Fate/Evil   作:遠藤凍

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やあ、皆お久しぶりだね。

……えっ?誰って?ほら、そこはタイトル見ておくれ。






分かった?……そうだよ、皆さんがよく知っている男。座右の銘は『面白ければ全て良し』のオメガさんだ。


今回は察していると思うけど、オメガさんの話ということで特別にやらせて貰ったわけだ。





……今回はノットやネバーと別れた後オメガは何をしていたのか?それについて見て頂いて貰う。

とは言ってもオメガさん自身理不尽の塊とネバー達に言われるぐらい意味分からん展開になるかもしれないけど、そこはご愛嬌ということで……



では、ごゆるりと……。




蛇足的な小話
Episode of Omega 〜終わりの共闘〜


 

 

 

「はーい、どいたどいた〜!」

 

 

軽い調子で言いながら回し蹴りをそれの頭部へと放つ。放たれた足はオメガと敵対する黒い霞を纏った影のような人型の頭部と胴を断ち切った。

 

断ち切られた人型は形を崩し、塵となっていく。それを見て目的地へ向けて走って前進する。しかし同じ人型が視界の隅から5体程新たに敵として接近してくることで歩は止められることとなる。

 

 

(うげっ……またか)

 

 

新たに現れた敵対者にうんざりとした表情で見やる。

 

何があったのか少し遡るが、永時達と別れた後、やるべきことはやっていておこうと考えたオメガは重要なポイントを巡っていた。しかし、ある建物に侵入しようとした矢先にこれだ。しかしも何度潰しても先程からずっと同じことの繰り返し。うんざりするのも無理ないことだ。

 

 

(そんなにもここに入れたくないか……ケチだね〜)

 

 

とはいえ自身は死に体ではないものの、負傷した身。あんまり時間が掛けられないのも現状であった。

 

 

「(さて、この黒い奴……まあ何か予想出来るけど。同じことしかしないしなぁ……)」

 

 

正直に述べよう……飽きた。

 

いや、別に巫山戯ている訳ではない。

そこで思い出して欲しい。どんなことがあろうと彼は気分屋。その性格(キャラクター)は変わらないため、同じことの繰り返しというのは非常に嫌うのだ。

 

 

「ああ……面倒だ」

 

 

だから、彼が怒って瞬時に人型を葬ったのは気分なのだろう。

 

 

「あのねぇ……早く終わらせて姐さんを愛でるお仕事があるんで……さっさと通してくれたまえ」

 

 

理由はどうあれ彼は突き進む。自身のお気に入り達を死なさない為に。彼は彼の気分に従って歩み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに彼が目指して場所はーーー円蔵山内部……大空洞。聖杯戦争にとって基盤となるものが存在する重大ポイントである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く進んだ後円蔵山付近へと着いた。しかし敵の猛攻を掻い潜り、目的地の寸前へと近づいたオメガを待っていたのは……数倍に増えた敵の軍勢だった。

 

 

「うざっ!しつこいなぁ君達!」

 

 

とか言いつつ、手を地につけて身体を捻り回転、足刀で敵の頭部をバターのようにあっさり切っていく所を見ると大丈夫そうだろう。

現にオメガ自身ノットにつけられた傷以外は見当たらない所からまだ余裕がある方なのだろう。

 

 

「うげっ……またか」

 

 

今捌いたばかりだと言うのに、湧いてくる敵の軍勢。一体一体は大したものではないが、流石に数の暴力は堪えるところがあり、少し面倒だと本気で思い始めていた。

 

 

(うざいなぁ……もう後先考えずに全部消しちゃおうか)

 

 

そろそろ終わらせないと面倒だと思ったオメガは自身の残存魔力を気にすることなくぶっ放そうと距離を取った時だった。

 

 

『……失せろ』

「おわっ!?」

 

 

突然、暗い緑の光が自身の目の前を横切り、敵の軍勢を包み込んだ。その威力は凄まじく、衝撃だけで自身が軽く吹っ飛んで尻餅をついた程。

 

 

「いてて……一体なんだい?」

 

 

ゆっくりとした動作で立ち上がると同時に光が晴れる。そこには地面が抉られ、ひっくり返された跡、それ以外何も残っていない光景だけが目に入った。

 

 

「これは……」

『所詮有象無象……無様なものだ』

 

 

目の前で起きたことに驚くオメガ。しかし、そんなことよりもこれを引き起こし、先程から聞こえている声の主が気になり始めていた。

 

 

『だが仕方なきことだ』

 

 

さっきより声が近いように感じる。どうやら近づいて来たようだ。

 

 

『逆らうことも、避けることも、増してや消すことなど出来ぬ……そう思わんかーーー』

 

 

一言告げる度に声は近くなり、オメガの緊張が少しずつ高まっていく。

 

 

「ーーーなあ、オメガよ?」

 

 

そしてそれは姿を現した。パッと見た感じはさっきからいる黒い影のような霞を纏った人型と同じ気配だ。だが、理性的で会話してきていること、それに聞き覚えのある声と姿形がオメガの中にあった疑問を解消させた。

 

 

「これはこれは……懐かしいお方だ」

 

 

目の前にいる着物を来た人物をオメガは素直に驚きの声を出す。そこには警戒心が醸し出し、少なからず好意的ではないことは理解できた。

 

しかし要因である本人は知って知らずか、何処吹く風と余裕ある表情で受け流していた。

 

 

「んで、何でここにいるのかな?」

「いや何、自称この世全ての悪と名乗るイかれた者に貴様の対抗馬として呼び出されたのだがな……貴様があまりに無様な姿を見せるものでな。手を貸してやろうかと思ったまでのこと」

「いや君一応向こう(敵側)でしょ?」

 

 

姿は同じ影のような人型、明らかに敵として登場しているのは明らかで味方ですと言われてもオメガは信用出来なかった。

 

 

「何を言う。私があの程度の存在に屈するとでも?神だろうが下す私がだぞ?」

「……まあ、そりゃそうだよね(流石、同じ血が流れているだけはあるね)」

 

 

まあ本人もああ言うのだ。お言葉に甘えようじゃないかとオメガは支援を頼むことにした。

 

 

「なら、お言葉に甘えさせてもらうよ」

「賢明な判断だ。そう来なくては面白くない」

「じゃあ背中は……任せたくないなぁ」

「フッ……安心しろ。貴様らを殺すのはこの私だ。有象無象如きにくれてやる訳がない」

「いや、それ信用出来ないんですけど!?」

 

 

味方?の発言にとりあえず背中は守っておこう。そう決断したオメガであった。

 

 

「とは言え今の私はサーヴァントでいう宝具が使えぬ身、今の貴様や自称悪はともかく、他のものに潰されるのが目に見えている」

「……それは戦力的に大丈夫かい?」

「安心しろ、この程度肩慣らしには丁度良いだろう……さっさと行け、私の気が変わらん内にな」

「それはありがたい!」

 

 

この感じだと一時的に味方をしてくれると判断したのか、目的地に向かって一気に駆け出す。そんな彼を阻もうと他の敵が迫るも、味方となった人物が立ち塞がることで道を塞いだ。

 

 

「終焉の時だ、有象無象共……少しは楽しませろ」

 

 

その人物が自身の後ろで敵陣に突っ込んでいたことを皮切りに人影共は戦闘を始め、それを一瞥するとオメガは一目散に目的地へと走り出した。

 

 

(なら今は信用しておこう……後は頼んだよ、エンド・コール)

 

 

エンド・コール。その名はかつて自称悪、黒槍姫、万能、異常者の4人が倒したとされる終焉の体現者の名であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、やって来ました!大聖杯〜!」

「これが大聖杯とはな」

 

 

龍洞内部。遂に大聖杯と呼ばれるものへと辿り着いたオメガ御一行。状況が状況だと言うのにオメガは相変わらず軽い感じ調子である。

 

 

「所で君、見張りはどうしたんだい?」

「飽きたからそこらを消し炭にしてきた……しかし、まさか魔法陣とはな……てっきり、黄金の杯をイメージしていたのだが……」

「あのねぇ、仕事してくださいよぉ」

 

 

呆れ気味に述べるオメガの苦言をまたもや何処吹く風で大聖杯の正体に驚きを隠さず、眺めていた。

 

 

「あれ?情報を入れられてないのかい?」

「貴様らを殺せと言われただけ、それ以外にはいらん考えなのだろう」

 

 

それはつまり使い捨てする気満々だったと言うことの表しでもある。しかしそれに怒ることもせず、それとは別に何か思い出した様子であった。

 

 

「怒らないんだね」

「いや何、とある愚者を思い出したものでな……あまりに滑稽すぎて怒る気も起こらんわ」

 

 

怒る所かくつくつと笑いを漏らす姿に胸を撫で下ろす。本心としては癇癪を起こして何をするか分かったものじゃないので溜飲が下がる思いだったようだ。

 

 

「……兎にも角にも、さっさとしろ。私の気が変わらん内にな」

「とは言っても……」

 

 

そう言って手の甲で虚空を叩く。するとその手は途中で見えない壁によって遮られることとなる。

 

 

「なるほど、障壁か……強度は?」

「恐らくある程度のレベルなら防げる。後、物理で壊しても即座に修復するっぽい」

「なら、一点集中すれば良い。幸い私自身全力を放つだけのパワーは残してある」

「そっか……なら頼むよ」

「上手く合わせろ……!」

 

 

両手を横に広げ、禍々しい暗い緑の光を両手に灯す。するとオメガは何か思い出したのか、そうだと素っ頓狂な声を上げた。

 

 

「あっ、そうだ……」

「こんな時に何だ?」

「君……助けた理由に僕が不甲斐ないからとか言ってたけど、嘘だよね?」

「そうだ……」

 

 

あっさりと嘘だとバラし、それに少し目を見開くオメガ。そんな姿を見て満足そうにクツクツと笑っていた。

 

 

「なぁに、とある女との交換条件を果たしてやっているだけだ」

「そう、かいっ!」

 

 

納得したのか、その場からオメガは跳躍。エンド・コールの正面になるように落下していき、

 

 

「さあ、始めるぞ(序でにくたばれ)

「ちょっ……ルビが酷いことにぃぃぃ!?」

 

 

着地する直後、広げた両手から極太の光線が2本放たれ、それに押される形で不味い発言(メメタァなこと)をしながらオメガは突き進んでいく。

 

狙うはただ一点のみ、更に砕くと同時に侵入する勢いも必要。ならばと即座に考えた一撃。

 

 

「名付けて!『全て終わらす勝利の蹴り(ジエンド・オブ・オメガ)』!今の僕は全てを壊す最強の槍と化す!」

 

 

そのまま飛び蹴りの形で押され、突撃。放たれた一撃は無駄に万能性を駆使したオメガの前には熱い展開とも言える衝突からの拮抗なぞは当然なく、虚しくもあっさりと砕かれ、そのまま本体(大聖杯)を貫いていった。

 

 

「フン、終わったか……」

 

 

大聖杯を貫いた直後、完全に壊れた証拠として、自身へ来ていた魔力が途絶え、役目を失ったエンド・コールは塵となって消えていく。

 

 

「やはり終焉は良いものだ。特にのうのうと高みの見物する者、傲慢な愚者程、終わらせる時は特に心地よい」

 

「しかし……あの名だけは、致し方納得がいかんな……」

 

 

忌々しそうに大聖杯だった場を見つめ、完全に塵となって夜空へと舞い上がる。

 

エンド・コールの抗議も虚しく。誰にも聞こえることなく、溶けるように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーすまない(あね)さん。どうやらここまでのようだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーってなことがあった訳よ?」

「へえ、オメガ君にしてはマトモなことしているじゃない」

「オメガ君にしてはって……」

 

 

やったことにドヤ顔で語り、鼻高になるオメガだがアムールの純粋な一言によってあっさりとへし折られてしまった。

 

 

「ふん、あんなセンスのない名をつける男だ。それだけで大体碌でなしというのは想像がつくだろう」

「酷い……じゃあ君ならなんてつけるんだいエンド・コール?」

 

 

しょんぼりした顔でエンド・コールに視線を向ける。するとエンド・コールは口角を上げてこう答えた。

 

 

「そうだな……『終末砲』はどうだ?」

「厨二乙」

「死ね」

「ぶべらっ!?」

 

 

何の躊躇いもなく、予備動作もなく割りかし殺す気で放った拳がオメガの顔面をひしゃげさせ、そのまま身体ごと吹き飛ばしていった。

 

 

「殺す気か!?」

「当たり前だ」

「いやいやダメでしょう?」

「知らんなぁ」

 

 

今したことに抗議するも肝心の容疑者は我関せずとどこ吹く風と聞き流すだけ。

 

こうなってはもう聞いてくれないと理解したオメガは深い溜め息を吐いて気持ちを切り替えることで諦めた。

 

 

「まあいいや……とりあえずトランプでもしない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、異常者と自称悪が揃うのはポーカーを3ゲーム程終えた辺りのことだった。

 

 

 

 

 

 

 


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