どうも、遠藤凍です。
久しぶりの投稿ですみません。言い訳かもしれませんが少し所要で書くことが出来なかったんです。
では、どうぞ。
ーーーその丘に広がるのは、燃え盛る炎に包まれ、死体と武器に積まれた山だった。
現代ではプレミア価格が付きそうな西洋甲冑が赤黒い液体に染められている。
そしてその山の上で死闘を交える2人の騎士。
ひとりは白銀と紺碧のドレスのような鎧の姫騎士……セイバー本人。
もうひとりは重装の鎧に全身が包まれており、ノイズらしきものが掛かっているため、顔がよく分からない騎士。
だが、あの程度殺りあったあと、セイバーが槍を持って相手を突き刺した。
そして一瞬だけだが、相手の騎士の顔に掛かっていたノイズが取れてーーー
「ーーーッ!」
そこで、永時は目を覚ました。
「……サーヴァントの……セイバー自身の過去か何かか?」
あくまで冷静に先程の映像について思考する。
だがそれだけでは何か分かるわけでもなくとりあえず心当たりがありそうなセイバーに聞いてみるか、と身体を起こそうとしてーーー起こせなかった。
どうやら両腕が何かに拘束されており、上半身すら起こせない。
「……おい」
「んん……ムニャムニャ……」
「……はぁ」
右腕は彼の相棒であるアスモが、彼のベットに入り込んで抱きついている。
まあ、これは甘えたがりなアスモがよくやることなのでまあいつものことだが、このままだと色々とマズイので……
「起きろ」
残っている足で蹴り飛ばしてベットから落とした。
「ふぎゅ!」
「さて、次は……?」
可愛らしい声を上げてベットから落ちたアスモを無視して左腕を拘束している原因を見ると……
「オイオイ……」
セイバーではなく、薄い褐色肌の少女が永時の腕に抱きついていた。
「……おーい、起きろ」
少女の頬をペチペチと叩いて、起こす試みをする。
なんか相棒の時とはえらい違いである。
「……起きろ」
だが、それも一瞬のこと。
なかなか起きず、寧ろ抱きつく力を強めた少女にイラッとし、アスモと同じくアスモと反対側へ蹴り飛ばした。
「ふぎゃ!」
いくらなんでも、美少女を蹴り飛ばすだろうか?と言いたい人もいるだろう。
美少女とのおいしいイベント?んなもん知るか。
残念ながら終永時という男である。
しかも、無自覚タラシではなく、現状を理解しているからなおのこと、達の悪い。
まあ本人にとって色恋沙汰は今のところ興味がないらしいが。
「うう〜、痛い……」
「起きたか?」
「えっと……エイジ?」
「お前……またか」
「えへへへ。だってぇ、その方が眠りやすいんだもん」
俺は抱き枕か、と心の中でツッコミをしたあと、自身の頬を叩いて眠気を飛ばす。
「はいはい……飯作るから手伝え」
「むぅ……分かった」
「セイバー」
「エイジ……ですか」
いつも通り扉の前で座って飯を待っているわけでもなく珍しく居間で身を縮めるように座り込んで、前に買ってやったぬいぐるみに顔を埋めてモフモフしていた。
ふむ……ライダーとノットに言われて堪えたか?
「今飯作ってやるから少し待ってろ」
「……はい」
とりあえず、飯でも食わしてやるか。
「えっと……フライパンは……」
「ーーー」
ん?今なんか聞こえなかったか?そんなことよりフライパンを……
「ししょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
扉が開くと同時に響く声、そして薄い褐色肌のガキが俺のところへダイブしてきて、
「フッ」
「ふぎゃ!」
フライパンで優しく顔から受け止めてやった。
ごぉぉぉん!と鈍い音が響き、ガキは地面を崩れ落ちる。
やばっ、つい反射的に……これが職業病か。たがいい音鳴ったな……。
「エイジ!何事ですか!?」
さすがは英霊、落ち込んでても切り替えが早いな……って、そんなことよりもだ。
「痛い……」
痛みで悶えているこの馬鹿をなんとかしないとな。
「何してんだ馬鹿弟子」
「ハッ!師匠が私を呼んでいる!?」
呼ばれたと分かった途端バッと無駄に1回転して立ち上がり頭を45度ピッタリになるように頭を下げる。
「お久しぶり振りです、師匠!」
「久しぶり振りだねえ、ムニエル」
「ニルマルです!」
「あれ?そうだっけ?」
……さて、セイバーがよく分からんと言いたそうな顔をしているので説明しよう。
彼女の名は終ニルマル、通称ニル。ニルマルはヒンドゥー語で“純粋”を意味する語らしい(諸説あり)。
短い群青色の髪、命の灯火の燃えるような輝きを見せる黒い瞳、薄い褐色肌の子供。
色々あって4年前辺りに拾った養子で、俺の弟子である。
「えっと、あれから1年たったが……今20歳か?」
「いえ、まだ14ですよ……」
「いやいやそれはねえだろ?」
今から約1年前に武者修行として海外旅行という名の遠征に出掛けさせたのだが、1年前のこいつは年相応以下の身長のはずだったが……今見たところ、170に届くか届かないかぐらいの背丈、そしてルシファーのを少し控えめにしたような胸、そして何より……
とても14歳の子供とは思えない気配を漂わせ、目つきも子供らしい純粋なものではなく、まるで悟りを開いたかのような達観した目をしていた。
「お前……何があった?」
「死徒と殺りあったり、執行者と殺りあったり……まあ色々ありましたよ、ええ」
一体何があったらこうなんだよ!?色々ってなんだよ!?
「と、とりあえず飯でも食うか?」
「ええ、その前に師匠ーーー」
ガチャと金属音らしきものが鳴りーーー
「また女をタラしこめたのですか?」
いつの間にか俺の後ろに回り込み、拳銃らしき硬いものを俺の後頭部に突きつけ、背筋も凍るぐらい低い声で言い放った。
女……多分セイバーのことを指しているのだろう。そう思いたい。昔はガキっぽくて可愛げがあったんだがな……。
「……腕、上げたな……」
「ありがとうございます。……では、O☆HA☆NA☆SHI☆しましょうか?」
「いや、これはな「O☆HA☆NA☆SHI☆しましょうか?」……OK」
時の流れって、人を変えてしまうんだな……。
弟子に引きずられながら俺はそう考えていた。
「聖杯戦争ですか……師匠がそんなものに参加するなんて珍しいですね」
あの後師事した覚えのない拷問スキルを習得していたニルによって尋問されかけたところをアスモの説得によって尋問は中止。食事がてらの話合いとなった。
「まあ色々あるのさ……」
「そうですか……で?」
「で、とは?」
「この人たちと師匠はどんな関係ですか?」
「あー……サーヴァントと付き合いの長い相棒」
永時の発言にガーン!と効果音を鳴らしたような雰囲気を出す2人と小さくガッツポーズをする弟子。
それを見て、永時はニヤリと笑う。
「残念ながら俺は色恋沙汰には興味ねえからな?」
「そうですか……もしかして枯れてます?」
「一応あるにはある」
「だったらーーー」
この状況……つまり、現在このラボに美女が“4人”もいるのにどうして手を出さないのかと聞きたかった。
だが、流石にこの人に限ってそれはないかと即座に否定し、言葉を飲み込んだ。さっき色恋沙汰には興味がないと言っていたし。
「安心しろ、同意してくれたら相手してやるぞ?」
「さりげなく心を読まないでください」
なんで心が読めるんですか?と冗談を言う永時に問うと、そりゃ師匠だからな、と答えニルはただ呆れるしかなかった。
この人超能力者じゃないか?と思ったが、超能力なんてないよねとまたもや即座に否定した。
「さあ?案外あるかもしれねえぞ?」
「……もう何も言いません」
「クカカ……すまん、少しセイバーと2人きりにしてくれないか?」
永時の顔の笑みが消え、いつになく真剣な様子から事の重大さを理解した2人は黙って部屋から出て行った。
そして、2人が出たのを確認すると永時は話を切り出した。
「セイバー……ちょっといいか?」
「……なんでしょうか?」
さて、どうやって慰めようか?
いかがでしたか?
今回やっと名前出しで登場したニルマルちゃん。
問:ニルマルちゃんは今回の聖杯戦争に登場したある人物の関係者なのですが。さて、誰の関係者でしょうか?って、すぐに分かると思いますが……。
また番外編でも書こうかな……?
では、また次回。