Fate/Evil   作:遠藤凍

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〜強欲様がお送りする前回のあらすじ!〜


「リヴァイアサンマジ裏山……えっ?もう始まってる?…んんっ!皆様ご機嫌よう。
遠藤さんがFate/Goのクリスマスイベントとやらに集中しておりますので、今回はわたくしことマモンが変わって、あらすじをお送りさせていただきます……では早速ですが、強いて言えば1つだけーーー

ーーーニルマルさん、シーちゃんさん。次回からはわたくしも加勢させなさい。
共有財産という考えは共感できます。この際是非『永時様教団』へ入信なさってはいかがでしょうか?

……えっ?簡略化しすぎ?あらすじじゃねえ?……そんなこと知りませんわ。わたくしはわたくしのやりたいようにしただけですから。前回のことをしりたいのなら自分で読みなさい。
大体『サンタオルタ……だと…?漲ってきたー!!』とか言ってどこかに行った遠藤さんが悪いのです。ええ、だから苦情等は遠藤さんの方へとお願い致します。……では、本編の方をお楽しみ下さい」




魔王と覇王

 

 

「……」

 

 

桜、雁夜共に寝静まっている深夜。電気を点けず、どこからか取り出してきた銀の丸テーブルの中央に設置された蝋燭に火を灯し、その灯りを頼りに、送られてきた未開封の手紙をジャージ姿のルシファーは無言で眺めていた。

 

 

「……ふむ、罠の類はなしか」

 

 

自分宛に届けられたそれが罠ではないと分かるや否、乱暴に開けて中身を取り出して読み出した。

 

 

「……ほお?面白いではないか」

 

 

しかし短い内容だったのかすぐに要件らしきものを理解し、彼女の顔に自然と笑みが浮かび上がっていた。

 

問題としては書き綴られていたのが久しく見てない文字だったため、解読に多少時間がかかったというぐらいである。

 

 

「ルシファー、ちょっといいか?」

 

 

しかしバットの声が聞こえるや否や、すぐに元の真剣な表情に戻すと、銀色の玉座を出現させて腰掛けた。

 

 

「良いぞ」

「入るぞ〜」

 

 

そう一言言ってからバットは入室し、ルシファーは頬杖をし、余裕の笑みを浮かべて歓迎した。

 

 

「何用じゃ?」

「いやな、同盟のお誘いを受けたんだが……どうする?」

「……ああ、ノット・バット・ノーマルの討伐同盟ってとこかの?通りでサーヴァントの気配を感じるわけじゃな」

「まあそうなんだけどさ……」

 

 

気まずそうに言うバットを尻目にルシファーは暫く黙り込んだのち、口を開いた。

 

 

「ふむ……バットよ」

「ん?何だ?」

「その同盟を呼びかけた陣営に返事をしておいてくれぬか?」

「ああ、オッケー。……で?なんて言えばいい?」

「答えはお主なら知っておろう?と」

「……?とりあえず了解した。んじゃあ、ちょっくら行ってくるわ」

「気をつけていくのじゃぞ?」

 

 

あいよ、と軽く返事すると姿を消し、召喚時と同じように衝撃と遅れて出た暴風が吹き荒れた。

 

 

「少しは遠慮というものがないのか、あやつは……まあ良い。バーサーカー、出て参れ」

 

 

そう言って自身の後ろに語り掛ける。するとバーサーカーが静かに実体化した。

 

 

「今から妾は少し出かける。留守を頼んだぞ」

 

 

そう言うとバーサーカーはただ黙り込んだまま静かに霊体化した。

 

 

「さて、行こうかの」

 

 

そう言ってルシファーは冬木市の空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地は……冬木大橋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーって、ことがあったんだよ」

「おや、彼女がそんなことを?どういう意味でしょうか?」

 

 

そう言ってバットとアヴェンジャーは手に持つ湯のみのお茶を飲み干す。

 

 

「「ふぅ……美味い」」

「おいコラ、何のんきに人の家で寛いでんだ?」

 

 

とか言いつつ持ってきた急須で2人のお茶を注ぐ永時。

 

 

「……そうですよ、お二方。今は聖杯戦争中なのですよ?同盟を組んでるアヴェンジャーはともかく、ランサーはお引き取り願いたい」

「大福食いながらぬいぐるみモフッてる奴には言われたかねえよ」

 

 

ムッ……とジャージに身を包み、ライオンのぬいぐるみをモフモフしながら幸せそうに大福を食べる騎士王(笑)がいた。

 

 

「しかし、あいつがそんなことを……まあ予想通りだった訳だが……」

「ん?結局どういう意味なんだよ?おっ?この大福うめえな」

「気に入ってくださって良かったです。持ってきて正解でしたよ」

 

 

そう言ってモキュモキュと効果音が聞こえるような咀嚼をするバット。そして可愛いですねぇ、とニッコリ笑顔でそれを見るアヴェンジャー。

 

 

「しかしお前、金はどうしたんだよ?」

「……まあそれは置いといて、それで?どういう意味なんですか?」

「話を逸らすな。……あれだ、あいつはあいつらしさを貫くってことだ」

「どういうこと?」

「つまり、誰の手も借りず、1人で何とかしたいってことだ。丸くなったとはいえ、あいつは魔王……フッ、傲慢(プライド)を重視するとは、実にあいつらしい」

「そうかい……」

 

 

そう言ってバットは湯のみのお茶を再び飲み干して一服する。そして、ふとあることを思い出した。

 

 

「……ところでよぉ」

「ん?何だ?」

「聖杯戦争って勝ち残ったら何でも願いを叶えてくれるんだろ?だったら何を聞きたいか分かってんだろ?」

「願い事について知りたい、ですか?」

 

 

そゆこと、と言って急須を持ってお茶を注ぐ。

 

今更過ぎねえか?と永時は思ったが、そういやコイツらあの時いなかったな、と思い出した。

 

 

「セイバー、お前もどうだ?」

「いえ、私は結構でs……これも何かの縁でしょう。その話、乗らせていただきます」

 

 

はっきりと断ろうとしたが急に意見を変えてそう言いだした。そんな彼女の視線の先には、永時の後ろで釣竿に引っ掛けられた『やってくだされば差し上げますよ?』と紙が貼られた茶菓子に目がいっていた。ちなみに竿を持っているのはニヤけ顔のアヴェンジャーである。

 

 

「では私も……」

「おいネバー、お前はどうすんだ?」

「いや、俺は別にーーー「はいはい、とりあえずやるぞ」……無視かよ」

 

 

やる気がないのでその場から離れようとしたがバットに回り込まれ、いつも間にか席に座り込んでいた。

 

まさに才能の無駄遣いだな、と思いながらも逃げるタイミングを伺う。

 

いつの間にか元の位置に戻っていた速度チートのバット。しかし本人はやる気のようで、何て言うんだろうな?と目をしいたけにして期待に満ちた目でじっと見つめている。

 

他には、なんか見覚えのない茶菓子を頬張っているセイバー。

 

そしてそれを理解しつつ永時にムカつく笑みを見せるアヴェンジャー。てかセイバー買収されたのかよ。

 

 

「……はぁ」

 

 

逃げられないことを悟り、溜め息を深く吐いて諦めることを決心した。

 

 

「んで?誰から話すんだよ?」

「じゃあ言い出した彼女からで」

「そうだな、じゃあ俺からで「師匠、よろしいですか?」……何だ?」

 

 

丁度始めようとするタイミングで部屋に現れた弟子。タイミングの悪さにバットは文句の1つや2つ、言おうとしたがその真剣な表情が何か物語っていることを感じ取り、言葉を飲み込んだ。

 

 

「……例の2人が動き出しました」

「……分かった。引き続き監視を続けてくれ」

「分かりました」

 

 

そう言って部屋から姿を消す。そして聞き終わった永時は気を引き締めた真剣な表情に戻り、アヴェンジャーに向かって言った。

 

 

「アヴェンジャー、セイバー、準備しろ」

「了解しました」

「分かりました、すぐに」

 

 

真剣な表情に変わり、部屋から出て行く2人。急に変わった雰囲気にバットはついていけず、どうすれば良いのかあたふたしていた。

 

 

「な、何だ?えらく騒がしいけど……?」

「……悪いが姐さん、その話はまた別の機会にしてくれないか?」

「えっ?まあいいけどさ。何するんだ?」

「ビギナーと決着をつける」

「…何?」

 

 

聞いた途端、目つきを鋭くして永時を睨みつける。しかし永時はその視線に怯むことなく、いつもと何ら変わりない態度を取り続ける。

 

 

「おいおい姐さん、そんな怖い顔しないでくれよ?別に俺は個人的に恨んでるとかそんなんでやるわけじゃねえ……分かってくれ」

「……分かってる。分かってるけど……」

 

 

そう言って彼女は顔を俯かせる。その姿に申し訳なさが出てきてすぐさま謝罪する。

 

 

「……すまんな、俺の力不足のせいで」

「いや、誰のせいでもねえよ。……邪魔したな」

 

 

そう言い、俯いたまま彼女は去っていった。高速で移動したため、遅れて出てきた衝撃と、それにより出てきた強風が部屋に吹き荒れた。だがそんなことは大して気にせず、永時は部屋から出ようと足を運ぶ。しかし出たはずだったアヴェンジャーに止められて彼は足を止めた。

 

 

「……いいのですか?彼女を放っておいて大丈夫なのですか?」

「……別に構わん」

「では、彼女が障害として現れた場合は?」

「その時は……倒してでも突破するだけだ」

「倒す、ですか……いやまあ随分と丸くなられましたね。昔の貴方なら殺ることも考慮していましたが……」

「フッ、やっぱりそう思うか?……俺も随分と甘くなったもんだな」

 

 

自嘲気味に笑うと彼は部屋から立ち去って行った。そしてその背を眺めていたアヴェンジャーは呟いた。

 

 

「しかしその甘さも、人間には必要なのですよ?まあ甘すぎるのもいけませんがね?…しかしーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーその甘さが、仇にならないと良いのですが……特に貴方は弱体化が一番酷いようですからねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして冬木大橋にて手紙の差出人であるライダーが腕組みして佇んでいた。

 

 

「……来たか」

 

 

ふと急に笑みを浮かべて上空を見上げ、釣られてその愛馬のブケファラスも、その上に騎乗するマスターのウェイバーも同じ方向を見上げる。その視線の先に上空から見下しながらゆっくりと降下していくルシファーの姿が。

 

 

「……ふん、こんなもので呼び出すとはな。何用じゃ?」

「ん?中は見ておらんのか?」

「無論見とるわ。しかし…決闘を申し込むとはどういう風の吹き回しじゃ?」

「んんん?そのままの意味であっとるぞ?」

「……ふむ。貴様のことじゃから、てっきりギルガメッシュに挑むと踏んでおったがな……」

 

 

予想が外れ、まさか自分に挑むとは思わなかったルシファー。

 

しかし彼女は魔王。戦わずして敗走など傲慢(プライド)が許せぬことである。故に今回彼女はこの挑発に乗り、ここまでやってきたのだ。

 

 

「ハッハッハッ!どうも余は欲張りでな!魔王と称される貴様を征服したくなってな!」

「ほう……?つまり妾を臣下にしたいとでも申すか」

「いや、その前に1つ聞いておきたいことがある」

「…なんじゃ?言ってみよ」

 

 

ニヤリ、と余裕を持った笑みでルシファーが見つめる中、ライダーはルシファーに少し歩み寄り、笑みを崩さぬまま言い放った。

 

 

「……余の盟友とならんか?」

「断る」

 

 

まさに即答であった。あまりの早さに驚いたライダーは理由を尋ねた。

 

 

「ほう?それまたどうしてだ?」

「そんなのは決まっておる。妾が魔王だからだ」

「魔王、だから……?」

 

 

思わず呟いたウェイバーの方に向き、左様、と彼女は答える。

 

 

「親愛なる盟友と共に世界を征服する、それがお主が覇王ある故の道、即ち覇道じゃ。じゃが妾は違う……誰の下にも付かず、誰とも対等であらず、常に上に立ち続け、孤高の存在でなくてはならない。それが妾が魔王であるための道、即ち魔道と言うべきか」

「けど…それ故に孤独。寂しいと感じたことはないのか?」

 

 

ウェイバーの素直な問いに鼻で笑ってこう答えた。

 

 

「無論じゃ……とまあ、昔の妾ならそう思っておったが……まあエイジのせいで人の温もりを知ってしまったからな。今あの頃に戻ろうとすれば寂しく感じるじゃろうな」

「そうか」

「しかし、だからと言って誰かの下に付かないことは変わらんぞ?」

 

 

ニタリ、と好戦的な笑みを浮かべてライダーを見やる。するとライダーは神妙な顔をしていた。

 

 

「……なるほど、お互いに譲らぬものがあるということか」

「そうじゃ。……で、お主はどうするのだ?」

「無論決まっておる。我が覇道は征服あってこそのもの、ならば、余は余らしく剣を交えて語り合えばよい!」

「ほう?この妾に挑むと言うのか?」

 

 

笑みを崩さぬまま、濃厚な殺気をばら撒く。しかし、ライダーとそのマスターは怯むことなく彼女から目を離さず、ライダーははっきりと答えた。

 

 

「そうだ、と言ったら?」

「……よかろう、貴様には妾への挑戦権を与えてやろう」

 

 

すると、彼女は背中に3対の計6枚の漆黒の鳥羽を広げ、自身が持ち得る魔力と殺気を解き放って言う。

 

 

「やるからには全力で来るがよい。さすれば妾に、一太刀浴びせられるかもしれんぞ?」

「無論そのつもりだ」

 

 

ニタリ、と笑うとライダーは微笑みを崩さぬまま語る。

 

 

「……やる前に聞いておこう。お主、何故断られると分かっていて盟友にしようとした?」

「…なあに、簡単なことよ。もしかすれば気が変わり、了承すると踏んでおったからだ。それにお主は盾を使うと聞いた。……例えば、余の『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』をギルガメッシュの宝具と貴様の盾で武装させれば、最強と言っても過言ではない兵団が出来る」

 

 

まるで夢を語る少年のようなライダーの言葉にルシファーは納得していた。確かに半神半人のギルガメッシュの宝具、負けたとはいえ神に抗った者の盾。この2つが揃えば確かに最強かもしれないと。

 

 

「……改めてどうだ?余と盟友にならんか?貴様と余とギルガメッシュならば必ずや世界の果てまで征服出来るぞ?」

「……なるほど、世界征服か。そう言うのも悪くないかも知れぬな。じゃが、さっきも言った通り妾は魔王。生憎、伴侶は間に合っておるし、魔王は常に上におらねばならぬのだ。友など要らぬし、誰かの下に下るのも考えられぬ」

「……孤高なる王道か。では、余はその揺るがぬ王道に敬服を持って、続きは剣を交えて語るとしようか」

「よかろう、やってみよ。このルシファーに対して、全力で抗うことを許そう」

 

 

そう言って2人は互いに背を向けて歩きだす。ライダーは愛馬へと、ルシファーはただ距離を取るために。

 

そして、ライダーは愛馬に騎乗し、ルシファーはある程度距離をとった後、ライダーは己の得物を天に掲げて叫んだ。

 

 

「ーーー集え我が同胞たちよ!今宵我らは、かの神代の神の反逆者へと勇姿を示す!!」

 

 

すると剣から光が放たれ、ルシファーを飲み込んでいく。

 

 

「……例の宝具か」

 

 

目を開けて視界に広がったのは太陽がこれでもかというほど照らされ、先の全く見えないほど広大な灼熱の砂漠。

 

そして、地平線から見える軍勢。その前に先導する様にこちらに歩むライダーの姿があった。だがその顔は先程のような友好的な笑みではなく、全くの無表情であり、彼の真剣さを物語っていた。

 

そして後ろに整列して控える兵達(同胞たち)は槍を天高く掲げ、己の王の言葉を待ち続けた。

 

 

「敵は傲慢を司る魔界の王!相手にとって不足なし!!いざ益荒男たちよ!7つの大罪の一端を担う者に、我らの覇道を示そうぞ!!」

 

 

そう叫びながら剣を天へと掲げると賛同するように兵達は雄叫びに近い声を上げる。

 

そして、掲げたその剣が振り下ろされたその瞬間。

 

 

「AAAAlalalalalalalalalalalalalalalalaie!!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

ライダーとそれに続くよう走り出す兵達。その様子をルシファーは面白そうに眺めていた。

 

 

「……夢を追ってここまでなるとは相当なものよ。しかしな、夢は所詮夢。大抵叶わぬことを理解しておったか?……さて、貴様はその夢。見事に叶えられるかのう?……ゼツ」

「お呼びでしょうか?ルシファー様」

「……少々骨のありそうな者がいたのでな。あれをやるぞ、すぐに用意せよ」

「了解いたしました」

 

 

特に何もせず普通に現れたゼツに特にツッコミをせず、要件を伝えるとすぐ去っていった。そしてそれを見送ったルシファーは着ていたジャージを黒のドレスのような鎧に変え、銀の玉座を出すとそれに腰掛けた。

 

 

「気づいておらぬのか?世界を征服すると言うことは魔界も視野に入れておるのも同義。つまりは我ら魔王に挑むということも考慮しておるだろうな?……せめてもの報いとして、妾自ら手を下してやろう」

 

 

そう言って彼女は肘枕をし、空いている左手を天に掲げる。

 

 

「見るがよい。傲慢の魔王、ルシファーの力を!その目でしかと焼き付けるが良い!」

 

 

そう言い終えると、彼女の背後に大量の魔方陣らしきものが大量に出現し始めた。

魔方陣からは人が1人、また1人と現れていく。しかしその背には漆黒の羽を広げており、人間でないことは明らかであった。

 

 

「何だあれ……まさか堕天使!?いや、悪魔もいる!」

 

 

ウェイバーが言った通り中には蝙蝠のような羽を広げた人型のような存在、通称悪魔と呼ばれる者も姿を見せていた。

 

段々と召喚される中には人型ですらない異形の存在もいた。

 

やがてその数はライダーの軍勢に匹敵するほどの数となった。

 

 

「何と!?」

「見よ!これこそが妾に付き従ってきた部下共よ。どうした?怖気付いたか?」

「いや、これ程の軍勢を持つとは……ますます盟友にしたくなったわ!!」

「ほう?」

 

 

ビビるどころか、むしろ好戦的になったライダーに感心しつつ彼女は自身の部下を見渡す。

 

 

「……ルシファー様、ご指示を」

 

 

その中にはいつもの奇抜な黒タイツ姿ではなく、露出を控えた軽装の鎧に身を纏ったゼツが、自身の王の斜め後ろに立ち、王の言葉を待っていた。

 

 

「ッ!来るぞぉ!!」

 

 

直感的に敵が来ると理解したライダーは己の兵達に警戒を呼びかける。

 

すると案の定、ルシファーは顔を冷徹な魔王の表情へと変化させ、上げていた左手を振り下ろして号令を上げた。

 

 

「……行け」

「全軍!突撃ぃ!!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

王の言葉を代弁するようにゼツは声を上げて叫び、それをしかと聞いた部下たちは人間を超えた強靭な筋力で地面を蹴って大地を駆ける者、鳥や蝙蝠をイメージされられそうな翼を力一杯羽ばたかせ空を駆ける者、中には竜種らしき者に騎乗する者など、様々であるが皆が皆、ライダーの軍勢を討ち滅ぼさんと向かって行く。

 

やがて2つの軍勢はぶつかり、戦の炎は燃え上がる。

 

 

「これこそが妾の魔王としての集大成の1つ、その名も『地獄の中の天国(ヘヴン・イン・ヘル)』じゃ」

「『地獄の中の天国(ヘヴン・イン・ヘル)』ですか?」

「うむ。エイジが語っていたある組織の名から取ったものじゃ」

「ある組織、ですか?」

「ああ、確か……『天国の内側』とか『地獄の外側だった』だったか、思い出せん……」

 

 

と、そうこう話していると1人の堕天使が走ってきて片膝を立てて屈む。その姿はまさしく忠誠を誓う部下の姿であった。

 

 

「申し上げます!敵将が前衛を突破しましたぁ!」

「何ィ?……分かった。貴様らはもう撤退せよ。その敵将諸共、妾自らやる。異論はないな?」

「了解しましたぁ!」

 

 

返答するとすぐさま魔法陣を出現させ、元いた場へと戻っていく部下を見守るとルシファーは視線をゼツへと戻した。

 

 

「ゼツ、被害状況を」

「はっ……現在我が軍の被害はごく僅か、対して向こうは半数以上その数を減らしており、こちらが優勢であります」

「ふむ、そうか……」

 

 

そう言ってルシファーは肘枕をした格好のまま戦場を見つめる。そして次々と消えていく悪魔達に困惑する兵達の集まっているところを見つけると盾を1つ出現させ、光線を放った。

 

放たれた光線は真っ直ぐと進んでいき、そして着弾と同時にその周辺は爆発に包まれた。そして爆発により発生した砂煙が晴れると……兵達がいたであろう痕跡が跡形もなく、なくなっていた。

 

 

「フッ……」

 

 

その光景に満足そうに笑うと同じ盾を複数出現させ……一斉掃射を始めた。

しかし兵達は怯むことなく、寧ろ敵がいなくなったことを好機と見て、ルシファーの元へと走り出した。

 

 

「……来たか」

 

 

掃射を始めて数分、ライダーが遂にルシファーの元へとやってきた。しかし肝心の兵達はごく僅かへとその数を減らしており、

 

 

「む?もう限界か……」

 

 

2人のサーヴァントを包んでいた世界(固有結界)が崩壊し始めた。

 

 

 


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