではすっかりそういったことはなくなってしまった。彼女の場合は趣味の自分とは違い、彼氏の為の努力だったようだが。
そういえば彼女も専用機を与えられたとかどうとか言っていたが、来年のアレには出てくるのだろうか。
などと考えていると、唐突に端末が震えた。
「はい」
『私だ』
「どうなさいましたか隊長」
通信は、自室にいるであろうラウラからだった。
彼女も自身と同じく訓練は禁止されているので自室に居るはずだが、こうして連絡を寄越してくる辺り時間を潰すための話し相手が欲しいのだろう。それとも専用機が待ち遠しくて仕方がないのか。恐らくは両方だ。その声色からも、喜色を伺い知ることが出来た。
『う、うむ。今日届く専用機だが、それまで暫し時間があるのでな。お前も暇していたのではないか?』
「ええ。どうしようかと考えていた所でした」
『そうだろうそうだろう。隊員を気遣うのも長たる者の務めだ。話し相手になってやろう』
端末越しであるにも関わらず、クラリッサには小さな胸をえへんと張るラウラの様子を幻視することが出来た。え、なにこの生き物。ちょー可愛いんだけど。鼻腔から噴き出そうとする愛をなんとか堪え、決してそんなことになっているとラウラに悟られないようにクラリッサは口を開いた。
「話しと言われても、別段相談したいようなことは」
現状、何か隊長であるラウラに相談するようなことは思いつかなかった。しかしそれがどうにもお気に召さなかったらしいラウラは、
『む、なんだ。上官である私に何も言いたいことはないのか?』
「私は隊長に対して不平不満を抱いたことは一度としてありませんよ」
ラウラの問いに、クラリッサはあっさりとそう答えた。
ドイツ軍特殊部隊シュバルツェア・ハーゼ。その隊長であり続けることがどれほど大変であるかなど、今更言葉にするまでもなく理解している。その激務を顔色一つ変えることなく遂行する彼女の姿は、最早尊敬すら覚えるほどである。
しかしこのまま何の話題もないというのも、折角連絡を寄越してくれたラウラの気遣いを無碍にすることになってしまう。暫し思考を巡らせて、一つ昔話をすることにした。
クラリッサが唯一認めた、男性IS操縦者の話を。
「そうですね。では隊長、少し私の昔話に付き合って頂けますか?」
『昔話? お前が過去の話を持ち出すとは珍しいな』
興味深げにそう言うラウラに、クラリッサは小さく微笑む。
「確かにあまり過去には拘らないんですが、こればかりは忘れることなど出来ない話でして」
『聞かせろ』
促され、彼女はその口を開いた。
あの男性操縦者と如何にして出会い、これまでの価値観を覆されのかを。そしてそれが、自分自身にとってどれほど大きな出来事だったのかを――――。
◆
何か様子がおかしいと気付いたのは、二機の専用機を積んだトレーラーの先頭が停止して暫くしてからだった。時刻はまだ早く、搬入予定時間まで幾ばくかの余裕があるが、こんな何もない荒野の一本道で停止する理由など本来ならば無いはずだ。
そして異変を感じ取っているのはどうやら俺だけではないらしく、横に座るルツやトージョも何やら脇に置いた銃器に手を掛けている。
『……ああ、ココさん』
先頭のトレーラーに乗り込んでいた黒人、ワイリからの通信だ。その通信に二両目に乗っていたココが応答する。
「ワイリ、臭うか?」
何が、とは聞かなかった。簡潔に、要点だけ纏められたその問いに、ワイリは淡々と答える。
『ええ、この先のカーブの地点が鼻につきます』
「そうか。総員、戦闘準備」
『待ったココさん。ここは一度様子を見てきましょう。ただの爆弾ならそれで良し、待ち伏せなら殲滅するだけでしょう』
そう言って先頭の車両からワイリが降り立った。特に警戒した様子もなく、散歩でもするかのような気軽さで臭いと評したカーブ地点へと歩を進める。
いやいやいや。平然と歩いて行ってしまったけどあれかなり危険だぞ。カーブ付近の岩場に敵が潜んでたら一瞬で蜂の巣にされる。
「おいおい。アイツ一人で行かせていいのか?」
そんな俺の問いかけに答えたのは、先頭車両に乗り込んでいたレームだった。インカムを通して、彼の声が響く。
『あー、ミスター更識。その点はなんら問題ないよ』
飄々とした彼の言葉に、怪訝そうに眉を顰める。見たところあの黒人は屈強な軍人というわけではない。どちらかと言えばインテリで情報処理を専門にしてそうな風貌の青年だ。そんな人間が武器の一つも持たずに戦場に足を運べばどうなるか、火を見るよりも明らかなはずである。
俺の疑問を察したのか、レームは再び口を開いた。
『実はうちの連中でFBIのブラックリストに載ってるのが二人いてな。ココと、ワイリだ』
煙草の煙を気持ち良さそうに吹き出しながら、レームはあっさりとそう言った。
FBIのブラックリストにその名前が記載される。というのはつまりアメリカ全土を敵に回すも同義だ。何を仕出かしたのかは知らないが、そんな奴が今俺の目の前で平然としている事実が上手く飲み込めない。
『こと爆弾に関しては世界屈指と言っていいのがワイリなんだ。アイツの手にかかればホワイトハウスだってぺしゃんこに出来るかもな』
「あー……。つまり爆弾が仕掛けられてたらあの黒いのが解除するし敵が潜んでたらこっちから狙撃するから問題ない。そういうことか?」
『そういうこと。ミスターも余計な体力は使いたくねぇだろう。狙撃は俺とルツに任せときな』
いつの間にか車窓から身を乗り出して大型の狙撃銃を構えていたルツに驚きながらも、俺はカーブ付近を歩くワイリから視線を離さなかった。レームが言うようにブラックリストに載る程の人間だ。どこをどう爆破すれば最も効率がいいのか、なんてことを考えて実行出来てしまうレベルの人間である。そんな人間を心配するのもどうかと思ったが、もしも敵が潜んでいてしかもISを所持していたらと思うとそういうわけにもいかなかった。
しかしそんな俺の心配は、どうやら杞憂に終わったらしい。
『ココさん、ビンゴだ』
敵が潜んではいなかった、という点でだが。
「ワイリ、周辺に人の気配は?」
『今のところは無いですね。この爆弾もトラップにしては杜撰すぎる。こんなところに仕掛けたら見つけてくれと言ってるようなものですよ』
「解除は?」
『問題なく。二分もかかりません』
通信機越しにそう言い、ワイリはいそいそと工具を取り出して解体作業に入った。爆弾はカーブ横の草むらの中に仕掛けられていたらしい。センサー式だと言うので、車線の向こう側にももう一つ同じものが仕掛けられている筈だとワイリは告げた。一つ目の爆弾を解体し反対車線まで歩き、二つ目の解体に移るまでの時間は一分弱。特殊部隊の爆弾処理班でも不可能ではないかと思われるタイムだった。
「……なぁ」
「なんだミスター」
「アイツ、変態だな」
「そうだぜミスター。ワイリは変態、こと爆弾に関しちゃとびっきりの変態さ」
ケラケラと笑うルツを横目に捉えながら、心の内で溜息を一つ。
ココの私兵たちは一人一人がどこか頭のネジがぶっ飛んでるようだった。いや、悪い意味ではないのだけれど。
『……ルツ』
不意に、先頭車両のレームからの声が響いた。
その声色に、先程まで感じられた陽気さはない。
『銃を構えろ。奴さん、どうやら狙撃手を雇ってるみたいだ』
「あん? おっさん、方角は」
『西に二百メートル、数は二。俺とルツで仕留めるぞ』
「……見つけた。成程あんなとこに身を潜めていやがったのか」
いや、どこだよ。というツッコミを口にはしなかった。視力はそこそこ良い方なので二百メートル先の人間など見つけられそうなものだが、暗さと岩場が邪魔をして見つけられないでいる。
なんにせよ、このままではトラップを解除しているワイリの身が危険だ。俺はトラックの扉に手を掛け、外へと出ようとした。
瞬間――――。
二発の痛烈な発砲音が響き渡った。
「っ!?」
「ッヒュウ! ビンゴだぜおっさん! 奴のライフルに花咲かせてやった!」
『こっちもオーケーだ。ココ、ワイリが仕事を終え次第発進できるぞ』
発砲音はルツとレームの二人から放たれたものだった。
この位置からでは確認できないが、どうやら敵の無力化に成功したらしい。いやいや、この状況で一発で敵を無力化ってどんな視力と精度してるんだ。流石は元デルタと言ったところなのだろうか。通信機越しに鼻唄なんか聞こえてくるあたり、この程度の事は造作もないのだろう。
ココ・ヘクマティアルの私兵たちを、俺は少しばかり見くびっていたのかもしれない。
「ワイリがトラップを解除したみたいだ。戻り次第、直ぐに出発するよ」
ココが先頭のトレーラーにもその旨を伝え、シートに深く座りなおす。
この場に敵が潜んでいたことは危惧すべき事態であるが、与えられた仕事は専用機を無事に運び終えることだ。今暫くは様子を見よう。ココが言っていたようにISなんてものまで引っ張り出してくるようであればその時は俺が対処すればいいだけの話だ。
内心でそう結論を出し、未だに自らの腕前に酔いしれるルツの隣に腰を下ろす。
数分の後、二両のトレーラーはゆっくりと動き始めた。
ココ・ヘクマティアルという女が何を考えているのか、未だにわからないまま。
◆◆
クラリッサの口から語られる話は、ラウラ・ボーデヴィッヒにとっては到底信じられるものではなかった。
シュバルツェア・ハーゼの隊の中でもトップクラスの実力を持つクラリッサが手も足も出ない。どころか、傷一つ付けることが出来ないというではないか。ラウラの知る限り、クラリッサの高火力兵器を用いても傷を付けられない相手がいるなどと俄かに信じられなかった。
『冗談に聞こえてしまうかもしれませんが、これは事実ですよ。私はあの人、更識楯無先輩には結局一度も傷を付けることが出来なかった』
その声はしかし、どこか楽しそうなものだった。
疑問に思ったラウラは、率直に尋ねる。
「しかしクラリッサ、勝てなかったと言う割には随分と楽しそうではないか」
『楽しい、ですか? そうですね。確かに楽しかったかもしれません』
何が楽しいのかラウラには理解が出来ない。
戦いとは勝つから楽しいのが道理である。負ければ悔しいし、勝ちたいから血の滲むような訓練にも取り組むのだ。それがどうしたことか、今のクラリッサはまるで負けることが楽しいかのように言うのである。
これまでの人生をこの軍で過ごしてきたラウラという少女には、到底理解できない感情だった。
「お前は悔しくはなかったのか?」
正直な所、何を腑抜けたことをと思ったラウラの質問に、
『勿論悔しいですよ。でもそれ以上に、あの人との戦闘訓練は刺激的だったんです。勝ち負けがどうでもよく思えてしまうくらいに、得られるものが大きかったんですよ』
クラリッサが言う『得られるもの』というのが一体何を指しているのか、ラウラには全く見当がつかなかった。
軍人としてこれまで育てられてきた彼女にとって、戦闘から勝利以外の何かを得るなど考えられなかったからである。
「お前は、何を得たんだ……?」
興味深げに尋ねるラウラだが、しかし返ってきたのは僅かに含みを持った笑いだった。
『隊長。きっとそれは私の口から言っても意味などないでしょう。隊長自身があの人と戦い、何かを感じなければ』
「……意味が分からんぞ」
『今はそれでもいいです。今は』
どこか窘められているような気がしないでもないラウラは釈然としなかったが、ここで彼女を問い詰めたところでやんわりと言いくるめられるのは目に見えていた。ラウラは口下手であるということを自覚しているし、そもそもこの副官に口や実力で勝てる気がしないのだ。
そんな副官に『この話はこれでおしまい』と言外に言われてしまっては、もう一度話を蒸し返すような真似は出来なかった。
『……と、そろそろ予定の搬入時刻ですね』
クラリッサに言われて部屋の時計に視線を向ければ、予定時刻まで後十分程となっていた。
「入口には既に隊員を配置してある。やってくれば直ぐにわかる」
搬入予定時刻に合わせシュバルツェア・ハーゼの隊員を入口に配置してある。
今回の搬入を担当しているHCLI社が到着すれば直ぐに隊長であるラウラに連絡がいくことだろう。
『そうですか。では私は先に搬入先の格納庫へと向かっておきます』
「了解した。私も連絡が有り次第そちらへと向かう」
そう告げて端末の電源を落とす。
クラリッサと話をしていた間は薄らいでいた期待と緊張が、再び彼女の内心で膨らんでいく。
専用機。
世界で四六七しかないISのコアを使用して作られた、ラウラ・ボーデヴィッヒの為の機体。
無意識のうちに頬が緩んでいく。
こんな表情、きっとクラリッサたちには見せられない。
生まれてからこれまで、この軍の中で必死に生き抜いてきた。その努力が認められ、そしてようやく報われるのだ。これが嬉しくないはずがない。
「……フフ」
思わず笑いが漏れる。
普段無表情で仕事をこなす特殊部隊の隊長も、この時ばかりは年齢相応の可愛らしい少女の笑顔を浮かべていた。
そしてその少女の耳に、待ちわびていた連絡が飛び込んでくる。
◆◆◆
二台のトレーラーが今度こそそのエンジンを止めたのは、ドイツ北方にあるドイツ軍特殊部隊の司令部だった。周囲を高い塀で囲まれたその見た目は宛ら刑務所のようにも見えたが、刑務所なんかよりも警備セキュリティは何倍も上だ。
その出入り口にまでやってきて停車したトレーラーから、ココが降りる。
直ぐに門番のように直立していた隊士がやって来た。
「用件を」
「HCLI社のココ・ヘクマティアルです。依頼されたモノを運んでまいりました」
俺と初めて出会った時のあの仮面のような笑顔で、ココは隊士へと用件を伝えた。
一度トレーラーのほうへと視線を向けた隊士だったが、その後懐から通信端末を取り出して誰かと連絡を取った。おそらくそれが合図だったのだろう。隊士が端末をしまったのとほぼ同時に、入口の門がゆっくりと開いた。
「確認が取れました。ようこそココ・ヘクマティアル様」
深々と頭を下げるその隊士を横目に見ながらココはトレーラーへと戻っていく。トレーラーの先頭には別の隊士が立っているので、彼女が格納庫まで案内してくれるのだろう。
俺はゆっくりと動き出したトレーラーに揺られながら、ぼんやりとその光景を眺めていた。
腑に落ちない。
はっきりと言ってしまえば、俺は未だに今回の一件に納得していなかった。先にも言ったようにこれは仕事として請け負っているものなので今更どうこう言うつもりは毛頭ない。ココという女が一体何を考えているのかは不明のままだが、このまま行けばあと一時間もしないうちにこの仕事は終わるだろう。
彼女が最初に言ったISEOとかいう反IS団体の表立った襲撃もなく、至って平穏に。
俺を用心棒として雇った彼女の考えが理解できなくはないが、どうにも違和感が拭えない。
ココ・ヘクマティアルという女に対する違和感だけではない。何かを見落としているような、辻褄が微妙に合わないような、そんな薄い違和感を感じるのだ。
本当にこのまま終わるのか。――――そう考えていた時だった。
軍内部という有り得ない場所で、有り得ない火柱が上がったのは。
◆◆◆◆
「本当に、こんな作戦で上手くいくのかね?」
「そう心配なさらずともよい。全ては順調、大船に乗ったつもりでその椅子に腰掛けておればよいわ」
とある高層ビルの最上階。
円卓に腰掛ける十人ほどの顔があった。卓に両肘をつき、訝しげに尋ねるのは壮年の男性。それに軽く答えたのは、まだ若い女だった。
「しかしだな……。相手はあのドイツの特殊部隊だぞ? そう簡単に事が進むとは思えん」
別の男性が女へと言葉を投げる。
投げられた言葉に、しかし女は口元を三日月のように歪めて。
「ほう……。そんなに心配なら貴様が自ら戦場へと出向けばよかろう? なあ、元フランス陸軍少将殿」
「ぐっ……、」
くつくつと笑いながら言う女に、男性は青筋を浮かべながらも反論することは出来なかった。
ISという『兵器』が生み出されるまでならいざ知らず、現時点ではこの女に逆らえる人間はこの場には居なかった。
「まぁそう暑くなるでない。お前たちは言われた通りにしていればそれでいい。それだけで、お前たちの社会的地位の改善に繋がるのだ。それに――――」
そこで一度言葉を切って、ダンッと円卓に両足を交差させて乗せる。傲慢なまでのその態度にも、やはり声を荒げる人間はいない。そんな彼らを見下すように視線を向け、女は言う。
「――――お前たちが言いだしたのだぞ? この私、京ヶ原劔に力を貸せと」
はい、という訳で次で終わります。次こそは終わらせます。
何せこの話で書きたかったのは楯無、クラリッサ、ラウラの共同戦線なのだからッ!!