Fate/Evil   作:遠藤凍

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……やあ皆様。遠藤でございます。


最終回に引き続き私が担当をやらして頂きます。

……前回オメガがやってただろ?あれは乗っ取られただけなので気にしないように。


では、今回は主人公ネバーこと終永時の話……全てが終わった中、彼がどのようにしてきたのか。それをご覧頂きたい。




Episode of Never 〜世界を飛ぶ悪達〜

 

 

 

「やったよ……セイバー」

「ええ、上手く行きましたね」

 

 

悪魔が落ちたと同時、アスモは地へと降り立ち、待っていたセイバーと喜びを分かち合っていた。しかし、その2人の顔は何処か悲しげな雰囲気を見せてもいた。

 

 

「……エイジは?」

「……分かりません」

 

 

そう、漸く倒したと言うのに肝心の永時の姿が見えない。そのことが2人の不安を加速させる要因であった。

 

そもそもこの過程に至ったのは永時の考えだ。向こうが大技を放ったのを見計らって自分が切り札を放ち、倒す。

もし仮に防ぐとしたら変身を解除して『普通求めし異常者(ノット・バット・ノーマル)』を使用するしか逃げ道はない。ならばその時が起こった時の保険として奴が油断した時にセイバーがアスモを飛ばし、普通の物理攻撃で止めを刺すよう頼んでいたのだ。永時の鎧が消え、薬を打ち込んでいたのはこの為である。

更に一応変身を解除せず負けた場合もセイバーには自分ごと宝具を撃たせる算段であったが、それは杞憂に終わったようだ。

 

 

そして現実としては永時は緑弾を諸に受け、その後は何も残っていない。だが希望は一応あった。

 

 

「ですが……私はまだ残っています」

 

 

そう、セイバーがまだ残っていること。つまりそれはマスターがまだ生きているという証明でもあった。

 

 

「そうだね、とりあえず探してみy「静かに」ーーーっ!?」

 

 

突然の声を上げたことに驚愕するアスモ、しかし言われた通りに静かにすると、何かを引きずるような音が聞こえたではないか。

 

 

「こっちです!」

 

 

聞くや否や駆け出すセイバーを急いで追いかける。

 

 

「……エイジ!?」

「!?」

 

 

そして間も無くして見つけた……身体を引きずって動いていた永時……しかし、両足と右腕がない状態でだ。

 

 

「……ああ、お前ら。やっと会えたな」

 

 

その痛々しい姿にセイバーは声が名前以外何も言えなかった。あれだけの攻撃を受けて尚、生きているのが奇跡に近いもの、彼の生命力の恐ろしさを改めて知った時であった。

 

一方アスモは免疫はあった為すぐ様側へと駆けつけ、永時を抱き抱える。しかし、その目は潤んでおり泣きそうのは明らかであった。

 

 

「よく、生きていたね」

「まあな……辛うじて避けられた所だ」

 

 

いつも通りの不敵な笑みを浮かべ、血濡れとなった赤い左手を開いたら閉じたりと動かした。

 

実を述べるとあの時直撃などはしておらず、辛うじて回避に成功していたのだ。

緑弾を飛ばされたあの時、残っていた左腕を動かしてセイバーと戦った時のように左手(ワイヤーアーム)を飛ばし、両足を分離(パージ)して自身を軽くすることでギリギリ回避に成功していたのだ。

しかし、それでも受けたダメージとそこから無理して『人外惨禍・自称悪道(エゴイズム)』を放った為に魔力や体力などは既に底をついており、平たく言えば死に体と言っても可笑しくない状態であった。

 

 

「……セイバー」

「何でしょうか?」

「助かった……それと、迷惑かけたな」

「気にしないでくださいエイジ、迷惑をかけたのは寧ろ私の方。私の我儘を聞いて下さり、尚且つ貴方の敵として立ちはだかった非礼を、お許しください」

「気にするな……迷惑掛けられるのは信頼の証と思っておくさ」

 

 

頭を下げるセイバーを永時は残った手で制する。セイバーとしては少し納得のいかない所だが永時はこうなった以上何を言っても意見を変えないことは理解している為、諦めることにした。

 

しかし、時間は有限である。

 

 

「……」

「もう来たか」

 

 

永時の魔力が底をついた今、供給する魔力は残っておらず、それ故セイバーが消え始めるのは必然であった。

 

 

「もう、お別れの時なのですね……」

「すまんな、聖杯をやれなくて」

「お気になさらず、寧ろ中身があれだと知って使う必要がないと思っていますから。それに……」

「それに?」

「貴方が言うように、先を見据えて生きてみるのも、一理あるのではないかと思いました」

 

 

そう語るセイバー。未知なる未来に対して少し不安げな様子が見られるも最初の頃に比べれば随分と落ち着いた顔になっているではないか。

 

 

「とりあえず願い事は保留ということで」

「そうかい……だが、偶には振り返ることも大切だ。過去というのは、自身の欠点や過失を見つめるいい機会だ。そして、そこから新しいやり方というのも見えてくるはず……少なくとも俺はそうして生きて来た」

「そうですか……分かりました。肝に命じておきましょう」

 

 

ある程度で会話を区切り、今度は視線をアスモへと向ける。

 

 

「ん?なんだい?」

「アスモ……エイジを頼みましたよ」

「勿論、任せて!」

「ですが……余り下品なことを言い過ぎないように。色欲とは言え、私やエイジはともかく、側から見れば白い目で見られますよ?」

「うぐっ!?き、気をつけるよ」

 

 

思わぬ正論を言われてぐうの音も出ないアスモ。そんな彼女をセイバーと永時は微笑ましく見つめていた。

 

そんな中永時は思い出したかような声を出した。

 

 

「最後に言わせてくれ」

「何でしょう?」

「……時には誰かを頼れ、いずれ1人では限界が来るんだ。その為に信頼出来るものを探せ。それが難しいなら……」

「難しいなら?」

「ある程度お前から誰かを信頼してみろ。そうすれば自ずと人は付いてくる」

 

 

死に体と言うのによく話すものだとアスモは呆れながら、セイバーは少し思い詰めた様子で黙り込むもすぐに永時と向き直った。

 

 

「一応言いますがそれは貴方も言えることでは?」

「自覚はしている」

「なら、構いません……エイジ」

「何だ?」

 

 

ブーメラン発言と自覚しつつも不貞腐れている永時にセイバーは微笑みを浮かべ、最後に彼に言いたいことを述べる。

 

 

「……ありがとう」

 

 

たったそれだけのこと。だが、ここまで付き合ってくれたことへの、話を聞いて考えてくれたことへの純粋な感謝の気持ちであった。

 

 

「それと……あれはお返ししますね」

「おい……チッ」

 

 

何かを言おうとした永時。しかし、その前に彼女は消えた。してやったりとイタズラが成功した子どものような笑みを浮かべ

 

 

「なぁにエイジ、もしかして照れてるの?」

「……うるせぇ」

「まあ褒められ慣れしてないもんねぇ……ん?」

 

 

顔を背けている相棒に可愛いなぁと内心思うアスモ。だがそれはすぐに変わることになる。

 

 

「エイジ、これ……」

「こいつは……」

 

 

アスモがセイバーのいた場所からある物を拾ってくる。それは、永時にとって見覚えのありすぎる物であった。

 

 

「『全て遠き理想郷(アヴァロン)』か……」

 

 

そこにあるのは黒き騎士王が使用していた宝具。永時が彼女を呼ぶ要因となったエクスカリバーの鞘そのものだった。

 

 

「あの女……」

 

 

そこで彼はようやく理解した。返すと述べた彼女の言葉の意味を……

 

 

「ふん、要らんことしやがって……」

 

 

それでも嬉しそうに笑みを浮かべる永時にアスモは微笑ましい視線を送る。しかしその気持ちもすぐに引かせ、本題に入ることにする。

 

 

「それでエイジ……後どのくらい持ちそう?」

「分からん。今回ばかりは死ぬことも前提に入れねばならん」

「そっか……じゃあ、次は何処に行く?」

「この状態だしな、すまんが拠点に戻ってくれないか?ただし、ネルフェには見つからないようにな」

「オッケーーーッ!エイジ!!」

 

 

二つ返事で返答し、翼を広げようとした所で突然声を上げるアスモ。見れば真っ黒な何かが自身へと迫り、アスモは身を呈して動けぬ永時に覆い被さった。

 

しかし予想していた痛みは来ず、恐る恐る目を開けると同時、妙な浮遊感が2人を襲っていた。

 

 

「ッ!お前!?」

「……借りは返したぞ」

 

 

それが吹き飛ばされていると気づいた時、永時はその目でしかと捉えた。

 

長い黒髪を垂れ流し、筋肉隆々の大男……本来の姿を晒したノット・バット・ノーマルと呼ばれた男。その男がしたり顔で黒い何かに飲み込まれて行く様を。永時は見続けるしかなかった。

 

 

『無駄なことを……!今楽にしてやる!!』

 

 

だが消えて少しした後、緑の光が黒い何かから漏れ出て、街の各地から緑のエフェクトが広がった。

 

 

「……行くぞアスモ。奴の覚悟は無駄には出来ん」

「そうだね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か聞こえないか?」

 

 

アスモに掴まれて飛翔して目的地へと向かう道中。急に永時はそのようなことを言い出した。

 

 

「えっ……?あっ、確かに聞こえるね」

 

 

そのことに永時とアスモは同じ疑問を抱いた。今此処は先程まで戦場であり、現在は元の灼熱地獄へと戻っているこの場。

 

いないかもしれない生存者を探す馬鹿でもいるのだろうか?2人はそう結論付けて先へと進む。

 

 

「……待って」

 

 

……はずが、アスモの一言と共に静止することとなる。

 

 

「エイジ、この声……君が知っている人の声だよ」

「何?」

「エミヤキリツグ、君のお弟子さんだった人だよ」

「そうか……すまんな」

「オッケー♪」

 

 

互いに目を合わせ、永時の謝罪の言葉と共にアスモは全てを理解し、声のする下へと降り立つ。

 

 

「っ!終永時!?」

 

 

降り立った場にいたのはかつて弟子だった衛宮切嗣その人だった。そして、その後ろには虚ろな目をした瀕死の少年もいた。

 

死んだ目に光は完全に消え、絶望しきった顔。しかし、切嗣には抵抗する気があるのか銃を引き抜こうと構える……も銃を持っておらずしまったと驚く顔を見せた。

 

 

「銃を失くすなんて、意外と抜けてる?それともマヌケなのかなぁ?」

「やめろアスモ」

 

 

銃がないや否や挑発するアスモ。まあ数年前に永時はこの弟子とやらに撃たれたのだ。そのことを根に持っているのだろう。

 

しかし、永時はそれを手で制すると動く身体を何とか動かして立たせた。

 

 

「何だその体たらくは?」

「……貴方には関係ない」

「大方、この現状に心折れちまった感じか……馬鹿が。紛争地域でも行きゃあこんなのいくらでも見れると教えただろうが」

「……れ」

「哀れなもんだ。仮にも正義の味方ならこの程度で折れてどうする?」

「……黙れ」

「まあ、所詮この程度だったというのは理解していたよ。平和の為に暴力という矛盾した方法で解決するなんざただの悪循環だからなぁ」

「……黙れ!」

 

 

そこで切嗣は声を荒げた。だが、大して永時は驚くことなく、ただ悪どい笑みを浮かべていた。

 

 

「平和の為に聖杯戦争に参加し、舞弥やアイリを犠牲にしてようやく平和に辿り着いたというのに……!」

「……なるほど」

 

 

そこで永時は理解した。この男は希望だった聖杯の正体を知ってしまったこと。そして……小聖杯を破壊した要因ではないかと。

 

だが彼は悔やみはするが怒りはしない。もう過ぎたことを言った所で無駄だと理解しているからだ。

 

 

「(希望が絶望に変わったってところか……だが、この調子じゃもう……)」

 

 

多分完全に心折れてしまっている。時間を掛けて話していけば治るかもしれないが、生憎そんな悠長な時間はなかった。

 

 

「……チッ、アスモ」

「えっ?いいの?」

 

 

再び目を合わせてアイコンタクトでやることを察したアスモ。すると自身が持っていた『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を切嗣に向けて投げつけた。

 

 

「……っ」

「受け取れ……お前の知っている本物のアヴァロンだ。それで目の前のガキでも助けていろ」

「……何故?」

「何故だと?……ふん、あまりにお前が哀れすぎたのでな。せめてもの選別だ。それに、目の前でガキに死なれては後味が悪くなるだけだしな」

「……」

 

 

受け取った途端直ぐ様少年に入れる。その様子を眺めていた永時は彼を哀れみの視線を向けていた。

 

 

(本当に哀れだな……暴力で取れる平和なんざ限られている。そんな矛盾した行いをすれば破滅は目に見えているだろうに……)

 

(そもそも、見知らぬ大多数の為に身近な者(少数)を犠牲にしている時点で……)

 

 

「無駄に正義なんぞにこだわるからだ……行くぞ」

「う、うん……」

「……せめてそのガキだけでも、守り通してやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点のある一室。無事に帰還した永時とアスモは現在、部屋の中を物色していた。

 

 

「……本当にいいの永時?ネルフェちゃんに会わなくても」

「ああ」

 

 

とは言え、死に体である永時は探さず、具体的な場所を指示するだけでアスモは指示された場所を探す。それを繰り返していた。

 

 

「……あっ、あったよ!」

 

 

そしてようやく見つけるとまるで自分のことのように喜んで永時に手渡すアスモ。その様子はさながら犬のようで尻尾をパタパタ振っている幻影が見えそうな気がする。

 

 

「すまんな」

「気にしないで!でも、これをくれってことは……」

「言うな」

 

 

それ以上言わせまいと手で制する永時。しかし何処かしら寂しげで、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

「……今ならベルントの奴の気持ちが分かるな」

「ああ、部下だったオーク君?懐かしいなぁ」

 

 

昔の部下のことを思い出し、懐かしそうに思うこともあるがそれより何故こんな時に彼が出たのか、アスモとしてはとても気になってしまった。

 

 

「それで?どうして彼が出たんだい?」

「……死を前にしたあいつは女を苦しませまいと消えようとした、その理由が、その覚悟が、今なら共感出来る」

 

 

1人の女の為に身を粉にして働き、命を尽くして守り、苦しませたくないと黙って消えようとした。孤独になり悲しませると分かっていても彼は覚悟を持って消えようとした。

 

全てが大事な者の為故の行動。現在娘がいる永時には共感出来る所があり、そこから連想する形で思い出してしまったようだ。

 

 

「でも、それって……」

「分かってる。どの道俺は病を抱えた身、今生き残った所で先は見えている」

「そっか……なら、最後まで付き合ってあげるよ」

「……別に無理しなくてもいいんだぞ?」

「残念。もうあの時から決めたんだ……地獄の底まで付いて行ってやるってね」

「……馬鹿だなお前」

「それはお互い様だよ」

 

 

そう言った途端沈黙。しかしすぐ様2人から笑い声が漏れ、2人は小さく笑い合った。

 

 

 

「ハハハ……さあ、早くしないと見つかっちゃうよ?」

「クカカ……そうだな」

 

 

そして永時はアスモの持ってきたカセットテープレコーダーのスイッチに指をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何?」

 

 

だが、気づけば彼は何もない白い大地に立っていた。

 

何事かと辺りを見渡せば廃墟。しかもよく見ればイギリス辺りで見れる煉瓦造りや石造りの建造物ばかり。

 

 

(どこだここは……?あの世、にしてはイメージとは違う。それに、何処か懐かしい気配がする?)

 

 

見覚えのない場所なのに何処か違和感を覚える永時。しかし、その場にいた所で何も変わらないのでとりあえず歩き回ってみることにした。

 

 

(土壌は白い砂……辺りは廃墟ばかりで人の気配なんぞ……ん?)

 

 

暫く歩いて、何もないと結論付けようとしたその時、物陰に人の気配を感じ取った。

 

敵の可能性もあるので警戒しながら覗いてみる。するとそこには見覚えのある桃髪の少女が立ち尽くしていた。

 

 

「アスモ……何しているんだ?」

「あっ、エイジ!探したんだよ!」

 

 

相棒の姿を見るや少し興奮気味になって駆けつけてくるアスモ。その様子はやはり犬のように思えてしまったのは内緒である。

 

 

「気がついたら急にいなくなったから2人して探していたんだよ!」

「2人?」

「ーーー私のことだ」

 

 

重圧感のある低い女の声がしたので後ろを振り返った。そこには先を三又になるよう括り、腰まで伸ばした漆黒の髪に褐色肌、その両肩にある竜の刻印が目に入る女であった。

 

 

「……なんだ、痴女k「アジ・ダハーカだ」……いや、知ってる」

 

 

彼がそう判断したのは仕方ないことだ。何故なら彼女?は黒いタンクトップに同色の下着1枚の服装で出て来たのだからそう言われても仕方ないことであった。

 

 

「お前、相変わらずそういう所はすぼらだよな」

「動きにくい洒落た姿なぞ面倒でな、それに……」

 

 

そう言って彼女は永時に密着しそうな距離へと近づいてくる。香水でも振ったのか、仄かに漂う意識が遠のきそうな甘い香りが周囲へと漂わせている。

 

 

「……貴様を夜伽へ誘うには、持ってこいの姿であろう?」

 

 

そう言って首元から見える大きな存在感を示す双丘を永時の腕へと当て……ようとして瞬間移動(テレポート)で真後ろへと逃げられてしまう。

 

 

「むっ?逃げるのか?」

「やめろやめろ、今はそう言う時じゃないだろ?(やはりノーブラか……)」

「……まあそうだな。これ以上すると色欲がまた煩そうなのでな、またの機会としようか」

「そうかい……(本当すぼらだな……今度買いに行かせーーーいや、敢えて姉貴と一緒に行かせるか)」

 

 

苦手な人物で意趣返しをしようと考えているとは露知らず、彼女は近くにあった岩場へと腰掛ける。どうやらその様子からして当分帰る気はないようだ。

 

だが、それはもういいことだろう。

 

 

「……む〜」

 

 

次はこっちで拗ねてる相棒(アスモ)をどうにかしなくてはならんのだろう。

アジ・ダハーカ(以下アジ)の誘惑を跳ね除けている中、そっぽを向いて自身の不機嫌をアピールしていた。

 

 

「アスモ、何を怒っている?」

「別に?怒ってないけど?エイジが誰といちゃついていようが僕には関係ないことだしね」

「(ククク……明らかに関係あるだr「(余計なことは言うな)」……つまらん)」

 

 

アジがニヤついている所を見ればどうやら怒ることが想定内であったのだろう。明らかに永時の反応を見て楽しんでいた。

 

そんなアジに余計なことを言わぬよう釘を刺した後、仕方ないとアスモの両頬を引っ張ってこちらに向ける。しかし、その手を振り払わず目線を晒すことで抵抗を示しているが、寧ろ可愛いらしく思えてしまう。

 

 

「お前がそう思えたのなら謝ろう……すまんかったな」

「ふーん……」

「……ああ分かったよ。今度2人でどっか行く。これで手を打たないk「オッケー♪」……はぁ」

 

 

要求を聞くや否やあっさりと機嫌を戻すアスモ。単純なのか、計算済みなのか何とも言えない永時であった。

 

 

「それで……ここは何だ?」

「うーん……よくわかんないや」

「……」

 

 

聞くとすぐに分からないと答えるアスモ。しかしアジの方は何か思い詰めた様子で辺りを見渡しており、一言も発することをしなかった。

 

 

「どうした?」

「……いや、懐かしい雰囲気を感じてな」

「……確かに」

 

 

言われた通りそんな気配は感じ取っていた。いい方と悪い方の両方の意味でだが。

 

 

「まあ、行けば分かることか」

《そういうことだ……早く行くぞ》

 

 

そう急かすアジ。しかし、そんなことを言いつつ、自分はいつの間にか姿を眩まし、ちゃっかり永時の中へと戻っていた。

 

 

「……アスモ、行こうか」

「りょ〜か〜い」

 

 

とりあえず戻った居候のことは考えず2人は先へと進むことにしたのであった。

 

 

そして、永時はあの4人と再会し、その後『世界の掃き溜め』にて探索をすることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー悪いな姉貴……あんたに会うのは、もう少し先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 






アジ・ダハーカ

邪悪な者とされる3頭の毒龍。千の魔術を扱うとされる悪の根源、悪の化身。自称悪の探求者。
エンドコール討伐時代に出会い偉く気に入られた。人間時には腰まで伸ばし、先が三又に別れている漆黒の長髪に褐色肌。服装に関してはかなりすぼらで、黒のタンクトップに下は最低限の布地で隠している。両肩には龍の刻印がある。本来性別などの概念はなく、気分によって男や女になる、と言っても女が圧倒的に多く、恐らくは男である永時に気を使ってる?それか娯楽の一種として夜伽に誘うのが目的と見られる。

永時を気に入った理由としては「悪となるために悪を為すのではなく、悪を為すから悪を名乗る。それはそれで面白いではないか」と語っている。



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