東方煩悩漢   作:タナボルタ

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お待たせいたしました。

今回から試しにしばらく短めの文章量で投稿してみます。
やりやすかったら短めが続くかも?


第三十九話『はたては彼のファン』

 

 その日、“姫海棠(ひめかいどう)はたて”は朝早くから妖怪の山のあらゆる場所に出現した。彼女は引きこもりなのだと周りから認識されている。そんな彼女が鼻歌交じりに山の中を徘徊し、にこにこと笑いながら写真を撮りまくる姿はいっそ不気味であった。

 現在の時刻は昼過ぎ。これまでノンストップである。

 

 彼女、姫海棠はたては美少女である。少々癖のある茶色のロングヘアーを紫色のリボンでツインテールにし、襟に紫のフリルが付いた薄いピンク色の短袖ブラウスに黒のスクエアタイ、黒と紫の市松模様が描かれた短めのスカート、そして黒のハイソックスを着用している。有り体に言ってしまえば、外の世界での“今時の女の子”、といったところか。

 腰にはカメラを入れるための茶色く小さなポーチを着けている。

 彼女が使うカメラは文が使うようなカメラではなく、その形状は外の世界で言う所の折り畳み式のガラパゴスケータイ、通称ガラケー(携帯電話)に酷似している。

 このカメラは河童製であり、完全防水。また、はたての能力、『念写をする程度の能力』の特化した作りになっているようだ。

 

「出ろ~、出ろ~……!!」

 

 さて、そんな彼女が今妖怪の山のどこかにある小川の縁にある大きな岩に腰掛け、カメラを何かに祈るように……いや、念じるように頭上へと掲げる。どうやら念写を行っているようだ。

 ――カシャリッ、とカメラから音が鳴る。どうやら念写自体は終えたようだ。問題は自らが求める写真を撮れているかなのだが……。

 

「あ……っ!!」

 

 はたての表情がパァっと明るくなる。お目当ての写真を撮れたようだ。彼女は少々はしたなく顔を歪めながら、軽く口笛などを吹いて撮った写真を吟味する。

 

「んっふふー、いい感じいい感じー。これでまたコレクションが増えた……♪」

 

 写真を保存してご満悦のはたて。そんな彼女の背後に、何者かの影が迫る。

 

「……ん?」

 

 背後の森からガサガサと音がする。一体何だろうかとそちらを向けば、その瞬間に音は止んだ。はたては首を傾げつつも気を取り直し、もう一度念写をしようと集中すると、またも背後からガサガサと音がする。

 

「……何よ、もー」

 

 集中が阻害されて不機嫌になり、念写に回すはずだった妖力を手に集める。先ほどの音は明らかに自然に発生した音ではない。()()()()()()()()()()()()。はたてはそう直感した。もしや、最近噂になっている異変の主か。はたての警戒レベルが上がっていく。

 今度は音が止まない。はたてが真っ直ぐに見据える場所、そこから何者かの影が浮かび上がる。そいつは真っ直ぐに歩いてくる。はたては緊張からこめかみに一筋の汗を流す。やがて現れたのは……。

 

「……どうも、はたてさん。お久しぶりです」

「……あんた、椛?」

 

 それは彼女の友人の一人、犬走椛だった。彼女は珍しくこんな時間に武装もしておらず、何故かやや申し訳無さそうにはたてを見ている。

 

「何だ、警戒して損したー。それにしても、何かあったの? あんたが仕事さぼってこんなとこに来るとは思えないし……」

「ええ、その。何というか……すいません」

「へ?」

 

 椛の突然の謝罪。意味が分からず首を傾げていると、ふと自分に影が差したように視界が暗くなった。曇ってきたのかな? と視線を空へとやってみれば、

 

「わっっっ!!!!」

「ひゃあああああぁぁぁぁーーーーー!!!?」

 

 文の顔がドアップで目に飛び込んできた。しかも鼓膜が破れるのではないかという大声付き。哀れはたては文の仕掛けた悪戯で心底驚き、絹を引き裂くような悲鳴を上げてしまうのであった。

 

 

 

 

第三十九話

『はたては彼のファン』

 

 

 

 

 

「あやややや……」

「……も~、何なのよぉ~」

 

 はたてが泣きそうな声で文に文句を言う。それもそうだろう。彼女は小川の縁にある岩に座っていたのだ。そこを思い切り驚かされれば、言わずもがなというわけだ。

 

「うう、全身びしょびしょじゃないのー……」

 

 はたては川に転落した。幸いと言っていいのかは微妙だが、小川自体の深さなどは大したことなく、精々が立っていれば膝まで浸かるくらい。まあ、はたてはそこに転がり落ちてしまったのだから全身が濡れてしまったのだが。

 

「ごめんごめん、まさかそこまで驚くとは思わなくて……」

「あんなの本気で驚くに決まってんでしょうがー!! 下着までびっちょりよ、どうしてくれんのー!!」

「ふむ……全身濡れ透けのはたて……。これは売れる!!」

「ちょ!? こら、撮るなーっ!!?」

 

 文ははたてにごく軽い謝罪を済ませると遠慮呵責無しにはたてのあられもない姿を激写し始めた。しかも明らかに販売目的であり、あまりにもあまりな文の振る舞いに椛の目がどんどんと細められていく。しかし彼女はそれを止めようとはしない。何故ならばこれがいつもの光景だからだ。

 文がからかい、はたてが怒り、椛が深刻にならない程度の領域で止める。もう何度これを繰り返したことか。おかげで椛は性格から徐々に固さが取れていったのだが、その分文やはたての種族である鴉天狗を若干軽視するようになってしまった。これは完全に上司である文達のせいであるのだが、当の本人達はそれに気付かずもっと敬えと言う。椛が思わず鼻で笑ってしまったのも無理はないだろう。

 

「もー! いい加減にしないと本気で怒るわよーっ!!」

「いいじゃないの減るもんじゃないんだし!!」

「私の濡れ透け姿の希少性が減っちゃうでしょうがー!!」

「……はいはい、もうそろそろ馬鹿な争いはやめてください。特に文さん、これ以上無体を働くなら天魔様に言いつけますよ」

 

 と、ここで椛がようやく仲裁に入る。この時椛が出した“天魔”とは文達天狗の頭領。そして妖怪の山のトップである鬼神の名代として妖怪の山を取り仕切っている存在だ。

 文も実力は天狗の中でも最上級とはいえ、天狗社会は縦社会。しかも実力で決定するのではなく種族で決定するのだ。彼女の階級は精々が上級の中でも中間程度。最上位に位置する天魔に告げ口をされては、どうなってしまうか分からない。

 

「このケチ! 椛!! 犬ー!!!」

「誰が犬ですか!!」

 

 文は椛を大声で罵りながらも潔くカメラを差し出す。誰だって上司から怒られるのは怖いのだ。椛は慣れた手つきでカメラのフィルムを()()()()()()取り出した。それはもう盛大にびろーんとフィルムが伸びている。陽の光を浴びたフィルムは使い物にならない。これではたても安心だろう。

 

「まったく……はたてさん、立てますか?」

「ああ、うん。ありがと、椛」

 

 はたては椛が差し出した手を握り、立ち上がる。服も髪も、余す所なく完全に水浸しだ。妖怪とはいえ、このままでは風邪を引かないとも言い切れない。

 

「うぅー、寒い。一旦家に帰ったほうがいいかなー。お風呂入ろう……」

「ごめんね、さすがに調子に乗りすぎたわ。ま、それはそれとしてはたてが知りたがっているであろう情報をあげるから、ついて行ってもいい?」

「あんたって奴は……。家についてくるのは構わないけど……私が知りたがってる情報……?」

 

 はたては文の言葉に首を傾げる。これといって思い当たることはない。いや、あるにはあるのだが、それを文が知っているわけがない。何せ()()()()は誰にも話していないのだ。ならば、文の言う自分が知りたがっている情報とは……。

 

「紅魔館……執事……念写……」

「さあ早く行きましょう我が家に。歓迎するわよ、盛大にねー!!」

 

 はたては先ほどまでとは打って変わって元気が漲っている。いや、元気と言うよりは興奮していると言うべきか。文に耳元で囁かれた彼女の頬は赤く染まっている。それは()()()について知れる喜びからくるものなのか、それとも文に色々と見透かされている焦りからくるものなのか。

 

「……何を言ったんです?」

「あんたの知りたいこと教えるよー、って」

「……なるほど」

 

 椛は得心したようで、はたてを生暖かい目で見る。何とも微笑ましいことだ、と椛は内心で呟く。彼女ははたてが異性と恋仲になったなどという話は聞いたことがない。勿論自分が知らないだけであるという可能性もあるにはあるが、それならば文が一応は友人である自分に教えてくれるはずだ。今までも色恋の話はしたことがあるし、2人の性格を考えても自分に嘘を吐く理由はないはずだ。

 

 ――もしかして、初恋?

 

 ふと思う。はたては引きこもりだ。自分や文と比べて人付き合いが少なく、また交友関係も相応に狭いだろう。ならば、今までろくに恋も知らずに生きていてもおかしくはない。

 椛はある種自分好みの設定をはたてに付け加えていく。確かにはたては引きこもりだが、ちゃんと仕事はこなしているし、寄り合いや会合などにもきちんと出席している。ビジネスライクな付き合いが多いことは否定できないが、それでもちゃんと人付き合いは出来ているのだ。

 椛が思うに“引きこもり”という言葉のイメージが悪いせいだろう。彼女が家にこもりがちなのは、新聞を作るにあたって念写という能力を使用しているからだ。その場にいなくても現場の写真が撮れるその力は、彼女に足を使って取材するという方法を取らせなかった。

 正直な話、「この面倒臭がりやが」と思わないでもない椛だが、自分だって千里眼という能力を持っているのだ。はたての気持ちも少しは分かる。

 だからこそ椛にとって文よりもはたての方が友人としての比重が大きい。突拍子のない話を振ってきたり、自分を物理的に振り回したりしてくる文よりは、引きこもりでも面倒臭がりやでも、まだ大人しいはたての方が気が合うのだ。

 

 しかし、椛はその認識が甘かったことを痛感することになる。

 はたての家に着き、自室に通されてまずはお茶を一杯。「私はお風呂に入ってくるから、暇つぶしにでもこれを見てて」と渡された3冊の本。それはアルバムだ。

 

「……」

「……」

 

 自分はおろか、あの文ですら冷や汗を流し沈黙している。むしろドン引きというか、若干の恐怖すら味わっている。

 それもそうだろう。目の前のアルバムは一冊100頁はあろうかという分厚さを誇っており、それには()()()()()の写真がギッシリと詰め込まれていたのだ。それも3冊全てに。

 椛は引きつる顔を無理矢理意識せずに問い掛ける。

 

「……あの、文さん?」

「……何かしら、椛」

「この男の人、幻想郷に来てから、ふた月と経ってないんですよね……?」

「ええ、そうだけど……」

 

 再び沈黙が場を支配する。しかし、よくよく気がつけば何かがカタカタと音を鳴らしている。その発生源を見れば、湯飲みが振動していたのだ。いや、湯飲みだけではない。ちゃぶ台もだ。地震でも来たのかと思ったが、何のことはない。震えていたのは湯飲みでもちゃぶ台でもなく、自分の身体だったのだ。

 

「……それでは私はこの辺で」

「待ちなさい」

 

 恐怖に負けて明後日の方向を見ながらお暇しようとした椛の手を、文ががっしりと掴む。そこには“絶対に逃がさない”という意思がはっきりと表れていた。

 

「ちょっと、離してくださいよ!! いくらなんでも今回は怖くて付き合いきれませんって!!」

「私だって怖いのよ!! でもはたてに情報を教えてあげるって約束しちゃったんだから逃げるわけにもいかないし、だったら道連れは居た方がいいし!!」

「何でこういう時にそんな友情を発揮するんですか!? あと友情を発揮するなら私にも『ここは私に任せて逃げろ』くらい言ってくださいよ!!」

「じゃあ上司命令ですー!! このまま大人しく私と運命を共にしなさいな!!」

「汚いな!! さすが鴉天狗汚い!!」

 

 2人は小さな声で叫びながら言い争う。互いが必死になって何とか相手をやり込めようとするのだが、そんな事をしていたせいで風呂からはたてが帰って来てしまった。その速さはまさに烏の行水と言えるだろう。

 

「何やってんのー、2人とも?」

「ひえぇっ!?」

「い、いやー、何でも!! 何でもないわよ!?」

「……そう? それじゃさー、早速この人のことなんだけどねー?」

「あ、ああ、はい。そうですね」

 

 ひとまず文は彼――横島――が異世界の住人であるということは話さず、当たり障りのない部分のみを教えていく。紫と永琳(てゐ)のミスにより幻想郷へ墜落したことや、紅魔館での立ち位置、更には周りの女の子との距離感までも。

 

「――とまあ、こんな感じね。横島さんについての情報は以上よ」

「なるほどなるほど……横島さんっていうんだ。ありがとね、文。これで念写の精度も上がるってもんだわー」

「ああ、うん。念写、念写ね……」

 

 はたての言葉に文は「まだ念写するの!?」と戦慄する。ちらりとアルバムに目をやれば、椛が目を通している最中だった。文が説明している間暇だったのか、それとも現実から目を背けているのか、椛は文達の方を一切見ずに黙々と頁を捲る。

 

「ところで、あの写真の量は……」

 

 若干の恐怖が宿った目で文ははたてに問う。はたては照れ臭そうに頭を掻き、視線を逸らしながら何故あれだけ膨大な数の念写を行ったのかを明かす。

 

「いやー、最初は今話題の異変の念写をしてたんだけどね、出てくるのはグロ画像ばっかでさー。気分転換に“何か面白いもの”って念じながらね念写してみたのよ。そしたらあの横島さんが写ってね? 何というか、その時の写真がいい感じだったからさー、ついつい何度か念写しちゃってね。それからはずっと横島さんのこと考えるようになっちゃって、気が付いたらもうずーっと念写してて……」

「それで、あの量……」

 

 理由は思ったよりも可愛らしいものだったのだが、いくらなんでもこれは撮りすぎではないだろうか。はたて様子を見る限り、本人もやり過ぎたとは思っているようだが、未だに念写を続けているようであり、これが今後改善されるとは思えない。

 文が友人の所業に戸惑っていると、そこでぽつりと椛が呟いた。

 

「……私は、はたてさんの気持ち、分かりますね」

「え゛」

「本当!?」

 

 文は信じられないとばかりに首をぐりんと回転させ椛に振り返り、はたてはキラキラとした目で椛を見つめる。

 

「私も千里眼なんて能力を持ってますからね、かなり昔のことですが、いけないこととは理解していても、気になる男性のことをじっと観察……いえ、見てしまっていましたし」

「あー……」

 

 なるほど、と文は頷いた。確かに千里眼を持っていたら自分も気になる彼を観察してしまうかも知れない。それを考えるとはたてのことも理解出来る。量が量だけにドン引きしてしまったが、念写出来るなら自分もしているだろう。

 視界にははたてと椛が互いの能力について語り合っている姿が映っている。珍しく椛も楽しそうで、無理矢理に椛を連れてきた甲斐があったというものだ。

 

「……あんた達の気持ちは分かったけど、だからってやり過ぎはいけないのよ? これ完全に横島さんのプライベートが丸裸になってるからね?」

「……ぜ、善処するわ」

 

 とりあえず理解はしたが納得は出来ぬとばかりに文は突っ込んだ。はたては視線を逸らしながらだがちゃんと返事をしたので今回はここまでとしよう。自分はちゃんと止めたのだし、これが横島に露呈したとしても、自分は彼と彼の周りの人物にそこまで咎められないだろう。そう思うと途端に気が楽になってきた。

 

「それで、はたてのお気に入りの一枚はどんな感じの写真なの?」

 

 思わずそんなことを聞いていた。はたては待ってましたと言わんばかりに大きく頷き、棚からまたも分厚いアルバムを取り出した。

 

「……まだ、あったの?」

「うん。こっちはお気に入りの写真を入れてるんだー。それで、1番のお気に入りはこれねー」

 

 ドン引きする文に気付かず、はたては一枚の写真を指差す。その写真は、横島が紅魔館の妖精メイドを膝枕し、優しげな笑顔で頭を撫でてやっている写真だった。

 

「おぉー、これは確かにいい感じの写真ね」

「そうですね。この方の優しさが伝わってくるようです」

「へへー、そうでしょ。これが初めての横島さんの写真なのよねー。まだ成人してないらしいけど、これだけ大人っぽい笑顔を浮かべるのは素敵だわー」

 

 はたてはにこにことしながら写真について話していく。こうやってお気に入りの写真を見ていくと文や椛も色々と気になってくるようで、先ほどまでの恐怖やら戸惑いやらをすぽーんとどこかに放り出して写真談義を始めてしまった。

 

「あやや、これは何ともセクシーな……」

「うむむ、中々に鍛えられてますね。欲を言えばもっと筋肉を付けた方が魅力的ですが……」

「何言ってんのよー、このくらいが1番良いんじゃないの。一見ほっそりしているようで、実は筋肉質っていうのが良いの。筋肉モリモリなんて暑苦しいだけじゃないの」

 

 美鈴との鍛錬の後だろうか、上半身裸に水を被って汗を洗い落とす横島の写真についての語り。どうやらはたては細身が好みで、椛は筋肉質なのが好みのようだ。

 

「これは……顔面が崩壊してるわね……」

「まあ何というか、これもお気に入りなんですか?」

「え? 女の子に鼻を伸ばしてるところって可愛くない?」

「嫉妬心とかは無いんですか……?」

「それはそれ、これはこれよ」

 

 次の写真は何故か露出の多い美鈴の姿に横島が鼻の下を伸ばしているところ。はたてには可愛く見えるようだが、これは流石に椛には伝わらなかったらしい。そしてそれとは別に自らの薄めの胸に手を当てているあたり、一応は巨乳の美鈴とそれにデレデレしている横島に嫉妬心を持っているようではある。

 

 その後も女3人寄れば姦しいの言葉通りにキャイキャイと写真ではしゃぐ3人だったが、ふと文が時計を見れば、既に夕刻と言ってもいい時間。ここで文は2人に提案をする。

 

「ねえ、2人とも。今から横島さんに会いに行かない?」

「え?」

「ええぇっ!?」

 

 その提案に2人は驚きを隠せない。特にはたては思い切り驚いている。

 

「実は紅魔館に用があってね。いい機会だから2人も一緒にどう?」

「私は別に構いませんけど……」

 

 椛ははたてに視線をやる。彼女は何やら困惑しているようだ。いきなり行っても大丈夫なのか、こんな時間に失礼ではないか、などと頬を赤く染めて呟いている。

 そんなはたての姿に文は「おやおやこれは」と内心でニヤニヤと笑う。文は紅魔館と新聞の定期購読の契約をしているし、それは横島とも同様だ。なので、彼女にとって紅魔館は馴染みの場所であるし、意外と良好な関係も築けている。このくらいは問題ではないのだ。

 

「大丈夫、私は紅魔館のみんなと仲良くさせてもらってるし、横島さんとも定期的に会う関係だから」

「――え」

 

 ここで文ははたてをその気にさせるべく爆弾を落とす。定期的に新聞を届けに行っているのだから当然のことなのだが、はたてはそれを知らない。横島の情報を教える際にもこのことは伝えなかった。

 

「私と椛は行くけど、はたてはどうする? このまま家で休んでる?」

「私も行く」

 

 はたては文の問いに即答した。何やら鼻息を荒くし、気合を入れている。

 これは面白そうなものが拝めそうだ。文はニタリと粘着質な笑みを浮かべた。隣の椛はドン引きである。

 

「それじゃ紅魔館に行きましょうか。ふんふふーん、今日の紅魔館の晩御飯は何だろなー♪」

「……文さん、それが目的だったりしませんよね?」

 

 こうして3人は空を飛び、紅魔館を目指す。そこで何が待っているのか、文は面白いことが起こるように念じる。この願いが叶うかどうかは、誰も知る由も無い。

 

 

 

 

 

第三十九話

『はたては彼のファン』

~了~

 




お疲れ様でした。

タイトルにある通り、はたての横島に対する気持ちはファン心理がほとんどです。
一応一目惚れと言えますし恋心も抱いてますが、はたてが本当に本気になるかどうかは横島と会ってからですねー。

……ところで椛ってケモミミなんですかね。普通の耳なんですかね。
個人的にはケモミミ派ですが、お燐みたいに両方っていうのも好きなんですよね……。

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