どうも、遠藤凍です。
今回は……タイトル通りになっている、かな?
では、どうぞ。
「ーーーと、いうわけだ」
「なるほど……つまり、魔王を倒したエイジを危険視した一部の者たちによって、エイジを始末するために作られたホムンクルスが彼女だと……」
「まあそういうことだ」
ネルフェの訳ありの部分を説明し終わるとセイバーは少し思いつめたような表情でニルとアスモと遊んでいるネルフェを見つめていた。
もう少し細かく説明すると魔王を倒した永時を危険視したベルフェの部下が独断で永時を始末するために色々と手を尽くし、焦って強硬手段に出た結果生み出されたホムンクルスがネルフェであり、永時と他の魔王のDNAをついでいる。と、以前ベルフェがその部下に尋問した際に回収した報告書に書いてあった。
突然だがネルフェは永時のDNAを持った人工体、つまりホムンクルスに近い存在であるというのは今の説明で理解したはずだ。
ではここで思い出してもらいたいのがセイバー……アーサー王物語のホムンクルスといえば?……そこで出てくるのがかの有名な叛逆の騎士モードレッドである。
彼女の息子?はアーサー王の姉モルガンが王を陥れるために魔術によって生み出されたという出生があり、ネルフェと境遇が似ているのである。
故にセイバーがネルフェを見る視線に違和感があるのをすぐに察したわけで……。
「次にお前が言いたいことを当ててやろう……どうしてこの子を娘として認めたのですか?ってとこか?」
「ッ!?ええっ、そうです」
ーーー境遇はほぼ同じ、故に気になるってとこか?
「ネルフェ、悪いが席を外してくれないか?ニル、アスモも」
「お父様?」
「悪いな。今からセイバーと大事な話をするから……な?」
「……はい」
少し寂しそうな表情を見せた娘に永時は少し胸が痛む思いがし、とりあえず頭を撫でてやるとネルフェの顔に笑顔に戻り、最終的に彼女は永時にニッコリと無垢な笑みを向け、部屋から立ち去って行った。
ニルとアスモは真剣な表情から話の重要さを感じとり、ネルフェに続いて部屋を出ていく。
2人が出ていくのを無言で見送ったセイバーはふと思った。
ーーー誰だ、あれは?と。
少ししか付き合いがないが、あんな優しい雰囲気を永時は見たことないため、困惑を隠せないでいたのであった。
そして三人が出たのを確認すると永時は口を開いた。
「愚問だな。……そんなの決まってるだろう?ーーーあの子が親に愛を求めてるんだ、それに応えるのが親というものだと俺は思うよ。例え、俺が知らぬ間に生まれた子であろうが、なかろうが。血が繋がってようが繋がってなかろうが、な?」
愛する者を失い、愛を求める気持ちをよく理解している永時だからこその答え。
「この子の母親が誰であれ関係ねえ。この子を愛するのが悪となるなら、俺が喜んでその悪を背負ってやるまでだ。悪の狂信者だけにな?例え、あの子が俺を殺したいほど憎んでいてもな。まああの子は優しいからそんなことはねえとは思うがな」
「……」
故に彼は今も、そしてこれからも互いに愛を与え、与えられるように選択したのだ。
誰よりも愛を失う怖さを知っているから。
「お前が何を思ってるかは知らんが少なくとも俺は、愛を求める幼子を突き離すようなことをしてはならねえとは思うわけだが……お前さんはどうした?」
「私は……」
「……俺が思うに、セイバーは聖杯にかける願いを間違えてんじゃねえか?」
「……どういうことでしょうか?」
勘に触ったのか、怒気が含まれた声色で永時に向けて言葉を放つ。
「別にお前の願いがおかしいとかどうこうじゃなくて、聖杯にかける願いを履き違えてんじゃねえのか?」
「履き違い?」
「お前の場合は……そうだな、祖国の滅びの運命を変える、だっけ?その前にお前はやるべきことがあると思うが?」
「やるべきこと?」
「“話をすること”さ」
「……は?」
意味が分からない、と言いたそうな顔でセイバーは永時を見つめ直す。
「お前が救おうと必死だったお前の国の民、そして円卓の騎士に話をすべきだと俺は思うのだが……どうだ?」
「いえ、意味が全く理解できないのですが……」
「えっとな……お前言ってたよな?王とは国に、民にその命を捧げると。そう言ったよな?」
「なら、祖国の運命を個人の都合、独断で変えるのは暴君と変わらんのでは?」
「ーーーッ!?」
「……そもそも国を、民を愛したお前がなんでそんなことまでする必要があるんだよ?」
「……王ならば、民や国の繁栄と平和を望むのが当たり前では?」
「なるほどね……じゃあ、ブリテンの民と円卓の騎士はそうすることを望んだのか?彼らの意見を聞いたうえでの判断なのか?」
「それは……」
「円卓の騎士は王と対等である存在なんだろ?だったらまずそいつらの意見を聞いてから決めるべきでは?独断と偏見でそんなのは決めてはいかんよ……そんなのはただの理想の押し付け、暴君と大して変わらん、と俺は思うが?」
「……あなたに……あなたに何が分かるっ!?」
「分かるさ。俺とお前は同じ穴の狢なんだから」
「あっ……」
そう、永時は前に言っていたはずではないか。
前にそんなことを考えていた、故に何とも言わないと。
なら気持ちが分かるはずなのに何故止めようとするのか?そんなのは簡単なことである。
「まさか……エイジは……」
「そっ、お前が今言ったようなことをやったんだよ。訳あって過去に戻ってやり直しをした。でも、結果は全部失敗したよ。何度も何度も何度もやったのにな。けど結局救えなかった。寧ろ前よりひどい目にあって終わった方が多かったよ。
……分かるか?毎回同じことを繰り返し、分岐点から先は雲を掴むような感覚でやるのを、毎回だぞ……?分かるか?毎回同じことを繰り返して精神が磨耗していく自分が周りにバレないように演技し耐える苦しみを……分かるか?救いたかった人が、前よりひどい目にあって死んでいく姿を見て耐える気持ちが……お前には分かるか?」
セイバーは驚愕した。あの永時がここまで感情を表に出しており、そして何より、彼の顔が苦痛の表情に満ちていたから。
今にも壊れそうなボロボロの心を表したように苦痛を見せる顔にセイバーは何も言えず、ただ俯くしかできなかった。
永時は訳ありの不老の身故に何百年も生きていきそれに伴って成長した精神。
それはどんな状況でも崩れ落ちることがないはずだったもの。
だが、運命を前にそれはあっさりとボロボロと崩れ落ちていった。
そんな彼が一度壊れかけてしまったのだ。彼より短き生涯を生き、騎士道・王道という鍍で塗り固めただけの脆そうな心を持つただのか弱い小娘に耐えられるだろうか?
無論、無理だと言い切れるのではないだろうか?
「……けど、ある男の助言でな。彼女の意見を聞いてみたらどうだと言われてな。試しにやってみたら驚いたよ。ーーーそんなことは望んでなかったってな。無論、気を遣ってんじゃねえかって思ってたけどそんな疑いはすぐに消えたよ。だってよ……長い付き合い故に、あいつは本心でそう言ってるって分かっちまうんだよな……。
その時思ったんだよ、……俺は今まで何をそんなにムキになってたんだ、こいつ自身の運命に他人である俺が関わって何になる?ってな。そうしたらなんか憑き物がとれたみたいにスッキリしてな」
セイバーは立場が少し違えど昔の永時とよく似ている。
読者がよく知っている紅茶さんが過去の自分を見極め、最後は希望を託して自ら犠牲になってように、永時は彼女の願いを聞いた時に確信し、それ故に彼女を止めるとは言わずせめて自分という失敗例を上げて、忠告し見極めるために話の場を設けたのだ。
自分のようになって欲しくないために、自ら悪役となって。
それが彼という悪、彼なりの優しさなのである。
「やめろ、とは言わない。とりあえず他の皆と話をしてみろ。それでもやるというなら……俺は止めんよ。ただし、正義とか王としての義務とかそんな建前で過去を変えるというなら……その時は俺はお前を敵と認め全力を持ってお前を殺す。それだけは覚えておいてくれ」
「……」
「今すぐ答えを出せとは言わねえ。お前にはお前の考えがあるだろうしな……まだサーヴァントは全員残ってんだ、じっくり考えて答えを出したらいいさ」
そこでタイミングを見計らったように携帯の着信音が鳴り響く。
しかし、その番号は永時の心当たりがなかったものだった。
「誰だ?……はいもしもし?」
『すみません、終永時様のお電話でしょうか?』
「そうですが……」
『……お久しぶりです、永時様(あぁ、永時様。あなた様のお声を聞くだけでわたくしはもう果てそうですわ!……また下着を変えなくてはいけませんわね)』
「……で、なんで俺の番号知ってんだ……マモン」
『そんなの……永時様とわたくしの愛の前では些細のことですわ!(それは……秘密ですわ)』
「本音と建前が逆だぞ……」
強欲の魔王、マモン。
強欲だが、やることは出来るしっかり者のお嬢様。
だがそれはあくまで過去の姿で、永時にボコられた際に永時にイジメられるのを妄想で楽しむ妄想系ドMになった……のだが、最近無意識で曝け出してきているのでそろそろ妄想系が取れそうなただの変態である。
色欲さん経由の情報によると最近『永時様教団』なるものを創設。現在教徒は千を超え、自ら教祖として終永時の素晴らしさを教徒に語り尽くしているぐらい彼に夢中(悪く言えば狂信)である。
無論それを聞いて「よし、潰すか」といい笑顔で言いながら重火器持参で魔界へ赴いた者がいたのは言うまでもないことだろう。
『あら、失礼……ところで、わたくしに会いたいとお聞きいたしましたが……(できればわたくしを縛ってから罵詈雑言と鞭打ちのご褒美を……!ジュルリ。……あら?よだれが……)』
「ああ、そうなんだが……どうせベルフェの奴から聞いた……いや、お前の場合は勘で探り寄せたってところか?」
『その通りですわ。……ご要件は永時様がわたくしに協力を求めていると、そう捉えてよろしいですか?(流石は永時様!わたくしの考えは全てお見通しということ……まるで永時様に全て支配されている気がしてこれはこれで素晴らしいですわ!)』
「まあその通りな訳だが……悪いが協力してくれないか?」
『もちろん、永時様のためならば喜んでご協力させていただきますわ』
「なら良かった。それならどこかで落ち合いたいのだが……今どこにいる?」
『今はオフィス街のあるビル一つを丸々買い占めて、のんびりと過ごさせていただいてますが……(できれば激しく出来るように防音設備が整ったところが……えっ?外でする?そっ、そんな!いけませんわ永時様!そんなところで、服を剥いでロープで縛るなど……!)』
「……おいマモン、聞いてるのか?」
『……失礼、少し考え事を(またわたくしったら、要らぬ妄想を……永時様に限ってそんなことは……いや?永時様はSの気があるとアスモデウスが仰ってましたわね……)』
「お前な……まあいい。とにかく、今からそっちにーーー何?……ほう!」
『永時様?(まさかのここで放置プレイ!?流石は永時様!わたくしの予想を超えるような
多少の沈黙をこうプラスに捉えるとは……流石は変態である。しかも他のと比べて群を抜いている。
「さっき連絡があってな……川の方で膨大な魔力反応が検知されたようだ」
『未遠川ですか……確かに、ここからでも大きな魔力を感られますわ』
「と、いうわけでだ。急遽そっちへ行かなくてはならなくなったから……」
『ご心配なく、もう準備は整えておりますので』
「……悪いな」
こうして、話数は多けど実際には短かった一時の休息が終わりを告げたのであった。
いかがでしたか?
今回出たマモンは今までのキャラの中で1番濃いキャラのような気がするが……ちょっとやりすぎたか?うん、きっと気のせいだな!きっと……多分……メイビー。
で、では、また次回で!