どうも、終永時です。
久々の投稿。
投稿すればするほど書くスタイルが変わってるような……気のせいか?
では、どうぞ。
「セイバー……酒でも飲まねえか?」
台所をガサゴソと漁り、1本の酒瓶を取り出した。
「酒、ですか?」
「ライダーが出したのとは違うやつだけどな」
「では、お言葉に甘えて……」
人数分のコップを取り出すとコップに酒を注ぎ、セイバーの目の前に置く。
「……エイジにはありますか?」
「ん?」
「やり直したい過去が……ありますか?」
「やり直したい過去、ねえ……そりゃあるよ?誰だって変えたい過去の1つや2つはあるだろうよ」
「なら「だからと言ってやり直すのとは話は別だ」……」
「だからと言って変えるのは間違えている」
その言葉を受けた途端、セイバーは自身の胸が酷く痛くなるのを感じた。
まるで鋭利な刃物で心をズタズタにされたような、そんな感じがした。
それ以上は言わないでくれ。
セイバーが最も恐れていたことが……
「ーーーとは、言わねえ」
「えっ……?」
……起きなかった。
予想外の言葉にセイバーは凍ったかのようにその動きを止め。そして永時はコップの酒をグイッと一飲みする。
「……前の俺もそんなことを考えていたからな。だから間違えているとは俺が言える立場じゃねえよ」
「『前の俺も』?では、エイジは……」
「そう、俺とお前は同じ穴の狢ってことだ」
「同じ穴の狢……」
「皮肉にも俺にも守りたかった者がいたのさ。まあお前と違って個人の救済だったがな」
「個人ですか……」
酒を飲んでいるせいなのか、饒舌になっている永時は普段語らない過去を語りだす。
「……こんな俺にもな、愛した女がいたんだぜ?」
「愛した、女……」
胸にチクリと刺さる謎の痛みに疑問を浮かべつつも話を聞くため即座に廃棄した。
そんなセイバーの複雑な心境を知らず、永時はコップに酒を注ぎながら続きを言う。
「……俺は昔、軍役をしていた頃があってな。その頃にある組織の一部隊の隊長をしていてな。そいつは同じ部隊の隊員。優しくてお茶目な奴だったよ。
始めは友達から始まったんだけど、恋仲になるにはそう時間はかからなかった。
あの時は楽しかった……毎日仲間とくだらねえことしたり、些細な事で喧嘩したり、仲間の恋愛を手伝ったり、酒を飲んでドンチャン騒ぎしたり……。
けどある日、そいつは突然俺の目の前で死んじまったよ。俺を庇って銃弾を受けたことによる大量出血が原因でな……。
……そいつが死んだ時は精神的にかなりやばかったんだが同じ部隊の奴らのおかげでどうにか立ち直って頑張ってきた。
……けどな、後ほど仲間も戦場で死んじまってな。正直生きる気力を失くしたよ。
そんなある日、
そいつは伝説の男と呼ばれた男でな。そいつに挑むためにわざわざ世界中を敵に回してまでして、そして……」
クカカ、と独特な笑い方をしながら酒をまた一口。話の句切れで酒を飲んでおり、今ではもうすっかりデキあがってしまっている。
「気づいたら魔界にいてな。……少し情報収集してたら魔王という存在がいたらしくかなり気になってな。少し顔を見てみようと行ってみたらアスモ……アスモデウスと出会った。
そこからだな、まあちょっと一癖あるアスモの部下に政治を任して俺たちは旅に出たんだ。……楽しかったよあの頃は。生きる目的を見つけたような気がして。
大食い馬鹿や走り屋、ダラけまくってる科学者とか色々あったよ……で、気づいたら魔王巡りは終わっていてな。また生きる目的を失った俺は魔界をフラフラと彷徨った……あの時はアスモには迷惑かけたよ。
んで、次にきたのが神殺し、エンド・コールの討伐依頼だ。
再び情熱に火がつくような感じがした俺はすぐ様参加を決意したよ。
その時にビギナーを含め、総勢四人もの精鋭が集まって共に戦った。……結果としては1回目は惨敗、2回目はノットによる一方的な蹂躙であっさりと幕を閉じたよ。
そして、また生きる意味を見失ってそろそろ死んでやろうかって考えてたんだけどな。どこからか聞きつけたんだろうな、ルシファーの側近の女に呪いを掛けられ、気絶させられ、気づいたらここにいてかれこれ20年ってとこだな……クカカ!我ながら少し喋りすぎたか?」
「その……呪いとは一体……?」
「その呪いはな……」
そして、また一口飲んで。
「……死ぬことができない呪いさ。まあいわば、不老不死さ」
「不老不死……ですか」
「元々俺は訳ありで不老の身だったから不老は別に良かったが、不死は結構堪えたな。……死は不老の俺にとって最後の希望みたいなものだったからな」
「不老……」
「……そういやお前も選定の剣を抜いて一時期不老になったんだっけか?」
「そこはエイジが知っている伝承通りです」
『アーサー王物語』において王位選定のために用意された、岩に刺さったカリバーンを抜いて王に選ばれたのがかのアーサー王であり、その後騎士道に背いた行いをした為にカリバーンは折れ、湖の貴婦人にもらったのが今彼女が使っている『
「……なかなか過酷な人生送ってたんだよな、お前。……で、どうだった?俺の話を聞いて?」
「……正直に述べますとエイジは自身の命の価値を知りたいのではありませんか?」
「ほう、どうして?」
「前に一度あなたの手合わせした際、手合わせといえど英霊である私と互角に渡りあっていたほどの実力を備え、話を聞く限りでは自ら望んで強者に果敢に挑む。……まるで自分を殺してもらうために挑むかのような、そんな気がしたのです」
「……やっぱりそうだったか。薄々そう勘付いてはいたがセイバーに言われて確信したよ」
クカカ、と陽気に笑ってはいるがその笑いは自嘲ともいえるものだった。
そんな永時の姿をセイバーは直視することが出来なかった。
「そっか……俺はずっと、自分の死に場所を探していたのか……通りで……ようなこと、をす……るわ……けだ……」
「エイジ?」
見るとちゃぶ台につき伏せた状態でスヤスヤと寝息を立てて眠る永時がいた。
「……寝顔でも眺めておきましょうか」
とりあえず一旦寝顔を拝もうと顔を近づけたところで、
「セイバーちょっと来てくれない……って、何しているの!?」
「ッ!?アスモ!いえ、あの……これはですね……」
「もしかして、襲うつもり!?……だったら僕も混ぜてよ!」
「違います!……え?」
「あれでしょ![ピー]して、[ピロピロ]して、[自主規制]するんでしょ?ねえねえどうなの!?」
可愛らしい見た目と裏腹に次々と放たれる卑猥な言葉の数々。そしてそれを聖杯の知識で意味を知っていた(んなもん入れんなよ聖杯)セイバーは顔をだんだんと羞恥に染めていく。
流石は色欲を司る魔王……。
「アスモ!な、何か勘違いをーーー」
「えっ?まさか[バキューン]して、[ホニャララ]してーーー「黙りなさい変態魔王!」ふぎゃ!?」
いつの間にかそこにいて、卑猥なことを言い続ける変態魔王の首筋に手刀をトンッと叩き込み意識を奪ったニル。
「全く、下ネタになるとすぐに興奮すると聞いていましたがここまでとは(師匠の貞操をいただくのは私だけでいいのに)……あっ、セイバーさん。ちょっとこっちへ来てください」
言われるがまま、立ち上がってニルの側に歩み寄ると彼女の後ろからアリスがひょっこりと顔を出した。
「セイバー様、マスターがお呼びです」
「えっ?あなたのマスターはエイジなのでは?」
「いえ、もう一人のマスターです。……案内いたしますので、私についていてきてください」
そういえば製作者は2人いたなと思い出しながらアリスについて行く形で部屋を後にした。
さて、突然だがここで思い出してもらいたい。ここで残っているのは一体誰か?
「……誰もいませんね?」
そう、意識がない変態魔王。師の貞操を狙う肉食獣。そして酔って眠る自称悪だけである。
だからーーー
「今こそ!我が悲願が達成される時!」
「へえ、悲願ってなんだ?」
「無論、私の貞操を師匠に捧げるのでs……えっ?」
ーーーと言って、そうはさせないのが終永時なのである。
「へえ、少し会ってなかったが全然変わりなくて嬉しいよ、ニルマルちゃん?」
「あ、あの、師匠?いつから起きてらしたんですか?」
「お前がこの部屋に入った時から。……昔に言ったはずだよな?戦士たる者、いかなる時でも常に戦闘態勢に入っておくと……そう教えたはずだが?」
「いやいや、今は戦闘時ではありませんyーーーって、痛い痛い痛い!師匠の愛という名のアイアンクローが痛い!脳髄が出ちゃう!出ちゃうのぉ!」
「はいはいそうですかそうですか、大変だねぇ」
メキョと人体ではあり得ないような音を鳴らしながらしばらくアイアンクローをしているとあれだけギャーギャー騒いでいたニルが急に静まり返った。
「ん?落ちたか……」
意識が落ちたのを確認した永時はニルをそっと床に降ろしてやる。
全く酷い師匠である。
「仕方ねえだろ?こうでもしねえと隙あらば俺の貞操狙ってくるしよ。……どこで教育を間違えたかな」
地の文読むんじゃねえ……まあ頑張りたまえ。
「よくよく考えれば俺の周りにはまともな女がいねえ……」
……頑張れ永時君。
「こちらでございます」
「……何もありませんが?」
アリスに案内された部屋はラボの最奥にある、倉庫らしき部屋でそこにはアリスのもう1人のマスターらしき人影は感じとれなかった。
「いえ、ここら辺を……」
アリスが壁に手を付けるとピーと機械音が鳴り響き、
『……アクセスを許可します。ようこそアリス様、セイバー様』
女性の合成音と共にアリスが手を付けていた壁の一部が横にスライド移動した。技術チート万歳である。
「隠し扉?それに何故私の名前が……?」
「たった今セイバー様の情報を登録しておきました。次回からはここら辺に手を付けるだけで通れます。ですが、奥に入るには登録者のみとなっておりますので覚えておいてください」
「はあ……」
もはや理解の範疇を超えたセイバーは曖昧な返事で応えながら扉の奥へと足を踏み入れる。
「あれ〜?アリス以外に〜、誰かいる〜?お客さんかな〜?」
隠し扉の奥にあったのは長い廊下だった。
人工の灯りが廊下を照らしているから分かるが、最奥がとても小さく見えるぐらい長い廊下であった。
無論、そこを徒歩で行くわけにはいかないとアリスが言い出し、
「どうですか、このTYPE・ユニコーンの性能は?」
「本物の馬と対して変わりません。これが人工の馬とは思えないほどです」
現在二人は、アリスのもう1人のマスターがいるらしい最奥の研究室に向かって馬を走らせている。
TYPE・ユニコーン。
アリスのもう1人のマスターが製作者。
なんとなくで作られ、現在この隠しラボの交通手段のひとつとなっている100%人工の機械じかけの馬である。
「しかし、流石はセイバー様。騎乗がお上手ですね?」
「まあ騎乗スキルがありますので……」
「……では、バイクの運転なども可能ですか?」
「バイクなら現代の馬だと思えばできると思いますよ?」
「そうですか……確か試作品の改造バイクが倉庫にありましたね……実験させてみましょうか」
「……何か仰いましたか?」
「いえ、何も。……止めてください」
アリスの指示通りに馬を止めて降りる。
そこは安眠中と書かれたプレートが扉の横にかけられている部屋だった。
「では、参りましょう」
「安眠中と書かれていますが?」
「あのボケマスター……失礼、我がマスターは“常時”寝ております故」
安眠中のプレートがかけられているのにも関わらず、アリスはズカズカと入って行く。
一瞬アリスの本音が聞こえた瞬間でもあった。
自動ドアが開くと共にセイバーの視界に入ったのはよく分からない機械の数々、そして床に散らばる資料の山々だった。
いかにも研究室といえるところと言えようその部屋の惨状にアリスは溜め息を吐く。
「あのボケマスター……また散らかして……」
後で片付けないといけませんね、と資料の山々で出来た隙間を歩いて奥へと進んでいくのをセイバーは後ろからついて行く。
「いました。一応あれが私の2人目のマスター(仮)です」
アリスが呆れた顔で指差す先には……
「zzz……」
そこには、机の上で布団を敷いて爆睡している女性が1人。
森をイメージするようなビリジアンの髪。
湖を連想させるようなサファイアの瞳。
まるで癒しをイメージし、ずっと側にいたくなるような錯覚に陥る。そんな彼女の名は……
「あれが私の第2マスター。怠惰を司る元魔王、ベルフェゴール様です」
いかがでしたか?
ニルマルちゃんが!ニルマルちゃんがおかしくなった!
別に変なキャラにするつもりはなかったんだが……何故だ?本当は師匠LOVEの可愛らしい猫みたいなキャラのつもりで書いてたのが……どうしてこうなった?
しかもこの小説の女性陣が変態・変人ばっか集まっている気が……まっ、いっか。その方が面白そうだし、書きやすいし。
こんな作者ですが、これからもお付き合いのほどよろしくお願いします。
では、また次回。