東方煩悩漢   作:タナボルタ

60 / 96
うばー……お待たせいたしました……。

まさかこんなに時間が掛かるとは思いませんでした。このリハクの目をもってしても(ry

しかも短めです。何とか更新頻度を戻していきたいですね。


第五十五話

 

 命蓮寺の本堂へと続く石畳の道を横島達一行は歩く。

 流石と言うべきか、命蓮寺の敷地内は清浄な霊気で満たされており、住職である聖白蓮の実力が窺い知れるというものだ。

 

「もっと居心地が悪い所だと思ってたけど、そんなことないんだね」

 

 フランが物珍しそうに周囲を見回しながら呟く。確かにこういった寺院は吸血鬼であるフランには相性が悪いだろうが、この命蓮寺が掲げる目標は『人妖平等』である。人にも妖怪にも居心地が良いようにしてあるのだ。尤も、博麗神社という前例があるのであまり気にするようなものでもないような気もするが。

 

 

 

 

 

 

 

第五十五話

『不思議な感覚』

 

 

 

 

 

 

 

 皆で談笑しつつ本堂へと入る。本堂前の階段に立てられた旗や外柱の設置された看板から、命蓮寺の本尊は毘沙門天であることが分かる。

 横島達は律儀に正座をする。横島やはたては特に苦もなく出来ているが、フランにチルノ、大妖精といった子供組は少々辛そうな表情を浮かべている。外国人は正座が苦手な方が多いようだが、もしかしたらそれが関係しているのかも知れない。(チルノや大妖精が外国の妖精かは不明である)

 

「それじゃあ、わちきは白蓮さんを呼んでくるからね。横島さんは大人しく待ってるんだよ?」

「分かってるって」

 

 どうも小傘に妙な印象を持たれたらしい。横島は小傘の言葉に苦笑しつつ頷くと、正面に安置されている本尊、毘沙門天像を懐かしそうに見やる。

 

「毘沙門天か……元の世界で会ったことあるんだよなー」

「え、そうなの?」

「ああ。毘沙門天だけじゃなくて、他の七福神にもな。それだけじゃなく宝船に乗ったり、弁天様のライブを見たり……」

「ら、ライブ!?」

 

 また思わぬところで横島の交友関係が知れた。彼の話によれば元の世界の宝船には『霊波動砲』なる超兵器が搭載されているらしい。横島の元の世界とは一体どのような世界だったのか興味が尽きないはたてであったが、今この場で取材を敢行するほど空気が読めないわけではない。時間はこれからもたっぷりとあるのだ。慌てず騒がず、じっくりとその機会を窺えばいい。そう、今この場で重要なことは、正座の辛さにぷるぷると震えて耐えるフラン達をどうにかすることなのだ。

 

「……フラン、チルノ、大妖精。無理せずに足を崩しても大丈夫よ?」

「それは、何か負けたような気分……! あたいは最強……! 絶対、正座なんかに負けたりしない……!!」

「それはフラグだよチルノちゃん……! ああ、足が……足がぁ……!?」

「あ、足が痺れるの……」

 

 はたての言葉にチルノは意地を張る。顔を赤くして耐えるその姿は立派だが、いかんせん状況が小さすぎるし台詞もフラグ過ぎた。大妖精はチルノにツッコミを入れつつも一人にはさせじと共に正座のままでい続け、必死に足の圧迫感と痺れに耐える。

 一方フランは横島の膝の上に座り、痺れを癒すように足を伸ばして揉み解していた。

 

「何か、最近性格変わってきたな」

「えへへ。そうかな?」

 

 横島はそんなフランを背後からお腹に手を回して抱き締めつつ、彼女の頭に顎を乗せる。にわかに甘い雰囲気が漂ってきそうな体勢であるが、そんな空気にさせるものかというようなナイスなタイミングで小傘が一人の少女を連れて戻ってくる。

 

「お待たせー……って、何か色々とどうしたの?」

「正座のせいでこんなことに」

「……ふーん?」

 

 小傘はよく分からないといった風に首を傾げる。チルノと大妖精は「ふおおおおお……!!」や「んんんんん……!!」などといった珍妙な声を上げて身体を震わせているし、フランは横島の膝の上で幸せそうにとろけている。三人とも女の子が浮かべてはいけないような表情だ。……前者二人と後者一人ではその意味が違い過ぎるが。

 

「まあいいや。それはともかく、この人が命蓮寺の住職の――――」

「はじめまして。この命蓮寺の住職を務める、“聖白蓮”と申します」

「あ、えと、これはご丁寧にどうも。横島忠夫です。忙しい中、急に押しかけてすみません」

 

 白蓮は横島達同様正座をし、手をついて挨拶をする。その洗練された動きに横島は一瞬驚いたように呆けてしまうが、正気に戻るとフランを膝の上から下ろし、白蓮と同じく手をついて頭を下げる。

 それは、横島らしくない行動と言える。何せ白蓮はかなりの美少女だ。外見の年齢は美鈴と同じほどであり、()()()()()のストライクゾーンのど真ん中。更には彼女のスタイルも非常に良く、美鈴には一歩劣るだろうが、それでも抜群のプロポーションを誇っている。はっきりと言ってしまえば横島が飛び掛らないのが不思議でしょうがないと言える程だ。実際はたては「どうして飛び掛らないんだろー?」なんて考えていたりする。

 

「いえ、気になさらないで下さい。貴方のような方が命蓮寺を訪ねて下さって、私としてもとても嬉しく思っていますから」

「いやー、なははははっ」

 

 柔らかな雰囲気でころころと笑う白蓮に、横島は照れたような笑みを浮かべる。彼の声は若干上ずっており、どこか様子がおかしいのは確かなようだ。

 

 ――――んー。何だろうな、この感覚は。

 

 横島は自分の中の感覚に戸惑いを覚える。

 白蓮は美少女だ。普段の横島ならば、飛び掛ってもおかしくない程の美少女だ。……だが、横島は白蓮に飛び掛らない。何故か、()()()()()()()()()()。それが普通で然るべきなのだが、それはともかく。横島は白蓮に対し、普段からは考えられない程に煩悩が湧いてこないのだ。……視線は白蓮の大きな胸に釘付けになってはいるが。

 

「ふ、フランドール・スカーレットです。よろしくお願いします」

 

 はたてが白蓮に「どうも」と頭を下げ、横島が未知の、あるいは既知の感覚に首を捻る中、フランが横島達の見よう見真似で白蓮に挨拶をしていた。こういったことはしたことがないせいか、深々と頭を下げるその姿はお辞儀というよりは土下座の体勢になっている。慣れない体勢のせいで少し突き出された格好のお尻がキュートだ。それが横島や白蓮の目には微笑ましく映り、二人は同時に噴き出してしまう。

 

「うふふ、ごめんなさいね。笑うつもりではなかったのだけど……」

「フランちゃん、変な体勢になってんぜ」

「……むぅ」

 

 当然笑われてしまったフランの機嫌は悪くなる。ほっぺたを膨らませて怒りをアピールする姿は外見年齢相応の可愛らしさだが、それが逆に二人の笑みを更に深くすることになるとは気付けなかった。まあ、その笑みもすぐに消えてしまうことになるのだが。

 

「にゅうううう……!! 正座には……勝てなかったよ……ガクッ」

「チルノちゃんを……一人には……しな、い……ガクッ」

「ぅおーいっ!? 何で正座で死に掛けてんだーっ!!?」

「あ、あらあら……っ!?」

 

 チルノと大妖精、正座にて死す。死因はエコノミークラス症候群だろうか。五分程度の正座で、いくら何でも早すぎるが。

 結局チルノ達は横島とはたての膝を枕にしてだるーんと身体を横たわらせている。身体が少しでも動くと足の痺れが酷くなるようで、先ほどからぷるぷると震えてはびくびくと悶えている。ちなみに横島の担当がチルノ、はたての担当が大妖精だ。大妖精は「わ、私がチルノちゃんを膝枕するぅ……」などと言っている。「また死にたいのか」とは横島の弁。

 

「何つーか、すんません……」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 横島と白蓮が二人にヒーリングを施す。何でも白蓮は魔法使いでもあるらしく、その腕前は超人的なのだそうだ。

 二人のヒーリングが効果を発揮したのか、チルノと大妖精は酷くゆっくりとではあるが身体を起こす。

 

「正座ってこんなにしんどいんだ……。お坊さんって凄い。あたいは改めてそう思った」

「多分、私達に耐性が無さ過ぎるだけだと思うよ、チルノちゃん」

 

 チルノは足をパタパタと大きく動かしながら、大妖精はフランと同じく足を揉み解しながら大きな溜め息を吐く。大妖精はともかく、チルノの行動は少々はしたない。横島はチルノの額をぺちっと叩き、注意を促す。

 

「こーら。女の子がそういう風に足を広げるのははしたねーぞ。下着が見えるかも知れないからやめとけ」

「んー? ……そういえばお兄さん、小傘のパンツもじっと見てたし、そーゆーのが好きなの? あたいのパンツも見る?」

「あら」

「ななななな何を言っているのかなチルノさんっ!?」

 

 チルノの発言に横島の肩が跳ねる。ここはお寺。傍らには尼僧である白蓮。横島の頭には白蓮に驚異の魔力を振りかざされ、「誠に卑しく、意馬心猿であるッ!!」と言われて南無三される光景が目に浮かぶ。南無三の意味が違うし、何故そんな具体的な光景が浮かぶのかが果てしなく謎だが、それは些細なこと。問題はどうやってこの局面を乗り切るかだ。

 

「横島さんもお年頃の男の子ですからね。そういったことに興味があるのは仕方が無いこととは思いますが、程ほどにしておかないといけませんよ? チルノさんも。未だ幼いとはいえ、そういった言動は控えた方がいいですよ。例え発した言葉以上の意味を込めていなくとも、それを判断するのは受け取り手です。言葉以上の意味を誤解することなど、ままあることなのですから」

 

 頬に手を当て、柔らかく微笑みながらやんわりと横島とチルノを窘める白蓮。思っていたよりも融通の利く人物であったらしい。横島はそっと息を吐いた。チルノは白蓮の言うことがあまり理解できなかったようで、首を傾げている。

 

「ん、んん……?」

「つまり、あんまり不用意なことを言っちゃ駄目だってこったな。どーせパンツを見せてくれるなら、もっと成長してから――――」

「横島さん――――?」

「はいっ!! 何でもありまっせん!!」

 

 一瞬、白蓮の身体から凄まじいプレッシャーが放たれる。流石に先ほどのような発言は看過出来なかったらしい。当然大妖精からの視線もきつくなるが、横島はそれを気にしていられない。傍らで女の子座りをしていたフランが横島の目を上目遣いに覗き込んできたからだ。

 

「……ただお兄様、私のパンツも見てみる?」

 

 特に何かを気にした様でもないフランの一言。横島が女の子のパンツを見て喜ぶのなら、自分のパンツを見ても喜んでくれるのだろうか? もし先程の言葉に意味が込められているとしたら、そんなところだろう。横島はフランの発言に若干頭痛がしたが、とりあえず頭を撫でる。

 

「あのなあ、フランちゃん。そういうのは後で二人っきりの時に――――ふんっ!!!」

「ひゃあぁっ!!?」

 

 横島は拳を自らの顔面に叩き込む。顔が陥没……というより冗談のようにめり込んでいる様はまるで往年の漫画のようだ。間近でそんな衝撃の場面を見たフランをよそに横島はめり込んだ鼻を引っ張り、きゅぽっという音を立てながら顔を元に戻す。つくづく人間の芸当ではない。

 

「だ、大丈夫なの、ただお兄様……?」

「大丈夫だいじょーぶ。それよりも、チルノにも注意したけど、今後はあまり迂闊にああいうことを言わないほうがいいぞ? でないと怖いお兄さんやらお姉さんやらに叱られちゃうからな」

「あー……」

 

 怖いお姉さん、というフレーズでフランの脳裏に思い浮かぶのはレミリアと咲夜。レミリアは純粋に怒っている姿が怖く、咲夜は雰囲気が怖い。身の危険を感じるような、とまではいかないが、それでもフランの危機感に何かしらの圧を掛けてくるくらいには怖い雰囲気を纏う。その怖さがどういった方向性の怖さかは定かではないが……もしかしたら、ろくでもない方の怖さなのかもしれない。

 ついでにもう一人例を挙げるなら白蓮だろうか。横島が自戒したことで弱まったが、その直前には彼女のプレッシャーが強まっていたのだ。

 白蓮は優しい人である。しかし、やはりと言うべきか普段優しい人が怒ると怖いということなのだろう。特に、幼い少女に煩悩を漲らせるような男に対しては――――。

 

「俺は――――違う。違う、はず……(ぼくろりこんじゃない)

「……」

 

 頭を抱えて喘ぐように呟く横島の姿に、白蓮は彼の心情を全てではないが察することとなる。横島の葛藤は中々に深い。白蓮も()()()()()()()()()()()()()ので、横島が葛藤している部分に察しがついたのだ。

 白蓮は苦笑いを浮かべながらも心の中で横島にエールを送る。どうか煩悩に負けずに清い交際をしてほしいと。本当ならお説教も含めてもう少しお話をしていたいところなのだが、生憎と白蓮には用事があった。煩悩溢れる少年に“煩悩即菩提”について説法したいところだが、流石に約束を破るわけにはいかない。

 

「申し訳ないのですが――――」

 

 白蓮が両手を合わせて申し訳無さそうにこれから約束があることを切り出したのだが、ここで横島とチルノの二人の意識が白蓮から離れる。横島はこの命蓮寺に近付く()()()()()を察知し、チルノは先程の横島の言葉に思考を割いているからだ。

 

 ――――何だ……? 人間……にしては霊力が馬鹿みたいにでかいし……この感じ、何つーか、猿じじいに似てる……?

 

 横島が察知した気配。それは、どうやら彼の師匠の一人である猿じじい――――“斉天大聖孫悟空”に似ているようだ。

 横島が元居た世界では、孫悟空とはインド神話の猿神ハヌマーンであり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でもある。

 横島が()()を知っているかは定かではないが、そんな孫悟空に似ている存在が、ここ命蓮寺に近付いてきているようだ。

 ()()は悪しき存在というわけではない。足取りは軽く、その美しい表情には笑みさえ浮かんでいる。傍を歩く()()()()()()()()()()にも同じく笑顔が浮かぶ。……とても自信に満ち溢れた、良い笑顔の持ち主だ。

 

「ふふ――――さあ、お楽しみの時間だ」

 

 誰に聞かせるというわけでもなく、()()は呟く。風にマントを棚引かせ、何故かやたらとキラキラと輝きながら()()は本堂へと歩みを進める。

 まるで、恋焦がれる相手との逢瀬を夢想するかのように、愛しげな笑みを浮かべながら。

 

 

 

 

 

第五十五話

『不思議な感覚』

~了~

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 チルノは考える。先程の自分とフランに掛けられた言葉の違い、そのことについて。

 『もっと成長してから』『後で二人っきりの時に』――――。

 

「……」

 

 何が違うのだろうか。何故、違うのだろうか。それが、何故か無性に気になった。

 

「……」

 

 チルノは考える。分からない。チルノはそれでも考える。しかし、それでもやはり分からない。

 

「……」

 

 自分と、フランと。その違いは一体何なのだろうか?

 どうしてそれが気になるのか、どうしてそんなに答えが知りたいのか、分からないままに彼女は思考を巡らせる。

 チルノの視界には外を気にする横島と、そんな彼の腕を抱くフランの姿。きっと、彼女が抱く彼の腕は、温かいのだろう。

 

「……」

 

 その温かさを。その温もりを。自分の物にしたいと思うのは、いけないことなのだろうか――――?




お疲れ様でした。

……GS美神の七福神の話で、弁天様ってライブやってたっけ……?(うろ覚え)

東方煩悩漢におけるロリ組のお尻の大きさ
てゐ>レミリア>みすちー>大ちゃん>チルノ>フラン>ルーミア>リグル

てゐはむっちり、リグルはほっそり。煩悩漢のリグルのスタイルェ……。

さて、次回の煩悩漢はどうなるのか。
横島の白蓮に抱いた不思議な感覚とは、警告タグの“ガールズラブ”が久しぶり(?)に仕事をするのかしないのか。

それではまた次回。






くっっっそどうでもいいですが、私はロリ巨乳よりもロリ巨尻(?)の方が好きです。(本当にどうでもいい)
“門を開く者アリス”とか大好きですよ。
ちなみに上記のアリスの3サイズは上から72・53・90です。72・53・90です。素敵やん。
みんなもっとアリスを好きになればいいんだ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。