Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜居候さんが送るあらすじ〜


「長らくお待たせしました皆様。お久しぶりの投稿でございます……うむ、あの自称人間(オメガ)に言われ、気分転換に椿アネモネのような口調に変えてみたが……自分で言うのもなんだが、不気味で仕方ないなこれは。

ゴホン……久しぶりだな皆の者。遠藤の奴が忙しかったようでかなり時間が掛かってしまったようだ。本当に申し訳ない。

前回破壊好き(?)の悪魔が暴れる中、援軍が現れる。傲慢、強欲、幼女好きが来るものの……果てさて勝てるだろうか?

奴はまさに悪そのもの。果たして勝てるかどうか……これは見ものであろうな。









おっと、言い忘れていた。今回も話の都合(?)で2話連続で投稿するそうだ。そこの所は注意してくれ……では、楽しんでくれ」





嗤う悪魔

 

 

 

 

「ノット君、こっちに来て!」

「----……なんだぁ?」

 

 

割と最近か、はたまた大昔か、定かではないが少なくとも前のこと。

 

----に手招きされるがままゆっくりと側へと歩み寄るノット。朝っぱらだと言うのにこの元気は一体どこから来るのだろうか?と疑問に思いつつ近づいてみる。

 

 

「ほら、これを見て!」

「……」

 

 

招かれたのは景色を一望できるであろうテラス。その広さというと彼女はともかく、身体の大きいノットがいることで1歩横に踏み出せば互いに触れられるような広さとなっていた。

 

そして、そこから見えた景色。それはいつも通りの、のどかで平和な街の景色であった。

庭の手入れをする者、買い物をする主婦、荷物を運ぶ宅配業者らしき者、走り回る子ども達、それは極普通の平凡な人々の日常。

 

 

「……?」

 

 

だが彼は異常者。普通を求めたとはいえ、中身はあの悪魔であり、それが普通であるべき姿ということが分からなかったのだ。それ故にこうして理解出来ずに小首を傾げているのである。

それを見て彼女は苦笑、ノットに説明しようと口を開く。

 

 

「あらあら……じゃあ、あれを見てどう思う?」

「退屈と思える程のどかで平和な街だな……それがどうした?」

「あのねノット君。貴方にとってはどうかは分からないけど、私にとっては、こうして皆が笑顔で平和に過ごせることが当たり前のように出来る、それが普通だと思うの」

「平和が……普通?」

「そう……誰も血を流さず、花のような笑顔がずっと見られる………それって素敵なことじゃない?」

 

 

素敵な、とはよく分からないが少なくともいいものだと言いたげなのは何となく理解した。

 

 

「なるほど、これが普通なのか……」

「うーん、あくまで私にとってはずっとそうあるべき姿だからそれが普通とは限らないわよ?」

「いや、お前がそう言うのだ。あながち間違いではなかろう」

「あら?えらく信頼してくださるのね?」

「強いて言うならお前だから、それだけで充分だ」

「あらやだ、カッコいいこと言っちゃって!」

「……フン、お前がそう思うなら構わんが一応本気で言ったつもりだぞ」

「えっ…?本当なの?」

「本当だ」

 

 

聞くや否やおちゃらけた態度から一変。急に顔を赤く染めて俯く彼女にノットは首を傾げた。

 

 

「嬉しい……ありがとうノット君」

 

 

そう言って緑がかった髪を搔き上げる。見た目は10代後半、或いはそれ以下かもしれない見た目にはそぐわない気品のある仕草と、可憐さ、そして色気を醸し出しているのだがそれすらも靡くことはなく首を傾げた。

 

 

「ん?何のことだぁ?」

「……強いて言うなら、貴方のことがもっと大好きになったって所かしら?」

「……フン」

 

 

だが、ストレートな好意には流石に気づいたのか、照れ臭そうに顔を背けるノットを彼女は微笑みながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァーハッハッハッハッ!!」

 

 

そして現在。

 

滅びの一途を辿ろうとする新都にて、両腕を横に広げて飛行するノットの高笑いが響き渡る。だがその両腕に存在するものによって何をしているのかを物語っていた。

 

 

「ぐっ……!」

「がぁっ……!」

 

 

そう、前回あれ程威勢が良かった筈の3人、正確にはそのうちの2人、オメガとマモンがラリアットで運送されていた。

 

 

「ぐあっ……!」

 

 

複数の廃ビルを無理矢理突き破って真っ直ぐ進む。その途中でマモンが道路標識にぶつかることで腕から滑り落ちるもノットは気にせず更に突き進む。

 

そして、そのままオメガは近くにあった一際大きく、そこそこの強度があった廃ビルに叩きつけられた。その衝撃により、廃ビルはオメガを中心に巨大なクレーターを作り上げた。

 

 

「ふがっ……!」

「もう終わりか?」

 

 

そのままで飽き足らず手に力を込めて更に押し付けるノット。しかし、オメガはそこで終わるような存在ではない。

 

 

「ふんっ!」

「っ……!」

 

 

ノットの腕を掴み、下半身を上へと上げて左胸を蹴り上げる。

幸いにもヒット。全力で蹴ったのが効いたか、或いは向こうが気を抜いていたのか、定かではないがとにかく彼は怯み、ほんの少しだけ後ろへと後退した。更にはその影響か手の力が抜けて脱出することが出来た。

 

 

「チッ……」

 

 

思わず舌打ちするノット。視界から消えたオメガを見つけるべく首を下へと向ける。すると物凄いスピードでこちらに迫るカッターナイフを視界に捉えた。

 

しかし、そんなものが当然効くはずがない。遂に自棄になったかとノットはそのまま身体で受け止めて反撃しようと試み……

 

 

「馬鹿め……」

「……!?」

 

 

オメガがそう言葉を吐くと共に、カチッと何かのスイッチを押す仕草をする。そしてそれとほぼ同時、コンマ以下の遅れではあるがノットの左胸に当たったカッターナイフが爆発した。

 

 

「なにっ……!?」

 

 

だが致命傷などにはならず、少々焦げるだけでことは済んだ。だからと言って油断は出来なかった。

 

目の前に迫り来る次のカッターナイフを見たから。

 

 

「ぐおっ……!?」

 

 

至近距離で、更に先程よりかなり強烈な爆破に流石のノットも一瞬とはいえ、怯んでしまうもすぐに立ち直した。

 

だが、その一瞬があれば良かったのだ。

 

 

「カモン」

「言われなくとも分かっておるわ!」

 

 

粉塵が消え、クリアになった世界で捉えたのは数本の光線。それが全てさっき爆破された所へと被弾する。

 

 

「ぐぅぅぅぅ……!」

 

 

またもや怯んでしまうも先程より早く立ち直り、緑弾を投擲。そのまま光線の討ち手であるルシファーへと向かうも何重にも重ねられた盾の壁によって防がれたのである。

 

 

「なにっ……!?」

「クハハハハ!」

 

 

しかし、それはあくまで囮。本命は緑のバリアを張ってオメガに突撃するノット本人であった。

 

 

「でぇやっ!!」

「くっ!」

 

 

幸いにも見ていたため間一髪で転がるようにその場から避けるオメガ。遅れて落ちてきた悪魔は地面を余裕で陥没させる。

 

外れると理解していたのか立ち上がりは早く、手の平をオメガに向けて緑弾を撃ち出した。その数は3。

 

避けようかと考えて身体に力を込めて立ち上がろうとするオメガに声をかけられる。

 

 

「伏せてなさい!」

「おっ?」

 

 

その言葉に従って伏せるとその頭上を矢らしきものが高速で3本ほど通過した。

 

通過したそれはそれぞれ緑弾とぶつかって消滅する。

 

 

「……!」

 

 

ただし、数が丁度ならばの話。放った矢全てが緑弾にぶつかって消えたと思いきや、1本だけ緑のエフェクトに隠れるかのように光を切り裂いてノットへと向かってきたのだ。

 

しかし所詮ただの黄色い矢、手刀で弾き飛ばすことで解決し特に何も問題ないだろうと思って文字通りに行動した。

 

 

「変質」

「……あっ?」

 

 

されど、それがただの矢だといつ誰が言ったのか。マモンの次の言葉と共に矢は形を崩し、色を金へと変えた。

 

 

「ッ!ーーー!」

 

 

粘土のように姿を変えた矢だった金はそのまま自身を引き伸ばし、ノットの左胸へと槍のように鋭く変質して突っ込んだ。

 

一点に集中された強烈な打撲により筋肉は潰され、爆破により表皮を焼かれ、光線によって削られ、遂に鋼の要塞とも言えた肉体が“運悪く”も貫かれた瞬間であった。

 

 

「ば、馬鹿なっ!?」

 

 

遂に血を吹き出してしまった左胸を見て驚愕を隠せないノット。それと同時に、彼の中である考えが浮かび上がってきた。

 

 

(この俺の肉体が……昔より脆くなっているだと!?)

 

 

それは僅かながらかもしれない変化。悪の泥の影響により、耐久EXはEXでもギリギリの数値の末に成り立っているEXである事実に。

 

 

(あのクズがぁ……!何が無限の魔力供給(バックアップ)だ!弱くなっては意味がないだろうがクソッ!!全部終わったら破壊してやる……!)

 

 

今はこの場にいないマスター(クズ)に小さな報復を誓いつつも目の前の敵をどう対処すべきか考える。

 

文字通り傷を抉りとるような行為に腹が立つも逆に彼を冷静にさせ、普通求めし異常者(ノット・バット・ノーマル)へとほんの少しだけ思考(理性)が戻っていく。

 

 

(まあいい。こうなると分かっただけでも、寧ろこっちとしてはやりやすい……後はどう動くべきか)

 

 

しかし元々考えるのが苦手なノット。考えた所で何も浮かぶ訳もなく……

 

 

(とりあえず、1人ずつ潰せばいいか)

 

 

まずは……と目標を1人に絞って突撃する。

 

 

「来るぞ!」

「分かっております!」

 

 

緑弾を両手に持ってマモンへと急接近する。

 

まずは牽制で1発。しかし、案の定と言うべきか金を膜のように何重にも張って壁を作る。

 

 

「……はっ?」

 

 

しかし、それは急にカーブしてあろうことか後ろへと方向転換。一瞬とは言え呆然としてしまうマモン。

 

 

「フンッ!」

 

 

だが、壁に強い衝撃が走ったことで意識を無理矢理現実へと引き戻される。

あろうことかこの男、緑弾を投げる所か、両足で蹴ってきたのだ。

 

何をしたいのか分からず、自棄になったのかと思ったがそれも束の間のことでその意味をすぐに知ることとなる。

 

 

「でぇやっ!」

 

 

そのまま反動を利用して、反対方向、緑弾が飛んで行った方角へと飛んでいく彼を、正確にはその行き先を見て焦りが出た。

 

 

「ルシファーちゃん!」

「分かっておるわ!」

 

 

飛んできた緑弾と悪魔を見て漸く自分が狙いだと気付いたルシファー。盾を展開しようとするも向こうの方が圧倒的に早く、とても間に合いそうになかった。

 

 

「チッ……面倒な!」

 

 

だが彼女にはまだ『加速』という能力がある。例えるならば素数を愛する神父さんの最終形態の能力をイメージして貰えば分かりやすいのかもしれない。

 

とは言っても実際は自身や一部のものの時間を加速させることしか出来ぬが、それだけでも充分強力だと言えるだろう。

ただし、加速すると言っても自身にかけた場合は全てが加速するので体力などの消耗なども加速するので注意が必要ではあるが。

 

 

「ぐぅ……!?」

 

 

とにかくその能力で何とか前方だけだが展開を間に合わせ、遅れて飛来してきた緑弾が着弾する。

 

ダメージはなかったものの思っていたより衝撃が強く、少し後ろに後ずさる結果となってしまったが問題ない。

 

 

「でぇやぁっ!」

 

 

そう、この男にとっては問題ないのだ。何と言っても、本命はその次の一手なのだから。

 

気付いた時はもう遅い。盾で受け切った時にはもう、その男は彼女を横切り、無防備な背中目掛けて緑弾を投擲していたのだから。

 

 

「しまっーーー!?」

「ルシファー!?」

 

 

気付いた時はもう遅く、緑のエフェクトと共に彼女は吹き飛んだ。

 

駆けつけるマモンの視界に捉えたのは、左腕が見事に消し飛び、身体中が血化粧したかのように真っ赤に染まるルシファーの姿であった。

 

 

「ぁ……が………」

「チッ……まだ息はある」

 

 

だが、まだこれでも運が良かった方だ。運が悪ければ存在ごと消え去っていたのだからまだマシだと言えよう。そう彼女は心配しており、決して舌打ちなんかしていない。

 

だが、駆けつけたのは失態であった。

 

 

「馬鹿がっ!」

 

 

態々戦闘を中断して駆けつけるなど、悪魔にとっては格好の獲物だということに気付くべきだっただろう。

 

 

「なっ……!?」

 

 

気づけばそこに命を狙う死神の如く嘲笑う悪魔が、光弾を手にして急接近してきたのだから。

 

 

「オラァッ!」

 

 

しかし横から飛来した自動車によってノットが視界から消え去った。

 

 

「ぐっ……オメガァッ!」

 

 

横を見れば車の下敷きになっているノット。しかしそんなのは効くはずもなく、車を押しのけて立ち上がろうとしていた。

 

 

「セットアップ……点火!」

 

 

そこに追撃するかのように車を爆破させた。遅れて来る土煙と熱風が顔を直撃するも敵を見失わぬように直視し続ける。

 

 

「ァァァァ……オメガァァァァァァァァッ!」

 

 

案の定というべきか、胸の傷以外変化が全くないノットは憤怒と殺気を混ぜたドス黒い視線で睨みを利かすノットが炎の中から飛び出して来る。

 

ならばとオメガは近くにあるマンホールの蓋を手に取り、円盤投げのように投擲する。

 

飛んでいくマンホールの蓋に対して流石に学んだのか、緑弾を前方に投擲、そのまま後ろに追従するように走り出す。

 

 

「スローイングブラスター!!」

「流石に何回も無理……かっ!」

 

 

とりあえず緑弾とぶつかる直前で爆破。緑弾を消し去ることで脅威の1つは処理するも本命がまだ来ていないことで気を引き締める。

 

 

「オメガァァァッ!!」

「はいはい、そんなに呼ばなくともオメガさんはここにいますよってんだ」

 

 

爆破により発生した黒煙やらで見えなかったがそこから淡い緑が見えた時にはもう横へと移動していた。

 

遅れて放射線状に広がる淡い緑のビームらしきものが横切るも当たらない以上関係ないことである。当たらないビームを横目に見ながら一気に前進して懐へと入りこみ、足払いをした。

 

 

「チッ」

「嘘ん!?」

 

 

しかし、まるで鋼鉄でも蹴っているかのような感覚がしたと思えば蹴ったオメガ自身の足が痺れ、対してノットには何1つ効いておらず、ただただ嗤っていた。

 

 

「っ……」

 

 

ノットはお返しと言わんばかりに正面からオメガを殴り抜いた。

何とか両腕でガードするに成功するも骨の砕けるような嫌な音が聞こえ、後ろへ1メートル程吹き飛ぶ。

 

だが前方には自分に追従しようと足に力を込めて1歩前へと踏み出すノットの姿。

 

 

「あら?誰か忘れてませんか?」

「んっ?……!?」

 

 

そして、マモンの声と共に影に包まれるノット。気付いた時にはもう遅く、巨人のような黄金の腕らしきものの下敷きとなった。

 

 

「『黄金巨兵(アウルム・ペルグランデ)』!」

 

 

ドヤ顔を決めるマモンがいたのは黄金で出来た巨兵の肩。神秘の秘匿なぞ糞食らえと言っているような、10メートルは優に超えるであろう体格から繰り出される拳はいくらノットでも厳しいものだろう。

 

しかし、オメガはそうは思わなかった。

 

 

「うおぉあぁぁぁっ!!」

 

 

伝説の悪魔が、あのブロリーが、弱体化しているとはいえその程度でくたばったらどれだけ楽なことか。

 

 

「嘘でしょう!?」

「雑魚がぁぁ……粋がるなぁぁぁあっ!!」

 

 

しかし、彼にはそんな攻撃は蚊に刺されたようなもの、つまりは無意味ということである。

 

唐突にして動きを見せるノットを潰したはずの腕が、急に天に向かって浮き始めたのである。

 

流石に不味いと思ったのか、巨兵も腕に力を込めて下へ落とそうと努めるも虚しく、腕は簡単に浮かび上がってき、遂には無傷のノットの姿を確認するまでとなった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

しかも、驚くことに片手でだ。自慢ではないが一応この巨兵はマモンの魔力の込めた黄金の人形。そこらのサーヴァントでも純粋な力比べでは負けないと自負していた。

 

 

「マズイねこれは!」

 

 

流石にヤバいと感じたオメガ、懐からショーテルを取り出し、ノットに向けて全力で投げつける。

 

投げつけたそれはノットの身体に当たり、今までにない大爆発を引き起こす。その威力は巨兵の手の一部と街の一部を削り取るぐらいである。当然至近距離にいるノットは無事では済まないだろう。

 

 

「クズが……邪魔をするな!」

「おいおいおいおい!相変わらずの硬さだな!?」

 

 

だがそれはノット(悪魔)には通用しない。あろうことか怒りを買うだけとなっている。

 

片手でだけ持ち上げ、鬼のような形相で睨みを利かし、空いた片手で緑弾を持ち……頭上にある邪魔なものにぶつけた。

 

 

「嘘、でしょう!?」

 

 

爆発と共に確認できたのは第1関節辺りまで消し飛んだ腕、爆風と衝撃により後ろへ倒れこむ巨兵、そしてその事実に驚愕しか出来ないマモンの姿であった。

 

 

「雑魚は……引っ込んでいろ!!」

「っ!?」

 

 

次に見たのは、倒れるこちらに向けて緑弾を放り込むノットの姿であった。

 

それによりマモンは冷静になり、巨兵に命令。緑弾の前にわざと立ちはだかるように位置させ、盾として爆発を逃れようとする。

 

 

「フフフ……でぇやっ!」

 

 

ノットはそれを一笑、投げた方と反対の手に膨大なまでの気を溜め、投げた緑弾へと送り込み、手を握る仕草をする。するとどうなるか?

 

 

「ーーーーー!?」

 

 

無論、緑弾は膨大なエネルギーに耐えられず自壊。それに伴い、オメガのとは比べられない程の大爆発を引き起こしたのである。

 

 

 

ギガンティックミーティア

 

 

 

ノットが現在出来る技で最高峰の威力を誇ると言っていいもの。本来のものとは別だが、それに少し応用を効かしたものである。

 

とにかく、何が言いたいのかと言うと……

 

 

「ぅぁっ………」

 

 

悪くて即死、運良ければ瀕死となるのは当然であろうということである。

 

 

「フン、大人しく殺されていれば痛い目に遭わずに済んだものを………」

 

 

そして手足があらぬ方向を向けて血塗れと化したマモンを一瞥すると視線をオメガへと変える。

 

流石のオメガもこの状況になって焦っているだろうと。すると案の定険しい顔で自身を見つめており……

 

 

「……ハハハ……ククク………クハハハハハハハッ!!」

 

 

急に狂ったかのように高笑いを始めた。追い詰められて狂ったか?と思うも、この男の性格上あり得ないと次の動きを見逃さないように凝視する。

 

 

「貴様……何を企んでいる?」

「ハハハ……クヒヒヒヒヒ……!何を企んでいる?在り来たりな問いかけにいつもならつまらんと無視する所だけど、今回は興が乗ったから答えてあげるよ……遂に来たのだ!」

 

 

両手を横に広げて大袈裟な仕草をするオメガ。しかし、ノットは警戒心を高めるばかりで特に何もすることなく見つめるだけに終わらせた。

 

 

「時は来た!本来なら主人公とかに来そうだが……世界は味方しているかと錯覚するぐらいの運が、いや、チャンスが……このオメガに回って来たのだ!」

「チャンス、だと?馬鹿が、状況を見てみろ……死に損ないの虫ケラ共、バットは知らんが後は貴様だけなのだぞ?それに貴様は全力を出せぬ状態……どうして勝つと言うのだ?」

 

 

故に愚かだと、彼は嘲笑う。しかし、それでも笑みを崩さぬオメガに更に警戒心を高めるノットを他所にオメガは語りを続ける。

 

 

「……まあ細かく説明した所で、君は理解出来ないかもしれないから敢えてこう言おうーーー」

 

 

そう言ってオメガは見せつけるように親指を立て、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー今から本気出さないと君……死ぬよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでスイッチを入れるかのように親指を下ろし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オメガを中心に、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今は何とかなっている……よな?」

 

 

そして、肝心のバットはというと、とある男と共に何とか物陰へと逃れていた。男は周りを確認して安全を確保すると抱きかかえていたバットを下へと横たわらせた。

だが、いざ手を離そうとする彼の手を彼女は力強く掴んだ。

 

 

「……なんで逃げた?」

「いや、ボロボロの人間を戦場に立たせるのは流石にどうかと思っただけだが?」

「けど、俺たちが抜けたらあいつらは……!」

「……今は3人だがね?」

「るせぇ……俺は、まだ負けてねぇし。まだやれる……!」

「肋骨3本、右腕粉砕、鼻、右足を折ってる人が言う台詞かね?」

 

 

 

そう言われ言葉を詰まらせたバット。事実男の言う通りの状態であり、今戦場に立っても役に立たないことは自分自身がよく理解していたからだ。

 

 

「とりあえず『ハァーハッハッハッハッ!!』……早く回復させようか」

 

 

怒声に近い声で叫びながら所構わず緑弾を投げまくっているノットを尻目に男は彼女にそっと触れる、それだけでまるで魔法のように傷一つない状態へと戻った。

 

 

「よし!これで「まあ待ちたまえ」ふぎゅっ!?」

 

 

と同時に飛び出そうとするバットの足を掴む男。掴まれたことによりまあ転ぶのは当たり前のことで、まあ怒るのも予想できるわけで……

 

 

「次に『何すんだよ!』と言う」

「何すんだよ!……ハッ!………って遊んでる暇なんかじゃないだろ!?」

「まあまあ落ち着いて……まずは冷静になって、静かにしようか」

 

 

大声で怒りをぶつけたい気持ちだが、男に咎められて渋々冷静になり、落ち着きを見せる。

 

 

「……んで、どうするんだ?まさか策でもあるとでも?」

「ない……」

「ふーん……はっ?」

 

 

まさかの即答に少し間を空けてから反応したバット。対して男はその反応を楽しむかのようにケラケラと笑うだけ。

 

 

「まあそうなると思ってたよ……まあ強いて言うならある」

「……それは?」

「それは……まあゴリ押しって奴さ」

 

 

またもや、はっ?と間の抜けた声で返事をするバット。それも仕方ないだろう。ゴリ押しなんてのは誰でもでもすぐ思いつくような、寧ろバットがさっきまで考えていたことですらあったからであろう。

 

 

「ゴリ押しって……」

「いや、正確にはとりあえず持ちうる手を出してみると言うことだよ。それでくたばれば万々歳、無理ならば策を講じるまでさ」

「なるほど……」

 

 

要するに彼は諦めずに力を出し切って、それでも無理なら考えろと言うことだろうと理解したバット。それによりやる気が出たのか跳ねたりして身体の調子を確かめ始めていた。

 

 

「……よし、じゃあやるか?」

「ああ……」

(っても、今使える中での8割。毒殺・爆殺・呪殺・即死系とか使い切ったけど無理だった……残りは肉弾戦がメイン………勝てるかな?)

 

 

その勝利は絶望的であることを伏せながら……彼は思考を続ける。

 

 

(2人ではパワー不足、せめてどっちも合わされば強いのだが……ん?合わせる?……あっ、そうだ)

「ねえ、姐さん?」

「なんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私にいい考えがあるって言ったら、信じて乗ってくれるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フン、無駄なことを……今の奴らの実力では勝てないのだというのが分からんのか?』

「さあな?奴らなら秘策でも用意してそうだからあながち侮れんぞ……所で貴様ーーー」

『なんだぁ?』

「ーーー何故ここにいる?もう行ったのではないのか?」

『はっ?この俺がいつ行くと言った?』

「……(なるほど、そういうことか)なんでもない。まあ貴様が行く前に私が行くと言っていたからその確認だ。私自身はもう少し様子見してから行くつもりだが……」

『早くしろ。いつになったら行くのだ?』

「さあな?状況次第と答えておこうか」

『……まあいい。俺は獲物さえいればいいだけだぁ』

「そうか……(だがもし何かあったその時は、悪いが私の好き勝手にやらせて貰うぞ……)」

 

 

 

 

 

 

 








次回はセイバーvs永時へと再び話が戻ります。





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