双六で人生を変えられた男   作:晃甫

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#13 乖離と参戦

 

「状況は!」

「アリーナのシールドエネルギーを貫通! 正体不明の物体が内部に侵入しました!」

「アリーナ内の生徒の保護を最優先、教師陣はIS展開の用意を!!」

 

 一夏と皿式の戦うアリーナを覆うようにして常時展開されていた遮断シールドを貫いて侵入した正体不明の漆黒の機体。一目見ただけでは判断しかねるが、それでもアレが生徒たちにとって十分に脅威に成り得る事は理解することが出来る。直ぐ様千冬は真耶へと指示を飛ばす。

 

「ダメです! アリーナの入口がロックされています! ……レベル4!?」

 

 生徒の保護を優先して行うために出口を確保しようと端末を操作する真耶だったが、画面上には無慈悲にも扉が全てロックされていることが表示されていた。

 しかも遮断シールドはレベル4に設定されている。これはISの高火力兵器を用いても破れないであろうことを意味している。

 つまり現状、アリーナの内部は完全に隔離された状態にある。

 

「直ぐに整備科三年と教師を向かわせろ。外部からどうにかして扉のロックを解除させるんだ」

「了解しました! 布仏さん!」

『もうやってます山田先生』

 

 真耶の呼びかけに、直ぐに虚からの返事はあった。

 生徒会の面々には個人的に教師たちと連絡を取る回線が小型端末を通して引かれているので、こういった緊急時も連絡を取り合うことが出来る。尚これは電話やメールといったものではなく、どの通信手段からも連絡を取れる優れものだ。この場合は管制塔から虚の小型端末へと回線を繋いでいる。

 

『ダメですね。手持ちの機器じゃ解除は不可能です』

「整備室に寄って行かなかったのか」

『それが、私も会長もアリーナの内部に閉じ込められてしまって』

 

 思わず千冬は頭を抱えた。

 整備科の主席たる虚と学園唯一の生徒国家代表である姫無。この二人も内部に居たとは全くの予想外だった。

 正直、虚の機械類に対する技術はIS学園の教師をも上回っているし、姫無の戦力も一教師以上のものであるため、内部に閉じ込められてしまったこの状況はまずいと言う他なかった。

 

「姫無、聞こえるか?」

『ええ、聞こえてます更識先生』

 

 頭を抱える千冬から端末を取って、俺は姫無へと声を掛けた。

 通常であれば俺のことは学園内であっても兄さんと呼んでくるが、流石にこの事態ではそんな悠長な態度でいるわけにもいかないと判断したのだろう。

 

「アリーナ内に侵入した正体不明の機体だが、お前も必要があれば一夏の援護に当たれ。だがそれまでは生徒たちの安全確保が最優先、決して怪我人を出すな。それから布仏、北側のゲートに回れ、そこにこちら側から教師と整備科を向かわせる」

『了解ー』

『分かりました』

 

 俺の支持に姫無と虚の二人はそう短く答え、即座に行動に移す。

 一応こちらからもカメラの映像でアリーナ内部の映像を確認することはできるが、心許ないのが正直な所だ。

 出来ることならこのまま何事も無く終わって欲しいが、束がこれだけで終わるとは考え難い。

 かと言って今の俺に出来ることは何もない。結局、この管制塔で一夏たちの無事を祈ることしか出来ないのだ。まぁ、いざとなれば強行突入するつもりではあるが。

 

「だから落ち着け、織斑先生」

「落ち着け? 何を言っている更識先生。私は至って冷静だぞ?」

「右手のそれ砂糖じゃなくて一味唐辛子だぞ」

「……なんで一味唐辛子がこんなところにあるんだ」

 

 表面上はポーカーフェイスを貫いているが、どうも千冬は一夏の事が心配で気が気でないらしい。コーヒーに一味唐辛子をぶち込もうとするくらいには動揺しているようだし。

 確かに心配する気持ちも分かるが、俺たちアリーナの外にいる人間にはこの現状を打破することは出来ない。扉のロックを解除するために向かわせた整備科の三年生たちもロックを解除するには相応の時間がかかるだろうし、力技でこじ開けるには真耶の専用機では火力不足、千冬の暮桜があれば可能だったかもしれないが、無い物ねだりをしても仕方ない。

 

「山田先生、一夏に通信を繋げてくれ」

「分かりました」

 

 俺の指示に一つ頷いて真耶は端末を操作し、個人秘匿回線(プライベートチャネル)を通じて一夏へと声を掛ける。

 

「織斑、聞こえるか?」

『この声は、更識先生?』

「そうだ。現状を詳しく説明している時間はないから簡潔にだけ要件を伝える。目の前の黒い機体を破壊しろ」

『破壊しろって言われても、大体あれはな何なんですか?』

「詳細はこちらでも不明だ。しかしIS学園に侵入してきた以上ソイツは敵以外の何者でもない。必要があれば生徒たちの安全確保を優先している姫無にも援護するよう伝えてある」

『……分かりました。俺がやります』

 

 一夏の返答に、俺は小さく口元を綻ばせる。

 本当に、言うようになったじゃないか。

 通信を切って、備え付けの椅子へと腰を下ろす。

 

「どういうつもりだ?」

 

 途端、千冬が詰め寄ってきた。

 

「どうって?」

「生徒を戦わせることだ!」

 

 成程。俺の予想以上に、千冬は一夏の事が心配であったらしい。教師として生徒を心配するというよりは、姉として家族を心配しているようだ。

 

「現状、それ以外に方法は無い」

「だが……!」

「心配するな。いざとなれば姫無だっているだろう。あの機体の破壊くらい、今の一夏ならやれる筈だ」

 

 そう言う俺に、千冬はまだ何か言いたいようだったが頭では理解しているのだろう。大きく息を吐いて砂糖を入れ損なったブラックのコーヒーを一気に飲み干した。

 此処で見ていることしか出来ない自分がもどかしいのだろう。その気持ちは俺も痛いほどに理解はしている。

 生徒を信じる。言葉にしてすれば簡単だが、これを実行するというのは存外難しい。それをひしひしと感じながら、俺はモニタへと視線を向ける。そこには白式を纏った一夏の懸命に戦う姿があった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「あっぶね!」

 

 つい一秒前まで立っていた場所が熱戦で砲撃された。ビーム兵器を展開しているらしく、その威力は恐らくセシリアのスターライトmkⅢよりも上だ。

 次々に撃ち込まれる熱戦をアリーナの壁に沿うようにして回避する一夏は、中心地で自身をロックオンしてくる漆黒の機体へと目をやった。

 全身を黒い装甲で覆われたそのISは両腕が異様に長く、つま先よりも下まで伸びていた。更に肩と頭が一体化しているような形を取っておりどうやら首は存在しないらしい。

 

 しかしそれよりも一夏の目を引いたのが、『全身装甲(フル・スキン)』だ。

 

 現存するISは基本的に部分的にしか装甲を形成しない。セシリアのブルー・ティアーズや皿式のサンライト・トゥオーノも、生身の部分が露になっている箇所が幾つもある。それは何故か。必要がないからである。IS戦に於いて防御は殆どがシールドエネルギーによって行われるし、重い装甲は機動の邪魔にしかならない。

 当然防御に特化したISであれば物理シールドを搭載している機体もあるにはあるが、それでも搭乗者の肌が全く露出していないというのは聞いたことがない。

 

(にしても厄介だな……。あのビーム兵器を何とかしないと近づくことすら難しい)

 

 機体の左右に二つずつ、計四つのビーム砲口があり、否応なく一夏へと熱戦を放ってくる。

 遠距離武装を搭載していない白式では、どう抗っても距離を詰めなくては攻撃を当てることは出来ない。

 この現状をどう打開すべきか、一夏は動きを止めずに考える。

 生徒たちの保護を優先している姫無に援護を頼むか。否、それはダメだと脳内で即座に切り捨てる。彼女が生徒たちの保護を行ってくれているからこそ自身が存分に戦えるのであって、彼女が増援に回ってしまえば周囲の被害を逐一考えながら攻撃しなくてはならなくなる。

 それでは本末転倒だ。視線の先で尚も攻撃を続ける漆黒のISを破壊するには、己の力のみで押し切らなくてはならない。

 

 ――――いや、待てよ。

 

 一夏は思い至る。

 このアリーナ内部には、もう一人居るじゃないか。

 専用機を持ち、更には自身のように近接型ではなく遠距離攻撃を基本とした機体を操作する生徒が。

 

「――――皿式ッ!!」

「ファッ!?」

 

 突如として投げかけられた声に驚いたのか、皿式が場にそぐわない素っ頓狂な声を上げた。

 まさか声を掛けられるとは思っていなかったのだろう。被弾しないようアリーナ外壁の隅でアルマジロのように丸くなっていた山吹色の機体からひょっこりと顔を上げた。

 この緊急事態で全く戦闘の意思を見せていない、というのはこの際置いておくとして。一夏をこちらに視線を向けている皿式へと更に大きな声で呼びかける。

 

「さっきの、もう一回撃てるか!?」

「さっきのって、超電磁砲のことかよ!?」

 

 どうやらあの自壊技は超電磁砲と言うらしい。

 簪の時は装甲を切り離していなかったので、必ずしも自壊しなくてはならない訳ではなさそうだが。

 こうしている今も相手の攻撃は止まない。一夏としてはダメならダメでまた別の方法を探すつもりだったが、返って来た言葉はその予想を覆すものだった。

 

「……ッハ、誰に言ってんだよ織斑。そのくらい訳ねぇぜ」

 

 ガシャンッ、と体育座りを解いて立ち上がり、今度は腰周りの装甲を引っペがした。

 先程までの態度とは打って変わって強気に口元を吊り上げる。その様子を訝る一夏だったが、そこを詮索している余裕は今はない。遠距離攻撃が行えるのが彼しかいない以上、隙を作るためには必要だ。一夏は迫り来る熱戦を紙一重で回避しながら、皿式が攻撃できるようスペースを空けた。

 そして、そこに紫電を帯びた山吹色の物体が射出される。

 

 しかし。

 最初の時と同様、皿式の一撃は漆黒の機体の全身を覆う装甲に阻まれ、敢え無く弾け飛んだ。

 愕然とする皿式。が、ここまでは一夏の計算通りだ。あのような攻撃を行えば、あの長い腕で弾くか、その必要さえなければそのまま何の抵抗もなく受け止める筈だ、と。

 そして事実、あの黒い機体は始めのように装甲に頼り迎撃を行わなかった。つまり、何のモーションも起こさなかった。

 

 初動の差。一夏の狙いは、ここにある。

 第四世代に相当する白式と互角の機動力を有する目の前の敵に一撃を与えるには、どうしても初手をこちらが取らなくてはいけなかった。遠距離武装を搭載していない白式では、どうしてもその差を付けられない。そこで皿式の遠距離攻撃だ。ダメージを与えられれば御の字だが、そこまでは考えていない。

 一瞬。たった一瞬だけでも向こうの動きを止めることが出来れば、それでいい。

 雪片弐型を両手で握り、何の迷いもなく瞬時加速で漆黒の機体の元へと突っ込んでいった。

 

 ――――零落白夜、使用可能。エネルギー転換率九十四パーセント。

 

 脳内に直接響くように情報が伝えられる。

 

「う、おおォォおおおおッ!!」

 

 一夏に照準を合わせた黒の機体は、再び熱線を放とうとビーム砲口を向けるが一夏は既に雪片弐型を振りかぶっていた。

 砲口が火を噴く寸前。触れさえすれば否応なくエネルギーを削り取る一撃必殺の純白の刃が、黒を一閃した。

 

 

 

 ◆◆

 

 

 

「ほぉ、やるじゃないか」

「やりましたね織斑君!」

 

 管制塔のモニタ越しに戦闘を見ていた俺は腕組みしつつそう零す。いやいや、普通に強くなってるな一夏。まさかこんな短時間であの無人機を破壊するとは思わなかった。原作でも鈴の衝撃砲を利用した捨て身の攻撃とセシリアの加勢でなんとか撃退したくらいだったのに。

 今回皿式の攻撃を囮にして零落白夜をぶち込んだのは咄嗟にしては良い判断だと言えよう。あの無人機の装甲はそれこそ雪片弐型でなければ破壊できないだろうし、一夏の操縦技術ではまだアレを振り切れるほどの機動力は持ち合わせていない。生徒たちを守るために行動していた姫無と連携を取ればもう少し上手く立ち回れたかもしれないが、多分一夏は姫無も巻き込みたくはなかったのだろう。

 全く、変な所で姉と似ている。特にその呆れるまでの正義感とか。

 

「……何だ」

「別に。良かったじゃないか織斑先生。大好きな弟が無事で」

「……ふん、あんな戦い方しか出来ないようじゃ、まだまだ半人前もいいところだよ」

 

 とか言いつつも口元が綻んでいることに本人は気付いていないのだろうか。

 全くこのブラコンは。

 

「…………」

「…………」

 

 そう思った瞬間、どういう訳か千冬と真耶からジト目で睨まれた。

 

「な、何だ?」

「お前にだけは言われたくないようなことを言われた気がした」

「私もです」

「え、何。お前らエスパー?」

 

 一夏が無人機を行動不能にしたことで取り敢えずの脅威が去った為か、管制塔に居る教師たちにも安堵の表情が浮かんでいる。それは表には出さないが千冬や真耶も同じようで、今の会話を聞いても分かる通りほっとしているようだった。

 さて、これで後はロックされている扉を整備科の三年生たちが解除することが出来れば一先ず一安心だろう。遮断防壁を破壊されたことは大問題だが、それよりも今は生徒の安全が最優先だ。

 

「真耶。布仏に通信を回してくれ」

「了解です。布仏さん、聞こえますか?」

 

 コンソールを操作し、虚へと連絡をつける。

 

『はい、聞こえます』

「布仏、ロック解除まであとどれくらいかかりそうだ?」

『こちら側にある道具だけではなんとも……。向こう側の状況にもよりますがあと三十分程はかかるかと思います。何せレベル4ですから、そう簡単にはいきませんね』

「そうか。外側からとも連絡が取れるよう管制塔を中継して話をつけるから、何か要望があれば伝えてくれ」

『分かりました。では――――』 

 

 そこから先の虚の言葉を、俺を含めた教師たちは聞き取ることが出来なかった。

 

 遮断防壁を貫通する際の独特な金属音にも似た衝撃音と爆音が響き渡ったからだ。

 

「ッ、状況報告!」

「アリーナの遮断防壁が貫通! アリーナ内に熱源反応、その数、六!?」

 

 真耶の報告に、俺や千冬の顔が強ばる。

 原作とは明らかに異なる状況だが、アリーナ内に六体もの無人機が侵入してきたということらしい。それなんて無理ゲーな状態だ。少なくとも一夏一人では六体もの無人機を相手取ることは不可能だろう。

 即座に一夏と皿式に向けて通信回線を開く。

 

「織斑、皿式。直ぐにその場から離脱しろ」

 

 返答は、直ぐにあった。

 

『更識先生ッ、でも!』

「でもじゃない。お前たちにそいつらの相手は無理だ、状況を考えろ」

『っ、……』

 

 一夏のほうからの返答が無いのは、現状を良く理解しているからだろう。しかしそれでも、自分が戦わなければ他の人を危険に晒してしまう。そのジレンマに悩まされている。

 が、そいつは無用な心配だ。

 

「安心しろ織斑」

『え……?』

 

 俺の言葉の意味が良く理解できなかったのか、呆けた声が通信越しに返ってくる。

 俺は視線だけを千冬と真耶に向けて、再び通信を虚へと開いた。

 

「布仏。今から十秒くらいしたら、扉から離れろ」

『え? ああ、了解しました』

 

 その返事を聞いて、次は姫無へと。

 

「更識、今からちょっとした衝撃があるだろうから生徒たちにはうまいこと言っといてくれ」

『え、何その後処理みたいな雑用』

「お前にしか頼めないことだ」

 

 主にその場にいる通信手段を持っているのが姫無しかいないという意味で。

 だが、俺のその発言をどう勘違いしたのか。

 

『な、なら仕方ないわね! 兄さんがそこまで言うなら、私が必要だって言うんなら!』

 

 何やら嬉々とした声が聞こえてくるが、そこには触れず、俺は管制塔から離れて学年主任室へと向かう。生徒たちのほぼ全員がアリーナへと集まっていることもあって人影は全く見当たらない。これなら、問題無さそうだ。

 普段ならこんな場所で絶対に使わないが、あの第一位の能力を解放させる。

 ダンッ、と足に力を込めると、弾丸のような速度で移動を開始した。

 

 移動を開始して数秒、直ぐに目的地の前に辿りついた。

 学年主任室。その室内の奥にある、普段は使わないクローゼット。それを開いて、中に入っていた一着を取り出す。

 

「……ふう。コレ、もう着るつもりはなかったんだけどなぁ」

 

 今更何言ってんだかと自分自身でも思うが、考えてみればコレに袖を通すのは実に数年ぶりのことだ。慣れた手つきで身に纏い、最後に白の手袋をキュッと嵌める。

 さて、と。

 

「――――行こうか」

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「くそ、数が多すぎる!」

 

 一体でもあれだけ手こずったというのに、それが六体。いっそヤケでも起こしたい気分だった。

 縦横無尽に走る熱線の数は二十にも及び、その全てを回避する能力は今の一夏にはない。それでなくとも零落白夜の使用によって殆どのエネルギーを持っていかれてしまっているのだ。飛行のみに専念したとしてもあと数十秒可動できるかどうかといったところだろう。

 皿式のほうも装甲を切り離したことで専用機を展開することが不可能になったらしく、ISスーツの状態でアリーナの隅で蹲っている。

 これで本当に一人で戦わなければならなくなってしまった。楯無には直ぐに離脱しろと言われたが、せめて生徒たちが避難するまでの時間は稼ぎたいというのが本音だった。だがそれも扉のロックが解除されないことには始まらない。八方塞がり、じりじりと削られていくシールドエネルギーに焦燥を募らせていると、目の前に漆黒のISが迫っていた。

 

(しまっ――――)

 

 気を抜いたつもりなど毛頭なかったが、連戦による疲労は脳の回転を鈍らせていたらしい。致命的なまでのミスに、思わず歯噛みする。目の前で相手の砲身が強い光を放つ。熱線を放つ前兆だ。

 背後で誰かが叫んだような気がしたが、それももう良く聞こえなかった。

 

 そして。

 

 ――――目の前に迫っていた一体の黒いISは。真横からの衝撃に紙切れのように吹き飛ばされた。

 全身装甲で覆われた機体が冗談のように大きく凹み、そのままアリーナの外壁に激突する。

 タンッ、と軽い音を立てて一夏の正面に降り立ったのは、周囲に蔓延る機体と同じ黒。だが、それと比べると余りにも小さかった。その人は、一度だけ一夏へと目をやり、次いで周囲の五体のISを順に見やる。

 

 エネルギーの残量が0になったのか白式が解除されてしまった一夏へと、黒の人物は告げる。

 

「離脱しろって言っただろうが。……だがまぁ、よく持ちこたえたな」

 

 テールを靡かせ、更識楯無は僅かに笑う。

 

「――――ここから先は、俺が請け負った」

 

 

 

 

 

 

 




 姫無、皿式サイドは次回。

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