Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜ネルフェが送る前回のあらすじ〜

「(えっと……この台本通りにすればいいんですか?)……皆さんおはこんばんは!今回ここをやらせて貰います、ネルフェ・B・終です!よろしくお願いします!
ええっと……早速ですが軽く前回のあらすじをさせてもらいますね!

前回!ええっと……公民館へ向かう道中、ルシファーさん達に閉じ込められて妨害されるお父様達。一体何人が脱出できるのか?そして最後は誰が微笑むのか?どうぞご覧ください!

……えっと、これで良かったのでしょうか?」




妨害③

 

 

不気味な夜の闇に染まったアインツベルンの森。その森の一角が今、紅く染まっていた。

先程オメガが取り出したタンクローリーによる爆発により、森が燃え上がっているのだ。

 

 

「ハッハー!最高にハイってやつだー!……っと、遊びはここまでにして」

 

 

そんな火災原因である男が、燃え上がる火と舞い上がる黒煙の中から飛び出してくる。

着ている服が少し焦げを見せているものの、本人の肉体には全くと言っていいほど傷というものが存在していなかった。

 

 

「さて?……どうなったかね?」

 

 

ある程度歩くと後ろを振り返り、敵である男の生死を確認する。

 

 

「うーん。こっからじゃ、煙でよく見えんなぁ」

 

 

そう言って数歩前へと足を進める。

 

 

「見えん」

 

 

1歩、また1歩。前へ前へと進んでいく内にいつの間にかさっき出てきた火元の前へと立っていた。

 

 

「ん〜?」

 

 

小さな鍵穴を覗くかのようにじっと見つめる。すると人影らしきものが薄っすらと見えた気がした。

 

 

「おったおった……さて、死んでるかなっ!?」

 

 

観察してたオメガの視線の先の火の中から大きな手が突然飛び出し、咄嗟のことで間に合わずそのまま頭を鷲掴みにされた。

掴まれたにもかかわらず、目を細めてよく見る。すると腕の持ち主の姿がはっきりとされてきた。

 

 

「へえ……生きてたか」

「……なんなんだぁ今のはぁ?」

 

 

ビギナーがまだ生きていたことにオメガはニヤリと笑みを浮かべ続け、ビギナーはその顔に向かって拳を放った。

 

 

「にょや……!?」

 

 

殴られた勢いでオメガは吹っ飛ぶ。しかし肝心の顔は鼻血が少し出ているも笑みは崩すことなく維持しており、重心を前に傾けてくるりと半回転し、そこらにあった木に両足をついて、力一杯蹴り飛ばして飛ばされた方向を逆走し。

 

 

「喰らえ「馬鹿がっ!」!」

 

 

殴り返そうと手を握るが、肝心のビギナーは片手に緑弾を持って待ち構えており、その腕をオメガへと振るう。

急に止める手段がないオメガは諦めて握った拳で相殺を試みることにした。

 

 

「よっと!」

「チィッ!」

 

 

殴ったことにより起こった爆発を利用して上手くその場から離脱する。

まだ生きていることに舌打ちしながらもビギナーは再び緑弾を投げ飛ばす。

 

 

「オラァッ!!」

 

 

だがオメガはそれを苦無(クナイ)を投擲することで相殺させ、ビギナーの苛立ちは高まっていく。

 

 

「喰らっとけぃ!」

「ぬおっ!小賢しいことをっ!」

 

 

相殺する中に余分に包丁を投擲して弾かせて隙を作らせ、その間に太刀を取り出して接近戦に持ち込む。

まずは抜刀で腹部を狙う。

 

 

「なっ……!?」

 

 

腕で上手く弾き、薄皮1枚を剥がれるだけで済んだのだが、ビギナーは目を見開いた。

今までオメガの刃物の攻撃によるダメージは全くと言っていいほどなかったが、初めて肌を傷つけるようになったのだ。ビギナーを警戒させるには充分だった。

 

 

「『燕返しもどき』!」

「チッ!」

 

 

次に某最強農民の斬撃を真似たものを放つ。流石に斬撃は3つ同時とはいかなかったが、ほぼ同時に近い速度で3つの斬撃がビギナーを襲う。

だが、ビギナーはヤケを起こしたのか片腕を盾にして特攻する。

 

 

「マジか!?」

「オメガァ!」

 

 

斬撃は確実に届き、腕に切り傷を与えるものの、致命傷には至らず、顔を掴まれそうになるも間一髪で首を傾けることで避け、横から蹴り飛ばす。

 

 

「ぬおっ……!」

「オラオラッ!」

 

 

飛んで転がっていくビギナーにナイフ類を投げて追撃する。

ビギナーはその場から更に転がって木の後ろに入り込んで上手くやり過ごし、盾にした木に腕を突っ込ませて地面から引き抜き、

 

 

「デェヤァッ!」

 

 

全力でオメガにぶん投げた。

 

 

「おっ?」

 

 

オメガは焦ることなく太刀を鞘に入れ直して構え。

 

 

「……斬ッ!」

 

 

抜刀により、一刀両断した。

だが、それの後ろに控えていたのか。切れ目からビギナーが飛び出してきて顔を掴まれ、地に叩きつけられる。

 

 

「フハハッ!」

「ふぎゃ!……クソっ、たれ!(賢さ26と言われてるけど中身はノット。まさか知恵を働かせるとは思わなかったわ!)」

 

 

叩きつけられた衝撃で地面にクレーターのようなものができるがそんなことを気にする暇もなく、空いている下半身を起き上がらせてその勢いでビギナーを蹴り飛ばす。

 

 

「ぐおっ!?」

「そおれ、追加だ!」

 

 

森の中でそこそこ大きめの大木に頭から突っ込むビギナーに追加攻撃で片手斧や頭ぐらいの螺子などを放り込む。

 

 

「おおおおっ!」

 

 

しかし緑色のバリアのようなものが青緑髪のビギナーを覆っており、それにより攻撃は全て弾かれ、そのまま飛び出してきてタックルをかました。

 

 

「ダニィッ!?バリアは反則だろ!?」

「知らん!とっとと死ぬがいい!」

「こ・と・わ・る!……ッ!?」

 

 

そうふざけていたオメガだが、ビギナーの髪色が青緑色へと変わっていることに気づき、驚愕する。

 

 

(まさか……徐々に伝説化し始めてるのか?ニャハハ、流石は腐っても伝説のサイヤ人ってか?)

 

 

まさかの事態に冷や汗を流すオメガ。少し焦りを感じつつも刃物をビギナーへ投擲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニルの技能らしき力で前回頭を爆破されたゼツ。

見事に首から上の部分には煙が上がり、残った身体はバランスを保てなくなり、地へと崩れ落ちた。

 

 

『……1つ聞いていい?』

「……何ですか?」

 

 

倒れ伏すゼツだった身体を少し距離を置いたところから臨戦態勢を維持して見つめたまま、シーは声をかけた。

 

 

『さっきの……何?』

「ああ、『空想電脳(ザバーニーヤ)』のことですね。あれは……まあ、ぶっちゃけると私の宝具なんですよね〜」

『宝具?まさか……サーヴァント!?』

「ええ、多分貴女の考えは合ってますよ?正確には前聖杯戦争の、ですがね」

 

 

シーは驚きと共に妙な納得感を感じとっていた。

報告では確か、4年前に養子として引き取られてはいた。だが、実はその前から行動を共にしていたという根も葉もない噂があったのだ。

所詮噂だろうとタカをくくっていたのだが……。

 

 

『でもどうして?サーヴァントは役目を終えたら消滅するのでは?』

「まあそう考えるのが普通ですよね……確かに私は本来、あの戦争が終わったあの時に消える……はずだったんですけどね。気がついたら肉体を得てまして……」

『受肉?』

「ええ………今から説明したいところなのですが……生憎、向こうは待ってくれないようですねぇ」

 

 

そう言って先程まで見ていたところに目線を移す。

 

 

「……いやぁ、まさか貴女がサーヴァントだったとは思いませんでしたよ。サーヴァントを弟子にするとは、流石はエイジ様と言うべきでしょうか?」

『!?』

 

 

聞こえてくる。否、もう聞こえないと思っていた声を耳にし、シーは目を見開いて音源の方を向く。

 

 

「よく生きてましたね」

「生憎と私は呪術師なものでして……いくら呪うしか能がない私でも一撃必殺を避けるぐらいのものは用意してますよ。例えば……『即死することが出来ない呪い』とかね?」

 

 

そう言ってムクリと起き上がるゼツ。よく見ればなくなったはずの首から上だった部分は違和感を感じるくらい綺麗な状態で戻っていた。しかし、そこから下は何か赤い液体を浴びたかのように、病人のような青白い肌は赤く染まり、特徴である足まで垂らした黒髪と黒い服に至ってはその液体によって、赤黒く変色していた。

 

 

「……なるほど、呪いをですか。即死出来ないものとはいえ、痛みを全く感じないわけではないはずですが?」

「ええ感じますとも……しかし!私にとってはそんなことは想定内なのです!考えてみてください。いくらやっても楽に死ねず、じわじわいたぶられて殺されるのを待つか!しかし即死はしないと言っても痛みは感じるので精神的に疲弊していくか!私があまりに不利なこの状況、これこそまさに絶望!これこそが私の生きるための糧なのです!」

『……引くわー』

 

 

別に聞いてもいないカミングアウトを今にも悶絶しそうな顔で話す姿にシーはドン引きするが、ニルは態度を変えることなく、寧ろ何か思い詰めるような表情を見せていた。

 

 

「……生きるための糧、ですか」

『?』

「いや、私はですね。生前は人を殺すことしか能がない子供でしてね。育った環境のせいであるかもしれませんが今思えば本当につまらない子供でしたよ。生きる糧なんかなく、子供らしいことはせずに毎日を無駄に過ごして。死んでサーヴァントになって……そして、師匠に出会って変わりました。……師匠はとても変わった人でしてね。何をしたかは知りませんが私なんかを受肉させるわ。なんか勝手に強制的に弟子にさせられるわ。教養だとか言って世界一周旅行に連れ出すわ。……なんだかんだ言ってましたけど全部私のことを思ってしてくれてたんですよ。そして、気づけばあの人に惹かれていたんですよ。全く、まさかアニメみたいな事になるとは思いませんでしたよ。………だからですかね。どんな手を使ってでも勝ちたいと思うんですよ。私のことを待つ人のためにも」

「待つ人のために、ですか(この子といい、暴食の子といい。どうしてこうも親に似てるんですかね?)」

 

 

『生憎だが絶望中。こんな俺を待ってるバカがいるんでな……悪いがどんな手を使ってでも勝たせてもらうぞ』

 

 

かつてあの男に言われた一言を思い出して、思わずクスッと笑ってしまう。

 

 

「……何かおかしいことでも?」

「いえ、まさにエイジ様の弟子だと思っただけですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 

突然両足に痛みが走り、思わず攻撃の手を止め、地に膝をつくことになった“ルシファー”の姿がそこにはあった。

 

 

「なん、じゃと?」

「……ふぅ、なんとか間に合いましたか。最近ついてますわね」

 

 

何をされたか理解できなかったルシファーは目の前の強欲を睨むも、睨まれた相手は寧ろ安堵の表情でルシファーの奥を見ていた。

 

 

「ん〜……間に合った?」

 

 

攻撃の手が止んで静まり返った空間にその声は聞こえた。

その声は強欲も、そして膝をついているルシファーでさえ知っている声だった。

 

 

「何をしに来た……」

 

 

ルシファーがそう叫ぶと後ろの空間が歪み、パジャマ姿のベルフェがその姿を現した。

 

 

「……怠惰ァ!」

「何をって……強いて言えば〜、マモンの援護かな〜?」

「援護、じゃと?」

 

 

一瞬幻聴ではないかと思ったが、どうやら現実であることにルシファーは驚愕する。

自身を含め、魔王は敵対することは多々あれど、我が強い者が多いため、手を組むことはこれまでも、そしてこれからもないとばかり思っていたからだ。

 

 

「貴様らが?手を組むだと……?」

「残念ながら現実なんだよね〜」

「驚きましたか?まあ無理もありませんわね」

 

 

そう言って再び構えるマモン。そして組んでいることを明らかにするかのようにマモンの横に移動し、背後の空間を歪ませ、そこから大量の銃器が姿を見せる。

 

 

「チッ(まさかこの2人が組むとはな……ただでさえ強欲だけで手をかけるというのにな)」

「……つまり、変わったのは貴女だけではないということですよ」

「まさか〜、卑怯とか言わないよね?」

 

 

状況はこれで一気に不利になったルシファー。

しかし彼女は戦う手を止めない。無論、降参する気も、無惨に負ける気もない。

確かに彼女は変わった。終永時という異分子が混ざったことにより良い方向へと変わった。だがそれは彼女の生き方までは変えることと同義ではない。

 

退かず、戦い、勝利する。

 

それが彼女の生き方(プライド)だからだ。

 

 

「ハッ!まさか妾が降参するとでも思っておったか!!」

 

 

痛む足に鞭打って立ち上がり、盾を手動に切り替えて操作して自身を囲うように陣形を作り、光線を一斉掃射する。

 

 

「まあ降参するとは思ってなかったけどね〜」

 

 

予想通りに行動するのを溜め息混じりに呟くとベルフェは腕を振るう。

すると待機していた機関銃が一斉に掃射を始めた。

 

 

「そうですわね。彼女らしいと言えばそうなのですが……」

 

 

光線と弾丸がぶつかる中、マモンは駆け抜けて行ってルシファーに正面から接近戦を仕掛ける。

 

 

「甘いぞ!」

 

 

だがそんな単純な攻撃に当たってやる程優しくないので、盾で受け止めようと盾を動かす。

 

 

「……!」

 

 

予想通り正面から馬鹿正直に突っ込んできたので盾で受け止め、思わずほくそ笑んだ。

 

 

「……何!?」

 

 

のだが、それも束の間。運が悪かったのか、当たり場所が悪かったのか、よく分からないが防いだ盾がひび割れて壊れてしまい、僅かながらも隙間ができたことでルシファーの笑みは完全に消え失せた。

そして、運悪くその空いた隙間に銃弾が入り込み、ルシファーの身体を貫く結果となってしまった。

 

 

「……っ!?」

 

 

更に正面から極太のビームが迫り、囲っていた盾を正面へ総動員させて防ぎきる。

だが、後ろが空いたことで隙間ができ、回り込んできたマモンによる斬撃が彼女を襲う。

 

 

「くっ……!」

 

 

しかしそれを彼女はライダー戦の時より早い動きでそれを避け、光の槍で彼女を切り裂く。

 

 

「おっと〜」

 

 

しかし穂先が届く前にマモンが空間の歪みに飲み込まれ、当たることは叶わなかった。

そして、眠そうに立っているベルフェの横に歪みが出来、中からマモンが姿を現す。

 

 

「助かりましたわ」

「どういたしまして〜。けど〜、驚いたね〜」

「ええ、まさかあのルシファーが能力を使うとは……」

「それほど追い詰められてるってことかな〜?」

 

 

そう言われてマモンは思考する。

確かに自分の能力は強運。ベルフェは空間操作。ルシファーにとって能力抜きではキツく。逆に言えば能力を使えば何とかなるのだろうと踏んでいるのかもしれない。

 

 

「お〜!」

 

 

先程のより比べものにならないほど加速した光線が正面から迫り、少し焦る(?)もベルフェは間に挟むように巨大な砲塔を出して先程ルシファーに撃った極太ビームで相殺する。

 

 

「おお〜!」

「チィッ!」

 

 

突然横に現れて槍を突き立てるルシファーに驚きつつ(本人はそのつもり)も、後ろに作った空間の歪みに自身を飲み込ませて上手く逃げ込んだ。

 

 

「あら?わたくしを忘れてませんか?」

「くっ……!」

 

 

そして、側にいたマモンが双剣で切り上げる。

しかし槍で横へと弾き、更に速い動きで距離をとる。

 

 

「……チッ!」

「ふむ。やはり彼女の加速の能力は厄介ですね……」

「うーん。でも〜、いくら速く動けたとしても限界はありそうだよね〜」

「確かに。いくら加速するとは言え、それに伴って体力の消費なども加速しているはず……」

「そこを突けば何とかなるんじゃない〜?」

「そうですわね」

 

 

会話した後、2人はニヤリと嫌な笑みを浮かべ、ルシファーへと果敢に攻め立てに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

バーサーカーの顔の部分に見事、剣を当てることに成功したセイバーは少し距離をとって様子見に徹していた。

 

 

「■■■……!」

 

 

しかしそれだけでは流石に致命傷とはいかず、分かっていたのかセイバーは剣を握る力を強くした。

 

 

「……ッ!?」

 

 

のだがそれはすぐに緩めることとなる。しかしそれは彼女自らの意思で行ったことではない。

 

 

「そんな……嘘だ……そんなはずは………」

 

 

先程剣を当てたことにより、漆黒の兜が半分に割れてハッキリとされてくる顔を見たから。

それは彼女にとってとても見覚えのある人物にそっくりだったから。思わず剣を握る力を弱めてしまった。

 

 

「何故貴方が……!?」

 

 

だがそれだけが決め手ではない。困惑する彼女に追い打ちを掛けるようにバーサーカーは1振りの剣を手に取った。

それはバーサーカーから発せられる黒い瘴気に当てられてなお、美しく輝く。まるで聖剣のような、そんな1振り。

 

 

「……ランスロット!?」

「……Au………thur………!!」

 

 

ランスロット。

かの『アーサー王伝説』にて、湖の騎士、裏切りの騎士と呼ばれたかつて円卓の騎士だった男。そして、ブリテン崩壊の一端を担ったと言われた人物。

アーサー……否、アルトリアにとって思いがけない人物との再会であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐっ、つぅぅ……!!」

 

 

先程仕掛けられたと見られる爆発物の爆発に巻き込まれたものの何とか助かったバット。しかし服がちらほら焼け焦げ、痛々しい火傷の痕がちらほらと見え隠れしていてとても無事とは言えなかった。

 

 

「……ケアルガ」

 

 

しかし呪文のような言葉を呟く。すると、明るくて暖かな緑の光に身体が包まれ、それが消えた時には傷が綺麗さっぱり無くなっていた。

 

 

「……ふぅ(まさかプロテガを掛けることを見越して、爆破魔術に変更してるとは……考えたなコイツ)……って、熱っ!」

 

 

実は爆破直前、物理防御倍増の効果があるプロテガを自身に掛けたのだが、実は爆弾に見せかけた魔術攻撃だったらしく、そっちは対象に入ってなかったため、直接受ける結果となってしまった。

 

そう黙って思考していたがまだ服がチリチリと燃えていることに気づき、自身に風を吹かせて火を消しさり、完全に鎮火したのを確認して再び思考を始める。

 

 

(けど何故だ?こんなことしても回復されるって分かってるのになんでわざわざ自爆なんかしやがったんだ?)

 

 

ゆっくりとした足取りで辺りを見回しながら思考する。無論、最低限の警戒のために槍を持ったままでだが。

彼女が知るネバーという男は、不必要なことをしない男だ。この自爆に見える何かもきっと何か意味があるのだろう。そう思いながら辺りを散策する。

 

 

(さて、何を企んでやがるんdーーー!?)

 

 

あるものを見つけ、足を止める。しかし彼女はその光景に目を見開いた。

 

 

「おいおい……どういうことだよ!?」

 

 

彼女の視線の先に写っているのは、膝から下をごっそりと失くした痛々しく見える片足、そして身体がほぼ焼け焦げている“桃色髪の中性的な顔の美少女”が地面に横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、冬木市公民館。明かりのついてない暗い内部をゆっくりと移動する1人の人影があった。

 

 

「……」

「やはり来たか」

「……!」

 

 

突然暗い部屋に明かりが点灯し、部屋の中央に黒い神父服の男が見えて人影は構えた。

その様子を見て、黒き神父は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていたぞ。終永時」

 

 

 

 

 

 

 


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