魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
リーナとあーたんを家に送って、その日はなんとか乗り越えた。どうやら澪姉さんは結局こっちに戻ってきたらしい。五輪の別宅はそのままだからそこに住むそうだ。本家の皆は過保護過ぎるとか色々愚痴っていた。
まあ何はともあれ無事、今日という日を迎えられたことを嬉しく思う。
「ぼくは本当になにもしてないよ!」
いや、思っていた。ついさっきまでは。いつものように、水波ちゃんに起こして貰って用意されていた制服に着替え、朝食を食べさせてもらって家を出た。そうして遅刻することなく余裕をもって登校し、授業を受けて、昼休み。沙世さんがお休みなので水波ちゃんお手製の弁当を食べようとした時、ぼくは兄さんに連行された。連行された先はメンテナンスルーム。初めて来たけど結構広いこの部屋にはあーたんや五十里先輩、姉さんと
兄さんの話ではこのピクシーが異常稼働し、その間ずっと嬉しそうな笑みを浮かべている映像が監視カメラに記録されていた、ということらしい。そしてそれはぼくのせいなんじゃないかと。
「お前が何かイタズラしたんじゃないか?」
「してない!してないよ!大体ぼくは昨日とんでもない目にあってそれどころじゃ…な…い?」
「…心当たりがあるんだな?」
思い出した。
たしかぼくが学校にくるようになってちょっとして何かと兄さんとはんぞー先輩に怒られる毎日を送っていた時。ちょーっと校内で迷ってロボット研究部の部室に辿り着いたことがある。そこでピクシーをちょこっと、本当にちょーっとだけ弄ったかもしれない。
だって車椅子77の機能は五輪家の人に外されちゃったし。なんでも澪姉さんのプレゼントには一度検査が入るらしい。危険なものがないかチェックするわけだね。まあそこで車椅子の機能は危険とみなされてそのほとんどが外されちゃったというわけ。だからこのピクシーでリベンジしてやる、とかなんとか思って改造しちゃったりしたかもしれない。結構面白くなっちゃって何日も弄ったりしちゃったかもしれない。
「でも表情を変える機能なんて付けてないよ!耳が大きくなる機能とか手が伸びる機能とかそんなのしか付けてないよ!たぶん!」
正直色々付けすぎて自分でもどんな機能をつけたか良く覚えてない。表情を変える機能もつけちゃったかもしれない。
「はあ、まあ良い、すぐに分かることだ…ピクシー、サスペント解除」
兄さんがピクシーにそう話しかけると、ピクシーはパチッと目を開けて、座っていた椅子から立ち上がると深々と一礼をした。良かった、ランダムでツンデレメイド風とか色々な挨拶をするように改造しておいた奴が出なくて!
「何か用かしら?」
本来なら、ご用でございますか、が起動時の決まり文句なんだけど……出ちゃった!ツンデレ風出ちゃったよ!起動時の決まり文句にも設定しておいたんでした!そうでした!うっ周囲からの視線が痛い!特にあーたん!
「……今朝七時以降の操作ログと通信ログを閲覧する。その台の上に仰向けに寝て、
「ふぅん、じゃあアドミニストレーター権限を確認するわ」
また出ちゃった!このピクシー、ぼくをいじめてくるよ!普通にしてよ!
そんなぼくの心のツッコミは聞こえているわけはなく、ピクシーは兄さんをじっと見ている。兄さんの命令は管理者権限を必要とするものだから、胸ポケットの権限を示すカードを見ているのだろう。そのはずなんだけど…なんかあれ、兄さんの顔を見つめたまま固まってない?あれ?権限確認の時にも何か機能つけたっけ?ツンデレ風以外にもお嬢様風とか妹風とか色々つけはしたけど…。ぼく以外のみんなも何かがおかしいと感じ始めていたと思う。
「ミツケタ」
ピクシーが小さな音声でそう紡ぎ出し、兄さんに向かって飛びかかった。
声にならない悲鳴が上がった。誰もが、言葉を発することができなかった。それほどの驚きが、室内を支配していた。だって、ピクシーは兄さんに抱きついているのだ。両腕を兄さんの首にしっかり回して。
「…へぇ、司波君って、ロボットにまでモテるんだ」
衝撃の瞬間に居合わせていなかったがゆえだろう。たった今、部屋に入ってきたばかりの千代田花音が白けた声でツッコミを入れてくれた。
うん、なんというか…流石ですお兄様。
雪花くんのせいでピクシーは色々残念なことになりそうです。
さて、明日も0時に投稿します。