Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜変じn……変態魔王による前回のあらすじ〜

「……いやちょっと待って。百歩譲って変人なのは認めるよ。けど、変態だけは断じて認めないよ!?変態なら他にもいるじゃないか!……例えば?ほら、皆は知らないと思うけどレヴィ……レヴィアタンはレズだし。オメガはロリコンだし。他にはマモンとかマモンとかマモンとか……ほら、意外といるでしょ?
えっ?僕……?いやいや、僕は違うよ。僕はただ単に[ピーー]とか[ズキュゥゥン!!]とか[公開してやる……と思っていたのか?]とか言うのとエイジが大好きで、ちょっと変身出来るだけの何の変哲もない、ただの可愛い悪魔だよ分かった?……うん、分かってくれればそれでよろしい。じゃあ、頼まれたお仕事でもしようかな?

さて、前回何をしていたか。……うん、僕が活躍してとてもカッコよかった……以上だね!

……えっ?仕事しろ?活躍なんてしてねえだろ?ルシファー様はどうしたって?そんなのいたっけ?うーん……気のせいだよきっと。うん、きっとそうだよ!
……あっ、そろそろ時間だね。僕も行くべき場所に行かないと……じゃあ、始めるね。



そういや……エイジはちゃんと、帰ってきてくれる……よね?」




色欲、傲慢、怠惰、強欲、破壊

 

 

 

バットの小さな手から雨のような拳の猛撃が迫り来る。避ける気力もなく、直撃を免れないアスモは吹き飛ばされまいと髪を自分の前に交差するように重ねて急所に当てまいと防ぐ。

だがアスモもそのまま耐え忍ぶだけで終わるつもりは毛頭なく、残った髪と両手を突き刺そうと振るう。

 

 

「くぅっ……「どこを見ている!」ッ!?」

 

 

しかし、足が速い彼女の前にそんな足掻きなどは当たりはしない。

 

 

「なっ……「遅い!」かはっ……!」

 

 

気づけば、車とぶつかったような鈍い轟音が響き、後ろを振り向いたアスモの腹部にバットの拳が入っていた。

肺にあった酸素は吐き出され、途端に息苦しくなり、酸素不足か意識が朦朧としてきた。

 

 

「……ッ!?」

 

 

しかし、腹部に走った衝撃と痛みにバットは後ろに数歩下がり、目を見開いた。

 

 

「…ま…………だ………だあ!」

 

 

身体の所々に切り傷や打撲痕が痛々しく映り、意識が朦朧としているはずなのに、その目はまだ死んでおらず、寧ろ拳を打ち込んでくる程の気力、消えるどころか灯火を燃え上がらせているような、そんな感じがした。

 

(……これが執念ってやつか。ノット程じゃねえけど…….それでもすげえな)

 

 

気を抜けば思わず後ろへ一歩引いてしまいそうな、そんな気迫だけで圧倒されそうになるのを感じ、流石魔王だとそう賞賛した。そして、それが1人の男の頼みのために必死だということも理解した。

しかしこんなところで怯み、身を引くわけにはいかない。例え知り合いであろうと向こうが譲れないものがあるように自分にも譲れないものというものがあるのだ。

 

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

 

腹の底から雄叫びを上げ、不安定な足取りのはずなのにしっかりと地に足をつけ、まだ動く右腕を伸ばしてくる。

それを冷静に見て片手で払って方向をズラす。そして、その払った手を握って殴り抜く。

 

 

「……喰らえっ!」

「!?」

 

 

しかしその前に、アスモの額と左肩辺りから赤黒いビームのようなものが顔めがけて打ち出された。

急だったためか。反応が遅れたが自慢の速さでギリギリ動き、後ろに跳ぶことで何とか避けようと試みる。

だが向こうの方が早かったようでこめかみ辺りを撃ち抜かれる結果となった。

 

 

「……チッ!」

「ぐぅっ……!」

 

 

足元がふらつかせたアスモの頭を鷲掴みし、彼女は止めの一撃を与える。

 

 

「ハァァァッ!」

「あっ………あああああああああああっ!!」

 

 

手から暴風が吹き荒れ、風の刃にアスモは切り裂かれて完全に意識を失った。

 

 

「あ、がっ……!えい、じ………ごめん………」

「……」

 

 

荒れた息を整えながらアスモの意識が完全に失くなったのを確認し、今度こそは終わったかと安堵して頭を持つ手を放した。

ちなみにあれから意識がなくなったと思ったら不意打ち、なんてことが4、5回はあったなと思い出していたがそんなことはもう些細なことである。

 

 

(全く、誰に似たんだか……温存したかったのに最後に思わず本気出しちまったぞ)

 

 

溜め息混じりに呟くと倒れていたアスモを拾い上げ、驚愕した。

 

 

(なっ……!さっきより傷口が広がってやがる!?)

 

 

アスモの怪我の主は打撲痕が多いがその中には槍による裂傷が少なくとも額と左肩の2つが見られた。しかもそれがさっきより酷く裂けていてまるで血管が破裂したかのような状態でだ。つまりこれが意味するのは……

 

 

(こいつ……お得意の変身能力で血液を打ち出したっていうのかよ!?)

 

 

正確にはとある悪の救世主が目からビームもどきを打ち出したように高圧で血管から血液を水圧カッター並みの勢いで排出しただけのことである。

しかし、先述した通りのビームもどきでは眼球が裂けるというリスクがあるようにこの技は眼球ではなく血管に圧をかけるため、血管が破れてしまうという欠点があるようだ。

 

とにかく治療してやらないと死ぬ。そう直感した彼女はすぐに出血を抑えるために応急手当をした。なんとか出血を止め、一安心したところで辺りが歪んだような錯覚が彼女を襲った。

 

 

(ああ、効果が切れたか……ってことは決着がついたのか)

 

 

歪んでいく空間を眺めて彼女はそう思った。

 

 

(……中々凄いよなこれ)

 

 

さっきまで閉じ込められていた空間に素直に感心した。

軽く説明するとこれの効果は至って単純であり、適当な空間に閉じ込めて戦い、決着をつけると元に戻れるという簡単なものである。

 

さて、ここで突然だが少し記憶を遡って欲しい。細かく言えば永時の姿だったアスモと戦う前、この空間のことの説明をした時のことを覚えているだろうか?

あの時永時(アスモ)はそんなことも出来るのかと言ったらまあなと答えた。つまり、何が言いたいのかお分かりだろうか。

 

まあ要するに彼女はこの現象を起こした人物だとははっきりと公言していないということだ。

 

 

(ネバー達を分散させるためにはどうすればいいか迷っていたから相談してみたら二つ返事でこれを貸してくれた訳だが……酒も入ってたし、仲間とは言え迂闊すぎたか?なんか裏がありそうで怖いんだが……)

 

 

本当は街中で強襲し分散。各個撃破の方針だった。そうだったのだが、あまり頭のキレない(悪く言えば脳筋)バットとしては奇策や妥当案などが浮かぶ訳もなくこれでいいのかと悩んで酒を呑んでいたところに都合よく現れた。よくよく考えてみれば怪しさ満載で疑ってくれと言っているようなものだと今頃気づいた。

 

 

(マズイぞこれは……明らかにいつものパターンじゃねえか!?まさか、またなんかされるのか!?……いや、逆にもしかして何もなかったり?)

 

 

そこで彼女は今までのことを思い返してみることにした。

 

 

ある時はケーキを持ってきてくれたので食べると急に頭に猫耳が生えてきて更にそれを写真に撮られ、その後耳をモフられ(ついでに身体も触られ)

 

ある時はプレゼントと称してフリルまみれの黒いドレスを着させられ、その後コスプレ撮影会を強制的にやらされた。(ちなみにネバーは照明、ノットは雑用として強制参加していた。後から聞いたところによると2人とも脅されていたらしい)

 

ある時は突然眠いと言って自分にダイブしてきたので何事かと思いながら受け止めて寝かせてやると不意を突かれてスリーサイズを測られたり(ちなみに手触りで)

 

 

(……碌なことしかねえなオイ!)

 

 

思い返せば思い返す程湯水のように湧き出る酷い思い出の数々。少し前も酒を呑もうしていたところにやってきてセクハラ一歩寸前まであったことを思い出して苛立ちすら感じて身体を震わせていた。

 

 

(あのロリコン野郎……今度は何企んでやがる!?)

 

 

今までの経験上油断させといて何か仕掛けてくるということが当たり前となっていたので今度は何されるんだとビクビクと小動物みたいに震えていた(まあその姿すらも可愛いと言ってそうだが……)

 

 

(まさか……!昔ネバーに聞いた話じゃあスクール水着を着せるとか言ってたらしいが……もしや!?)

 

 

今度は過激なコスプレ撮影会か!?と思考が変な方向へと行っているが残念ながらここにはツッコミ役がいないため、更に変な方向へと1人走りしていく。

 

 

(水着とかねえよな……いや、チリ紙のように常識を捨てた奴のことだ。ありえないことがまずありえないと思っとかねえと……ヌード撮影ってやつは流石にない、よ……な……?)

 

 

どんな感じになるかと考えて……ボフンッと顔を真っ赤にした。

 

 

(いやいやいや、そもそも脱ぐ前提で話が進んでること自体が可笑しくねえか!?いや、けどあいつなら……って何言ったんだよ俺は!?ああ、くそっ!)

 

 

あいつといると調子狂うなぁ!と愚痴りながら近くにある電柱を蹴飛ばしてへし折ってしまい、それにより昂ぶっていた感情が段々と冷めていき、落ち着いたところで元へと戻ろうと変わっていく空間を眺め……

 

 

「……えっ?」

 

 

まるで時が止まったかのような、そんな錯覚を感じた。

 

 

「なんだよ……これ……」

 

 

原因は彼女の見えた光景。さっきまで協力していたマスターと一同とその相手である永時のお仲間一同。彼女らの内の数人が地に伏している光景が彼女の視界に捉えたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ………ようやく、終わりましたわね……」

「そうだねぇ……疲れちゃったよ〜」

 

 

荒れた息を整えようと必死なマモンと疲れたと言いながらいつもの間にか取り出したベットでおやすみタイムに入ろうとしているベルフェの2人は敵対者であるルシファーに視線を向ける。

 

 

「ぐっ……おのれぇ……!」

 

 

それもそうだろう。何故なら2人がかりで矢だらけ弾痕だらけにされてもなお立ち上がる気力(根性)が残っているからである。

 

 

「いくら、プライドのためとは言え……ここまでのものなのです、か?」

「確かに凄いよね〜。下手したら永くん並みかな〜?」

 

 

布団から手を出し、軽く指を振ると立ち上がろうとするルシファーの背後に銃器が顔を出し、一斉に送射を始めた。

 

 

「ーーーー!?ーーーーーー!?」

「ん?そうでしょうか?確かに永時様は頑丈とは思いますが……それは心も、ではないでしょうか?」

「心、ねえ……」

 

 

感心したのか、ベットから出て行ってテーブルと紅茶用の器具などの一式を取り出し、ルシファーの声にならない叫びをBGMにして話を始め出した。

 

 

「科学者としては興味深い内容でしたか?」

「まあね……」

「病も気からというように心持ち次第で人間はその真価を発揮するようです。心と身体は密接な関係でもあると友人の書物で読んだことがありますわ」

「うーん……そんなの科学的じゃないよ」

「そうは仰いますがね。魔術や奇跡の力や精神の具体化などと言ったものもありますし今後の研究の参考にしてはいかがでしょうか?他にも……いえ、また今度の機会にお話ししましょう」

「どうしたの?」

 

 

急に話を切り出し、何事かと思うベルフェ。対してマモンはというとチラリと視線を別の方へ向けるので釣られてそちらを見やるとさっきまで違和感のあった空間が何事もなかったかのように元の冬木の夜の街へと戻っていた。

 

 

「あれぇ?戻ったの?」

「……恐らくですが術者であるルシファーが倒れたからでしょうか?」

 

 

そしてまたチラリとルシファーが完全に動かなくなったのを一瞥して確認し、とりあえず現状把握として辺りを見渡すとある2人がマモンの視界に入った。

 

 

「あら?あれは確か……ネルネr「ニ・ル・マ・ルです!」……ご、ご冗談でしてよ?」

 

 

いつも眠そうにしているベルフェの半目がパッチリと開かれる程の物凄い剣幕でマモンの間近に現れたニル。

さっきまで気づかなかった癖に名前間違いには鋭いのですねと苦笑いする。どうやらマモンの視界に入った2人とはニルマルとシーのようだ。

 

 

「あれぇ?2人がいるってことは〜?」

『なんとか勝った。というより、なんでティータイム?』

 

 

何故か戦友のように肩を貸しているニルに疑問を持ったベルフェだがまあなんやかんや言ってあのお人好し(永くん)の弟子なのだ。どうせ仲間意識とか勝手に感じて今に至っているのだろうと自己解決させた。

 

 

「まあそこはお気になさらず……ところで、相手方は?」

「えっと……そこに伸びていると思いますが……」

 

 

ニルが見やる方向へチラリと視線を向けるマモンとベルフェ。そこにはどこかで見覚えのある顔の人物が麻縄で縛られ、心なしか息が荒れているような気がするが今はそんなことはどうでも良いのだ。

 

 

「あら?確か彼女は……絶望痴女、でしたか?」

 

 

本当は淑女とかそんなのが付くところだが残念ながらそれを指摘する気があるものはいないどころか否定すべき本人が気絶しているため、その間違いに気づくのは先の話となるだろう。

 

 

「そう言えば師匠はどこに?」

「分かりません。もしかすれば苦戦されているかもしれませんね……」

「見に行く〜?」

「……いえ、永時様のことです。爆破されても何事もなく帰ってきていますから大丈夫でしょう」

 

 

永時は昔から魔王やらオメガやらノットやらエンド・コールなどの人外共にボコられて耐久値だけが異常な程上がり、核弾頭並みの攻撃を受けて普通に生きている生命力を見てきたマモンだからこそ、そう判断したのである。というよりはもはや悟ったとも言えよう。

 

もし永時がこれを聞いていたらその信頼性に喜ぶべきかそれともそんな評価が下されていることに苦笑すべきか迷っていたことだろう。

 

 

『えっ?なにその妙な信頼性……』

「まあ貴女も見れば嫌でも理解しますよ……ん?」

 

 

和やかな雰囲気から一変、急に緊張感のある引き締めた表情へと変えるニル。それに影響されてか先程までの和やかな雰囲気は胡散し、緊張感が漂うようになった。

 

 

「どうしたの〜?」

「いえ……何か聞こえませんか?」

「……あっ、確かに聞こえますわね」

 

 

言われてみて気づいたのだが、何かよく分からないが何かの音が確かにマモンの耳に入ってきた。

 

 

「確かに聞こえますわね。何か、聞き覚えのあるようなないような特徴的な音が……どこで聞いたのでしょうか?」

『書いて表現するなら……』

 

 

口でペンを加え、器用に紙に表現しようとしたシー。しかしその手はすぐに止めることとなる。

 

 

「ふぁぁぁ、眠いnーーー」

「……!?」

 

 

一瞬間違いかと思った。

さっきまで話していたベルフェゴール。怠惰とはいえ、魔王である彼女。そんな彼女が視界から突如消えたからだ。

 

 

「ッ!ベルフェゴール!?」

 

 

突然消えたことに驚愕を隠せない顔を見せ、辺りを見やるマモン。そして、彼女はそれを見た。いや、見てしまった。

 

 

「……」

 

 

ベルフェゴールらしき人物が筋肉ダルマとも例えれるような屈強な男によって近くのビルに叩きつけられてクレーターをも作っている光景を目にしたからだ。

 

 

「あ、あれは……確かオメガが抑えていたはずでは……?」

 

 

次に耳にしたのは隠蔽なんぞ糞食らえとでも言いたいように遅れて聞こえてくるビル崩壊の轟音。そして、嫌でも耳に入った。特徴的なあの音が。

 

 

ギュピッギュピッギュピッ

 

 

「ほう、まだ虫ケラが残っていたのか」

「「「!?」」」

 

 

マモンにとって聞き覚えのある。なおかつ危機感すらも覚える足音が夜の街に響く。

それに伴い、敵対したくない程の圧倒的な重圧と関わりを持ちたくない程の濃厚な殺意と悪意が嫌でも感じ取られた。

 

 

「まあいい。どうせ破壊すればいいだけのこと」

「くっ……!」

「ほう……この俺を前にして戦う意思を見せるとはな」

 

 

戦闘態勢に入ったマモンを見て喜びを見せる相手。正直なところマモンとしては逃げたかった。しかし、現状としては逃げることは難しかったからである。

 

まず、足止めをしているはずのオメガがここにいない。つまりはやられたと考えたほうが良いだろう。これで今現状的に奴に単体で対抗できる戦力がなくなったこと。

次に能力的に逃走に向いているベルフェがやられてしまったのがかなり痛いところである。

次に他の人物。恐らく逃げようにもニルとシーは怪我をしている状況。まともに戦うどころか逃げることすらままならない。更に戦力となりそうなルシファーと絶望淑女は気絶中のため使い物にならない。

 

 

だから彼女は決断する。

 

 

「ニルさん、シーちゃんさん。まだ戦えますか?」

「ええ、サーヴァント戦はキツイですが一応出来ますよ」

『私もまだやれる』

 

 

ニルに肩を借りるのをやめ、ふらつきながらもなんとか立つシーと既に戦闘態勢に入ったニル。それを見て相手はニタリと笑った。

 

 

「フフフッ、正直なところ無視していきたいところだが、邪魔するとなれば仕方がない」

「……あら?ならば無視してくださって構いませんわよ?」

「減らず口を叩くのはやめておけ。どうせ俺が後ろを向いたら不意打ちをしてくるか後々邪魔をするのだろう?ならば今ここで潰してしまえばいい」

「へえ、貴方(脳筋)にしては利口な考えですわね」

「フン、俺はあいつ(ブロリー)のようにただ破壊するだけの馬鹿じゃない。俺は俺の自己満足のために行動する。ただそれだけだ」

「自己満足、ですか……それが、大切な人を破壊する結果としてもですか?」

「っ……どうやら死にたいようだな」

「あらあら、お手柔らかにお願いしますね?(彼に殴られたら一体どんな快r……快楽が得られるのでしょうか……ジュルリ。あら?涎が……)」

「……フン、安心しろ。今楽にしてやる!!」

 

 

こうして、悪魔と悪魔が激突し、冒頭部分へと戻る。

 

 

ちなみにだが、この戦闘で1人だけ歓喜の混じった声があったとのこと。どうか気のせいであって欲しいと思いたいところである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククッ……ハハハ………ハハハハハハハハハハハハ!!」

『なんだ貴様?偉く嬉しそうだな』

「それもそうだ。条件は全て揃った!……後は上手く事が進めば全てが終わる!そうすれば……そう、何もかも終わるのだ!こんなにも嬉しいことはないぞ!」

『フン、そんな回りくどいことをせずとも、全てを破壊し尽くせばいいだろう?俺ならそうするが?』

「確かにそうだが……正直に言えばこの辺りを破壊し尽くせばすぐに終わる訳だが、それはそれで問題だ」

『……?何故だ?』

「……奴が怒るからだ」

『……なんだと?寧ろ好都合ではないか?』

「いや、確かに目的はあくまで奴だけだが……逆に貴様に問うが、ある1人を目標とする場合。そいつをより殺りやすいようにするにはどうすればいいと思う?」

『……全てを破壊すれば自ずと当たるだろ?』

「チッ……これだから貴様は何度も敗北するのだ。学習しないなら貴様は一生勝てんぞ?」

『……なんだと?』

「(自分もそれで一度負けたから学習したというのに貴様は……)」

『……?何か言ったか?』

「何も言っとらん……とにかくだ。何故かと言えば答えは1つ。奴の周り、つまりは仲間の有無だ」

『仲間、だと……?』

「そうだ、貴様も経験があるだろう?まるで群がる蜂の如く、奴らが集ってくるのだぞ?無差別な破壊なぞしてみろ。それこそただでさえ鬱陶しいものが増えて面倒になってくるのは目に見えるだろう?」

『……ああ』

「だから賭けてみたのだ。世界の悪平等さ(バランス)にな」

『そして、その賭けに勝ったと?』

「ああ、その通りだ……まさかこんなに早く来るとは思わなかったがな」

『……』

「安心しろ。上手くいけば残りは貴様に譲るつもりだ。そう、上手くいけばな?……フフフッ、精々上手くことが進むよう祈っておくがいい」

『……チッ』

(最初喚ばれた時は驚いたものだが今となっては驚愕より歓喜の方が勝っているのが現状よ……さて、今思う鬱陶しいものは3つ。とは言っても最後の1つ以外は奴がやってくれるはず。なんだかんだとあのガキのためにとか言ってやってくれるはずだ。私としては3つ目もやって欲しいものだが……やってくれる保証は限りなく0に近いか。仕方ない、別の手段を講じるか)

「私と再び相見えた際、奴は一体どんな顔をするんだろうなぁ?」

『……フン、下らん』

(……ああ、愛しき我が宿敵よ。今宵も私と踊ってくれることを切に願うぞ)

 

 


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