異世界で俺TUEEEな漫画読み漁ってるのに何でだろー。
昼食を求め人里内を歩き回る横島達。しかし、一行は何やら困惑しているのが見て取れる。
彼等には数多くの視線が集中している。それこそ人里の全ての者達が横島達に注目していると錯覚する程にだ。
それも当然だろう。何せ横島達一行はこの人里内において、とても有名な存在だからだ。
まず人里では知らぬ者はいないと思われる妹紅。彼女は寺子屋の先生である慧音の友人であり、迷いの竹林の案内人としても知られている。先のゴキブリが大量発生した異変での活躍とその容姿から、爆発的にファンが増えたということを慧音が酒の席で愚痴っていたそうだ。
次に一時期人里の格闘家達に有名だった美鈴。その卓越した技量と抜群のプロポーション、端麗な容姿に朗らかな人柄など、ある意味憧れの女の子だと言える存在だった。しかしその格闘家達は美鈴に勝つことが出来ない不甲斐なさから、あるいは女性蔑視、そして美鈴が妖怪であることから想いを告げることをしなかった。
そして最後の一人であるフラン。彼女は人里で有名であるということはないのだが、日傘を差した、深窓の令嬢を思わせる儚げな雰囲気、それと反する屈託のない笑顔。どこか気品を感じさせるその立ち居振る舞い。容姿も非常に整っているところから注目を集めているのだ。
さて、そんな美少女達が一人の男と共に人里を歩いていればどうなるだろうか?
それは考えるまでもなく、注目の的になるというものだ。しかもその
横島忠夫。人里内での彼に関する噂はおかしなものが多い。
曰く、紅魔館のメイド長である十六夜咲夜の恋人である。
曰く、咲夜との間に三人の娘がいる。
曰く、彼は人間ではなく、どんな傷も一瞬で治る妖怪である。
曰く、彼は女好きであり、いつも一緒にいる妖精メイド三人組は彼の愛人である。
曰く、紅魔館は彼のハーレムである……などなど。
他はともかく、最後の一つはレミリアやパチュリーが人里を滅ぼす切っ掛けになりかねないようなものであり、里の者達も本当にそうであるとは思っていない。
しかし、誰にだって、どんな人間にだって看過出来ないことはある。
――つまり、『なぜアイツばかり美少女に囲まれているんだ』……ということだ。要は醜い嫉妬である。
それ故に人里内での横島の評判はあまり良くはない。と言っても、それはほとんどの場合が男衆の評判だ。
では、女性からの評判はどうなのかと言えば。
ほとんどの場合が咲夜の恋人という噂が信じられており、彼の人柄もある程度好意的に解釈されていた。
これについては咲夜の言動が主な原因であり、横島自身はほぼ関わっていない。いや、関わっていないと言えば語弊があるかも知れないが。
とある時期、咲夜は里の人間が驚くくらいに上機嫌だったことがある。人間嫌いである咲夜が、にこやかに里の人間に対応していたのだ。
それは横島からプレゼントをもらった時期。そして、真新しいリボンに手を触れ、柔らかな笑みを浮かべていた時期でもある。
そんな咲夜を見た里の人達は新しく来たという執事との間に何かあったのだろうと誤解し、ついうっかり『横島からプレゼントを貰った』と零してしまった咲夜の証言を元に、二人は“何だかんだ上手くいっているカップル”として認識されるに至った。咲夜としてはいい迷惑である。
他にも妖精メイド達と接する姿が微笑ましかったり、咲夜と共に妖精メイド達を嗜める姿が様になっていたところも要因となっているのだろう。
そんな男が、咲夜ではない他の女の子たちと仲睦まじげに人里を歩いているのだ。良くも悪くも注目を集めてしまうのは当然である。
「……何か居心地悪いな。早くどこかのお店に入ろうか?」
所在なさげに提案する妹紅の言に一も二もなく賛同し、近くにあった『うどん屋』へと入る。横島としては周囲の男達からの嫉妬の視線に優越感やら何やらを感じていたのだが、それは女の子達よりも優先するべきことではないため、大人しく従った。
店に入られては周囲にいた者達も散り散りに去っていく。中には同じように店に入っていった者もいたが、ほとんどの者はそれぞれの生活へと戻っていった。
今日は風が強い。
ここ最近は雨も多かったので、もしかしたら台風が来るかもしれない。
今も少々強い風が吹いている。その風が、とある少女を立ち直らせる切っ掛けになるとは、誰が想像出来ただろうか。
第四十六話
『人里での再会』
「ここはシンプルにきつねうどんにしようかな……」
「うどんって色んな種類があるんだねー。……ところでお兄様、きつねうどんって狐のお肉が入ってるんじゃないの? 今のお兄様は食べられないんじゃ……」
これは何を頼もうか迷っていた時のやりとりだ。これに対して横島はきつねうどんがどういったものかを説明する。それを見ていた周りの者達は、一行がどういった関係なのかをおおよそ察した。(誤解したとも言う)
世間知らずのお嬢様であるフランが見聞を広めるために御付の執事である横島、護衛役の美鈴、そして案内役の妹紅と共に人里へやって来たのだと。
フランと美鈴と妹紅の横島への態度やら何やらは一切見ぬ振りをし、自分達にとって都合の良い解釈をした結果、そういった答えが導き出されたらしい。傍から見ればそれほど間違っていないのは賞賛すべきことなのだろうか。
とにかく、答えを得た者達は今までのような探るような視線を送るのは止め、今度は暖かい視線を送ることにした。突然変化した視線の温度にフラン達は訝るばかり。
結果、昼食は変な空気のまま過ぎていってしまった。味は良かっただけに残念でならない。
「何か変な人達がいっぱいいたね」
「そうだなー。まあ、仕方ないことなんだろーけどさ」
「んー、そうですよねえ……」
横島と美鈴の言葉にフランと妹紅は首を傾げる。自分達が注目されていた理由が分からないようだ。
横島はモテない男としての観点から、美鈴は周囲の者達が放つ“気”を感じ取って理解していた。不思議がる二人にお茶を濁しつつ、横島達は慧音の家へと歩を進める。
強い風が吹き抜ける。
「凄い風だねー」
「最近天気悪かったしな、こりゃ台風が来たりして……ああ、フランちゃんちょっと」
「ふえっ?」
会話中、横島がフランの肩を抱き、自分の方へと抱き寄せた。いきなりのことにフランは戸惑いの声を上げたが、二歩~三歩ほど歩くと横島はフランの体を離し、フランに注意する。
「前から人来てたぞ? ちゃんと前見て歩こうな」
「え? う、うん。ごめんなさい……」
横島の注意にフランは戸惑ったが、それでもとりあえず謝っておいた。フランはしきりに首を傾げ、
疑問に思ったのは妹紅や美鈴も同様だ。彼女達は、
「……もしかして幽霊?」
「それだと私達が気付かないのは考えにくいですけど……」
フラン達の背後でひそひそと話し合う妹紅と美鈴。やはり誰かがぶつかりそうになったところは見ていない。横島の勘違いなのだろうか、と考え始めた時、今度は背後から何者かが走って近付いてくるのを察知した。
「今度は何だ? 今度こそ幽霊か?」
「何で幽霊にこだわってるんですか」
妹紅の言葉に苦笑しつつ、背後へと振り返る。そうして眼に入ってきたのは、長い黒髪の人狼と思しき少女が駆け寄ってくる場面。真っ直ぐ、こちらを目指している。美鈴は妹紅と共にその少女を警戒するが、ここで妹紅が疑問を口にした。
「……あれ、確かあの子は……」
知り合いなのか、と妹紅に問いただそうとしたが、それよりも早く少女が自分達の目の前で立ち止まった。荒い息を吐き、見つめる先には横島の背中。ことここに至って、横島はようやくその少女の存在に気付いた。
「――ッ」
少女の心臓が高鳴る。本来ならばいるはずがない……生きているはずがない存在を前に、少女は極限の緊張を強いられる。
横島が少女の方へと振り向く。ほんの一瞬のはずなのに、その一瞬が何秒間にも、何分間にも感じられる。
やがて完全に振り向き、横島は少女と眼が合った。その少女は横島の記憶にも新しい、
「あれ? 君はあの時竹林にいた……」
「――――ッ!!」
それは、あの時自分のせいで失われたと思っていた人の声。人狼である自分が聞き間違えるはずがない。風によって運ばれてきた匂いも、あの人と同じものだ。
「――見つけた……」
涙を流し、少女はそう口にした。自分を助けてくれた“恩人”を、自分が見捨ててしまったその人を、見つけることが出来た。
しかし訪れるのはカオスである。
「よよよ横島さんっ!!? この女の子に一体ナニをしたんですかっ!!? 駆け寄って涙ながらに『ミツケタ……』とかとんでもない恨みを買ってるじゃないですか!!!?」
「な、何もしてない!! 俺は何もやっとらんぞーーーーーー!!? こ、これは誤解や!! 冤罪なんやーーー!! 弁護士を呼んでくれーーーーーー!!!」
美鈴に胸倉を掴まれ、ガックンガックンと揺さぶられる横島。両目からブシャーっと涙を噴出する姿は非常に情けない。しかしどこかエネルギッシュな姿でもあり、原理は不明だが見る者の安心を誘う。
「……ううう、うええええええええんっ!! ぐすっ、ふええええぇぇぇぇぇんっ!!」
「ちょ、どどどどうしたの……!?」
突如大声を上げて泣き出す少女に妹紅は大いに戸惑う。おかしい、この子はこんな性格ではなかったはずだ。知ってしまっているが故に妹紅の戸惑いは大きく、慰めることもしないでおろおろとしてしまい、何も出来ない。そして大泣きした少女を見た美鈴が余計にヒートアップするという悪循環に突入する。
ちなみに少女が大泣きしたのは横島がとっても元気そうで安心したからである。人間、緊張の糸やら何やらが切れたら大爆発しちゃったりするよね。
それからどうでもいいことだが、周囲にはやっぱり野次馬連中が存在している。しかし皆は一行からかなりの距離を取っており、彼等が何らかの害を被ることはないだろう。横島達が色々しているのが害だと言われれば何も言い返せないが。
「と、とりあえずちょっと待って!!」
「あ、横島さんっ!?」
横島は何とか美鈴の魔の手(握力二トン超)から逃れつつ、カクンカクンと独りでに動いてしまう首を気にしつつも未だ泣き止まない少女の下へと歩み寄る。
「どうしたんだ? 何でそんなに泣いてるんだ?」
「ひぐっ、だっ、て、だってええぇぇ……!!」
話が通じないわけではないが、今は話が出来る状態ではない。どうしたもんか、と横島が思案に暮れていると、またもや何者かが走って近付いてくる気配を感じた。
「またかよ……今度こそ幽霊だろうな……?」
「だから何でそんなに幽霊にこだわってるんです……?」
野次馬達よりも更に向こう、遠くから走ってくるその姿。足はそれほど速くはないようだが、そんなことよりも警戒すべきことがある。
赤と黒を纏ったその人物はどうやら妖怪の少女のようだが、人狼の少女と明確に違っている部分がある。
それは――。
「貴様あああぁぁっ!! よくも影狼を泣かせたなあああぁぁぁぁあ!!!」
明確な、敵意を持っていることだ。
「あいつは……!」
どうやら妹紅は赤と黒の少女にも覚えがあるようだ。何やら人狼の少女――影狼のことで激昂している。話は出来なさそうな雰囲気に妹紅は一つ舌打ちをする。
「影狼から離れろおおおおお!!!」
少女は突き出した両手からいくつもの弾幕を放つ。野次馬はそれに慌てふためき、一斉に避難していった。
妹紅、美鈴、フランは一瞬で弾幕の射線から逃れたが、横島はそうはしなかった。自分が避ければ、少女が放った弾幕が影狼に当たるからである。
影狼は未だ状況を理解出来ておらず、弾幕を放った少女に驚きと戸惑いの眼を向けている。このまま迷っている暇はない。横島が選択したのはごく単純なことだった。
「あだだだだだだだだっ!!?」
「――っ!!?」
影狼を抱き締め、自らの体を盾にすることで弾幕から守ることだ。一発一発の威力は低いが、それでも弾幕は弾幕。何発か受けることによって、横島の背には傷が出来、鮮血が溢れる。
「よこ――――……ッッッ!!!」
その“血”を見た瞬間、少女達の視界が真紅に染まった。
「待っていろ影狼、今助けて――……っ!!?」
――瞬間、呼吸が止まる。
全身を貫く濃密な……否、言葉では言い表すことが出来ないほどの殺気、殺意。手足なぞは麻痺しており、既に立つこともままならず、気が付いた時には地面へと倒れ伏していた。
一体何が、などと考えるまでもない。見上げる先に存在する三人の少女。それが、赤と黒の少女――赤蛮奇を縛る“何か”を発しているのだ。
「……っ!!」
赤蛮奇は眼前の少女達に見覚えがある。
一人は紅魔館の門番である紅美鈴。噂によれば厚さ二メートルの鉄板に素手で大穴を空けることが出来るほどの武術の達人であり、彼女の苗字が紅なのは、彼女の髪が赤いのは、かつて屠ってきた武術家の返り血で染まった為だとか何とか。
一人は紅魔館の主、レミリア・スカーレットによく似た少女。七色に輝く翼が生えているということは、あれが噂の“悪魔の妹”なのだろう。白目と黒目が反転し、金色に光る瞳がとっても幻想的。噂によればありとあらゆる物を破壊することが可能であり、その気になれば山やら谷やら、国すらもキュッとしてドカーンだとかどうとか。
最後の一人は言うまでもない。藤原妹紅だ。噂によれば千年以上も昔、当時最強を極めていた妖怪一億を率いた“妖怪の賢者”八雲紫が月へと侵攻し、返り討ちにあってただ一人だけ帰って来た。月の戦力はたったの一人。月人と呼ばれる存在が億を越える妖怪を殲滅したのだ。
そして、妹紅はそんな月人と
全体的に尾ひれ背びれが付きまくった噂であるが、大抵の場合噂とはそんなものであるし、今更それが嘘だったと知ったところでどうでも良いことだ。
何せ、赤蛮奇は確実なる死を幻視してしまった。もはや何かを考えることも難しい。体の芯から来る震えに抗えず、彼女はただ断罪の時を待つばかり。
しかし、それに割り込む者が一人。
「ストップストーーーーーーップ!! 美少女は仲良く!! な!? なっ!!?」
そう、横島だ。横島は赤蛮奇を背に庇い、必死に妹紅達を説得する。もはや土下座せんばかりの勢いだ。
「この子もきっと悪気があったわけじゃないって!! 影狼を泣かせたなとか、影狼から離れろとか言ってたし、俺があの子を泣かせちゃったのがいけないんだって!!」
確かにその通りではあるだろう。しかし、人里内で無闇に弾幕を撃ち、あまつさえ横島に血を流させた赤蛮奇に対しての怒りはそう簡単には静まらない。
一向に治まる気配のない三人の怒りのオーラに涙目になってしまう横島だが、そこに援軍が現れる。
「あ、あの……すみませんでしたっ!! 私が泣いてしまったことでこれほどの騒ぎになってしまったんです!! こ、殺すのなら、あの子じゃなくて私を――!!」
「何言ってんだ!? せっかく助かった命を投げ捨てるんじゃないっ!! 病に冒された人も言ってたぞ!! 『命は投げ捨てるものではない』って!!」
「で、でも……!! でもぉぉぉ……!!?」
「大丈夫だって!! ああ見えて妹紅達は優しい女の子だから!! 今は怒ってるけどきっと許してくれるから!!」
チラリと妹紅達を盗み見る。
「……」
怒りの炎、未だ止まず。ついつい冷や汗が噴き出てしまう。
数秒の沈黙の後、横島は最終手段に訴えた。
「……後で、出来る限り皆の言うことを何でも聞くから、どうか勘弁してやってくんないかなー、なんて……」
「横島がそこまで言うなら仕方ないな」
「そうですね。他ならぬ横島さんの頼みですしね」
「今回はお兄様に免じて許してあげるけど、次はないからね?」
怒りの炎、鎮火。
三人からはまるで横島のような煩悩オーラが溢れている。これも横島の恋人になったせいなのだろうか。しかしそれぞれのオーラは横島とは比べるべくもなく薄い。これからの成長に期待、といったところである。
「……」
赤蛮奇は呆けた様に影狼と安堵の息を吐きつつ抱き合っている横島を見上げる。何故自分を助けたのだろうか。里の中で弾幕を撃ち、怪我をさせたというのに。何故、自分を……?
――この男……聖者か……!!?
赤蛮奇は圧倒的な死の恐怖から開放され、残念な子になっていた。
「――へっくしょい!!」
「どしたの、風邪?」
「あー、いや、誰かが私の噂でもしてるんじゃないですかねぇ?」
その日その時、人里のどこかで肩に掌サイズの女の子を乗せた天邪鬼の少女が、盛大なくしゃみをしていた姿が確認されたという。
「……さて、人がまた集まってきたな」
「まあ、これだけの騒ぎになればなあ」
横島の呟きに妹紅が続く。一応解決したとはいえ周囲からの視線は恐怖や非難に満ちている。横島は考えを巡らせるが……上手い考えは思いつかない。
「とりあえず……慧音先生の家に逃げるか」
ぼそりと呟いたのは逃げの一手。妹紅達に視線で問えば、即座に首肯を返される。妹紅は影狼を肩に担ぎ、美鈴が赤蛮奇を背負う。
「……あの、これは一体……」
「ごめん、舌噛まないように気を付けてな」
「え? ――えええぇぇぇぇぇっ!!?」
横島達は、全力で走り出した。
彼等が本気を出せば普通の人間である里の者達では追いきれない。逃走はいとも簡単に達成できた。あとは慧音の家まで走り、以前のお礼と今回の後始末をお願いするだけだ。
……明らかに災難続きな慧音に幸あれ。
「あ、そうそう。お前にはちゃんとお仕置きするからな」
「えええぇぇっ!!?」
「そうですね。せめてそれくらいはしませんと」
「クスクスクス……壊さないように気を付けなきゃ……」
「おいおい、ちょっと皆落ち着けって……。さっきのでこの話は終わったはずだろ?」
お仕置きを持ちかける妹紅に賛同する美鈴にフラン。それに反対する横島に、赤蛮奇の好感度は鰻登りだ。
「やはり……聖者……!!」
赤蛮奇は今もなお残念な雰囲気を纏っている。彼女が正気に戻るのは、いつになるのか……?
第四十六話
『人里での再会』
~了~
「――へっくしょい!! ……あ゛ー、もしかしたら本当に風邪かな」
「大丈夫か? 何なら私が治してやろうか? 私が毎晩布団の中でぎゅっと抱き締めてやれば、風邪なんていちころだぞー?」
屈託のない笑顔を浮かべる小人の少女の台詞に、天邪鬼の少女の胸が高鳴る。
「……ははは、いやですねぇ。さっきも言いましたが、誰かが噂してるだけですよ。それより、姫も気を付けたほうがいいですよ? 今日は風が強い。風が強い日には風邪を引くと言いますしねぇ」
「んー? ならさ、私が風邪を引いたら看病してくれる?」
「いやですよ」
「そうかー……」
「まあ、でも……」
「……?」
「看病はしませんが、
薄く笑って流し目を送る天邪鬼に、小人の少女の胸が高鳴る。
人里では、ごく稀に小人と天邪鬼の二人が仲睦まじげに過ごしているのが見られるという噂が流れている。
うーん、全然話が進んでないなぁ……。
ちなみに最後に出てきた二人はそれなりに幸せに過ごしています。
煩悩漢の世界では何やかんやの後霊夢やら紫やら雷鼓やら皆と和解……してるんじゃないかなぁ。多分。きっと。
次回は慧音の家でのお話ですね。
赤蛮奇のお仕置きに関しては……メイド服って似合うかな。
それではまた次回。