Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜傲慢様が送る前回のあらすじ〜


「(フン、何故妾がこのような余興をせねばならぬ……まあ良い。偶には興じるのも良いか)……皆の者。初めましてか?傲慢を冠する者、ルシファーである。
今回見事あらすじに選ばれた妾じゃが……何故ゼツの方が先に選ばれたのかが納得いかん。誰か分かりやすいように説明せよ。ん?作者が悪い?ふむ……なるほどのう。理解した、礼を言うぞ。
では妾は他の者共とは違うので軽くじゃが語らせてもらおう。

前回、遂にライダーと決着をつけた妾は次の目的のために全戦力を集めだした。
一方哀れな騎士王は例の男に呼び出され、アヴェンジャーに関する新たなヒントを得た。

ってとこかの?うむ……。どうも例の男とやらは哀れな騎士王に肩入れしておるようじゃが……何が目的じゃ?まあ妾の予想が正しければ碌な理由でない気がするが……まあ分からんものを推理しても話は進まん。続きは本編を見れば分かるじゃろうし、そろそろ帰らせてもらおう。妾はこれからちとばかし所用があってな。人に会わねばならぬのでな?では、さらばじゃ。

……ところでじゃが遠藤凍という名の下手人はどこにおるか知らんか?」




最強vs最狂

 

 

 

「さっさと消えろ!鬱陶しい!」

「貴様!余程死に急ぎたいか!無個性!!」

 

 

アインツベルンの森にて、憤怒の表情を見せながら宝具を放ち続けるアーチャーとイラついた表情を浮かべるビギナーは緑弾を投げるもしくは打つなりして飛んでくる宝具を相殺し続けていた。

 

何故このようなことになったのか、それはほんの数分前にまで遡ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?敵襲か!?」

 

 

1人で部屋に篭っていたビギナーは誰かは分からないがサーヴァントらしき気配を感じ取り、すぐ様壁をぶち破って森へと飛び出していく。

そしてその正体を探るために暫く森の中を飛び回っていると、

 

 

「……ッ!?」

 

 

真横から爆発と衝撃が彼を襲った。

不意を突かれたことにより軽々と吹き飛ばされ、地面へと落とされた。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

しかしダメージは受けてなかったので、すぐ様受け身を取ることで立ち直し、警戒心を緩めることなく辺りを警戒する。

すると彼の耳に聞き覚えのある、ある男の声が聞こえてきた。

 

 

「ほう?不意打ちとはいえ、我が財を受けてなお健在とは少しは骨があるようだな」

「アーチャー!!」

 

 

そう、黄金に身を包んだ世界最古の王であるアーチャーが腕組みをしながらこちらを見下していた。

 

 

「アーチャー……貴様、何をしに来た?」

「何をしに来た、だと……?ハッ、王を名乗る無礼者に呼び出されたから来てみれば貴様がいたのでな。貴様、以前言っていただろう。『喧嘩なら後でいくらでも受けてやる』と」

 

 

確かにそんなこと言ったなと思い出しつつ、いつ攻撃が来てもいいように臨戦態勢を取り続ける。

 

 

「ああ、言ったな……それがどうした?」

「まだ理解してないのか?……つまりは」

 

 

そう言ってアーチャーは自身の背後に黄金の波紋を広げ。

 

 

「興が乗ったから、今から我自ら裁いてやるということだ」

 

 

そう言って黄金の波紋から大量の宝具を射出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーと、いう訳でこうして戦闘が行われているということである。

 

 

「……フンッ」

 

 

再びアーチャーは波紋を展開し、宝具を射出する。

煌びやかな武具の数々はビギナーに向かって飛んでいく。

 

 

「チッ……!」

 

 

それに舌打ちしつつビギナーは手から緑弾を作り出し、投げとばす。すると1つだけではなく、分裂するように小さい緑弾が飛んでいき、飛来してくる宝具を撃ち落としていく。

しかしアーチャーは何も思うことなく更に波紋を展開し、射出を続ける。

 

 

「しつこいぞ貴様!!」

「ならば大人しく我に裁かれるがよい!」

「断る!」

 

 

そう言って同じ技をもう1度使い、迎撃する。

 

 

(このままじゃジリ貧か……切嗣の魔力が持つまであと少しというところか)

 

 

少し前にやったセイバーとバット戦を思い出し、自身の限界を理解していたため、もうそろそろ来ると理解しており、それ故に焦りを感じていた。

どうしてこの状況を打破できるか、頭を捻って考える。

 

 

(……チッ、もうどうにでもなれ!)

 

 

しかし流石は賢さ26と言われている男になっているだけはある。考えることをやめ、本能的に武具を避けることにした。

飛んでくる弾幕のような武具の隙間という隙間をその巨体からは予想がつかない速さで突き抜けていく。

 

 

「何……!?」

「死ぬがいい!」

 

 

そしてその隙間から緑弾を投げ飛ばしてアーチャーを直接狙った。

しかし、それを鼻であしらうように笑うと自身の正面に7枚の花弁で飾られた盾を出して間に挟ませることで見事に防ぎきった。

 

 

「何ィ!?」

「それ、もっと興じてみよ」

「クソッ……!」

 

 

防がれたことによりビギナーは動揺するがそんな暇もなく、アーチャーは宝具の射出を再開し、また防戦へと戻された。

 

 

(チッ…!このままじゃ本当に魔力切れ……あれを使うしかないのか?)

 

 

防戦へと戻されたビギナーの頭にふとある考えが浮かぶ。

しかし、それは敵にとっても、マスターである切嗣にも、そして本人であるビギナーにとっても最悪の考えだった。

 

かつての仲間なら理解しているものもいるだろう。最強で最狂への変化を遂げるべきかを。

 

だが彼は葛藤していた。この変化を遂げれば勝利は確定だろう。しかし、問題はそれに伴う膨大な破壊衝動が溢れ出てくる。しかも狂化も重なり、すれば最後、今僅かに残っている理性は消えてしまうことが簡単に予想できた。つまりそれは、気の向くまま行うありとあらゆる破壊活動の実行を意味するのだ。

別に無関係な一般人が死のうと所詮は他人、助ける義理もないのでどうでも良いのだ。だが……

 

 

(下手すればアイリスフィールを巻き込んでしまう……それだけは避けなければ)

 

 

まだ生存しているかもしれないアイリスフィールを殺してしまうかもしれないことが予想され、変化することを躊躇っていた。

更にもう1つ、問題があった。

 

 

(あれをやれば最後、暴走は免れん。……切嗣は確実に魔力枯渇を起こすだろうな)

 

 

そうすれば死ぬぐらいならと切嗣は確実に令呪で自害させてくる可能性が出てきたことだ。

そうされたら目的達成の前に死んでしまうのは明白なのだ。こんなところで死ぬ訳にはいかないのだ。

 

 

(……クソッ!面倒臭い!こうなったら捨て身覚悟でーーー)

 

 

ヤケクソで突撃の態勢を取ろうと構えたところで……それはいた。

 

 

「ーーー!!?」

「……ほう?」

 

 

戦闘民族の中で強者と言われる存在と化している自分でさえ恐怖する程の圧倒的な重圧感(プレッシャー)。その重さは無意識に足を後ろへと下げさせる程の圧倒的なものだった。

しかし彼は知っていた、否、嫌でも覚えていた。この重圧を出せる存在を。

対してアーチャーは怯むことはなく、寧ろここまでの重圧を出せる存在に興味が出ており、それがいるであろう方角を見つめていた。

 

 

「こんばんは皆様。今宵もまたいい夜だと思いませんか?」

 

 

そう言って現れたのは今回全くの未知数と呼ばれるサーヴァント。アヴェンジャーと名乗る男であった。

 

 

「おい雑種。貴様がしでかしたこと、理解しておろうな?」

 

 

しかしアーチャーは止められたことに怒りを感じており、現れたアヴェンジャーにそう尋ねた。

するとアヴェンジャーはアーチャーの存在に気づくと綺麗なお辞儀を見せて語り始める。

 

 

「おや?これはこれは英雄王殿。突然の無礼をお赦しください。実はこのビギナーにちょっとした用がございまして……」

「ほう?所用とな?申してみよ」

「はい。実はーーー」

 

 

赦しが出たのでアヴェンジャーは目的を語ろうと口を開いた。

 

 

「簡単なことです。私がここに来たのh「消えろぉぉぉぉぉ!!」……おや?」

 

 

が、いつの間にかアヴェンジャーの懐に飛び込んだビギナーは手に持った緑弾をゼロ距離で懐に叩きつけて爆発させた。しかもセイバーの時に使ったものより威力を上げて、今自分自身が出せる力を出し切った出力でだ。

特に構えもしなかったアヴェンジャーはその攻撃を無防備な状態で受け、そのまま爆発によって吹き飛ばされた。

それを見たアーチャーは吹き飛ばされたアヴェンジャーを蔑むような目で見ていた。

 

 

「フン、もう消えよったか。未知数と散々喚かれておるから期待しておったが……所詮は雑種か」

 

 

そう言って霊体化して去っていった。

しかし、アーチャーは知るべきだったのだ。何故あのビギナーが不意打ちなんて真似に出たのかを。

 

 

「はあ……はあ……!やった!やったぞ!」

 

 

対して残ったビギナーは攻撃に確かな手応えを感じたため、殺ったのだと歓喜していた。いや、正確には安堵していた。この行動は正解だったと、必要なことだったと。

 

 

「いやはや……今のはちょっと効きましたよ?」

 

 

しかし現実はそう甘くないものである。

吹き飛ばした衝撃により生み出された土煙から確かに起き上がるように見える人影。晴れてくるとそれはハッキリと見えてきた。

よく見れば彼は不気味でなおかつ重圧感を感じさせられる雰囲気を醸し出しながら張り付いた笑みを浮かべていた。更に艶のある長い黒髪の中性的な男の姿はなく、深緑の軍服を着た、白髪に筋肉質な身体つきの中背な男が黒い双眼でこちらを見つめていた。

 

 

「なん……だと!?」

 

 

まるで冷水を頭から掛けられたかのようだった。身体は凍りついたかのように固まり、目を見開いてその人影を見た。

 

 

「いくらその状態とはいえ、相変わらず貴方の攻撃は重く、それ故に明確な殺意は確かに伝わりました。ですが、甘いですよ?私を殺りたいのならバビロンとエクスカリバーとエアを同時にブッパするぐらいの威力でないと……それとも伝説のスーパーサイヤ人になってギガンテックミーティアでもぶちかませば殺れるかもしれませんねえ?おっと、メメタァな発言をしてしまって申し訳ない」

「グッ……!」

 

 

何故不意打ちをしてまで殺そうとしたのか。

人間というものは最悪の事態が起こるとすぐに原因を排除しようと本人にも予想できない行動を取ることがあるが今回はまさにそれが当てはまる。

 

 

「何故だ!何故お前が参加している!?」

 

 

それはビギナーが最も危険視していた事態が起こったから、つまりそれは……

 

 

「いやね?ネバーも姐さんも、そしてノット。『終焉末路(カウンター・ラグナロク)』の皆さんが参加していると聞きましてね?個人的に参加したくなったのですよ」

 

 

4人目である人物の参加を意味していた。

 

 

マッハを超える速度チート、バット=エンド

 

自称普通の異常な防御チート?ノット・バット・ノーマル

 

驚異の生命力を持つ耐久チート、ネバーこと終永時

 

そして表立って公表されなかった、この3人を越える最狂最悪の男がいた。

 

 

「……メガ………オメガァァァァァァァァ!!」

「来いよノット。昔みたいに喜り負せて(斬り伏せて)やるよ」

 

 

そう言ってどこからともなく取り出した刀やナイフや包丁などの刃物全般を指の間に挟んでニヤリと笑った。

 

つまり、ビギナーが最も最悪だと、だけどそれ故にないだろうと考えていた。まさかの『終焉末路(カウンター・ラグナロク)』の全員参加を意味していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

存在自体がチートと呼ばれた人物。万能チート、二つ名は気まぐれな狂楽者。その名もオメガ。

異常よりも異常で、最速よりも最速で、自称悪よりも悪を演じ。気分によってそれが逆へと変わってしまうかもしれない男が聖杯戦争最強であろう男とぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー使い魔からの情報によるとどうやらあの馬鹿が状況を開始したようだ。やはり、あの馬鹿をこっちに引き入れて正解だったな」

「そうですか……」

 

 

現在乗車している黒の普通車に揺られながらある場所へと向かう一同にそう報告する。

ちなみに乗車メンバーは運転席に永時。助手席にサマエr……ニルマル。後列の進行方向から左からセイバー。反対の窓側にはマモン。そしてその2人の間に挟まるように座って永時の運転姿をポーッと眺めるシーちゃんの5人。

 

 

「師匠。今更なのですが一体どこに向かっているのですか?」

 

 

何も伝えられずに車へと乗り込んだニルは恐る恐る師へと尋ねてみる。

 

 

「……ああ、お前には言ってなかったな。今から向かうのは……冬木市公民館だ」

「公民館?また何でそんなところに?」

「……実はな、前ベルフェの奴が俺に黙ってやっていたことがあってな。まあ後々問い詰めたらある人物に発信機を付けていたことが発覚したんだ」

「ある女?」

「アイリスフィールと呼ばれる女だ」

 

 

その名を聞いて思い出す。確か前師匠が言っていた聖杯の器としての存在がそんな名前だったことを思い出した。

それに前になんかアインツベルンのホムンクルス技術に興味あるとかなんとか言ってアスモを含めた3人でアインツベルン城に乗り込んだあの時かと思い出しながら話を聞く。

 

 

「あっ……!そういうことですか」

「分かってくれたらそれでいい」

 

 

そう言って運転を再開する。

しかし、ふとあることを思い出し、永時は再び口を開く。

 

 

「……そういやセイバー。思いは固まったか?」

「……いえ、まだです」

 

ここでいう思いとはセイバーが聖杯にかける願いのことであり、それの実行をするかしないかのことを聞いているのである。

 

 

「そうか……」

「セイバーさん」

 

 

すると2人が無言になったのを見計らってか、今まで黙っていたマモンが口を開いた。

 

 

「1つお聞きしたいのですが……よろしいですか?」

 

 

マモンが珍しくシリアスになったことに永時は驚きつつも黙って見守ることにした。

すると雰囲気から察したのかセイバーは凛とした声で返答した。

 

 

「何でしょうか?」

「セイバーさんは……永時様のことをどう思っていますか?」

 

 

ガクッ、とセイバーとマモン以外の者が体のバランスを崩した。

 

 

「なんで今それを聞くんだよ?」

「永時様。一見ふざけているように見えますがわたくし達にとっては結構重要なのですよ!」

 

 

いや、知らんがなと永時は内心思うが他の女性陣は耳を傾けて興味津々な姿を見せていた。

肝心のセイバーは頭を傾げて少し思考したのち、答えた。

 

 

「相談事を聞いてくださる友人、でしょうか?」

「友人ですか?」

「はい。何も言わずとも黙って見守り、時には論じてくれる友人、というより兄妹に近いものですね」

「そうですか。ならよろしいのですが……」

 

 

そういえばとマモンは思い出す。自分の友人の魔王に永時のことを友人のように思っているが実は微かに芽生えた恋心に気づいていないだけ、という事例があったことを思い出してセイバーはそれに当てはまるのでは?と推測した。

しかしこういうのは下手に言えば変な意識を持ってしまうかもしれないので黙っておこうと考えた。

 

 

「あー……悪いが現在目的地間近になったからそろそろ気を引き締めてくれないか?」

 

 

永時の一声で皆は黙り込み、各々が臨戦態勢の状態を維持し始める中、コンコンと運転席の窓の方からそんな音が聞こえた。

 

 

「ん……?」

 

 

気のせいか?と運転を再開するとまたもやコンコンと音が聞こえる。

確かに耳にした永時は音源が気になりだし、音のする窓の外を見ると、

 

 

「……」

「よっ!」

「……車から出ろ!」

 

 

見覚えのある幼女が鎖を放り投げる姿があった。

慌てて皆にそう叫ぶと同時に窓を突き破ってハンドルに鎖が巻きつき、

 

 

「オッケー!そお……れっと!」

 

 

鎖の持ち主はそれを背負い投げの要領で車を道路に叩きつけた。

叩きつけられた衝撃に車は耐えられるはずもなく、ひしゃげて大爆発を引き起こした。

 

 

「大丈夫ですか皆さん!?」

「わたくしは大丈夫ですわ」

『私は大丈夫』

「私は大丈夫ですが……エイジが!」

 

 

しかし各々が脱出できておりほぼ無傷であった。

皆が安全を確認する中、永時だけが見当たらず、もしや……と最悪の事態がセイバーの頭をよぎった。

 

 

「チッ、痛えじゃねえかこの野郎」

 

 

しかしそんなセイバーの心境もいざ知らず、大炎上している車の運転席の扉を蹴飛ばしてひょっこりと姿を現した。

よく見れば周りは何だいつも通りかと大した心配もせずに奇襲者である人物を睨んでいた。

 

 

 

「ヒュ〜!派手だねぇ!」

「……何のつもりだ?姐さん」

 

 

永時はバットを殺気混じりの目で睨みつけた。

しかし、バットはそれを軽く受け流してあっさりと答えた。

 

 

「ん?……ただお前の邪魔がしたいだけだが?あと、お前と殺りあってみたいってのもあるけどな」

「寧ろ後半のが本音だろ?」

 

 

馬鹿言うんじゃねえよと舌を出して笑みを浮かばせる。

でもな……と先程まで仲間に見せていた優しい雰囲気はなくなり、殺気と威圧を纏った狂戦士の雰囲気へと変わり。

 

 

「……本音はその逆なんだよ」

 

 

永時の腹部に衝撃が走った。

 

 

 


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