魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
べっ別に一日遊び歩いてて今も家で友達と遊んでる、なんてことはないんだからね!大乱闘するゲームでフルボッコにされたりしてないんだからね!
雪花は生まれてこの方一度も学校へ行ったことがないらしい。それどころが外出することも殆どなかったというのだ。
初顔合わせから一週間。二度目の対面の時、今日初めてキャビネットに乗ったという話を聞いて達也の尋ねた「中学校は徒歩なのか?」という何気ない質問に対する答えがそれだった。
どうやら彼は四葉に狙われていたためUSNAに国外逃亡をしていたらしい。逃亡したのは5歳の時で以降先週までをUSNAで過ごしたのだという。当然、逃亡しているわけだから学校へは行かず殆どを家の敷地内で過ごした。だからなのかCADや魔法について達也と対等に話せる程の知識を有しており特にCADのハード面では達也を驚かせる程の独創性や技術を持っていた。トーラスシルバーのシルバー、世界的魔工師である達也を驚かせる程のである。
深雪は雪花のことを心のどこかで何の苦労していないんだろうなと思っていたのかもしれない。何年も日本を離れ隠れ住んでいたという事実に驚きを隠せなかった。達也はといえば四葉に関わっている以上そういうこともあるかと納得している様子。むしろ狙われた程度で済んだならまだマシな部類だとさえ感じていた。
「高校はどうするんだ?」
「兄さん達と同じ一校にしようと思ってる」
雪花に四葉の血は流れていない。流れているのはサイオン量だけが取り柄の父親の血、知識はともかくとして技能は大丈夫なんだろうかと自分も入学が危ういと思っている達也は疑問に思う。知識がどれだけ優れていても頭でっかちでは一校には入学できない。
まあその時がくれば分かることだ、と達也は気にしないことにする。弟のことばかり気にしておいて自分が落ちたら洒落にならない。
「今日は外食にしようか、雪花が一度もしたことがないというし」
そろそろ昼食時、深雪が仕度をしようとすると達也がそう提案した。深雪に達也の提案を断る理由はなく、雪花もまた大はしゃぎで賛成した。
三人でファミリーレストランに入る。雪花が一度入ってみたかったということで、ここにしたのだ。店員がお子様限定のサービスであるプチケーキを雪花に配膳し、雪花が本気で落ち込む、という事故?があったものの楽しい食事となった。
雪花は意外にもきちんとしたテーブルマナーを学んでいたようで、生粋のお嬢様である深雪の目から見ても十分合格をあげられるレベルだ。まあファミリーレストランでテーブルマナーの採点をされるようなことはまずないだろうが。
昼食をすませた後は三人で街を歩いた。雪花はキラキラと目を輝かせながらあっちへ行ったりこっちへ行ったりしており、達也の精霊の眼がなければまず間違いなく迷子になっていただろう。精霊の眼で弟の迷子を防止することになった達也は未来の自分が心配になる。苦労するんだろうな、というのは確信に近い予感だった。
「えっ現金って使わないの?」
「日常で現金を使うことはそうそうないな。カードで済むだろ」
現代では現金の用途は限られておりマネーカードがその代わりを果たしている。
それは当たり前のことだ。知っていて当然、というより
雪花は当然、普通の生活は送っていなかった。人生のほぼ全てを家の敷地内で過ごしているのだから。ゆえに知識には偏りがあり、子供でも知っているようなことを知らないかと思えば達也が感心するような知識を持っていたり、そんなこと知ってどうするというようなどうでも良い雑学が豊富だったりする。百年前のサブカルチャーにもやたらと詳しい。
これから一般常識を教えていくのは俺の役目なんだろうか、と達也は遠い目をした。さっきまで隣にいたはずの弟がいつの間にか数百メートルも離れていて、今時珍しいくらい露骨なナンパに引っ掛かっているというのだから仕方のないことだろう。もちろん?ナンパしているのは男だ。
達也はため息を吐いて雪花の救出に向かう。
達也の予感が確信に変わった瞬間だった。
この番外編、まだまだ続きます。
シリアスはないはずなのでほのぼのと進んでいきます。
さて、明日も0時に投稿します。
明日はちゃんと本編を投稿できると思います。