Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜アリスが送る前回のあらすじ〜

「皆様お久しぶりでございます。プロトタイプヒューマノイド、TYPE・アリスです。今回は私があらすじを語らせていただきますのでよろしくお願いします。

前回。冬木公民館に向かおうとするマスターたちは突然の敵襲により思わぬ足止めを喰らってしまう。そして、一同を前に現れたのは……なんとルシファー率いる傲慢様御一行であった。

まさかの彼女らが妨害に出るとは予想が出来ませんでしたね。てっきり私の予想では手を組んでくださるかと踏んでいたのですが……何事も上手くいかないってことなのでしょうか?
残念ながら私はネルフェ様をお守りしなくてはならないので向かうことは出来ませんが、ご武運を祈っております。
……話は変わりますが、ベルフェ様はどちらに行かれたのでしょうか? 」


妨害②

人々が寝静まる冬木の街……に似た空間にて金属が何かがぶつかり合う音が響いていた。

 

 

「■■■■■■■ーーーーーー!!」

「くっ……!」

 

 

その音源となっているのはセイバーとバーサーカーの2人。

その戦況はほぼ互角と言える状況だと言えた。

普通なら変身前のノットとやったバットのように冷静に見れば何とかなっただろう。しかし、このバーサーカーは狂える者しては異質と言える存在だった。

何故なら意思がない存在と言えるバーサーカー。しかし、まるで意思があるかのように卓越した武練をもって、セイバーを追い詰めていた。

 

 

「■■■■■■ーーー!!」

「ッ!?……はあっ!」

 

 

手に持つ鉄パイプをセイバーに振り下ろし、セイバーはそれを剣を横にして火花を散らせながら受け流し、そのまま勢いをつけて切り上げる。

 

 

「■■■■ーー!!」

 

 

だがバーサーカーは身体全体を後ろに引かせて避け、その体勢から無理矢理鉄パイプをセイバーに投げ飛ばす。

そんな適当な攻撃が当たるはずもなく、少し屈むとその頭上を通過して行って街灯を切り落とすだけの結果となった。

 

 

「■■■ッ!」

「……!」

 

 

しかし、バーサーカーはそれを狙いであるかのように屈んでいるセイバーを蹴り飛ばす。

すぐさまセイバーは剣を縦にすることで蹴りを受け止めようとするが思ったより馬力が強く、吹き飛ばされてしまう。

 

 

「■■■■■■ーーー!!」

「なっ…!?」

 

 

すぐに立ち上がるが、目の前には先程切り落とした街灯を片手で振り下ろすバーサーカーの姿があった。

慌てて横に跳ぶことで避け、遅れてセイバーがいた位置に街灯が叩きつけられた。

 

 

「遅い!」

「■■■ーーーーー!!」

 

 

そして、その隙にセイバーは剣を構え、横薙ぎに振るう。それに気づいたバーサーカーは持っていた街灯から手を離して後ろに跳ぶ。

 

 

「■■■■ッ!!」

「くっ……!」

 

 

次にバーサーカーは後ろに丁度あった電柱を引っこ抜いて縦に振り下ろす。

セイバーはそれを上空へ斜めの方向で跳ぶことで軽々と避け、そのまま電柱の上に降りて伝い、

 

 

「はあぁぁぁっ!」

 

 

バーサーカーの顔めがけて、剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、あ……!!」

 

 

ルシファーたちのいる空間より下の場所、下水道にて間桐雁夜の苦痛の声が響き渡っていた。

別に前遠坂時臣によって刻み込まれた火傷はルシファーによって完全に完治しているので原因ではなく、現在戦闘しているバーサーカーの魔力供給のために身体の中に潜む刻印蟲が魔力を生産するために身体を蝕むので、それによる痛みのせいだった。

 

 

「う、あ……」

 

 

雁夜は痛む身体に鞭打って下に置かれた液体の入った小瓶を開け、中身を無理矢理喉の奥へと流し込む。

 

 

「……はあっ、はあっ!……ああ………」

 

 

すると身体に魔力が巡っていくのを何となく感じ取ると中にいる刻印蟲は静まり、荒くしていた息をゆっくりと戻していく。

 

 

「……流石、バーサーカーってか?魔力の、消費が…激しいなぁ」

 

 

下に置かれた小瓶を見ながらそう言う雁夜。

ルシファーが用意したこの小瓶は魔力が全くといっていいほどあまりない雁夜のために作ってくれたもので、魔力を直接供給できるという凄い代物である。これにより魔力のストックをすることで本来足りない魔力を作るために動き出す刻印蟲の動きを抑えることが出来ており、もし彼女がいなければ……と考えてゾッとした。

しかし流石は魔力消費が激しいと言われるバーサーカー。2分に1度のペースで飲んでおかないとすぐに枯渇し、刻印蟲が動き出す始末である。

 

 

「(……つまりあれか?あの爺は最初からこれを狙ってたってことか?)」

 

 

よくよく考えればこんな状況であの弱腰な妖怪糞爺が勝とうと考えていたのか?

いや、違う。あの爺は何十年と生きる汚物よりも醜いものである。もしかしたら勝てる見込みがないのにやらせたのかもしれない。そもそも本当に勝つ気があるのならば無難な3騎士をサーヴァントにさせていたはずだ。

 

 

「(まさか……。いや、ありえるか)」

 

 

何てことを考えながら再び小瓶を飲み干す。そして、同じく置かれている半透明に光る水晶玉に目をやる。ちなみにこの水晶玉(ルシファー製)を使って現状を確認しているのだ。

 

 

「流石は魔王様ってか?……ってか、どっちが勝つんだこれ?」

 

 

残念ながら戦闘に関しては素人同然のため、雁夜はただそれを黙って見るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ?どうした?」

「……ああもううざったいですわね!」

 

 

一方こちらはと言うと、マモンは苦戦を強いられていた。

マモンの武器はと言うと双剣へ分解出来る弓。双剣の状態ならば接近戦ができ、弓の状態にすれば遠距離から攻撃出来る代物である。

 

 

「そおら、もっと足掻いてみよ」

「言わせておけば……!」

 

 

複数の盾から放たれる光線を走って避けながら矢を放つ。

放たれた1本の矢は2本、4本と倍々に増えていき、矢の弾幕となってルシファーへと迫る。

 

 

「チッ」

 

 

しかしそれは光線によって迎撃され、届くと思っていたものも自動防御の盾が勝手に防ぐので一撃も入れることが出来ずにいた。

 

 

「はっ!」

「甘いわっ!」

 

 

ならばと弓を分解して接近戦に持ち込むが、盾が邪魔して中々接近出来ず、こちらが攻撃することが難しくなってきた。

昔のルシファーなら慢心しまくっていたので一撃を入れるのは容易かったのだが、永時のおかげでそれを捨て去ったので敵として面倒なことになっているのだ。

 

 

「……(せめて盾をどうにか出来れば良いのですが……)」

「どうした強欲よ?その程度か?」

「……勝手に言っておきなさい」

 

 

この状況をどうやって打破すべきか。とりあえずアイディアが浮かぶまでとりあえずやってみることにした。

運が良ければ、浮かぶかもしれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方こちらは対ゼツ戦をしているニル&シーはというと……。

 

 

「アハハハハハハッ♪」

「……ッ!」

 

 

指先から禍々しい魔力弾を連続で放つが、ニルはナイフを構え、サーヴァントに負けないぐらいの素早い動きでスイスイと避けていく。

 

 

「ふむ……流石と言うべきですね」

 

 

そのまま一気に接近してナイフを振るうが、魔力弾をゴムのように引き伸ばし、それで上手く受け流す。

そして空いた片手で手の平サイズの袋を取り出して逆さにし、中身をぶちまけた。

 

 

「お金?……ッ!?」

 

 

出てきたものに疑問を浮かべたニルだが、それが急に光り出したので直感的に無理矢理後ろに下がった。

 

 

「ん〜、惜しい!」

 

 

すると案の定それは爆発し、土煙と舗装された道路の破片が舞い上がり、視界が遮られる。更にそれらを切り裂いて魔力弾が弾幕を形成して飛んでくる。

目視出来たものの無理矢理下がってきたため、バランスを崩していており、体勢を整えるのをやめ、防御の体勢に移る。

 

 

「チッ……!」

『下がって!』

「えっ?」

 

 

そんなニルを庇うかのようにシーはニルの前に位置づき、目を紅く、怪しく光らせる。

 

 

「……ッ!」

 

 

すると、まるで世界がねじ曲がったかのように空間が歪み、魔力弾はあらぬ方向へと飛んでいき、姿を消していった。

 

 

「……ふうん、それが貴女の能力というわけですか?(なるほど。少し違うようですが、蛙の子は蛙ってわけですかね?……全く。能力といい無表情といい、誰に似たんだか……)」

「……!」

『私がサポートするから頑張って』

「……では、頼りにさせて貰いますね。シーちゃん?」

『任されろ』

 

 

無表情であるが力強いサムズアップをする仲間にニルは笑うことで返答し、銃を構えて再び突撃する。

 

 

「……!」

「甘いですよ!」

 

 

再びお金爆弾(仮命名)をばら撒くゼツだが、2度も同じ効くはずもなく、スイスイと避けていきながら確実に前へと歩を進める。

だがそんなことはゼツには承知の上。故に、その爆発に合わせて魔力弾を放つ。

 

 

『甘いのはそっち』

 

 

しかし、それは向こうも同じでニルより速い速度で彼女の盾になるように前に出て、空間を歪ませて魔力弾を逸らし、すぐ解除して黒鍵を投擲する。

 

 

「ッ!」

 

 

無論ゼツは危険から身を守るため、魔力弾で迎撃する。

黒鍵が迎撃される中、シーはその隙に銃を取り出して発泡した。

 

Vz61。通称スコーピオンと呼ばれるその銃は彼女の愛銃にて、彼女の大好きな人の愛銃でもあり……皮肉にも、ゼツが永時に倒された際に使われた銃でもある。

 

 

「……ッ!それは!?」

 

 

思わず反応してしまい、魔力弾の掃射を止め、守りの態勢に入る。

もう1人の自分とも言える影を操り、半球状に形取らせて自身の前へと出す。すると出来たと同時に銃弾の嵐が影の盾に降り注ぐ。

 

 

「ふう……」

 

 

とりあえず防げたことに安堵する。そして、銃弾の嵐の音が聞こえなくなったのでいざ攻撃を再開しようと盾を解除した。

 

 

「……!?」

 

 

ーーー瞬間。後ろから何者かに頭を鷲掴みされ。

 

 

 

 

 

 

「ーーー『空想電脳(ザバーニーヤ)』」

 

 

 

 

 

 

彼女の頭が突如、爆破した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」

「っ!……これでも、喰らっとけ!」

 

 

バットが手に持つ槍が永時の腹を易々と貫く。

しかし、永時は怯むことなく彼女の頭を掴んで頭突きをかます。

 

 

「〜〜〜ッ!!」

 

 

痛みで悶えているその隙に彼女のその小さな体躯に蹴りを叩き込む。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

軽いためか易々と飛んでいき、その隙永時は槍を抜き取って放り投げ、傷を再生させた。

 

 

「オラァッ!!」

 

 

すぐにバットは立ち直し、マッハを超える速度で接近して殴りにかかる。

だが、お見通しかと言いたいかのように身体の左半分を後ろに引かせて避け、空ぶった彼女の腕を両手で掴み、走ってきた時の勢いを利用して地面へ彼女を投げる。

 

 

「……ていっ!」

「ぬおっ!」

 

 

しかし、彼女は投げられる前に地に足を付けて勢いより蹴り出して同時に掴まれた手を振りほどいて宙を舞う。そして丁度いい足場()があったので踏んづけてクルクルと回って着地する。

 

 

「チッ」

 

 

無論踏まれた永時は前のめりになって手を付けてしゃがむ形になったが、懐から銃を出して、その場から半回転して発砲する。

速いバットにそんなもの当たるはずもなく、ひらりひらりと避けられていき、ちゃっかり槍も回収していた。

 

 

「……はぁ………はあ………」

「…ふう……ネバー。腕上げたな?」

「そりゃどう、もっ!」

 

 

一瞬で間合いを詰めて槍を叩き込まれるが、相棒である太刀を出して受け止める。

 

 

「久しぶりに見たなその太刀!そういやアスモは元気か!?」

「ああ、相変わらず色々とハツラツとしてるよ!」

 

 

そう言って槍を受け流し、彼女の身体に蹴りを入れる。

 

 

「くっ……ってえな!」

「っと!」

 

 

後ろに後退させつつもそのままではしてやられまいと、空いた手から手の平大の光の球体を放つ。

だがそんな適当な攻撃が効くはずもなく、太刀で簡単に薙ぎ払う。

 

 

「チッ、やっぱり無理だったか」

「フン」

「なら……」

 

 

そう言うと槍を中心に炎に包まれ、槍はその形を変化させ、三叉槍へと変化させていた。

 

 

(うわっ。姐さん本気(マジ)だな……こりゃあ、腹くくる時が来たな)

 

 

まるで燃え上がってる彼女の気持ちを表すかのように槍は紅い焔を纏う。

 

 

「1回燃えてみるか?」

「ハッ!焼死で死ねたら苦労しねえよ」

「あっ、そう!」

 

 

先程より大きな風切り音を響かせながら槍を横に振るう。すると槍を纏っていた炎が槍の穂先へと集い、永時を襲う。

 

 

「なっ……!(やっぱり炎でリーチを伸ばしてきたか!)」

 

 

焦った永時はその場から上に跳ぶことで上手く避けるが宙にいるため、隙だらけとなってしまう。

 

 

「もらっ「させるか!」チッ!」

 

 

突きを入れようとするバットに永時は銃を掃射する。

突きの構えを取っていたバットはすぐさま戻して槍をクルクルと回して銃弾を弾き飛ばすもその隙に永時は地へと足をつけた。

 

 

「……!」

「くっ!」

 

 

と同時にその足の速さで目の前に接近し、炎を穂先に纏わせた槍を横薙ぎに振るうも、永時は足に力を込めて後ろへと跳んで避ける。

しかし掠ったのか、着ていた服が溶接されたかのように少し溶けていた。

 

 

「甘い!」

「何!?」

 

 

だがそこで攻撃は終わってなく、逆に跳んだタイミングを狙ってきたのか、そのまま突きの構えで近づいてくるバット。

 

 

「……がはっ!?」

 

 

そして、最初と同じように……いや、今回は少し違っていた。

 

 

「……ぐっ……ああ………!?」

 

 

槍による痛みとは違う感覚。まるで熱を帯びた棒を突っ込まれた、否、実際突っ込まれているのだ。炎を纏ったままの槍を。

 

 

「言ったろ?1回燃えてみるか?って」

「……流石に、痛えなこれは」

「……?」

 

 

戦況は優勢だと分かってはいるのだが、相変わらずの悪どい笑みを崩さない永時に違和感を感じていた。

とりあえず警戒に越したことはないだろうと考え、槍を抜き取ろうと、持つ手に力を入れた。

 

 

「ッ!?」

 

 

のだが、全く動かない。いや、動かせなかった。更に手から痛みも感じられる。

さっきみたいに槍を掴まれていたからか?いや、違う。何故ならその手は槍ごと鋭い何かに上から貫かれていたからだ。

 

 

「なっ……!?」

「おいおい姐さん。『八方美人』の能力を忘れたのか?」

「……!?」

 

 

変形・変身。これこそが『八方美人』の能力。変身が得意なアスモらしい能力である。

そして永時がバットに対して行ったのは実にシンプルで、単に『八方美人』を変形されて彼女の持ち手を槍ごと貫かせただけ、ただそれだけである。

 

 

「正解だ。じゃあ今からやること、分かる?」

 

 

スッと彼女に見せるように何かのスイッチを取り出す。

 

 

「……まさか!?」

「まあ、そのまさかだよ」

 

 

ヤバいと直感が働き、手を抜こうと必死で抗う。

しかしそんな苦労は虚しく、スイッチを押されて足元が光り、2人纏めて爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおっ……!」

 

 

ビギナーの苦痛の声と共に、その巨体が易々と吹っ飛んでいく。

 

 

「オメガァァァァァァァァ!!」

 

 

しかし怯むことなく無理矢理立ち上がり、両手に緑弾を持って投げとばす。

 

 

「だからさ。ワンパターンだぞ?」

「なん、だと!?」

 

 

投げとばすと同時に視線の先にいたはずの男が自分の目先に現れ、目を見開く。反射的に退かせようと腕を振るおうとして腹を殴り抜かれる。

 

 

「ば、馬鹿な!?」

「残念ながら現実なんだよノット。今のお前じゃあ俺を超えることは出来んのだ」

 

 

殴られた腹部から感じ取れる痛みに驚愕した。あのセイバーの攻撃を、アーチャーの宝具を喰らってなお無傷だった強靭な肉体にダメージが入っていることに驚愕しているのだ。自慢ではないが、一応伝説の存在になっているのでかなり強い部類に入り、負けはないだろうと自負していた。そんな彼のプライドを割り箸を割るかのように簡単にへし折りに掛かっている男に、なおかつ現状で奴に勝てない自分の不甲斐なさに、苛立っていた。

対してオメガは腕を組んで、倒れそうなぐらい背を反らすというなんとも器用なポーズを取りながら哀れむような目でビギナーを見下していた。

 

 

「確かにお前は天才だ。何もせずとも充分な力を得て、今まで生きていたんだろうな。確かにお前ならネバーや姐さんには勝てるだろう。だがな……お前の知り合いに、努力する天災がいることを、忘れていたんじゃあないだろうな?

……そう!レースゲームで例えるなら!今日初めて扱うスポーツカーか!あるいはいつも練習で乗りこなしている改造車か!レースした場合どちらが勝つと問われれば貴様ならどう答える?」

 

 

無論殆どが後者を選ぶだろう。

ビギナーは確かに天才で最強である。何もせずとも伝説の力を持っているので向かうところ敵無しと言えるだろう。しかし、対峙しているのはそれ以上の化け物。ビギナーと似たように天才的な才能を持って生まれたのにも関わらず、今日の今日まで努力してきた男なのだ。

つまり何が言いたいかと言うと、ビギナーにとってオメガという男は相性が悪すぎたのだ。

 

 

「お前とは生きてきた年月が違うのだ。簡単に勝てると思うなよ小僧が」

「貴様、言わせておけば好き勝手言いやがって……だがなオメガ。もしかすれば初めて乗るスポーツカーでも、勝てない見込みがないとは言えんだろ?」

「まあ100%お前が負けるとは言ってはないしな。なんだ?まさか主人公補正とか働いて勝てるとでも?残念ながらお前は主人公じゃねえぞ?」

「フンッ、言ってろ。その内貴様を血祭りに上げてやる……」

「ハッ!悔しかったら負かしてみろよ。このオメガを!」

「……言っておけ、今楽にしてやる!」

「ほう?言ったな?(もう少し遊ぼうかと考えてたけど……もうやめだ)」

 

 

オメガが何かブツブツ言っているがビギナーは気にせずに走り出そうとその強靭な足に力を込めて走り出そうと身体を前に傾ける。

そんなビギナーを見てオメガは次なる行動に出る。

 

 

「……3割解放!」

「ッ!?」

「そおれ喰らっとけ……」

 

 

しかし気づけば自分の周囲を刃物がこれでもかというくらい敷き詰められるように現れ。

 

 

「ロードローr……ではなく、タンクローリーじゃッ!!」

 

 

更に上空からタンクローリーを片手で持つオメガが、ビギナーの頭上から降ってきて、刃物の嵐が彼を襲った。

 

 

「オメガ!貴様ァァァァ!!」

 

 

とりあえずまず周りを囲むように迫るうざったらしい刃物を腕で薙ぎ払う。

何故わざわざそんなことしたか。先程彼の拳が自身の肉体を貫通したので、もしかしたら刃物も貫通するのでないかと思い、保険のつもりで払うことにしたのだ。あと、わざわざ大声で叫んでこんなにも分かりやすくタンクローリーを攻撃の手段として出してきたので、タンクローリーは囮であり、本命は刃物であるという確信もあった。

 

 

「何ィ!?」

「バーカ!」

 

 

しかしそれはオメガにはお見通しであり、刃物はビギナーの予想より殺傷力が低く、あっさりと自身の肉体に弾かれた。

つまり本命は、タンクローリーということである。

 

 

「喰らええぃ!」

「クソがぁぁぁぁぁぁ!!」

「ほう?受け止めるか!」

 

 

刃物のせいで時間を稼がれ、すぐ目の前まで迫ってきたタンクローリーを正面から受け止め、力ずくで押し返そうと腕に力を込める。

 

 

「だが予想通り!」

「ッ!?まさか!?」

 

 

タンクローリー越しに聞こえる声にビギナーの頭に最悪の考えがよぎり、冷や汗を流す。

そんなビギナーの反応に予想がついていたのか。オメガは手を強く握ってニヤリと嘲笑う。

 

 

「ぶっ潰れな!!」

 

 

そしてタンクローリーに拳を振り下ろし、自身を巻き込んで大爆発を引き起こした。

 

 

 




※補足→バットのスキルが開放されました。


・魔力放出A(炎?)

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