あけましておめでとうございます、遠藤凍です。
いよいよ年が明けてしまいましたが、皆さんは今年の目標は何に致しましたか?
ちなみに私は今年には頑張って物語を無事に完結させる、です。
今回は軽〜く、エイジの過去語りもあります。
では、どうぞ。
一方、ルシファーはというと、ふらついた足どりで間桐家へ帰宅していた。決して酔っているわけではない。ただ単に脳を揺さぶられただけである。
途中でよく分からない黒ずくめの人間が4人ほど奇襲してきたが、寄ってきたハエを払うように無意識のうちに抹殺していた。
ーーーこの妾を一撃で意識を刈り取ったあの男……何者じゃ?しかも……
頭に引っかかるのは、あの男と対峙した時に放った光線が“当たる前”に消滅したこと。そしてーーー
「ーーーエイジの様子が、いつもと比べて何処か変だったしのう……」
あの男の顔を見た瞬間の永時の顔が、“恐怖”に染まっていたことに驚愕を覚えた。
ルシファーが知っている永時は、例え誰が相手でも余裕の表情を浮かべた男であるはずだ。
いや、逆にこうも考えられる。
「ーーーあの男……あのエイジさえ恐怖に染める人物といえば……まさか、のう?」
ルシファーの頭の中にある人物が浮かび上がったが、すぐに否定した。何故ならその人物が存在するということは、あるはずないと思っていたからだ。
だが、ルシファーはあるものが目に入り、思考を中断させる。
「おったおった……」
それは、探し物がやっとの思いで見つけた人のような笑顔ではなかった。
「ルシファー?本当にそう名乗ったのか?」
「はい、終永時がそうハッキリと名乗っていました」
「ルシファー……もはや英霊を越えた存在ではないか……」
「アサシンで確認させたところ、高度な魔術を使っていましたのでおそらくはキャスターだと……」
「アサシンでの暗殺は?」
「ビギナーにより、手負いのところを何人かで奇襲させましたが……近づく前に見事に返り討ちに逢いました」
「マスターの方は?」
「間桐家に出入りしているのは目撃されてあるので、間桐雁夜かと……」
「いや、それはありえん。あの間桐の急造魔術師が2体もサーヴァントを使役できるはずがない」
「しかし、それでは間桐臓硯ということになりますが……」
「遂に重い腰を上げたか……まずいな……」
「あっ、おかえりーーーって、どうしたんだよその怪我!?」
実際にはその臓硯が魔王によって消されているとはいざ知らず。玄関に入ったルシファーはその直後に、運悪く雁夜に見つかってしまった。
帰ってきて自室で傷を癒して何事もなかったように振舞おうと考えていた作戦が第1歩目から失敗した。
雁夜は刻印蟲に蝕まれた身体を引きずってルシファーに歩み寄ってくる。
「ビギナーに少しな……」
「ビギナーって、イレギュラーを1人でやりに行ったのか!?」
「安心せい、一撃で意識を刈り取られたから大した怪我はない」
「そういう問題じゃなくて!なんで一人で行ったんだよ!?バーサーカーを「バーサーカーを投入すればお主が死に急ぐだけじゃが?」それでも……!」
「心配してくれるのは結構じゃが……ありゃ、妾とバーサーカーの2人でも勝てんわ」
「ッ!?……そんなに強いのか?」
「妾の推測が正しければじゃがの。正直あれには今回のサーヴァントの中では誰も彼奴には勝てん」
「ッ!?」
魔王の弱気な発言に、雁夜は戦慄を覚えた。
どう慰めようかと考え始めもした。
「と、いう訳でこちらには今、情報が必要である」
「いやいや何でそういう展開になるんだよ!」
が、意外と本人がけろっとしていたので考えるのを即座にやめた。
「と、いう訳で紹介しよう……アサ子じゃ」
シュタッ!と忍びのようにルシファーの側に降り立つ髑髏を模した黒ずくめの女。
「ああ〜アサ子って、女のアサシンだからアサ子ってーーーアサシンんんんんんんんんんんんんっ!?」
ものすごい形相で驚く雁夜を相変わらず涼しい表情で見る。
内心でも、おおっいいリアクションじゃのぅ程度だ。
「安心せい。魔王の威厳で洗脳済みじゃ」
「そ、そう……」
もはや規格外な魔王にすげーとしか言えなかった。
雁夜の精神状態は戦争が終わるまで持つのだろうか……?
「こやつのマスターが面白いやつでのぅ。上手くいけば、こちらが有利に進めることも可能じゃ」
「アサシンのマスターが面白いやつ?」
「さよう。上手くいけばお主の大嫌いな遠坂時臣に繋がるヒントを得られるやもしれんぞ?」
「……時臣ィ」
間桐桜ーーー旧遠坂桜をこの腐って終わっている間桐に養子として出した張本人。そして、雁夜の初恋の相手の夫。
そもそも奴が桜ちゃんを養子に出さなければ……
ただでさえ刻印蟲によって削られている精神状態で溜め込んでいた怒りと憎しみがふつふつと湧き上がって沸騰寸前なのを感じる。
そして、今にも怒り狂いそうな雁夜を見てルシファーはただ笑みを浮かべて眺めているだけだった。
「……では、早速じゃがアーチャーとビギナーを中心に情報を集めて参れ」
「……御意」
霊体化してその場を去って行く女アサシンを見つめた後、ルシファーは真剣な表情で口を開いた。
「……屍もどきよ。バーサーカーはどこにおる?」
「え?バーサーカーなら蟲蔵で待機させてるけど……」
いつになく真剣な表情のルシファーに怒りを忘れて答えた。
「あそこか……確かに、あの部屋は頑丈じゃからのう。バーサーカーが暴れても大丈夫そうじゃの」
「一体何を始める気なんだよ……」
雁夜の問いにルシファーはニヤリと笑みを浮かべて、知りたいか?と逆に問う。そして、雁夜は首を縦に振るとルシファーは笑みを崩さぬまま答えた。
「バーサーカーと一戦交える」
さて、一方の永時はというとーーー追い詰められていた。
「なぁーーーアスモ」
「ぷいっ!」
「……セイバー」
「気安く話しかけないでください変態」
「oh……」
精神的に……
何故こうなったか、少し遡ることになる。
「おかえりなさいませマスター、セイバー様、アスモ様」
「あっ、ただいま〜アリス……えっ?」
「どうしましたか?アスモーーーこれは……」
「あっ?どうしたお前rーーーこれは!?」
疲れきった一同を迎える使用人……ではなく使用ヒューマノイド、アリスが迎え出てくれたのは嬉しいが……服装が何故か某過負荷の大嘘憑きが一時期好みだった服装ーーーつまり、裸エプロンだった。
まだ服装だけが変なので弁解は出来たはずだったが、
「マスター、お風呂にしますか?お食事にしますか?それとも……わ・た・し?キャッ♪」
この一言で空気が完全に凍った。とは言うものの無表情でやっているので説得力が皆無な訳だが……
「「……どういうこと(ですか)?エイジ?」」
「いや……あのな。これには太平洋よりも深〜い訳があってだな……」
戦闘時より濃厚な殺気で迫りよる2人に焦りを感じて弁解し始める。
「マスター……似合いませんか……?」
「とても似合ってるぞーーーあっ……」
しかし、さすがの永時も、女の涙には勝てなかった。
「『
「このーーー」
「えっ……?ちょーーー!」
「ーーー
「変態っ!!」
「落ち着kーーーげぼらぁっ!?」
「マスター!?」
と、いうことがあって。あれから、色々説明してなんとか元の状態に戻れた……訳もなく。
「……死のうか」
「安心してください。マスターにはわたしが着いています」
「アリス…」
「例えマスターのご趣味が変わられてようとも、私は気にしませんよ?」
「ーーーよし、死のうか」
「そう思ってロープを用意しておきました」
「さすがアリス、準備がいいな……これで安心して死ねるーーー」
「「ちょっと待て!?」」
実はアリスがこうするようインプットしたのはもう1人の製作者であることを、全員は知るよしがなかった。
で、あれから永時の自殺騒動があったりして30分後。
ようやく永時が復活したのを確認してセイバーは口を開く。
「エイジ……よろしいですか?」
「ん?なんだ?」
「ビギナーが叫んでいた、
「俺が捨てた名前のことで合ってるぞ?」
「そうですか……」
「……知りたいか?俺の過去を」
いつもよりらしくない永時に驚きを隠せない様子のアスモ。
付き合いが長い彼女だから言えるのだが、永時はあまり自分のことを話したがるような人間ではない。そして、アスモ自体、まだ本人の口から聞いていなかったのだ。
それを言わせたセイバーに若干の嫉妬を向けるが、嫉妬は“レヴィアタン”の仕事だと考え、割り切った。
「軽くだが俺の過去を語ろうか……」
「ルシファー?」
闇夜を駆ける戦車の上でライダーは疑問の声を上げる。
「ああ、さっき森の方でそう呼ばれる奴が出たらしい……」
「ルシファー……確か、魔界の魔王の1人だったか?」
「そう、なんだけど、な……」
「どうした坊主?」
「いや……それがさーーー」
「ーーー誰かに求婚してフられたらしいんだよ」
「求婚?誰に?」
「お前も知ってるだろ?ーーー終永時だよ」
「ほう!あのセイバーのマスターにか?」
「そうなんだよ」
ライダーは自分のマスターから彼のことは恐ろしい存在だと聞いていたが、サーヴァントにその身1つで挑む姿がとても印象に残っていた。
「只者ではないと思ってはいたが……まさか魔王と顔見知りとはのう!」
「なんだよ、えらく上機嫌だな……」
「さよう。相手はあの魔王とその顔見知りだぞ?ますます余の臣下に加えたくなったわ!」
「頼むからやめてくれ……」
ライダーのマスターのストレスがドンドン蓄積されていく。そんなマスターをいざ知らず、原因のライダーは首をゴキゴキと鳴らし、腕を組んで悩んでいた。
「うーむ……おおっ!良い案が浮かんだぞ!」
「えっ……?」
そしてまた、ライダーのマスターのストレスがマッハで加算されていく。
「では、始めようかのぅ」
指をゴキゴキと鳴らしながら目の前の黒騎士を見つめる。
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーー!」
憤怒に染まった声を上げ、目の前の魔王を殲滅しようと突貫する。
まず、先制攻撃としてルシファーが光線を放つが、バーサーカーは右手を包んだ籠手で防ぐと残った左手でルシファーの顔めがけて殴る。
「ほう……!やるのう……」
ルシファーの顔ぐらいの盾の出現で辛うじて顔を守った。盾は装飾などはされてはいないが白と黒、全く正反対の色が左右均等に半分ずつ色づいており、その輝きは装飾品を浮かばせる。
そんな盾を持ってニヤリと笑う。
「妾にこれを出させるとは、エイジ以来じゃぞ?光栄に思え……とは言うても、聞いておらんか」
更に大きさがまちまちの盾を4つ現れ、手に持つ盾も含んだ5つがルシファーの側でふわふわと宙を浮かびながら控える。
「少し上げていくぞ?」
今度は盾1つ1つから出た光線がバーサーカーを襲う。
「◼︎◼︎◼︎◼︎!?」
されど、バーサーカーはただ突っ立っているわけでもなく、生前から培った武を使って避け、光線はただ床を焦がすだけである。
「この部屋は中々頑丈じゃのう」
だが、肝心のルシファーは対した反応も見せず、悠々と立っていた。
「追加じゃ」
更にルシファー本人から3本光線が追加されるが、それでもバーサーカーは軽々と避けていく。
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーー!!」
「しまっーーー!」
7本の光線の隙間を縫って移動し、ルシファーの目の前辿り着いて再度拳を振るう。
「ーーーなんてな?」
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!?」
ゴッ!!とバーサーカーの拳が直撃したが、それはルシファーの側に控えていたはずの盾によって防がれ、“後ろから”光線で撃たれた。
バーサーカーは後ろを見ると、何故かルシファーの側に控えていたはずの盾がふわふわと浮かんでいた。
「いつ、その盾が動かないと言った?」
ルシファーがやったことは単純に盾の1つを動かしてバーサーカーの背後をとっただけである。
だが、まさか盾が動くとは思ってもいないバーサーカー。
ヤバいと騎士の直感が警鐘を鳴らしていた。
「お喋りはここまで。早くせんとお主のマスターが屍になってしまうからのう?」
そう言ってまた盾を2つ、追加した。
「さてーーーまずはビギナーについて語ろうか……」
重い雰囲気の中、永時はそう切り出した。
「ビギナー……あれは俺がかつて魔界で魔王巡りをやった後の話だな……あっ、魔王巡りっつうのはそのまんまの意味だぞ?……で、俺はある討伐依頼を受けてな……」
「討伐依頼?」
「ああ。……相手は神殺しで有名な奴でな、名前はエンド・コール。神話大系で有名なラグナロクそのものを表した男だったな……そいつの討伐の際に一緒にいたのが……」
「ビギナーだったと?」
「そう、どうしてあの防御チートの体現者がサーヴァントになってるかは不明だがな。まあ分かってるのは真名と宝具ぐらいだな……」
「ーーー奴の真名はノット・バット・ノーマル。普通に恋い焦がれた異常者であり、故に絶対強者と呼ばれた男だ」
「ノット・バット・ノーマル……普通ではなくもない?」
「まあ中二くさく言うと『異常な普通』かな?」
「異常な普通……して、宝具は?」
「まあ正確には1つだけ知ってるってのが正しいんだがな……宝具の名は『
「普通……?それじゃあーーー!」
「そう、サーヴァントやマスターがそれを喰らえば……一般人と同じステータスになるってことだ」
「あの異常なステータスでその宝具……確かに、絶対強者の名は伊達ではありませんね……」
「だろ?だからあの時俺はお前らを逃がそうとしたんだよ……」
「そう、だったんですか……」
「まあ過ぎたことはいいとして一応対策はある……」
「それは?」
「それはな……まあ、飯でも食いながら話すよ」
よっこいしょと言って立ち上がり、そのまま外に買い物に出かける準備をし始める永時に2人はずっこけた。
だが、これが間違いだったと気づくのは誰も知るよしがない。
バーサーカーの暴走のせいで魔力を奪われて屍になりかけていた雁夜はルシファーの道具作成で作った魔力を直接補給する魔力瓶を飲んで辛うじて生きていた。
ふと、急に魔力を作っていた体内の刻印蟲が静まり返る。
「……終わった、のか?」
屍になりかけの身体を引きずってゆっくりとした足取りで蟲蔵へ向かう。
「おや?屍もどきではないか。……どうやら本物の屍にはならんかったようじゃな」
「あんたの魔力瓶のおかげで辛うじてな……ん?」
そこで雁夜はある違和感に気づく。
目の前には元気そうなルシファー、その側で控えるようにふわふわと浮くモノクロみたいなカラーリングの盾……は後で聞くとして。
そして、その手で引きずる何故か焦げ臭いバーサーカー。
ん?バーサーカー?
「バーサーカー!?」
「ん?そうじゃが何か?」
「いやいやあんた、何してんだ!?」
「とりあえず弱らせて魔王の威厳で洗脳、とは言わんが、此奴の記憶を覗いてのう」
「記憶?」
「此奴……どうやら『アーサー王物語』の関係者らしくてのう。屍もどきよ、少し調べてくれぬか?」
「分かった今すぐに「まあ待て」」
バーサーカーを引きずったまま雁夜に歩み寄り、雁夜の身体に手のひらをかざす。すると明るくて暖かな光が雁夜の身体に触れ、バーサーカーが暴れる前の身体に戻っていた。
「これは……!?」
「妾が持っている治療魔術と思うてくれればよい。流石に屍状態では辛かろう?」
「あ、ありがとう……」
「……分かったなら早う行け」
照れくさいのか、ルシファーの顔は赤かった。
だが、それもすぐに元に戻ることになる。
「ーーーッ!?屍もどき!待て!」
「どうしたんだ一体?」
「ーーー敵襲じゃ!」
「敵襲!?」
「くっ……!まだ屋敷内に罠を仕掛けてなかったのが仇となりおったか!」
「どうすんだよ!?」
そうこう言ってる内に侵入者はこの屋敷内にズカズカと入ってきている。
「とりあえず、桜ちゃんを……!」
「いや待て。少し静かにしろ」
言われるがままに黙り込む雁夜。
そして、入り口の方からドンッドンッと足音が聞こえーーーそれは姿を見せた。
「ーーーほう、これが噂の魔王か?結構な美人じゃないか!ガァッハッハッハッ!!」
「……なんじゃ?この無駄にむさ苦しい筋肉男は?」
「ライダーだよ!なんで忘れてんだよ!」
「ライダーじゃと?」
そういえば……と初日の倉庫街での戦いを思い出す。
確かいきなり現れては真名を名乗るわ、他のサーヴァントを臣下に加えようとするわ、ランサーのマスターに喧嘩を売るわ、声が無駄にデカイわで、ルシファーの印象は最悪だったのであっさりと記憶から抹消した男だったことを思い出す。
「だって……エイジと全く正反対のタイプじゃからのう……「エイジ?エイジってセイバーのマスターか?」そうじゃが……?」
話に割り込んで来たライダーに明らかな嫌そうな顔を向ける。……大丈夫かこの魔王?
「というとあれか?終永時に求婚してフられたのか?」
「……なんじゃと?貴様……なんと言った?」
「ヒィッ!」
明らかに怒っているぐらい濃厚な殺気を出し始めるルシファーに恐怖の声を上げる雁夜。
何やってんだ征服王。
「しかしのう、どうしてこんな美人の求婚を断りおったんだ?」
「……そうじゃろう!?お主もおかしいと思うか!?」
「ああ、全くだ」
あれぇ?立ち直り早くねえかこの魔王?ほら、雁夜おじさんも目をパチクリとさせてるぞ?
そして、雁夜の視線にようやく気付いたルシファーは咳払いを一つして威厳を保とうとする……もう遅いと思われるが。
「ゴホンッ!……して、お主。何ようじゃ?」
見るとあの赤いマントの戦闘服姿ではなく、キツキツで今にも破けそうな『大戦略』と世界地図がプリントされた、世界征服でもするのかと言いたくなるようなTシャツとジーンズと、ラフな格好なので戦闘ではないかと考えるが一応警戒しておく。
「なぁに、今回は戦いに来たわけではない。これからセイバーを誘ってビギナーのところへ行き、酒宴を行うつもりだったのだが……その道中に一筋の光線が飛んできおってな?気になるもんだからここによってみれば……貴様らがいたからついでにと誘いに来たのだ」
「一筋の光線……?」
犯人に心当たりがある雁夜はじっとルシファーをジト目で見るが、当の本人は知らん顔である。
蟲蔵の頑丈さにテンションが上がり、どれだけ耐えれるか試していたとはとても言えない。
「そ、そういえばお主!ビギナーのところへ行くと言っておったな?」
「おお、そうだが?」
「では、妾も行こうかのう!」
「はぁ!?何言ってんだよ!」
急に雁夜を掴んで側に寄せ、小声で話し始める。
「上手くいけば他のサーヴァントの真名が分かるかもしれんのだぞ?」
「なるほどな……」
要は酒に酔わせて洗いざらい吐いて貰おうという魂胆だ。
そこっ!傲慢なのに偉く慎重だな、とは言わない。
「じゃあ俺たちは留守番か?」
「そういうことになるな……バーサーカーがおるから大丈夫じゃろう」
言うだけ言い終わると雁夜を掴んでいた手を離し、ライダーと向かい合う。
「ライダーよ。行くのは構わんが、場所はあるのか?」
「おお、そりゃあもちろん。酒宴に打ってつけの場所がな?」
「ほう!では早速行こうかのう?」
「なら、余の戦車に乗っていくか?」
「いや、妾は自分で飛べるから大丈夫じゃ」
バサァッ!と漆黒の鳥のような翼を広げる。
「おお!これが堕天使の翼か!中々立派ではないか!」
「そうじゃろう?……して、お主のマスターは何処じゃ?」
今気付いたのだが、いつもライダーの側でツッコミをしているマスターがいない。
ツッコミ要員はとても必要なことであるのだが……。
「ああ!坊主なら着陸する時に気を失ってなぁ。そのまま放置してきたわ!」
「そうか……」
「ライダーじゃなくてよかった……」
ウェイバー君に幸あれ。
「今日の飯は何がいい?」
ルシファーたちがそんなことを計画していたのもいず知らず、食材を求めて新都から深町へ移動中の一行。
これから何が起きるのか分かっていないからとても楽し気である。
「精がつくもの!」
「無論!焼肉でしょう?」
「お前らな……毎日そればっか言ってるけど他にはないのか他には?」
「「むぅ……」」
だが、それは一瞬で崩れ去る。
「おお、セイバー!こんなところにおったか!」
後ろから発せられたその言葉に、永時の背筋が凍り、後ろを振り向くことができなかった。
なぜなら……私服姿で、ガスマスクを付けず、素顔を晒していたからだ。
裏世界での終永時は、名前以外不詳でなければいけないのだ。
「ライダー!?」
戦闘服である白銀と紺の甲冑に身を包み、バッとライダーの方へ向いて後ろへ跳ぶ。
ちなみに永時は肩を震えるだけで後ろを向くことが出来ず、アスモは……行方をくらましていた。
「セイバー……ヘルプだ」
「マスター?……ハッ!」
運良く直感で永時の事情を察知してくれ、永時を隠すように後ろに立つ。
こんな時に彼の
「なぁに、今回は戦いに来たわけではない」
「何?」
「いやな。これからビギナーのところで酒宴を行おうと思ってな……ルシファーと共に行こうとしたところでお主らに会ってな。ついでに誘いに来たのだが……お主のマスターはどこだ?」
「エイジはどこじゃ?」
永時と言えば黒一色の格好なので、黒一色の人物を捜す。
とはいうものの、目の前のセイバーの後ろに隠れている男だが……。
てかルシファーさん、俺以外に少しは興味を示しましょうよ……と永時は内心思った。
「ん?セイバーよ。その男は誰だ?」
「いえ……彼は……その……」
「ん?もしかして……」
おっと、永時の存在に気付いた征服王と魔王。
永時、色々とピンチである。
さて永時はこの状況をどう乗り越えるのか?
「マスター?」
「ほれ、そこの男。こちらを向いてみよ」
「……分かった」
くるっと振り向く永時。その顔は……
「エイジ……お主、ふざけておるのか?」
「いや……俺はいつも通りだが?」
ルシファーは怪訝そうな顔で見るのも仕方がなく、なぜならーーー
「なぜに獅子舞?」
「仕方ねえだろ?作者が書いてる時期がお正月なんだからよ……」
「あっ、なるほどのう!」
「余にはさっぱり分からんのだが?」
「まあ気にすんな征服王。……ちょっとそこで待っておいてくれ、今すぐ準備してくるから」
そう言った直後、永時の姿はどこにもなかった。
「サンキューアスモ」
「どういたしまして♪」
遠藤「いかがでしたか?作者の遠藤凍でございます」
永時「おい作者、今回は珍しいやり方だな」
遠藤「そうですね。新年に因んで、趣向を少し変えようかと思いまして。とは言っても、今回だけですよ………多分」
永時「あっ、そう。……で?俺を呼んだ理由は?」
遠藤「ビギナー……ノットさんの宝具についてですよ」
永時「いや……それならあいつ呼べよ」
遠藤「狂化かかっていて会話出来ない彼とどうしろと?」
永時「ああ……悪かった」
遠藤「分かってくだされば結構です。……では、早速ですが本題に入りましょう」
永時「ビギナー……あいつの宝具はさっき言った通り異能の完全無効化だ」
遠藤「つまり、全身版幻想殺しですね!」
永時「幻想殺しってのは知らねえが……とにかく、あれはオンオフがもちろんあるし、あのステータスだしな……どうすんだ作者?」
遠藤「大丈夫です!ちゃんと弱点はあります……って、読者の方々はもうお分かりですよね?」
永時「というか、それよりあれがヤバいな」
遠藤「『原点にて頂点』ですか?」
永時「ああ、俺は知ってはいるが、正直発動されると俺らは詰む」
遠藤「……まあ弱点は用意してありますので、ご安心ください」
永時「そうかい……。じゃあ、俺はそろそろ行くわ……」
遠藤「えっ……?どこへ行かれるのですか?」
永時「魔王共に新年の挨拶をしにな……」
遠藤「そうでしたか。お時間を取らせてすみませんでした……。アスモさんやセイバーさん、ルシファー様にもよろしくお伝えください」
永時「気が向いたらな……」
遠藤「消えた……ゴホンッ!では皆様。こんな作者ですが、今年もどうぞ、よろしくお願いします!」
遠藤「あっ!良ければ永時本人が所有する能力の予想をしてみてください。ヒントは……征服王が関係しているかも知れません」
遠藤「参考になりましたか?では、また次回」