Fate/Evil   作:遠藤凍

10 / 63


どうも、遠藤凍です。

やっぱり戦闘の描写は難しいです。

では、お楽しみ下さい。




狂乱の戦士

 

 

「難癖つけられたところでなぁ……イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが……ほれ、この戦車が余がイスカンダルである証拠であるぞ?」

「たわけ。真の王たる英雄は、天上天下に我ただ一人のみ。あとは有象無象の雑種にすぎん」

 

 

ああいうのに限って、案外最後にラスボスとして出るんだよな………と心の中で呟く永時。

 

 

「ほう?そこまで言うんなら、まずは名乗りを上げたらどうだ?貴様も王たる者ならば………さぞかし有名な名であろうなぁ?」

「貴様如き雑種が、王たる我に向けて問いを投げるか?身の程を弁えよ!!」

 

 

ガンッ!と足場を強く踏みつけ、その衝撃で街灯が割れる。

 

 

「我が拝謁の栄に俗してなお、この面貌を見知らぬと申すなら……そんな輩は生かしておく価値すらない!!」

 

 

突如アーチャーの背後がゆらりと歪み、アーチャーと同様の輝きを放ちながら、鋭い刃の切っ先と槍の穂先が顔を出す。

どちらも武器とは言えないほどの煌びやかな装飾を施しており、それらから感じる魔力は、宝具そのものである。

ライダーの傍にいるウェイバーはその魔力量に恐怖を抱き、ライダーはウェイバーの前に立ち、独特な形の双剣を構え、怯えるウェイバーを赤いマントで包み込み、姿が見えぬランサーのマスターもその剣と槍の魔力量に息を呑み、ランサーはマスターのいる方角を背に、双槍を構え、セイバーももういない永時の方角を背に、不可視の剣を構え、永時はどこかで面白そうな顔でニヤリと笑っていた。

 

 

「ーーーフン」

 

 

アーチャーが剣と槍を放とうとしたその時、轟ッ!!と5人から少し離れたところに、それは姿を見せた。

 

隙間なく全身を覆った漆黒の西洋鎧…プレートアーマーの騎士は、体つきから男と断定できるが、目以外は見えておらず、唯一見える目は、轟々と燃える業火のように不気味に揺れる双眼が正面を捉えていた。

 

バーサーカーの参戦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおーやってるな………」

 

 

永時は先程の狙撃ポイントより前へ進み、現在かなり近くでサーヴァントの戦いを眺めていた。

突如現れたバーサーカーが、アーチャーの宝具?を上手くやりこなしている。

 

飛んでくる剣を掴み、槍を弾き、剣を投げて双剣と相殺させ、大剣を掴んで一振りし、飛んでくる大量の矢を撃ち落とす。

 

理性をなくしているバーサーカー、されど蓄積された武術は変わらず。

 

 

「素晴らしい……」

 

 

狂気に包まれて尚、アーチャーに怯まず圧倒しそうな戦いを見せるバーサーカーに興味を持った。

 

あいつの闇をーーーバーサーカーの適性である狂った伝承とやらを聞いて、知りたい。

 

故に、ここで潰されるのは惜しい。そう考えた永時はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!と爆音とともに、アーチャーが爆発に包まれ、土煙が上がる。

 

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 

驚く一同を前にある人物が姿を現す。

 

 

「よお、楽しそうじゃねぇかーーー俺も混ぜろ」

 

 

LAWを肩に担いだ永時だった。

最初に気づいたのはセイバー。

 

 

「エイ………マスター!?」

「ほう、あれがうぬのマスターか?どれーーー」

 

 

勧誘しようとするライダーをセイバーが遮る。

 

 

「勧誘なんて考えはやめておけライダー。私のマスターは誰かの下に着くのを嫌う人だからな。誘っても怒りを買うだけだ」

「ーーーふむ、そうか……残念だのぅ」

 

 

誘う気だったのか、残念そうに呟くライダー、ウェイバーは突然現れた永時に唖然とし、ランサーは突然現れた永時に警戒しているのか2槍を永時に向けており、セイバーは驚愕と呆れの混ざった顔で永時を見ていた。

 

 

「………チッ、さすがは英雄…生きてるか…」

 

 

永時がそう呟くと轟ッ!と暴風が土煙を払う。

そこには人1人守れそうな大盾を持ったアーチャー。しかも額に青筋を立てている。

 

 

「痴れ者が………王たる我に手を挙げるとは………!!その不敬、もはや万死すら生温い!じっくりと痛ぶり、ありとあらゆる苦痛と恐怖を味わわせ………この我自ら滅してくれる!!」

 

 

その叫びに大気は震え、さっきより倍以上の宝具が顔をだす。

永時はLAWを放り投げ、構えて戦闘に備えーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーッ!」

 

 

宝具が射出されることがなかった。

 

 

「貴様如きの雑種がこの我に命令するか、時臣ィ!!」

「時臣、だと……?まさか………」

 

 

血がにじむほど拳を握るアーチャーの先程の言葉に思考の海に入る永時。

そして、アーチャーは周りのサーヴァント+マスターを見て言う。

 

 

「まあいい。いつか我と戦うその日まで、せいぜい間引きしておけ。真の英雄たる我と戦うのは、生き残った雑種だけだ………ただし………」

 

 

アーチャーの指は永時を指し、

 

 

「………貴様は例外だ。……貴様だけは我自ら滅してやろう……せいぜい震えて待っておくがいい」

「ご指名、ありがとうございますってか?とっとと帰れ金ピカ」

「ッ!!貴様ーーー!」

 

 

そこでアーチャーは霊体化し、その場から消え去った。

 

 

「あーあ、やる気が削がれた………セイバー、帰るぞ」

「………そうですね」

 

 

2人は他のサーヴァントを見回した後、そのまま帰ったーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー訳もなく。

 

 

「■■■■■■ーーーーーー!!」

 

 

鉄柱を持ったバーサーカーがセイバー目掛けて突っ込んできた。

 

 

「何ッ!?………………グッ!」

 

 

直感スキルのおかげでなんとか受け止めたセイバー。

しかし、その呻き声は余裕そうではなかった。

 

 

「■■■■■■ーーーーーー!!」

「なるほどのう………掴んだ物を宝具にするのが、奴の宝具か………」

「どういうことだライダー?」

「つまりだセイバーのマスターよ。詳しくは分からんがあの鉄柱、黒い脈みたいな物が付いておるし、先程アーチャーの武器を奪って振り回しておったろう?そもそも、そうでもしなくてはただの鉄柱が英雄の武器と渡り合えるはずがなかろう?」

「なるほど……」

 

 

先程のランサーの宝具のせいで左手が全く使えないせいで力負けし、セイバーに若干の隙ができる。

 

 

「しまっ…………!」

「ッ!セイバー!」

 

 

焦るセイバーだが、相手は待ってくれず鉄柱を全力で振り下ろす。

永時が駆け寄ろうにも反応が遅れ、距離が遠く間に合わずーーーー

 

 

「ーーーそこまでにしてもらおうか」

 

 

甲高い金属音が倉庫街に響く。

そこには右手に赤い長槍をバーサーカーに向けるランサーの姿があった。

 

 

「ラ、ランサー?」

 

 

ランサーはセイバーに向けて笑みを向けると同時に、1本の柱が宙を舞ってバーサーカーの後方へ落ちる。

間違いなく先程バーサーカーが振り回していた鉄柱だった。

ランサーの宝具…長槍は魔力的効果を打ち消す力を持っているのはセイバーがよく知っている。

宝具化したといえど、所詮は魔力で宝具化したただの鉄柱。

まさしく、天敵ともいえる宝具だった。

 

 

「………助かった、ランサー」

「………勘違いするな、セイバーのマスター。俺はただ、セイバーとの決着がまだついてないから助太刀しただけだ………」

「そ、そうかい……」

 

 

はたから見れば、ツンデレのように思えて苦笑いを浮かべる永時。

 

 

(男のツンデレって誰得だ?)

 

 

恐らくはランサーのマスターの身内()だけかと思うがそれを永時は知るよしはなかった。

 

 

「とにかく助かった、とりあえず一時休戦でバーサーカーを止めないか?」

「元からそのつもりだ」

「了解しました」

 

 

三人は己の獲物を構えて、バーサーカーを囲む。

だが、ここであの男が言葉を発した。

 

 

『何をしているランサー、そこのセイバーは難敵だ。速やかに始末しろ』

「ッ!セイバーは!必ずやこのディルムッド・オディナが、誇りにかけて討ち果たします!故にどうか、我が主よ……!」

『…………』

 

 

ランサーのマスターは大きく息を吸い込み、ランサーに冷たく言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『令呪をもって命ずる。バーサーカーを援護し、セイバーまたはそのマスターを…………殺せ』

「なっ………!あの高飛車ッ!!」

「ッ!?」

 

 

突如、金縛りにあったかのようにランサーの動きが硬直する。

静まった空気に包まれ、ランサーの首が錆びたブリキ人形のように少しずつ動き、永時と目が合った瞬間。

 

 

「チッ!我が盟約に従い、悪の名の元に、我に力を貸したまえ-----」

 

 

ランサーが槍を振るい、二槍が永時を襲う。

そして、甲高い金属音が二回響く。

2回鳴ったのは、直前で上手く捌いたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー『八方美人』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー煌びやかで、とても戦闘に向かないような錦の太刀を逆手に持つ永時とーーー

 

 

「………マスター、お怪我は?」

 

 

ーーーその太刀に勝る、美しい騎士…セイバーの2人が、だ。

 

 

「ーーーほう?こりゃまた……」

 

 

その美しい太刀に興味が惹かれるライダー。

 

 

「……俺は大丈夫だ、セイバー。俺の強さはお前がよく知っているだろ?」

「そうでしたね……すっかり忘れていました」

 

 

そう言っている間にも、鉄柱を武器にしていたバーサーカーと赤と黄の2槍を構えたランサーがジリジリと迫っている。

互いの距離が狭まっていくその時、突如夜空に雷鳴が響いた。

 

 

「AAAAlalalalalaie!!」

 

 

雷鳴に負けないぐらい雄叫びを上げながら、雷電を纏った戦車で疾走するライダー。ランサーはすぐに気づき、咄嗟の回避行動を取り、軌道上から逃れる。

しかしバーサーカーはセイバーに集中していたため、反応が遅れ、そのまま餌食となった。

戦車を急停止させ、バーサーカーがどうなったか確認する。

 

 

「■■■■■■ーーーーー!!」

 

 

当のバーサーカーは痛みに堪えるような声を上げ、此方に向かって突撃しようとしていた。

 

 

「ほう………中々どうして根性のある奴よ」

 

 

ライダーは特に慌てず構え、

 

 

「とりあえず黙ってろ」

 

 

ライダーの肩を蹴り、バーサーカーの上から永時が強襲し、バーサーカーを巨大な“ハンマー”で無理矢理地面に叩きつけた。

 

 

「■……■■………■……」

 

 

さすがに堪えたのか、セイバーの方へ手を伸ばすも、黒い霧となって消えていった。

永時は安堵し、ランサーのマスターがいるであろう方角を向き、それに気づいたライダーが永時と同じ方角を向いて言う。

 

 

「まあ、バーサーカーにはご退場願ったが……ランサーのマスターよ。下種な手口で騎士の誇りを穢すでない」

 

 

穏やかな口調だが、言葉1つ1つに怒りが込められており、反論を許さない威圧感があった。

 

 

「ランサーを退かせよ。これ以上そいつに恥をかかせるようなら、余はセイバーに味方する。セイバーのマスターよ、貴様もそうであろう?」

「………ああ、別に構わん。今ここで敵が1人でも消えるならなおのこと」

 

 

さっき投げたのと別のLAWをランサーのマスターのいる方角へ構えることで賛成の意を表す。

ライダーはそれを確認すると大きくうなづき、ランサーのマスターに問う。

 

 

「ーーーというわけでだ。これ以上やるというならば、我ら3人で貴様のサーヴァントを潰しにかかるが………どうする?」

 

 

マスターを直接狙うとは言わないのは、騎士であるランサーへの配慮なのであろう。

仕方なくランサーのマスターは言葉を紡いだ。

 

 

『………撤退だ、ランサー』

 

 

今宵はここまでだ、と言い残してランサーのマスターは去って行った。

主の撤退を確認したランサーはホッと一息しライダーを見上げる。

 

 

「………感謝する、征服王」

「なぁに、戦場の華は愛でるたちでな」

 

 

ニカッと嬉しそうに笑う征服王につられ、ランサーも笑う。

そしてセイバーと永時が歩み寄り口を開く。

 

 

「感謝する、征服王」

「今回は助かった、感謝するよ征服王」

「別に気にせんで良いわ」

 

 

ランサーは永時のところに歩み寄り、

 

 

「セイバーのマスターよ。………先程は失礼した……」

「気にすんな。令呪を使われちゃあ仕方ねえよ……」

「………感謝する」

 

 

短い会話を済ませた永時はセイバーの方を向き、

 

 

「………さて、セイバー。今度こそ本当に帰るぞ?」

「はい。………では、ライダー、ランサー。次は尋常な戦いを…」

「もちろん」

「無論だ」

 

 

その言葉に納得したか、背を向けてマスターと一緒に帰って行った。

 

 

「………では、参りましょう」

「ああ………B地点にある車で帰るぞ」

「………ええ、帰ったらその刀について説明して貰いますよ?」

「ことわr……分かったから睨むな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中、そこに似合わない綺麗な水晶玉が置いてあり、そこには先程の倉庫街が映っていた。

それを見るのは奇妙なローブに身を包んだ大きなギョロ目の男。

 

 

「嗚呼………乙女よ。我が“聖処女”よ………!すぐにでもお迎えに馳せ参じますぞォ…………」

 

 

彼はそう言って、視線を彼女に向ける。

永時と話して微笑みを浮かべる彼女ーーーーセイバーに。

 

 

 

 

 






いかがでしたか?

ギョロ目と『八方美人』は次回辺りに投稿する予定です。

では、また次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。