Fate/Evil   作:遠藤凍

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宣戦布告

「何だ?この状況は……?」

 

 

永時が飛ばした蝙蝠型の使い魔を通して見たのは疲労困憊の(セイバー)と、胸に穴を開け血反吐を吐き、上空を睨みながら消えていく二枚目男(ランサー)の二人を見下げている人物がおり、何よりその手には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー見覚えのある、紅い長槍をバトンのようにクルクル回していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何者だ?」

「おやおや怖い怖い。では、自己紹介を初めまして、セイバー殿、クラス名はアヴェンジャー。ただ極普通のサーヴァントです。以後お見知りおきを……」

 

 

艶のある黒い長髪を腰まで垂らし、明治時代の深緑の軍服を身に纏った中性的な顔つきの女のような長身の優男。だがその口調は温もりを感じることができず、どこか芝居がかっておりその一言一言の度に背筋に悪寒が走り、結論からするととても極普通のサーヴァントには見えなかった。

 

 

「ーーー復讐者(アヴェンジャー)……またもやイレギュラークラスか?」

「またもや?……おかしいですねぇ、イレギュラーは私だけだと伺っていましたが……まあ対した問題ではないのですが……」

「……何が目的だ?」

「……目的?いえ、私自身対した目的は……一応ありますが今はマスターの目的のためにここを訪れた次第でございます。……その目的は何か?まあ詳しいことは言えませんが……「そこまでだ、アヴェンジャー」」

 

 

アヴェンジャーの後ろから制止を命ずる女の声にアヴェンジャーは開いていた口を閉じ、後ろを振り向き、足を一歩後ろに下げて軽く頭を下げる。すると先程までアヴェンジャーが立っていた場所の後ろから一人の少女が歩いてきて、アヴェンジャーが立っていた場所に位置取った。

長い紫の髪、サファイアのような瞳に練乳のような白い肌の10代後半の少女だった。

 

 

「子供……だと?」

「ああ、生憎と私は子供に値する年齢だろう……だが、それだけで戦争に参加してはならない理由にはならんだろう?騎士王よ」

「……」

「それとも子供が戦争に巻き込まれるのは騎士道(正義)に反するからお嫌いかな?」

 

 

戦争が起こることでいつも被害にあってきたのは力なき民や子供達。そして家族の名を呪文のように繰り返して死んでいった姿がセイバーの脳裏に蘇り、苦虫を噛み潰したような表情を見せた。

 

 

「……その様子だとそうらしいな。……全く、“我が父”も面倒な女をサーヴァントにしたな」

「我が父……?」

「終永時……それが我が父の名だ。知っているだろう?」

「えっ……?しかし、彼の娘は……」

「ああ、No.07……確か、ネルフェ?だったな。ベルフェゴールとの娘か……そうか、我が父はまだ私達全員を知っておらぬのか」

 

 

No.07……明らか認識番号らしき呼び名でネルフェを呼ぶ少女。話の流れからしてネルフェの他に最低七人はいることが判明した。

 

 

「……そのエイジの娘(仮)が私達に何か御用で?」

「そう警戒するでない。そんなのは決まっているだろう?……聖杯戦争の参加表明(我が父に会いに来ただけ)だ」

「……は?」

 

 

何を言っているんだこの少女は?

まるで遊びに来た感覚で参加者全員を敵に回すと豪語しているではないか。

 

 

「まあ一見子供の戯言の様な言葉かもしれんがな……だが、今頃教会の奴らは焦っているだろうよ。一応これでも、埋葬機関でNo.3の執行者なのだがな……」

「埋葬機関?…………ッ!?」

 

 

その名前には覚えがあった。

確か三ヶ月前に一杯やった時に永時が愚痴っていた内容がそんなことだったようなことを思い出した。

運が悪いのかいいのか、封印指定時代に何故か埋葬機関の連中に追われた話をしてくれたのだが……

 

 

「ナルバレック怖い」

 

 

と涙目で語っていた。てか、滅多に表情を変えない男が号泣してた。

どうやら興味本位でNo.1に命を狙われたらしく、あれはあかんと語っていた。その際、なんとも言えない空気になったのは言わずもがな。

そんな永時(=セイバー)を泣かした実力のある部署のNo.3が目の前に現れたのだ。警戒するなと言うのは無理な相談である。

 

 

「……なるほど、その感じだと埋葬機関のことを我が父から聞いておるな?……まあ仕方がないか」

「……我がマスターを始末しに来たのか?」

「いいや、我が父に会いたいのは本命。……だがそれはあくまで先程までの理由……ああ、でもさっき気が変わったがな…………」

 

 

彼女が言い終わると彼女の後方の川の水が猛り狂い、一匹の蛇の姿を形作るようにうねり、セイバーの方へと向かっていく。

 

 

「ーーーくっ!」

 

 

セイバーは手に持つ不可視の剣を凪ぐように水の蛇を斬るとあっさりとその形を胡散させた。

 

 

「……うむ、流石はかのアーサー王というべきか。実力は確かのようだな。……アヴェンジャー」

「……何?……ッ!」

 

 

ヒュッと風切り音が聞こえ、身体を捻って後ろに剣を振るうとその途中、アヴェンジャーが持つ“紅い長槍”に押し止められた。

つまり、先程の蛇はあくまで囮で本命は後ろからの不意打ちであった。

不意打ちが失敗したのが分かるとアヴェンジャーはセイバーを槍で強く前に押すと同時に後ろへと跳び距離を取った。

 

 

「はぁ……マスター、肝心なところで呼んだからバレてしまったではありませんか」

「ああ、すまん。許せ」

「……」

「卑怯、か?だが我が父ならこう言うはずだ……『卑怯、卑劣は所詮敗者の戯言』と。全く、これだから騎士というのはーーー「マスター」……何だ?」

「あちらをご覧ください」

「なんだ……って、ただの使い魔ではないか」

「ええ、ただの使い魔のようですが……複数……どうやら他のマスターの物のようなのですが……」

「……なるほどな、そういうことか……アヴェンジャー」

「了解しました」

 

 

そう言って紅い長槍……ではなく、ビデオカメラを取り出して録画を始めた。

それはセイバーに対する挑発か、はたまた騎士道を重んじるため不意打ちをしないと踏んでいるかは定かではない。だが紅い長槍を持っている辺り、不意打ちの可能性も考慮はしているようだ。

 

 

「ゴホンッ!……えー…………聖杯戦争に参加している魔術師共(口だけの貴族共)。初めまして、埋葬機関No.3、二つ名はリヴァイアサンと言えば大抵の人間は知っているとは思うが……まあそんなことはどうでもよいのだ。今回こうして録画しているのは他でもない………貴様ら魔術師共(無能マスター)に宣戦布告しに来た、というわけだ。えー、現在カメラを回しているのがサーヴァント“アヴェンジャー”だ。残念ながら真名の方は本人が告げぬため不明だが、まあそこそこの英霊だと自負しているつもりだが……どうなのだ?」

「さあ?実際のところ、戦争というものは戦略一つで簡単に戦局が変わるものですからなんとも言えませんね」

「つまらん奴だな……まあ良い。とりあえずまず宣戦布告の意味でランサーを刈り取らせてもらったので後々確認してくれたまえ……まあマスターの方は後で出向いて殺してから死体でも教会に送りつけてやるか……喉が渇いたな、アヴェンジャー、後で飲み物買ってきてくれ」

「マスター、話が逸れてます」

「おっと失礼。……とりあえず我々の拠点は一応柳洞寺のはずだが……そっちはどうなっている?」

「えっと……あっ、たった今貴女のお友達が確保したそうですよ?」

「なら良い……と、いう訳で此方へとじゃんじゃん来てくれたまえ、お客はできる限り歓迎しよう。……まあ来なかったら我々自らお宅訪問させていただくが……アヴェンジャー、何か一言言っておけ」

「えっ……?急ですね………で、ではお手柔らかにお願いします……こんな感じでしょうか?」

「15点だな、つまらん」

「厳しい評価ですね……」

「ふん、貴様はその程度ということか……」

「そういうマスターは何か一言ないのですか?」

「むっ?そうだな……では、最後に私を知っている者共にこう言っておこう………『イーヴィル計画』と」




【クラス】アヴェンジャー

【属性】平等・悪

【ステータス】
・筋力B
・耐久A
・敏捷B+
・魔力B+
・幸運C

【保有スキル】
・対魔力C

・戦闘続行A

・騎乗B

・単独行動A

・カリスマC

・直感B

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