Fate/Evil   作:遠藤凍

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どうも、遠藤凍です。

今回はいよいよ気になるあの人が登場します。

では、どうぞ




キャスター&イレギュラー討伐指令

 

 

冬木市新都にある冬木教会。

その中には1人、今回の聖杯戦争の監督役である……言峰璃正がいた。

 

 

「ーーー今、聖杯戦争は重大な危機に見舞われている」

 

 

誰もいない信徒席に言葉を投げかける。

だが信徒席には誰も居らず、いるのは各々のマスターの偵察用の使い魔のみだった。

その数は5体で、形式上脱落している言峰綺礼と今回の収集の原因となっているキャスターのマスターを除外すれば数があっており、特に何も思うことなく璃正は続ける。

 

 

「ルールを逸脱したキャスターの所業が原因だ。よって、ここに私の緊急監督権限を使用し、ここにキャスターの討伐命令を下す。そして見事に討ち取った者には……令呪1画を報酬とする。

更にもう1つ期限なしの討伐命令を下させてもらう。

対象はアインツベルンが召喚したとされるイレギュラーサーヴァント『ビギナー』。

イレギュラーな存在であり、先程のホテル爆破事件の際、ランサーを不意打ちとはいえ、“サーヴァントの片腕を一瞬で吹き飛ばした”ほどの異常な強さのサーヴァントが召喚されてしまった。このままでは聖杯戦争の秩序が乱れる可能性を考慮した上で決まったことだ。なお特別ルールとして、サーヴァントがいないマスター及び現在いるサーヴァントを破棄したマスターにはビギナーのマスターの殺害成功時点でビギナーの使役を許可する。なお、キャスターの消滅が確認され次第、改めて聖杯戦争を再開させる…………さて、最後に質問のある者はこの場で名乗るといい………もっとも、人語が発音できる者のみに限らせてもらうがね……」

 

 

その言葉を機に次々と退出していく使い魔達。そして璃正一人となっていった。

 

 

「では、これにて緊急収集を終了する」

 

 

その言葉は誰にも聞かれず、闇夜へ溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビギナー………初心者のサーヴァント?」

「初心者?バランス重視のサーヴァントでしょうか?エイジ、何か情報は?」

「いや、こうといったものはないな………」

 

 

現在、本拠点で三人は作戦会議のまっ最中だった。

議題は先程出たキャスター・ビギナー討伐についてだ。

 

 

「そんなよく分からん奴について語るよりキャスターの方が先だろ?」

「ええ〜なんであんな変質者の話をしなきゃいけないんの?」

「全く同感です」

「おい」

 

 

実はこの2人、さっきからやたらとキャスターの話を避けようとする。

それは仕方ない。人間違いするだけでなく、ストーカー宣言されたのだ。世の女性のほとんどは嫌がるだろう。

一応永時も2人の気持ちを理解しているが、このままではいけないと思い説得にかかる。

 

 

「んなこと言ったってあれは案外しつこく付きまとってくるぞ?だったら今の内に殺っといておいた方が後々考えなくて済むんだぞ?」

「むっ………確かにそうですね………」

「確かにね、ああいうのは一度懲らしめないと行動がエスカレートするからね」

「だろ?相手は変質者だ。多少過激なことをしても大丈夫だ………………きっと」

「「確かに」」

 

 

説得終了。そしてすぐに切り替えて永時は口を開く。

 

 

「では、キャスター討伐の作戦を考えるが………何か意見ある人は?」

 

 

いつの間にか黒スーツに身を包み、メガネを掛けている永時と黒い学ランのセイバーと上が学ランで下がスカートのアスモがいるが………それは御都合主義というやつだ。

 

 

「は〜い」

「では、アスモ君」

「はい!まずピーーーーして、バキューーーンして、ピロピロしたらいいと思います!」

「見た目の割に怖いこと言うなよ!却下!」

「え〜!いい案だと思ったんだけどなぁ〜」

「却下だ。………では、他には………」

「はい」

「では、セイバー君」

「騎士の名のもとに「却下」…なぜですか?」

「なんか面倒だから」

「そんな理不尽な!?」

「……はあ、お前らな……仕方ない、他に誰かいないか」

「はい」

 

 

そう言って手を挙げる赤髪ショートボブの少女。

 

 

「はい、アリス君」

「「誰!?」」

「はい、私としてはあのキャスター…ジル・ド・レェは一般人を巻き込まないことを考慮しない者だと考えられます。故に「「ちょっと待って(下さい)!!」」………何でしょうか?」

「エイジ!この子は誰なの!?」

「私が召喚された時にはいませんでした………説明を要求します!」

 

 

突然の新しい女の登場でものすごい剣幕で詰め寄ってくる2人に永時は怯みつつも説明し始める。

 

 

「あー、こいつは………アリス説明してくれ」

「了解しましたマスター。………初めましてセイバー様、アスモ様-----」

 

 

彼女の話を要約するとこうなる。

 

 

・彼女の名はTYPE・アリス。永時の技術チートに近いスキルと、ある人物の協力で作られた魔術と科学を混合した試作型のヒューマノイド。

 

・ショートボブの赤髪、金色の瞳、稼働しやすいように細くすらっとしたスレンダーな肢体、そして肌の感触を精巧に再現した人口皮膚、と人間らしく精巧に作られている(製作期間10年)

 

・優秀だった魔術師の魔術刻印が埋め込んであるので実力は魔術師の少し上。

 

・人工知能(ほとんどの製作期間をこれに注ぎ込んだ)があるので、人の感情はある程度理解できるが、まだ試作機なので若干ズレているところがある。

 

・もしものために用意しておいたラボの上位個体で永時が暫くどこかに行っている間、彼女がラボの管理・研究・開発をしている。

 

 

「エイジ、最近遊びに来ないと思ったらまた籠ってたんだ………エイジの籠り癖は知ってたけど……今回は長い方だね………」

 

 

いくら長い付き合いとはいえ、流石のアスモも引き気味である。

 

 

「人工とはいえ、ここまで精巧に再現するとは……」

「ふぇいふぁーふぁま、ふぉっふぇふぁふぅふぇふぁふぁふぃふぇふだふぁい(セイバー様、ほっぺた弄らないでください)」

「………癖になりそうですね………」

「じゃあ僕も………」

 

 

こちらはもう交流し始めているが……。

 

 

「とにかく!アリスは俺たちのサポート・支援を主だってしてくれる。まあ仲良く………………できてるな」

 

 

この後作戦会議に戻るまで、15分を要したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回、こちらは傍観しようと考えておる」

「どうしてだよ!じゃあキャスターを放置するって言うのか!?」

 

 

今回の討伐の話を聞いてキャスターを討伐しに行く気満々の雁夜はルシファーの言葉に激怒するが、ルシファーは冷静に続ける。

 

 

「そうとは言っておらん。ただお主とバーサーカーを考えた上での行動じゃよ」

「俺と……バーサーカー?」

「今、他の陣営がキャスターに夢中になっておる。そんなところにバーサーカーを突っ込んでみよ。ただでさえ魔力が低く、屍もどきのお主が本物の屍になりおるぞ?」

「それは………」

「今キャスターに目を向けておる間に、こちらは少し工作活動をさせてもらおうではないか」

「工作活動……?」

「妾の陣地作成と道具作成で神殿と罠を大量に製造し、黄金律で軍資金を稼ぐぞ」

「でも、ほとんどのサーヴァントに対魔力があるぞ?」

 

 

雁夜の疑問に動じず、むしろ自信あり気な態度を見せる。

 

 

「フッ、そこが狙い目じゃよ」

「狙い目………あっ」

「そう、妾にはアンチ対魔力がある」

「ただの魔術の罠だと思って油断させるのが狙いか!」

「そう、それを繰り返してあらかた削っておいてからバーサーカーを投入すれば?」

「勝てる………!」

 

 

 

「まあ底辺だった勝率が少し上がる程度じゃがの……」

 

 

 

「………ごはぁ!!」

 

 

痛烈な言葉に雁夜は吐血した-----ように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、闇夜に照らされ、更に不気味さが増した森にキャスターは現れた。

 

 

「おっ、来た来た」

「アリスの予想通りだった、ということですね……」

 

 

原作で使っていた『遠見の水晶玉』なるものを自己流にアレンジしたものでキャスターの動きを観察する。

アリスの提案はこうだ。

街中にいては一般人が巻き込まれる可能性があるなら、一般人がいないところに行けばいい、とのこと。

しかしキャスターはそれを見越してか、周りに十数人の虚ろな目をした子供たちを従えて現れた。たぶん催眠術でも使用したのだろう。

 

 

「人質か………卑劣な真似を………!」

「落ち着けセイバー、まだ出るには早すぎる。早く出ても人質で動けなくなるだけだぞ?」

「……分かってはいますが…………」

 

 

するとまるで見えているかのようにこちらを見つめて、爽やかな笑顔を浮かべ丁寧に頭を垂れる。

どうやら永時の魔術を見破ったようだ。さすが、腐ってもキャスターなだけはある。

 

 

「昨夜の約定通り、ジル・ド・レェ、罷り越してございます。我が麗しの聖処女ジャンヌに今一度、お目通りを願いたい」

 

 

キャスターの言葉にセイバーは永時の方を見る。

しかし永時はまだ早い、と首を横に振った。

 

 

「まぁ、取次はごゆるりとなさってください。私もそのために暇つぶしに相応の準備をして参りました故」

「暇つぶし、ねえ?」

 

 

キャスターが指を鳴らすと子供たちは正気に戻る。

 

 

「さあ坊やたち、鬼ごっこを始めますよ!ルールは簡単です。この私から逃げ切ればいいのです。さもなくばーーーーー!」

 

 

キャスターはその大きな手を近くにいた子供の頭に伸ばし、そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴギャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、“キャスター”の腕が見事に折られていた。

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

悲鳴を上げるキャスターの腕には先程キャスターが連れていた子供が、キャスターの腕を膝でへし折っていた。

 

 

「どう?なかなかの演技力だったでしょ?」

 

 

先程の子供とは違う声で話すとその姿を変形させる。

桃色の髪の中性的な女の子、アスモである。

 

 

「流石我が相棒。いい仕事してるな」

「しかし、ここまでがアリスの予想通りだったとは、恐れを抱くほどですよ」

「それがアリスだからなぁ……流石、あいつが作っただけのことはある」

 

 

そう、実はセイバーの言うとおりなのだが、実はキャスターが生贄となる子供を探していると聞いていたアリスはアスモに子供になるようにし、人目がなくなおかつキャスターに見つかりやすい場所に事前に待機してもらい、あとは催眠術にかかった演技でこの森に来て気を伺っていた、ということだ。

 

 

「みんな!早く向こうへ行くんだ!」

 

 

正義のヒーローの演技をして、子供たちを永時のいる方角へ避難させる。

 

 

「貴様ァァァァァ!我が聖処女との逢瀬を邪魔する気かァ!?」

「悪いね、僕だって事情があるのでね!」

 

 

そう言ってキャスターとの距離を縮め、

 

 

「悪霊退散!南無三!」

 

 

塩をキャスターの目に投げつけた。

悪魔が塩って…………宗教的に全く違うが………。

 

 

「ギャァァァァァ!!目が、目がァァァァァァ!」

 

 

塩が目に染み、地面をのたうち回るキャスター。

それを見て好機と見た永時は遂に出動を許可した。

 

 

「よし、行ってこい」

「はい!あれ?もういない……………」

 

 

いつの間にか隣にいなくなっていた永時に疑問を抱きながらもキャスターの方へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「屍もどきよ、予定変更じゃ」

「えっ?」

「妾もあそこへ参加してくる。ちと、良い案……というよりは私情が浮かんでな………バーサーカーと小娘と一緒に留守番しておれ」

「ちょっと待てーーー!行っちまった………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい♪」

 

 

と可愛らしい声を出すアスモだが、やってることはキャスターの顔面を蹴り飛ばすという見た目に合わないえぐいことをやっていた。

 

 

「ぐぼぉ!」

 

 

サッカーボールのように転がっていき、

 

 

「エイジ、今だよ!」

「了解………変態退散」

 

 

いつの間にかアスモの隣にいた永時は手に持つスイッチらしきものを押しーーーーー

 

ーーーーーキャスターが爆発した。

 

 

 

「ギャァァァァァァァァァァ!!おのれェェェェェェェェ!!」

「汚い花火だね」

「本当だな。これだから変態は………アスモ、今のうちに子供を回収しといてくれ」

「了解♪」

 

 

子供たちのことはアスモに相棒に任し、自分は速攻で復活した変質者の前に立ちはだかることにした。

 

 

「さてストーカー野郎………悪いが俺と戯れてもらうぞ」

「来たな神の使いめェ!…………いいでしょう。あなたを滅してからでも遅くはありませんからねェ!」

 

 

永時はサブマシンガンを構え、キャスターは一冊の本を手に取る。

 

 

「さあお行きなさい海魔たち!忌まわしき神の使いを滅するのです!」

 

 

そう叫びを上げながら手を本に叩きつけるとおぞましいヒトデのような何かがうじゃうじゃと現れる。

中心部には口らしきものが大きな牙をズラリと並ばせ、触手のような腕?には吸盤らしきものがついていた。

その海魔たちは永時を喰らおうとし、一斉に襲いかかる。

 

 

「うわっ気持ち悪い。こんなの来るとか予想外だぞ?」

 

 

口で悪態を吐きつつも銃を乱射して海魔を一体一体葬り去っていく。

 

 

「セイバー早くしてくれ〜」

 

 

そう言っている間にも海魔はどんどん数を増していき、殺り逃した一体が永時に飛びかかる。

 

 

「やばっ」

 

 

慌ててサバイバルナイフを取り出し、切り捨てる。

斬って、撃って、また斬って。何回やっても一向に減らず、永時のストレスが頂点に達しかけた時、彼女は来た。

 

 

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!!」

 

 

叫びの直後に暴風の塊が永時の横を通り越し、海魔を蹂躙する。

やっとか、と言って永時は後ろの人物に声を掛ける。

 

 

「遅えよ」

「いえ、エイジが早すぎるのです」

「そうか?まあ裏技使ったしな」

 

 

短い会話を続ける間も、海魔を殺り続ける二人。

 

 

「ああ………ジャンヌ………なんと気高い、なんと雄雄しい!ああ………聖処女よ、貴女の前では神すら霞む!」

「キャスター!私は貴様(ストーカー)を終わらすために………貴様を斬る!ーーー悪霊退散!!」

「おいでなさいジャンヌ!その清き身体を、私の愛で穢れさせてあげましょう!」

 

 

なんか俺とアスモの影響受けてないか?と疑問に思いつつも永時はミサイルをキャスターに打ち込むが、海魔の壁によって防がれ、舌打ちをする。

しかも、何十匹も葬ったはずの海魔が一向に減らず、寧ろどんどん数を増していた。

 

 

「……減るどころか、寧ろ増えてねえか?」

「おかしい…………奴の魔力は底なしとでもいうのか?」

「フフフフフ…………分からないですよねぇジャンヌ?いくら倒しても無限に湧き続ける海魔たちをどうやってしょうかn「あっ、分かったぞセイバー」危なっ!」

 

 

話の途中にも関わらず、ミサイルをぶっ放してキャスターの言葉を遮る。キャスターは海魔を盾にしたことでまたしても防ぎ、そのことに永時は舌打ちする。

 

 

「チッ、死んでねえか…………どうせその本が魔力源なんだろ?」

「悔しいですがご名答です神の使いよ。この本の名は『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』。我が盟友、フランソワ・プレラーティーの遺した魔書であり、海底の深淵に眠る悪魔たちを召喚することができるものです」

「なにっ………!?」

「別名『ルルイエ教本』。………確か、クトゥルフ神話に登場する怪物を召喚する魔書だっけ?並大抵の人間が詠唱すれば碌なことが起こらねえっていうあれか?」

「またもやご名答です神の使いよ。…………いかがですジャンヌ?何もかも昔のままだ。強いて言うなら、かつてオルレアンに集った勇者もこれほど豪壮ではありますまい?そしてその気高き闘志、尊き魂のありようは、間違いなく貴女がジャンヌ・ダルクであるという証!」

 

 

キャスターは一旦言葉を区切り、今度は怒りのこもった声で続ける。

 

 

「それなのに何故だ!?何故目覚めてくれないのです!未だ神の御加護を信じておいでか!?」

「くっ………戯言を!」

「この窮地にも神の奇跡が貴女を救うとっ!?………コンピエーニュの戦いをお忘れか!?あれほどの辱めを受けてなお貴女は、神の操り人形に甘んじるというのかァ!?」

「黙れぇぇぇぇ!!」

「おい、セイバー!待てっ!……チッ」

 

 

キャスターの戯言にキレたセイバーは力任せに剣を振るって前進し海魔を切り裂くが、数の差には勝てずセイバーは触手に動きを封じられる。

 

 

「邪魔だ」

 

 

セイバーの元へと駆け寄ろうと永時は前進するが海魔の圧倒的量によって先を阻まれる。

 

セイバーは拘束から抜けだそうともがくが、より一層拘束が強まり、抜け出せるに抜け出せなかった。

ここまでか、とセイバーが悟った時、一本の槍が触手を切り払った。

咳き込むセイバーに聞き覚えのある声の人物が声を掛けてきた。

 

 

「無様だなセイバー」

「………ランサー?」

 

 

セイバーがその名を呼ぶと“片腕の”ランサーはセイバーに向けてウインクした。

 

 

 

 

「妾もおるぞ?」

 

 

 

 

女の声と共に、数十本もの白い光線が海魔と大地を抉る。

その声に心当たりがある永時は背筋が寒くなった。

 

後ろを振り向くと雪のような白銀の髪を腰まで垂らし、引き込まれそうな黒い瞳、女らしさといえる豊満な肢体を胸元を開けた黒のドレスのような鎧に身を包んでいて、背中から鳥のような漆黒の翼、妖艶な雰囲気を出す美女を見て、背筋が完全に凍った。

 

 

「よう……ルシファー」

「久しいのう終永時…………」

「そう、だな………」

「エイジ、この方は?」

 

 

セイバーは突然の乱入者に戸惑いつつも永時に関係性を尋ねる。

 

 

「こいつはな………アスモと同じ魔王の一人だ」

「そうですか………」

 

 

セイバーと話す永時を見てむすっとした顔でルシファーは言葉を続ける。

 

 

「……のう、エイジよ」

「………なんだ?」

「………いつになったら妾の夫になってくれるのじゃ?」

「……会っていきなりそれかよ………」

「で、返事は?」

「……」

「そりゃ、もちろんことわr「だが断る」……なん、じゃと?………な、何故じゃ?」

 

 

ルシファーのところだけ地震が起きたようにガタガタと震える。…………動揺しているのが丸わかりである。

 

 

「いや………俺、結婚する気ねえし」

「な、なんじゃと…………!?」

 

 

地面に手をついて、羽が弱々しく縮み、世界の終わりを見たような顔でガタガタ震える。

 

 

「ば、馬鹿な………あ、ありえんわ…………スタイル良し、器量良し、家事全般良しのこの超絶完璧最強美女のこのルシファーのプロポーズを断る、じゃと?」

「イエス」

「な、なななななななっ!」

 

 

ショックのあまり震えが止まらないルシファー。

余程自信があったのだろう。

 

 

「あの………私は……「「うっとおしいわギョロ目!」」ギャァァァァァァ!!」

 

 

空気の読めないキャスターの発言に2人はキレ、ミサイルと光線を叩き込んだ。

 

 

「おっ♪息があったようじゃ、これぞ夫婦と言えよう?」

「たまたまだろうがアホ」

「ほう?妾でも今の発言は見逃せんのう」

「やるか?」

 

 

戦闘中にも関わらず痴話喧嘩を始める2人。

それを好機と見たキャスターは霊体化し始める。

 

 

「クッ…………今回は引かせていただきます。ではジャンヌ、またお会いしましょう」

「二度と来るな、悪霊が!」

 

 

キャスターは霊体化して撤退したのを確認すると、ランサーは口を開いた。

 

 

「………なあ、セイバー」

「なんだ?」

「………俺の来る意味、あったか?」

「………すまん」

 

 

黄昏るランサーとペコペコと謝るセイバー。

そうしている間でも2人の痴話喧嘩は続いている。

 

 

「だからてめえは馬鹿なんだよ。……その無駄にデカい胸に栄養を回すから脳まで届いてねえんだよ」

「なんじゃと!?言わせておけば馬鹿馬鹿と言いおって………!」

「やんのか?」

「いいじゃろう、今日こそ徹底的に潰してやろう!」

「ハッ!前みたいに無様に負けんじゃねえぞ?」

「ふん!後悔しても知らんぞ----ッ!?」

 

 

それは突然彼らの前に姿を現した。

轟ッ!!とそれは地に足を付け、圧倒的な威圧を四人にぶつける。

 

白い伊達メガネをかけ、黒い髪の至って普通の人間が黒いタキシード姿の男が現れた。

 

だが、それに反応を見せたのは2人。

 

まず一人目は----ーランサー。

 

 

「ビギナー………」

「ッ!あれが!?」

「見た目に騙されるな………あれは俺の片腕を吹き飛ばしたサーヴァントだ」

「今回のイレギュラー!?」

 

 

そしてもう一人は----ー永時だ。

 

 

「おいおいマジかよ……」

「エイジ?」

 

 

永時の姿を見たセイバーは顔を驚愕に染めた。

なぜなら、あの永時が、どんな敵でもいつも自信があるような素振りをする永時の顔が強張っていたからだ。

 

 

「……げろ」

「?」

「…………逃げろ」

「エイジ?」

「……いいから早く逃げろ!」

 

 

その声でビギナーと呼ばれるサーヴァントは永時の方を向いて、動きを止めた。

 

 

「………n………ve…………………」

「ルシファー!死にたくなければ今すぐ帰れ!ランサー!お前もあいつの実力が分かってるならとっとと帰れ!セイバー!俺に何があっても絶対に奴に手を出すなよ!?」

 

 

ビギナーの肩が震え、だんだん震えが強くなる。

 

 

「………n………e…………er…………」

「エイジ!あのサーヴァントは一体!?」

「ハッ、何が初心者のサーヴァントだよ………いや、確かに初心者“マスター”にはやりやすいサーヴァントかもな(チッ……よりによってなんでこいつが!?)」

 

 

そもそも気づくべきだった。慎重な魔術師殺しがどうしてこうも大胆にサーヴァントの情報を漏らしてしまったのかを。ランサーの情報を聞いた時に気づくべきだった。

そう、それは実に簡単なことだった----ー

 

 

「Neeeeverrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

 

突然狂ったようにビギナーが叫ぶと同時に、その姿を消しー----セイバーの視界から永時が消え、代わりにビギナーが立っていた。

 

永時に駆け寄りたいが、それどころではないので、セイバーたちは獲物を構えて目の前の敵に立ち向かう。

 

 

----魔王が光線を叩き込むが、当たる寸前に光線は消え、踵で地に叩きつけられる。

 

----槍騎士が槍を振るうが、漫画のように指二本で止めてランサーが驚く暇を与えず、槍を掴んで引っ張ってランサーを引き寄せ、腹を殴る。

 

----姫騎士が不可視の剣を振るうが、手刀で弾かれ、十字に斬りつけられる。

 

その時間僅か13秒。

 

そう、ビギナーが圧倒的に強すぎるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消えた永時はどこに行ったかというと、森の中を飛んでいた。いや、この場合は飛ばされていたが正解だろう。

先程セイバーたちは見えていなかったが、永時にははっきりと見えていた。

 

あの叫びを上げた一瞬で永時の懐へ入り込み、たった1発殴っただけでこれだ。

 

 

---チッ、2、3本はやられたか?

 

 

冷静に判断しつつ身体を半回転させ、地面に足を付けて止まって状態を確認する。

だが、それを待ってくれない人物がいた。

 

 

「Neverrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

「おいおい、もう3人沈めたのか………いや、お前ならあの程度、朝飯前か」

 

 

ランサーと争う程の速度で此方に向かってくるビギナー。

先程ステータスを見たが、異常だったのは予想済みだったので、大して驚きはせず、右手にハンドガン、左手にサバイバルナイフを逆手に構えて迎撃体制に入る。だが、その手は若干震えていた。

 

 

「Neverrrrrrrrrrrrr!!」

「………」

 

 

迫り来るビギナーに永時は呼吸を整えて攻撃に備える。

そして、その距離がゼロになった----ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何?」

 

 

永時の攻撃範囲に関わらず、金縛りにあったかのようにピタッとその動きを止めた。

 

 

「………Irisfeel!?」

「アイリスフィール?」

 

 

突然女性の名前が浮上し、自身の記憶から詮索する。

 

 

「衛宮切嗣の女………アインツベルン家の者か……」

「…………ッ!?」

 

 

ビギナーは即座に霊体化し始め、その真偽を確かめることはできずに去って行ってしまった。

 

 

「ビギナー……よりにもよってお前か………ノット」

 

 

その問いに誰も答えず、闇夜へ溶けていった。

 

 

 





いかがでしたか?

では、ビギナーのステータス公開です。どうぞ!

注)かなりのバグです。


【クラス】ビギナー

【属性】中立・狂

【ステータス】
・筋力A
・耐久A+
・敏捷A
・魔力B+
・幸運C

【保有スキル】
・狂化D

・騎乗A+

・直感A

・戦闘続行A
(往生際の悪い)

・縮地B
(相手との間合いを一瞬で詰める歩法)

・千里眼B

・単独行動A

・異常体質B
(ステータスを無視した力を発揮する時がある)

・祖龍の寵愛A→D
(龍の始祖の加護を受けることにより、空を歩けて、攻撃に龍+龍殺しの属性を付与する。更に龍殺し以外に耐性がつくのだが、狂化のせいで、空を歩く効果しかない)

【宝具】
『???』




『???』

現在あることに使っている+マスターのせいで戦闘には使えない。




【補足】
永時が知ってる中で最も相手にしてはいけない人物。
だが、2つの宝具のうち1つは、魔力不足と、あることに使用しているため、実質1つしか使えない。


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