Fate/Evil   作:遠藤凍

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どうも、遠藤凍です。

今回は軽くですがある人の過去に触れます。

では、お楽しみ下さい。



姫騎士と悪・幼女と屍もどきと傲慢姫

 

 

---お前、誰だ?

 

---そっか、お前も実質孤独なんだな。

 

ーーー俺か?俺は………名乗るほどでもねえよ。

 

ーーー別に構わん。どうせ俺は罪人だからな。

 

ーーーその名は捨てたつもりだったんだが……。

 

ーーー名前?お前もしつこいな……まあいい。

 

ーーー俺の名は………終永時。終わりなき永遠の時を、自らの“悪”を背負って生きていく。俺にピッタリな名だろ?

 

 

ーーーそう、俺は“---ーー”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-----ッ!」

 

 

そこでセイバーは目を開けた。

本来サーヴァントに睡眠は必要ないが眠れば魔力消費を抑えることができるので仮眠をとっていたところでこれだ。

 

 

「………今のは、エイジ?」

 

 

先程見た映像と己の記憶と照らし合わせる。映像に映ったのは荒野のような場所、相手は長身長髪の妖艶な美人だが、桃色の髪に碧眼から推測するにアスモデウスだろう。

では、アスモデウスに話しかけていた男は服装は一致しないが体つきや顔つきから見て永時だろうと結論づけた。

 

 

「………では、これは彼の記憶?」

 

 

サーヴァントは夢を見ないが、代わりとしてマスターの記憶を見ることがあり、マスターもサーヴァントの記憶を見ることがあるのだ。

 

 

「………セイバー、ご飯出来たよ?」

「ッ!………アスモですか。了解しました」

「………セイバー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………セイバー?」

「なんでしょうか?」

「………ご飯、食べないの?」

「食べてますよ?」

 

 

とは言うもののいつもの半分(とは言っても普段は2人前〜3人前)しか食事に手をつけていなかった。その様子を見て永時とアスモはヒソヒソと話し始める。

 

 

「エイジ、これでいつもより食べてないの?」

「ああ、いつもならこれの倍は食ってるはずだが……」

「倍………?食費は大丈夫なの?」

「今の所はな……あぁー、あいつらがいれば少しは楽になるんだが………」

「………まあ、いないのは仕方がないよ……」

「2人とも……聞こえてますよ?」

「「ギクッ!」」

 

 

何故聞こえた?と言いたそうな顔でセイバーを見る2人。

 

 

「私はサーヴァントですので………エイジとアスモ、一つよろしいですか?」

「「………な、何かな?」」

 

 

ビクビクする2人を無視してセイバーは続ける。

 

 

「………先程、私はある夢を見ました」

「夢?確かサーヴァントは………あっ」

「そうです。私は2人のーー正確にはエイジの記憶を見ました………」

「何を見たんだよ?」

「エイジとアスモの馴れ初めらしきものです」

「ああ、あの頃か……それがどうしたよ?」

「懐かしいね」

「私はその記憶にいるエイジが言っていたある一言に疑問を抱きました………“その名は捨てたつもりだったんだが”

この言葉、最初は終永時という名を捨てたのだったと考えましたが、自身を罪人と言っておられましたのでこうも捉えれます。“前の名を捨て、新たに終永時という名を名乗った”と………」

「………何が言いたい?」

 

 

低い声で話すと同時に永時からサーヴァントに近い実力の濃い殺気が放たれる。

 

 

「………いえ、少し気になっただけです」

 

 

これ以上聞けばヤバいと直感が警告を鳴らしたので話を終了させた。それに気づいた永時は気まずそうな顔をして口を開いた。

 

 

「すまん………いずれ話す」

「では、その時までお待ちしておきますね?」

「すまねえ……」

 

 

少し気まずい空気の中、3人は食事を再開しながら話し始める。

 

 

「………突然だが、ランサー陣の居場所が分かった」

「本当ですか!?では、今すぐに支度を「そうやってすぐに事を急かすのはお前の悪い癖だぞ」………す、すみません……」

 

 

食事をやめて立ち上がろうとするセイバーを静止させ、分かればいい、と言うと永時は話を続ける。

 

 

「ランサー陣はサーヴァント、ディルムッド・オディナ。マスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト通称ロード・エルメロイ。そしてその婚約者のソフィアリ家の息女、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリの3人だ。今、使い魔を飛ばして情報を集めたのだが……場所が場所だけにかなり面倒だ」

「その場所って………?」

「……ホテルの上層階でフロア丸ごと魔術要塞化」

「うわぁ……そんなの誘ってるじゃない」

「だからこそ、この作戦を結構するにはもってこいだ」

「作戦、ですか?」

「ああ。今後俺たちが有利に、なおかつセイバーのやり方で勝利するためには必要なことだ」

「エイジ、それってどんなの?」

 

 

アスモの問いに対して永時は嫌そうな顔で答えた。

 

 

「セイバーが最も好まないやり方だよ」

「………説明、していただけますよね?」

「無論だ。だが、それにはあることが必要だ……」

 

 

永時はそう言ってアスモを見詰める。

もちろん見詰められるアスモは顔を赤らめて恥ずかしがり、それを見たセイバーはムッと頬を膨らます。

 

 

「ちょっとエイジ……そんなに見つめなくても「アスモ、お前の力が必要だ」………えっ?」

 

 

イタズラを思いついた少年のような顔をする永時にアスモは長年の付き合いからヤバいと直感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その例のホテルの駐車場で1人の男が電話をかけていた。

相手は助手であり仲間の女。

 

 

「舞弥、状況は?」

「全く動きがありません。気づかれてもおかしくはないのですが………」

 

 

そう言って女…舞弥は例のホテルを覗く。

目標は気づきもせず、なにやら口論らしきことをしている。

 

 

「まあいいさ、慢心してくれるならそれは好都合だからね」

「しかし、セイバー陣には終永時がいますが………気づかれるのでは?」

 

 

男に少し余裕があると感じた舞弥は話しかける。

 

 

「あの男か………いや、あの男は気づいていても多分静観するはず」

 

 

舞弥は終永時という男の話は話しかけている男から聞いていたが全く理解不能な人物だった。

 

 

呼び名は終永時。二つ名は『悪の狂信者』。

 

 

彼自身が掲げる『悪の基準』に基づいて仕事をするところから由来する。

しかも魔術師にしては滅多といない科学技術も使う人物。

 

本名、実年齢、生年月日、国籍が不明。姿は黒の軍服、黒のフルフェイスのガスマスク、黒のヘルメットに身を包み、素顔が不明。フリーランスの傭兵もどきで仕事の成功率8割5分の実歴と男であるということしか分かっていない。

 

調べた際に出た実歴を挙げるとーーー

 

 

曰く、ある時は神秘の漏洩を破ってまで人助けをしようとした魔術師を赤字確定の報酬で教会から逃がす手伝いをした。

 

曰く、外道に走った魔術師を内密に捕縛し、実験体にした。

 

曰く、魔術ではない理解不能な技術を持っている。

 

曰く、封印指定の子供を匿った。

 

曰く、自身が封印指定を受けたのにもかかわらず、送り込んだ執行者の過半数を皆殺し、軽くても半殺しで全て教会に送り返した。

 

曰く、教会を脅して封印指定を取り消させた。

 

曰く、不老に達した人間。

 

 

など、もっと詳しく調べれば次から次へと出てくる武勇伝。全て挙げればキリがない。

 

そして男、『魔術師殺し』衛宮切嗣の師であり母のようでもあったナタリア・カミンスキーと旧知の仲であり、切嗣の師でもあり、切り札である『起源弾』の存在を知る人物の一人であり、かつてその『起源弾』で葬ろうとして唯一殺すのに失敗してしまった人物だったからだ。

『起源弾』で完全に魔術が使えなくなったにも関わらず、転移をして逃亡した。

 

謎の集合体、それが終永時と呼ばれる男だ。

 

 

ーーー何者なんだ彼は?

 

 

「ーーー!終永時がいます!」

 

 

舞弥の言葉によってその考えは中断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例のホテル前にセイバーと永時は車に乗って窓を開けたまま待機していた。

 

 

「ーーー来たか」

 

 

そう呟く永時の視線の先にはホテルから出てくる1人のボーイ。そのボーイはその足でこちらに歩み寄り、運転席側に向かうとポケットからある物を出して永時に渡す。

 

 

「ーーー予定通り確保しておいたよ」

「ーーーああ、じゃあ例の場所でまた落ち合おう」

「了解」

 

 

 

短いやりとりを終えるとボーイは再びホテルへと戻っていった。

ボーイが戻っていくのを確認したら助手席にいるセイバーに話しかける。

 

 

「ーーさて、この作戦に異論はないな?」

「ですが………」

「仕方ねえだろ?こうでもしないと今宝具が使えない、まともに戦闘できないお前が役に立たんだろうが……」

「………しかし、それではーーー」

「騎士道に反するってか?………はぁ………お前、勝ち残る気あんのか?」

「そ、それは………」

 

 

食事の時と同じ威圧を受け、セイバーは少したじろぐ。

そんなセイバーを無視して永時は続ける。

 

 

「騎士道に乗っ取って尋常な戦いをしたい?それでもって勝ち残って聖杯を得たい?………ハッ、笑わせるな、どんだけワガママ言えば気が済むんだ?今まともに戦闘できない奴が何言ってんだか………あのな、これは戦争なんだ。どんな手段を用いても勝てば正義となり負ければ悪になる世界だ。全員がお前と同じ志じゃねえし、尋常な勝負を全員が望むとは限らない。だからこそ俺たちマスターは多少卑怯なことで信頼度が下がることになってもお前らサーヴァントの土俵になるようにしてやるのが義務だと思っている。確かにパートナーの信頼を失うのは最も恐れることだが今のままでは確実に俺らは全勢力に狙われるのは目に見えてるし、ランサーと尋常な勝負を望むならなおさらだ。………今回はお前のためでもあるんだ、我慢してくれ」

「………エイジ」

「………なんだ?」

「すみませんでした」

「あっ?」

 

 

突然のセイバーの謝罪に永時は呆然とする。

 

 

「確かにエイジは大抵私の意見を尊重してくれた。ですが、その状態に慣れてしまい、あなたに甘えていたのかもしれません………」

「あ、ああ……」

 

 

単に我慢してもらうよう言ったつもりが、なんでそう解釈したのか永時には理解できなかったが、都合良く事が進んでるので気にするのをやめた。

 

 

「ですので今回は弱ってしまった私のためだと仰っていたので従わせていただきます。いいですか?別に私のためと言われて嬉しいからではありませんので悪しからず」

「………フッ、そうかい」

「今鼻で笑いましたね?」

「あっ?気のせいだろ?」

「いえ、絶対に笑いました。馬鹿にしてますね?」

「さあ?」

「さあ?ではありません!今笑った心意を正直に述べてください!」

「おっとそろそろ時間だぞ?早く定位置に着け」

「話を逸らさないでください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、作戦開始だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然耳にした火災警報器の音が原因だった。

 

最初に気づいたのはランサー。

 

 

「ッ!主!サーヴァントがこちらに向かってきています!」

「何?………折角の客だランサー、下で出迎えろ」

「いえ……それがーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“この建物の壁を走ってきています!”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だと!?」

 

 

この時になって漸く予想外の事態だと知って驚き次の行動に移す暇もなく、それは現れた。

 

ガラスを割るような音が響き、中に入ってきたのはーーー

 

 

「セイバー!」

「しばらく私の相手をして貰うぞ、ランサー!」

 

 

突如現れた姫騎士に一瞬怯むが己の主を守るため、姫騎士……セイバーへと2槍を向けて立ち向かう。

 

 

「ランサー!そのままセイバーを抑えていろ!」

「了解しました!」

 

 

頼られたのが嬉しいのか、ランサーの顔に一瞬笑顔ができ、槍を握る手が自然と強くなる。

だがーーー

 

 

「すまない、ランサー」

「何?」

 

 

セイバーの謝罪と共にカランコロンと響いた金属音。その数三つ。

 

 

「な、何がーーー」

 

 

そこでケイネスはあるものが目に入る。

科学に疎い自分でも見覚えのあるもの。

 

ーーーあれは、空き缶?

 

それが、突如煙を吹き始める。

 

 

「主!?」

 

 

いち早く反応したランサーは主の元へと向かいたいがセイバーによってその行く手を阻まれる。

そしてランサーは為す術もなく、部屋に煙が充満していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、始めようか」

 

 

永時がそう呟き、手に持つスイッチを押す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音が響き、同時に天井が爆発で穴が空いたと気づいた時には、ケイネスは動けなかった。

煙の中から現れた何かによって壁に叩きつけられたから。そして何よりーーー

 

 

「ーーーソラウ!」

 

 

煙が晴れたと同時に影のような黒い人型に縛られた婚約者が目に入ったからだ。

 

 

ーーーまさか影使いか!?

 

 

相手の手の内を即座に理解し、部屋の明かりを壊そうとしーーー

 

 

「動くな」

 

 

ーーーその動きを止められた

 

その声の主はーーー影のような黒尽くめの格好の男である。

だが、男がいたのはケイネスの後ろだ。いち早く反応できたランサーだが、セイバーがその行く手を阻む。

 

 

「ソラウ様!」

「おっと、俺を殺るのは構わんが……」

 

 

そう言ってソラウを縛っているーーーソラウ自身の影を操って縛りを強くする。あまりの痛みにソラウは悲鳴を上げる。

 

 

「そのままこの女を絞め殺すまで……さて、どうする?今すぐセイバーとの戦闘をやめて大人しくするなら話は別だが……」

「ランサー……戦闘をやめろ」

 

 

止めるよう言ったのはランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。しかしランサーは納得いかず反論する。

 

 

「しかし!」

「ランサー!」

「……了解しました」

 

 

ランサーが2槍をしまうのを確認してからセイバーも警戒を解かないままの状態で戦闘をやめ、永時は続ける。

それを見たケイネスは好機と見て自身の魔術を発動させようと口を開き、

 

 

「では、お前も縛らせてもらおうか」

 

 

どこかから伸びた人型の影によって身体を締めつけられ、口を塞がれた。

ランサーの視線が怖い怖い。

 

 

 

「危ない危ない。さすがはロード・エルメロイと言ったところか……だが、甘えよ。砂糖より甘いぜ」

「ーーー!!」

「いや、何言ってるか分からん。……とりあえずこれを見ろ」

 

 

また伸びた別の影が1枚の紙をロード・エルメロイに見せるように出てくる。

 

 

それは『自己強制証文〈セルフギアススクロール〉』。

魔術の世界において絶対厳守の呪いに近い契約書のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、久しぶりの俺視点での語りだな……。まあもう2度とないと思うがな。

さて、今から俺がどこにいて、何をして、何がしたいか説明しようと思う。

 

まず、相手ケイネス・エルメロイ・アーチボルト……もう面倒なので、ロード・エルメロイは自分がいるフロア全体を魔術要塞にしているのを確認した俺たちはアスモをあらかじめホテルから適当に拉致ったボーイに変身させてホテルに侵入させ、ある物を貰った。そのある物とは後に語る。

 

次に俺は戦闘服をトランクスに詰め、客を装って偽名でホテルに侵入する。

その足でアスモから受け取ったある物ーーカードキーを使ってロード・エルメロイの真上の部屋に入る。最初罠があるか心配していたが、フロア丸々罠を張っていることに集中していたからか真上と真下の部屋には罠が一つも存在しなかった。

そのまま入って戦闘服に着替え、床に軽く穴を開ける程度のC4をセットしてあとは火災警報器を作動させて準備完了。

俺はロード・エルメロイの真上、アスモは真下、セイバーは外で待機させ、客が逃げ出したのを狙って行動を開始する。

 

セイバーに無茶をしてもらって壁を駆け抜けて部屋に突っ込んでランサーの相手をして足止めしてもらった。流石にそう来るとは考えてなかったと踏んだからだ。

 

そしてランサー陣がセイバーに集中している間に真下にいたアスモに外に出て空を飛んでもらいスモークを放り込んでもらう。………アスモが飛べるのって?そりゃ、悪魔だし羽はあるよ?

 

そしてスモークが充満したのを見計らってC4を起動、穴を開けて急いで下に降り、ロード・エルメロイを壁に叩きつけ影を使ってソラウを捕縛。本人の自衛能力が低いと事前に調べたから楽に捕縛出来ると思っていたからだ。

そして煙が晴れる前にロード・エルメロイの後ろに移動し、影をいつでも動かせるようにする。

 

あとはご存知の通りランサーを脅して止めさせ、ロード・エルメロイを口を塞いで縛って魔術を使えないようにしておいた。

 

そして『自己強制証文』を突きつけて契約してもらう。無論拒否権などない。内容は実にシンプル。

 

 

1、終永時とセイバーは今後一切ケイネス・エルメロイ・アーチボルトとその婚約者ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを殺さないことを誓う。

 

2、ランサーの宝具である短槍を令呪を用いて完全に破壊し、2度と使わないこと。

 

3、今後セイバー陣と戦う際は必ず騎士道に基づいてとり行い、決着を着けること。なお、両マスターは邪魔するような行動を取らないこと。これはランサーとセイバーの勝敗が着くまで有効とする。

 

4、なお、2と3が完了するまでケイネス・エルメロイ・アーチボルトは終永時に攻撃を加えてはならない。

 

 

使わないと書いたのはもしかしたら短槍の再生能力とかあった時用の保険だ。壊した短槍が復活しました〜だから使いまーす、とかシャレにならん。

そして3。これはセイバーとランサーのために付け足したものーーーと言うのは嘘でこれはセイバーの信頼を勝ち取る口実である。作戦を聞いていたセイバーからの信頼度は下がっていたが、これを聞いて信頼度は戻るどころか増えただろうと確信している。だってこれ聞いて自分のためにしてくれたって気づいた瞬間ーーーデレたからだ。

いやマジで。騎士王が乙女に変わった瞬間だな。無論、面白そうだからアスモに隠し撮りさせたが。

 

さて、話は現在に戻る。

 

 

「どうだロード・エルメロイ、悪くない内容だろ?」

「ーーー!!」

 

 

なんか言ってるがマジで分からん。てか俺の名前見て驚いてんのか?

 

 

「別に契約しなくてもいいが、その場合………婚約者消えるが構わんよな?」

「ーーー!?」

 

 

おお、流石の天才も女が絡むと弱るか……。

 

 

「契約するか?」

 

 

俺の言葉に必死に首を縦に振って返事をする。

 

 

「よろしい、ならサインを書きたまえ」

 

 

左腕だけ影の縛りを弱くしてペンを持たせる。

………一応保険かけとくか。

 

 

「一応念のために言っておくが、魔術を発動しようとすれば自動で婚約者とお前を絞め殺す設定になっているので悪しからず」

 

 

言った途端ビクッとロード・エルメロイの腕が動いた気がしたが気のせいかな?

 

とにかくサインさせたのを確認し、『自己強制証文』がちゃんと機能しているのを確認して拘束を解いた。ソラウは気絶しており、俺は咳き込むロード・エルメロイに話しかける。

 

 

「遅くなって悪いが久しぶりだなロード・エルメロイ?」

「クッ……魔術の面汚しが!」

「おいおいひどいな、俺は使えるものは何でも使う人間なんでね。まっ、油断してたからこうなったんだよ。ほら、先にやる事があるだろ?まあ、悔しくてもランサーが決着つけないと攻撃できないけどな」

「チッ………令呪をもって命ず。ランサーよ、宝具『必殺の黄薔薇〈ゲイ・ボウ〉』を完全に破壊せよ」

「………了解しました」

 

 

そう言ってランサーは短槍を両手で持って膝でへし折る。

 

 

「マスター、傷が治りました!」

「OK、では撤収だ」

 

 

そして去り際にこちらを睨むランサーを横切って、

 

 

「良かったな。これで尋常な勝負が出来るぜ?」

「ーーーッ!……感謝しておく」

「クカカ、ではな」

 

 

そしてその場から去ろうとしてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケイネス・アーチボルト様!ケイネス・アーチボルト様はいらっしゃいますか!」

 

 

偽装された火災により避難したホテルの客を探すボーイ。

どうやらケイネスを探して彷徨っているようだ。

そんなボーイに声をかける人物が1人。

 

 

「ーーーケイネス・アーチボルトは私です」

 

 

突如そう名乗った黒髪の日本人男性にボーイは疑問を浮かべる。いかにも外国人のような名前と容姿があっていないからだ。

しかし、男は言葉を続ける。

 

 

「妻のソラウと共に避難しました」

 

 

ボーイは顧客リストをめくる。そこにソラウという女性がケイネス・アーチボルトの妻であると書いてあったのを確認したボーイの疑問は消え、他の客の確認をするのに忙しいためそのまま去って行った。

それを確認した男…衛宮切嗣は電話を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー突然の揺れと轟音に襲われた。

 

 

「ーーー今のは爆発か!」

「貴様、何をした!?」

 

 

永時を責め寄るランサー。

 

 

「知らねえよ。第一こんなことしてお前のマスターが死んだら契約の意味がねえだろうが」

「……確かに………失礼した」

「分かればいい。………ロード・エルメロイ。これは多分だがこの建物の柱を爆発させたものだと思う」

「……つまり、早く避難しろと?」

「そういうことだ、早くしないとこの建物が崩れて婚約者もろとも潰れちまうぞ?」

「言われなくとも分かっている。いくぞ、ランサー」

「はっ」

 

 

筋力の関係でランサーがソラウをお姫様だっこし、それをロード・エルメロイは睨みながら部屋から出て行った。

ランサー陣が出て行ったのを見て、電話をかける。

 

 

「ーーーアスモ、車の準備は?………了解ーーーセイバー、降りるから俺をおぶれ」

「………はっ?」

「だから、窓から飛び降りるから俺をおぶれ」

「りょ、了解しました……」

 

 

戸惑いながらもセイバーは永時の意見に従い、おぶる。

 

 

「ほう、これがセイバーの感触か……悪くない」

「ッ!い、逝きますよ!!」

 

 

セイバーは頬を赤く染めて窓から飛び降りた。

そして、着地点であるさっき乗ってきた車の上に着地する。………ちょっと凹んだがまあ大丈夫だろう。

 

 

「アスモ、車出せ」

「了解♪」

 

 

セイバーに降ろしてもらい、今だボーイの格好のアスモはハンドルを握ってアクセルを強く踏んで車が走り出す。

走り出した車で運転しているアスモは運転席にあるスイッチを押しまるでタクシーのようにひとりでに扉が開き、永時は助手席に、セイバーは後部座席に入り込んで座りそのまま扉を閉めた。

 

 

「今の爆破ーーーまさかあいつか?」

「エイジ、どうかいたしましたか?」

「いや、別に………ところでセイバー、どうして顔が赤いんだ?まさかさっきの言葉に動揺したのか?」

「別に、動揺など……」

「嘘だ」

「嘘だね」

「なっ……ち、違います!」

 

 

そして、車は闇夜へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーじゃあ、あんたが桜ちゃんと契約したあの有名なルシファーなのか?」

 

 

バーサーカーのマスターであり、私のおじさんの雁夜おじさんは疑問を目の前の女の人に向かって声に出す。

 

 

「そうじゃと何回も言うておろうが……じゃから、妾はこの小娘と契約し、その害となる蟲爺を消した。ただそれだけじゃろうが………」

「いや……とても現実味がなくてな………」

 

 

そう言われても仕方がありません。私も最初、疑っていましたから。

………それにしても、ルシファー姉様(本人がそう呼べと言っていたので)は私の名前を聞いたのに今だに私のことを小娘と呼んできます。………確かにまだ私は子供ですが……

 

あの後ーーールシファー姉様がお爺さまを消して少し散歩に出かけて帰ってきたところで丁度帰ってきたおじさん。

最初バーサーカーと名乗る鎧の人をを呼び出しましたが、私が止めたことでなんとかなりました。

そして、2人が落ち着いた後、話をすることになりました。

 

 

ーーーおじさんが私のために聖杯戦争という戦いに参加していること。

 

ーーールシファー姉様と私が悪魔の契約をしたこと。

 

ーーーそして、ルシファー姉様がお爺さまを消してくれたこと。

 

 

「じゃあ、俺が今までしてきたのは………」

「全部無意味、ということじゃのう」

「そっか………」

 

 

ルシファー姉様は少しは気の利いた言い方ができないのでしょうか?………ですが、おじさんが落ち込むのも無理はありません。だって私の性であと一ヶ月しか生きられない体になったとルシファー姉様から聞きました。そう、私の性でーーー

 

 

「……良かった」

「「はっ?」」

 

 

おじさん、今なんて………?

 

 

「…………して………」

「ん?どうしたんだい桜ちゃん?」

「………どうして、そんなこと、言えるんですか……?」

 

 

全部、私の性でおじさんは………!

 

 

「確かに死ぬのは怖い。けど俺は凛ちゃんや桜ちゃんさえ守れればそれでいいんだ……」

「おじさん………そ、そうだ!ルシファー姉様!」

「なんじゃ?」

「今すぐおじさんを「それはダメだ」おじさん…!?」

「悪魔の契約なんてダメだ!もし願いを3回言ったら、桜ちゃんは死んでしまう……だからダメだ」

「では、妾が無理矢理叶えさせればどうする?」

「その時は……バーサーカーであんたを殺す……」

「………ほう、このルシファーを殺ると?」

「「ッ!」」

 

 

重しを乗せられたような感じ……これが、ルシファー姉様!!

 

 

「確かに俺ではあんたに勝てないだろうな。けど!それでも!桜ちゃんや凛ちゃんに害を及ぼすなら……死んででもあんたを止めてやる!」

「…………ククッ…………ハハ…………フハハハハハハハハ!!」

「「ッ!」」

 

 

今、笑った?

 

 

「いやはや、愉快愉快。これじゃから人間観察はやめられん。褒美に一つ、良いことを教えてやろう……その小娘………魔術の属性が架空元素“虚数”であるぞ?」

「架空元素?虚数?なんだそれ?」

「そうかお主らは知らんのか……では、封印指定は知っておるか?」

「一応大まかには………まさか!」

「その通り、この世界の魔術の知識によると基本的な魔術属性は地・水・火・風・空の5つの五代元素と呼ばれるものでできておる。風は中々希少なものじゃが、架空元素・虚数は風の上をいく希少中の希少。風が“れあ”なら架空元素・虚数は“すーぱーれあ”じゃな……今までは間桐の名が隠れ蓑になっておったが、あの蟲爺が死んだと知られれば………今まで通り、もしくはそれ以上酷い生活をさせることになりおるなぁ………例えば、実験動物などかのう?」

「そんな………!」

「今は妾の力でただの高い魔力量を持つ娘になっておるが………いつまで隠し通せるか……」

「じゃあどうすればいいんだよ!」

「なに、あれがあるじゃろうが」

「あれ………?」

 

 

そしてルシファー姉様はニヤニヤしながら続けた。

 

 

「ーーーお主が参加しておる戦争の目玉である万能の釜………願望機ともいえる“聖杯”が」

 

 

「その手があったか!」

「じゃろう?さすれば妾に頼らずとも願いが叶うじゃろう?」

「けど………いいのか?」

「何が?」

「悪魔ってのは契約して願いを叶えた者の魂を食べて生きてるって………」

「それは昔の話じゃ。今では単なる魔力回復の手段の一つとなっておるから、別に契約せんでもあと万は生きれる。それに妾がこの小娘と契約してやったのは………単なる人間観察、まあ暇つぶし程度じゃ」

「そっか………ならいいが」

「して。お主、その者……バーサーカーだけで勝ち残れる自信はあるのかのう?先程の戦闘を見させて貰うたが………お主、見事に死にかけとったし………」

「なっ………!」

「そうなんですかおじさん!?」

 

 

そんな……私の性でおじさんが傷つくなんて………。

どうすれば………あっ、そうだ。

 

 

「ルシファー姉様の強さはどのくらいですか?」

「ん?ふむ………状態次第じゃが基本的には人間には負けんが………ほう、決まったのか?」

「はい………ごめんなさい雁夜おじさん」

「ッ!?桜ちゃんダメだ!」

 

 

 

 

「1つ目の願いは、聖杯戦争に参加して雁夜おじさんを勝利に導いて」

 

 

 

 

 

 

そう言った途端、私の手にある刺青の1画が剥がれ、ルシファー姉様の中に吸い込まれていきました。

 

 

「ククッ………了解した」

「桜ちゃん…………」

「ごめんなさい雁夜おじさん。でも、一回だけなら大丈夫だから心配いらないよ?」

「でも………「そう通り。あとは小娘が誘惑に勝つ気持ち次第じゃ………して、屍もどきよ」………屍もどきって………」

「この小娘の願いで妾は参加してやったのじゃ………生き残らんと小娘が泣くぞ?」

「そんなこと、言われなくても分かってるさ………桜ちゃん、待っててね?」

「うん、頑張ってね」

 

 

今はまだ上手く笑顔ができないかもしれない。けど、いつかはちゃんとした笑顔でおじさんを迎えられるようにしようと思いました。

 

 

 

 

 

「そうじゃ、一応形だけじゃが小娘が妾のマスターになっておるからな?」

「「え………?」」

 

 

 

 

 

見ると私の左手の甲に右手にある黒いのとは別の赤い刺青ーーー令呪というものがついていました。

 

これから先大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでその令呪、どこから取ってきたんだ?」

「お主が帰ってくる前に教会に行ってのう。その際に3画ほど拝借してな………」

「悪魔が教会って………」

「フッ、妾は魔王。あの程度の聖なる力には耐性があるから心配はいらん」

「いや、そういうことじゃなくて………」

「ん?どういうことzyーーーおっと忘れておった」

 

 

そう呟いた瞬間、お爺様を消したあの光線を窓の外に三発打ち出す。

するとシュボッ!とマッチが燃えるような音が聞こえ、何かが地面に落ちました。

 

 

「今のは何ですか?」

「単なる使い魔のようじゃ」

「まさか忘れてたって………」

「その点は心配はいらん。事前に幻覚で見えなくして結界を張っておいてたから誰もここへは入れんし見ることも叶わんよ」

「それは……凄いなぁ」

「じゃろう?もっと褒めても良いのじゃぞ?」

「………そんなことより、お腹が空いた……」

「そんなこと!?」

「もうこんな時間か……早くご飯作らないと………」

「………いいもん。今度あの男に褒めてもらうもん……」

「でも、雁夜おじさん料理できないんじゃ……」

「ま、まあなんとかなるy「な、なら、妾が作ってやろう!」………料理できるのか?」

「当たり前じゃろうが!妾は傲慢を冠する者!万能でなくては傲慢を名乗れんわ!」

「そう?じゃあよろしく」

「任せておれ………今こそ我が花嫁修業の成果を見せる時!!」

「ははは………まあ頑張って」

 

 

やる気満々で台所へ向かうルシファー姉様……大丈夫だろうか?

ああいう人に限って失敗しそうな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、ルシファー姉様の料理はものすごく美味しかった。

 

威張っただけはある………今度ルシファー姉様に教えて貰おうかな?

 

 

 






いかがでしたか?

前回の後書きの通りルシファー様はキャスター(仮)として参加します。

ちょっと無理矢理感があったかもしれませんがそこは作者の実力不足なのでお許し下さい。

※アスモ・ルシファーのスキル、補足部分を変更しました。


では、また次回で。


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