Fate/Evil   作:遠藤凍

37 / 63

今回は永時sideです。

前にアヴェンジャー陣とビギナー討伐の同盟を組んだ永時、破壊の権化と化す彼にどう対抗するのか。

では、どうぞ



悪、娘と対面する

 

 

偶にだが不意に思い出すことがある。

 

 

自分が昔作った部隊のことを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある墓地。そこで永時はある墓の前で足を止め、真っ白な花束を添え、じっと見つめていた。

 

 

「………あれから40年は経ったでしょうか?……最近は貴女の声を忘れてしまうことが増えたきたような気がします。俺も歳なのでしょうか?」

「あいつらと向こう(あの世)で上手くやっていますか?」

「……今日来たのは報告です。貴女の部隊に劣るかもしれませんが再び部隊を持つことができました。……部下というのは誰も彼も付き合う程に可愛く感じてます」

「貴女は俺らのことを家族と言ってましたが今ではその意味がよく分かります。まあ俺の年齢的にも子供のようなものですがね?」

「最近ふと思うのです。……もし、貴女が生きていれば、今頃こんなことにはならなかったのでしょうか?とね」

「それともう1つ報告です。もうすぐ俺もーーー「……ここにいましたか、隊長殿」」

 

 

声と足音が横から聞こえ首を向けると部下でおる男が自分の目の前にいた。

 

 

「……ああお前か。どうした?」

「いえ、例の件について1つお聞きしたいことがありまして……」

「へえ、何だ?言ってみろ」

 

 

するとら男は少し躊躇うような仕草を見せて口を開いた。

 

 

「我々に何か隠していませんか?」

「……あっ?」

 

 

先程まで見せていた笑みが消え、真剣な無表情を見せる。

それを見た男は先程より気を引き締めた。

 

 

「……そいつはどういうことだ?」

「貴方らしくない行動に違和感を感じたのです。……私だけではありません。あいつらも薄々ですが気づいています」

「……証拠は?」

「貴方が筋肉バカと呼んでいる方が吐いてくれました。酒の席で問い詰めたら話してくれましたよ?」

「チッ、あの馬k「嘘ですよ」ーーーあっ……チッ」

「……貴方には拾ってくださった恩があります。だから、だからこそ我々は貴方のお役に立ちたいのです。その為なら命すら捨てる覚悟を持っています。ですからお願いします……正直に話してください」

 

 

そう言って男は頭を下げる。永時は暫し黙り込んだ後、溜め息を吐いて顔を男に向けて言った。

 

 

「……終わらせたいんだよ」

「終わらせたい?何をです?」

「……呪われた系譜に終止符を打つ」

「ッ!?……本気ですか?」

「ああ本気だ」

「しかし……」

「伝説の部隊、伝説の男、近いようで違う鏡写し、伝説の優勢、その劣勢。まるで呪われたかのように続く呪われし系譜……それを断ち切らなければ奴らは止まることはない」

「しかし、貴方もその系譜なのでは……?」

「そう……始まりだからこそ俺がやらねばならないのだ。Neverは永遠ではない。いつかは朽ち果て、滅ぶ運命……ただそれが早いか遅いかの違いだ」

「……正気ですか?」

「無論正気だ」

「私個人としては出来れば貴方には「それは無理な相談だ」……」

「俺はもう充分生きた。後は死に場所を選ぶだけだ」

「隊長殿……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイバーがビギナーとの勝負をし終わる少し前。

 

 

「うーん……病気による弱体化の影響は殆どなくなったね〜」

「そうか……すまんかったな面倒かけて」

「本当だよ〜、永くんがあの衛宮なんとかに変な弾丸撃たれたりするから更に長引いたんだよ〜?」

「……悪かったと思ってるよ」

「ーーーこちらにおられましたかマスター、客人が来られています。いかがなさいますか?」

 

 

以前からずっと行われてきた能力の調整をベルフェにやってもらっていたところ、アリスがそう言って入ってきた。

 

 

「客人?」

「ビギナー討伐の同盟についてと言っておられますが?」

「すぐに通してくれ。それと……ネルフェにはどこかに隠れさせて近くで護衛しておいてくれ」

「……了解しました」

「永くん永くん、私も同席していい?」

「いいぞ。てか寧ろしてくれ」

 

 

ビギナー討伐の同盟ということはアヴェンジャーがマスターを説得してきたのであろう、と永時はそう踏んでいた。

 

そして案の定彼らはやってきたのでとりあえず居間へと案内した。来たのは今聖杯戦争で騒がれているアヴェンジャーとリヴァイアサンの二人である。

 

 

「初めましてだな我が父よ。嫉妬の魔王レヴィアタンの血を一応(・・)ひいているものだ。リヴァイアサンと呼んでくれ」

「……終永時だ。好きに呼ぶといい」

 

 

自己紹介を終わらせると永時と相変わらず布団から出てないベルフェはリヴァイアサンをよく観察する。

 

スラッとしているが若干幼さの残るような体つき、腰まで伸ばした紫の髪、サファイアのような蒼い瞳に練乳のような白い肌の美少女。

 

二人は特徴点(特に胸部)をじっくり見て結論を下した。

 

 

「やはりあいつ……レヴィアタンがベースか?」

「かなり類似点(特に胸囲)があるからそうだろうね〜。レヴィ、元気にしてるかな〜?」

 

 

そのあまりに似ている姿に二人は母親であろうレヴィアタンの面影を思い浮かべていた。

 

しかし肝心のリヴァイアサンは嬉しそうにすることもなく、寧ろムスッとした表情で二人を見ていた。

 

 

「……」

「ん?何か不満か?」

「大したことでない……ただあの女()と一緒に見られるのが嫌いなだけだ」

「そうか……(思考はレヴィアタン寄り、嫉妬深いところは同じか)」

 

 

今の所、向こうの機嫌が良い方なのでいい感じに事が進むと思い、この機会を逃さぬように話を切り出す。

 

 

「本題に入りたいのだが……いいか?」

「ああ、構わない「あら永時様、こちらにいましたか」……と言いたいところだが父よ、その女は何者だ?」

「……なんで来たかを聞いておくべきか?マモン」

「ほう、あれが強欲……」

「大したことではありませんわ。ただ紅茶でもいかがかと思いまして……(密室で、ですがね。後は紅茶を軽く盛って既成事実を作れば……ふふっ、ふふふふふふふふふふ!)」

 

 

このまま何も起こらずに事が進むと思い込んでいた自分を殴りたくなった。

 

まさかの強欲様の入室である。

 

 

「あら、貴女は?」

「リヴァイアサンだ」

「リヴァイアサン?……その髪色、肌色、艶………ああ、レヴィアタンの娘ですか?中々美しい容姿をお持ちのようで……正直羨ましいですわね」

「……そうか?」

 

おっ、いい感じじゃね?と永時は内心ほくそ笑んだ

 

『永時様教団』とか訳の分からないものを創ってはいるが一応魔王の中では常識を持ち合わせてはいるからだ。

 

だがそれは淑女として知識を持っているだけ、彼女は強欲の女。故にワガママ、つまり躊躇いを知らないという根本的な性格は変わっていないので……

 

 

「しかし、彼女にとても似ていますわね……特に胸の無さが」

 

 

思ったことを直ぐに口にしてしまう事が暫しあるのだ。

 

正直に言おう。マモン、後で覚えてろ。

 

 

「あ……」

「あちゃ〜」

 

 

プチっと切れてはならぬ音が鳴ってしまった。てかやってしまった。

 

 

「貴様……表出ろ」

「あら?何かお気に召すようなことを仰いましたか?」

「言ったな……」

「言ったね〜。見事にコンプレックスを突きまくってるね〜」

「そうなのですか?」

「チッ……まあいい。父に近づく女を始末するいい機会だ。待っておいてくれ父よ。父の愛を受けるにふさわしいのは私だけであることを証明してみせよう!」

「むっ、それは聞き捨てなりませんわ。永時様の愛は悪魔の皆で分け与えもらうもの。貴女のような小娘だけにあるものではありませんわ」

 

 

永時は思った。他所でやってくれと。

 

そんな永時の思いも知らず話は物騒な方向へと進んでいく。

 

 

「ハッ、面白い冗談だな。魔王というのは冗談が上手いようだな」

「……少しお話をする必要がありますわね。いいでしょう………表へ出なさい。わたくし直々に教育してあげます。永時様、お願いできますか?」

「もう勝手にやってくれ……ベルフェ」

「は〜い」

 

 

布団に入ったまま指を鳴らすと二人の近くの空間が揺らぎ、黒く輝かせながら波打つ波紋を広げ、二人を飲み込んで消えていった。

 

 

「マモンの奴……後で覚えてろよ」

「ご愁傷様〜かな?(まあマモンならどんな仕打ちでも喜びそうだけどね〜)」

「……んで、あいつらどこに送ったんだ?」

「うーんとね〜……確かセクター2」

「セクター2って……お前、あいつらを殺す気か?」

「何のことかな〜?あわよくば共々くたばってとか思ってないよ?ていうか〜、セクター3とかよりマシだと思うけど?」

「おい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはーーー」

 

 

波紋の中を進んで行って最初見えたのはまさに海と言えるような場所であった。

 

その少し上空に二人は出てきたのだ。

 

 

「ーーー何!?」

「あら?」

 

 

無論二人は重力に逆らう事が出来ず、海へと墜落していく。

 

だが幸いというべきか床らしきものが長い道のように続いており、マモンはそこに着地し、リヴァイアサンは海面のう上に立つことで着地した。

 

 

「……」

「ッ!?」

 

 

途端、いきなり海面の水がうねりだし2匹の蛇のように形取りマモンを襲う。

 

だが素早く反応できたマモンは矢を2本それぞれの手で持ち、1本を投擲して潰し、もう1本は剣のように振るうことで見事に潰し、潰したことにより水飛沫が少々自身にかかっただけで済んだ。

 

 

「……いきなり不意打ちとは」

「卑怯か?……要は勝てば良いのだ」

「別に何も言いませんわ。不意打ちも立派な戦術の一つですから。……では次はこちらから参りますわね!」

 

 

弓を取り出して持ち、海面を踏みしめて走り出す。

 

まさか海面を走れるとは思っておらず不意を突かれ、反応が遅れ、矢が振り下ろされる。

だが素早く氷の槍を作り、ギリギリ受け止める。

 

するとマモンは後ろに飛んで距離を置き、矢を弓にかけて放つ。

 

放たれた1本の矢は風を切り裂きながらリヴァイアサンへと突き進む。

だがある程度の距離となったところで急に分裂し、その数が増大した。

 

 

「ほう!」

 

 

だがリヴァイアサンは焦ることもなく水を操り、刃の形取らせて薙ぐように振るい矢を全て打ち払う。

払い終えると今度は氷の槍を手元に作り出し、投擲する。

しかしマモンは新たな矢を射ち出して弾くと小さく笑みを作ったがその顔はすぐに強張った顔へと変化した。

 

 

「ーーー!」

「あら?」

 

 

マモンの変化に反応したかのように足元の海面を割って何かが飛び出し、間一髪のところでマモンは後ろに跳ぶことで何とか凌いだ。

 

 

「くっ……ベルフェゴールめ。わたくしもろとも葬り去るつもりですのね!」

「あれは……魚、なのか?」

 

 

海面を割って飛び出してきたのは大きな口を持つ15メートルは軽くある巨大な魚がその体型に合うような大きな口を開いて飛び出していた。

 

 

「さあ?魔界では見覚えのない魚類です、わっ!」

 

 

弓矢を構え、射ち出し矢は魚を貫き、そのままリヴァイアサンへと向かうがリヴァイアサンは新たな氷の槍を作り出し撃ち落とす。

 

そして更に槍を複数生成し、飛ばす。

 

対してマモンはリヴァイアサンに向かって走り出す。途中飛んできた槍は矢を振るい、あるいは射ち出して凌ぎ、接近して横腹に蹴りを放つ。

 

 

 

「ぐっ……!クソッ!」

 

 

痛む横腹を抑え鈍痛に耐えながら水を操り蛇として再びマモンへと向かわせる。

しかしいざ当たる距離に入った時、タイミングを計ったかのようにマモンの前に先程より少し小さめの同種が飛び出し、盾となる形となる。そのまま水の蛇は魚の体を抉り、遂に貫いた。

 

だが貫くまでのその僅かなラグがあれば十分だった。

 

 

「……ふふっ、偶々飛び出して盾になって下さるとは運がいいですわね」

「なっーーー!?」

 

 

そのラグを利用して、更に間に挟まるように存在する絶命した魚が落ちた衝撃で上がった水飛沫により視界が上手く遮っていることも利用し、水飛沫の中で弓を“二つに分解して”剣のように振り下ろした。

 

まさか分裂して剣になるとは思わず、反応が遅れたリヴァイアサンは右肩を後ろに回して体を弓なりに軽く反ることでかする程度で済んだ。

 

 

「あら?避けましたか。運がいいですわね?」

(運がいい?ふざけるな!避けるのがやっとだったぞ!?)

 

 

内心愚痴りながらも氷の槍を生成して振るい、隙だらけのマモンに斬りかかるがマモンは体を無理矢理捻って避けるが頬のところに当たってしまったのか少し血が垂れていた。

 

とりあえず両者は一体後ろへと跳んで距離を取った。

 

 

「あら?血が……うふふっ、ふふふふふふ。わたくしを傷つけられるとは……いいですわね。もっとわたくしを楽しませてくださいね?レヴィアタンの娘さん?」

 

 

頬の痛みに気づいたマモンはその綺麗な手で触れて手元を確認する。もちろん手には血が付いておりそれを見てニタリと笑った。

 

そして垂れ流れる血に反応したのか海面には大小様々な魚影がチラホラと見え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の永時はというと……マモンとリヴァイアサンが消えていった後の居間へと戻る。

 

騒がしくしていた二人が消えたことにより居間はシンと静かになり、沈黙が続いていた。

ベルフェは布団の中で恐らく寝ているのか微かに寝息が聞こえており、アヴェンジャーは警戒してか座らずに近くの壁にもたれかかって腕組みをしており、永時はちゃぶ台の前に座り込んで全員とも一言も発さず黙り込んでいた。

 

そんな空気の中、話を切り出したのは一応主人公、終永時である。

 

 

「……おいアヴェンジャー。お前ら何してきたんだ?」

「いえ、ビギナー討伐について具体的な案の話合いをと考えていましたが……ウチのマスターがすみません」

「まあいいけどさ……お前も大変だな」

「ええ、まあ……」

「あれだ……頑張れとでも言っておくよ」

「ありがとうございます。……ところで本題に入りたいのですがよろしいですか?」

「ああ、構わねえぞ」

 

 

若干哀愁っぽい何かを漂わせているアヴェンジャーに同情の目を向けつつ、まあ座れよとちゃぶ台前に座るように勧めるとアヴェンジャーは素直に従い、ちゃぶ台前に腰を下ろした。

 

 

「で、具体案なのだが……」

「見つかったのですか?」

「まあな、これは奴をセイバーを通して観察した結果なのだがな……今まで色々言い訳付けてビギナーにぶつけた甲斐があったわけだ」

「なるほど……」

「まずビギナーのあの変身は宝具によるものであることが推測される」

「宝具、ですか……」

「そ、故にあの状態を維持するだけでも魔力の消費はかなりでかいはずだ。更に奴が放つ気弾はどこからあんな出力をだしている?」

「えっ?それはもちろんマスターの魔力……あっ、なるほど。そういうことですか」

「そう、変身した奴の攻撃の全てがマスターの魔力持ちなら?」

「……いずれ自爆すると?」

「そういうことだ。狂化による理性崩壊、更に変身という名の宝具の常時展開、魔力を気弾に変換して攻撃……な?明らかに燃費が悪すぎるだろ?」

「つまり?」

「戦闘が長引かせれば俺たちにも勝機があるということだ」

 

 

確かに、とアヴェンジャーは内心褒め称える。しかしまだ不安要素が残っており、それを解決しないことには安心できず、それを口にした。

 

 

「しかし、彼は……」

「分かっている。確かもう一段階変身が残ってんだろ?」

「……ええ」

「確かに奴は強い。だがマスターはどうだ?」

「……なるほど、我々が奴を惹きつけている間に貴方がたが仕留めると?」

「正確にはそれぞれのサーヴァントが惹きつける、な」

「なるほど……まあ仕方ないです。昔のよしみで手伝いましょう」

「すまんな。他に質問は?」

「我々が裏切る可能性を考慮しないのですか?」

 

 

あの手この手といつも考えている男がこんな簡単なことを見逃すはずがない。と思い、反射的に言ってしまった。

 

 

「……ふぅん、お前がそんなこと言うとはねえ?まあ確かにその考えは一応ある。だがお前の性格を考えたらそれはないと踏んだ。何故なら弱体化状態であいつと戦えるという面白い状況をお前が見逃すはずないだろうが」

 

 

あっけらんとした顔で言い切る永時にアヴェンジャーは参ったと言いたそうな仕草をした。

 

 

「……お見事、とでも言っておきましょうか。よく私の性格を理解してらっしゃる」

「……それほどの付き合いはあったんだ。大まかには理解しているつもりだ」

「そうですか……(正直言うと裏切った方が面白いですがね。まあ個人的に死なせたくない方がいますし……もしやそれも考えて?……いえ、考えすぎでしょうか?)」

(この世界にはあいつがいる。いくら娯楽主義のお前とは言え裏切るようなことはしないだろう。……悪いが利用させてもらうぞ)

(ーーーとか考えていそうですがまあいいでしょう。いざとなればあの人だけでも逃せば良いですしね)

(ーーーと、考えているだろうが関係ない。どの道あいつは強制的に戦闘に自ら突っ込んでいくはずだ。最低命だけでもお前が死守するだろうから裏切りの心配はいらんな)

 

 

などと2人がそれぞれの思惑を持ちつつ話は続く。

 

 

「次にいつやるのかだがーーーと言いたいが……そこで引っ付いている奴は誰なんだ?」

 

 

と見せかけ、話をいきなり切って天井を見つめて左目を紅く光らせながらこう言った。

 

 

「……はて、何のことでしょうか?」

「とぼけるなよ」

 

 

そう言って永時はいつの間にか取り出したサブマシンガンを手に取り、見つめていた天井目掛けて発砲した。

 

 

「……そこか」

 

 

弾幕を張ってため穴だらけの天井の中、唯一穴ができてない部分にある物を投げ込んだ。

 

ベチャッ!とトマトをぶつけられたかのような音を出すと赤色に染まった人型らしき何かが天井に張り付いていた。

 

 

「ほら?やっぱりいるじゃねえか」

「おやまあ……」

「……」

「おっと」

 

 

目を見開かせる。すると突然横から飛んできた3本の剣を見えない壁があるかのように弾き、剣はそのまま重力に従って床に落ちた。

 

 

「……黒鍵か。久しく見てなかったが……俺にはただの刃物でしかないがな」

 

 

そう言って天井ではなく誰もいないアヴェンジャーの横の方である何もない空間を睨みつけた。

 

 

「ステルス能力と言ったところか?天井にダミーを付けていたのはいいセンスだとは思うが……生憎俺には見えている。姿を現さないなら……次は容赦せんぞ?」

「……」

 

 

体から電気を纏いながら威圧するように言う。

すると言われて観念したのか、バチバチィ!と電気音を鳴らしながらそれは姿を現した。

 

長い黒髪を垂らし、出てるとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる豊満な体を持つ赤眼、長身の女性。頭には虫の複眼をイメージさせられそうなオレンジのパッドのようなものが二つ、頭頂部に被って(?)あった。

 

その姿を見た永時はある人物を思い出してしまいピタリとその動きを止めた。

 

 

「……ブブか?しかし、それにしては大きくなってrーーー」

「……」

「んんん?」

 

 

一瞬で懐に移動し、ギュッと抱きつかれた。しかし身長的に永時より高いのでどちらかと言うと豊満な体に包み込まれた、が正しいのだろう。

 

急なことに永時が戸惑うなか、女性は1枚の紙切れを見せつけるように取り出し、それを見た永時は完全にフリーズした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『結婚してください』

「……は?」

 

 

 






軽〜い解説。

セクター2
ベルフェが昔に作った生態調査のための飼育場。分かりやすく言えば危険生物や生態兵器紛いのものが普通にたむろする動物園のようなところ。
地球の生物や魔界の生物。最近ではとある男と仲良くなったため他世界の生物などが入ってきており、見覚えのある生物がいるかもしれないがどうか目を瞑って頂きたい。

話は戻るが、セクター2はその内の1つであり、主に水中を主な生活圏とする生物を飼育している。


余談だが、セクター3は灼熱の溶岩に囲まれた灼熱地獄のようなエリアである。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。