魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
パラサイトには指揮命令関係は存在しない。
じゃあどうやって、組織的な行動を維持していたのかというと、そもそもパラサイトは厳密に言うと一人一人が完全に独立した個体ではないらしいのだ。個別の思考能力を持ちながら、意識を共有していた。
ただ、生命体を宿主とした場合、その最も根源的な欲求に影響を受けることは避けられず、生き延び、仲間を増やすという共通する意識の中で統合され、行動を決定づけていた。生命体として最も優先させる欲求に従い、生存と自己複製を目的として行動していたのだ。
重要なのはピクシーにパラサイトが宿った、現・斉藤ピクシーは非生命体に宿ったがためにその共通の目的から外れた異端な存在であるということだ。
そして兄さんはその上でこう考えた。
『パラサイトはピクシーを放っておかない』
兄さんの推測では、意識を共有した
というわけで、午後七時。
既に生徒は全員下校し、教職員もごく一部が残っているだけのこの時間、ぼくは兄さん、姉さんと共に学校に来ていた。ピクシーを餌にパラサイトを1体でも倒そう、という作戦のようなのだけど、正直ぼくは早く帰りたい。
「エーちゃんとミッキーにサポートを依頼したなら、ぼくいらないじゃん、
「……お前にはピクシーを任せる」
「嫌だよ!兄さんがなんとかしてよ!」
どうやらぼくはピクシーのお守りとして連れてこられたらしい。まあ、兄さんは
どうにか帰ろうとしていると、ほののんが到着、けどまさかの制服だった。制服だとちょっと不都合だし、アクシデントも予想されるのでピクシーを拾ったらほののんの家に寄ることになった。ほののんが嬉しそうだ。
そうして、ピクシーを拾うためにやってきたロボ研のガレージ。当然、鍵が掛かっているので中からピクシーに開けてもらう。カチャリ、と鍵の開けられた扉を兄さんが開け─
「おかえりなさい、アナタ。お風呂にする?ご飯にする?それとも……ワ・タ・シ?」
─すぐ閉めた。
「雪花、出番だ」
「実家に帰らせていただきます」
そんな風に断ってみるも首根っこを捕まれ
当然、放り込まれた先には
「全く達也様は照れ屋さんですね、まあそういうところも可愛いわけですが」
「違うよ!全力の拒否だよ!」
「ああ、ツンデレですね、分かります」
「ツン百パーセントだけどね!」
「最高のご褒美ですね、むふ」
「兄さーん!助けて!帰らせて!」
ガレージから出ようとするが、まさかの開かない。
外側から扉を押さえられているようで、ドンドン叩いてみてもビクともしないのだ。鬼か!
「なんですかー雪花たんまでツンデレですかーこのーモフモフしちゃうぞー!」
「うわ、来るな変態!ちょっ…イヤー!」
「この柔らかさ、頭の撫で心地、何度モフっても飽きませんね、最高ですよー!雪花たんクンカクンカ!」
もうやだこのピクシー。ぼくが遊び尽くされ、ピクシーが落ち着いたころ、兄さん達は入ってきた。兄さんは無表情、姉さんはピクシーとアイコンタクトして分かるわーみたいな感じで頷いており、ぼくのことを心配そうに見てくれているのはほののんだけだった。優しさが染みる。
「ピクシー、これに着替えてくれ」
夜中にメイド服のピクシーを連れて歩くわけにはいかない、というわけで着替えさせるのだ。同じ理由でほののんの制服もNGというわけだ。
「お兄様っ?何を平然と見ておられるのですか!」
「そうだ、そうだー」
「キャー!達也さんのエッチ!」
嬉々として服を脱ぎ出したピクシーをぼーっと見ていた兄さんに姉さんからお叱りの言葉。ぼくも便乗しておく。ピクシーの言動はスルーの方針だ。でも一つ言わせてもらうと、ぼくも男の子だよ?誰からも何も言われなかったので自主的に後ろを向いた。ちょっと寂しい。
「何でも似合う、自分が怖い…!」
着替え終わって馬鹿なことを言っているピクシー。うん、それはピクシーのデザイナーさんが頑張っただけだよ。
「ピクシー、ついてこい」
そう言いながら、ぼくに目配せをする兄さん。はいはい、ピクシーの相手はぼくですね、グレて良いですか。
奴隷のように命令されると……はぅ、なんて言っているピクシーに頭をポンポンされながら、ぼくはため息を吐いた。
ピクシー、外へ。雪花が振り回されるのも珍しい。
さて、明日の更新なのですが、出来るかどうか分かりません。
なるべく、毎日投稿できるよう頑張りますが、新生活で慌ただしく四月中は休みがちになりそうです。