緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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83話<前夜祭>

変装食堂のクジで決まった衣装の準備締め切り前夜

 

キンジ達は教室に集まり衣装準備のラストスパートをかけていた

もし明日の朝までに準備出来なかった場合、それはそれで教務科による体罰フルコースが待っている・・・

なので皆、まずは生きて学祭を迎えるために何としても今夜中に仕上げようと奮闘していた

 

そこに・・・

 

「よう?衣装制作進んでるか?」

と大きな武器ケースを担いで教室に入ってきたのは・・・

「あ、氷牙、お前はもう衣装出来たのか?」

「ああ、デザインまとめて次の休日には凛香とレキ連れて材料買い出しに行って後は毎晩カンヅメで制作したよ。おかげで3人とも早めに完成した」

「そうか・・・にしても・・・」

 

氷牙の服装は・・・下半身は黒のレザーパンツにミリタリーブーツ、上半身はオープンフィンガーグローブに素肌に赤のロングコートを前は開けた状態で着ていた

 

「なんていうか・・・・お前、悪魔ハンターっつーかパンクロッカーみたいだぞ?」

「それは言うな・・・なんでか分かんねえけどあのクジ見た直後に頭の中にこの衣装が鮮明に浮かび上がったんだよ・・・まあ見えなくはないし別にいいだろ?大体、本当に悪魔ハンターがいるとしてそいつがどんな格好してるのか誰か知ってんのか?」

「それを言ったら身も蓋もないな・・・」

「それに人の衣装の事心配してる余裕なんてあるのか?お前は間に合うのか?」

「それなら大丈夫だ、衣装はもう出来てる」

と言って既に完成している警官衣装を見せてきたが

 

「・・・お前の事だからどうせCVRの連中に制作してもらったんだろ?ぼったくられたんじゃね?」

「・・・まあな、結構吹っ掛けられたよ・・・まあその分出来は申し分ないけどな・・・」

「ったく・・・そんなんだから年中金欠なんだよ・・・少しは家事覚えろ?何だって自分でやれば安いもんだぞ?」

「お前な・・・あいにくだがここにいる全員がお前や理子や白雪みたいに自分で衣装を作れるような奴ばかりじゃないんだよ・・・」

「練習すればできるだろ?実際レキも裁縫経験ないのに俺と白雪と凛香の3人がかりで教えたら次の日には手縫いだけで衣装仕上げたぞ?縫い目なんてミシンで仕上げたみたいに精密だったし」

それはあいつだからできる芸当だ・・・

キンジはそう言おうとしたが止めた、こんな常識が通用しない連中にまともに突っ込んでいたら疲れるだけだ・・・

 

「ところで氷牙?さっきから担いでるそのでかいケースなんだ?」

「ああ、これか?これは・・・」

「あややが作った氷牙君専用の武器なのだ―!!」

と、氷牙の後ろからぴょこんと出てきた平賀ちゃんが自慢げに発表したが

「って、うおっ!?平賀さん!?何だよその顔!?」

キンジは腰を抜かしそうなほどに驚いたが無理もないだろう・・・

なにせ今の平賀ちゃんは・・・服はラメが入った細いドレスを着て髪を上に盛って顔はケバケバなヤマンバというか・・・ぶっちゃけて言えばピエロみたいな化粧をしているのだから・・・

 

「平賀さんって・・・ハーレークィーンでもやるのか?」

「あははっ、遠山巡査ったら氷牙君と同じく冗談がうまいのだ―!」

「あー・・・これでも一応『カリスマキャバ嬢』だそうだ・・・」

「マジかよ・・・なんでそんなもん引き当てちゃったんだ・・・」

体系的に合ってなさすぎる・・・学祭が始まる前に・・・既に一人、懲罰フルコース犠牲者が確定したな・・・

 

「それと遠山君にもこちらをお届けなのだ!」

そう言ってキンジにもオープンフィンガーグローブを渡す

「特注指甲OFG『オロチ』!!ひとまず右手が出来たから先に渡しておくのだ!」

「ああ、ありがとう」

そう言ってキンジはグローブを装着すると、親指は半分、人差し指と中指は第一関節まで、小指と薬指は第二関節まで防弾布で覆うアンバランスなものになった

おまけに手を開け閉めした際に微かに鳴った金属音・・・おそらく人差し指と中指は金属を仕込んで特に補強されている・・・まさか・・・

 

「お前まさか・・・東京駅で俺のマグナム弾を逸らしたあの技・・・銃弾逸らしを通常技にする気か?」

「まあ・・・この先使わざるを得ない事態にいくらでもなりそうだしな・・・」

「なあキンジ・・・言っちゃなんだがお前もいい感じに人間辞めてると思うぞ?手で銃弾逸らすなんて俺だって出来るかわからないしやりたくもない・・・」

「お前にだけは言われたくない・・・・・・それで?そっちは氷牙専用の武器ってことはあの大剣か?」

「ああ、それをさらに改造してもらったんだ。作ったはいいが持ってこれなくなったらしくてな・・・それで装備科の工房寄って来たもんだから遅れちまった」

そう言いながら氷牙はケースを床に置いて開けた

 

そこに収められていたのは・・・・

大きさこそあの時とはさほど変わらない大剣であったが

その大剣の最大の特徴である推進剤噴射機構は機関部はさらに拡張・改造されているらしく噴射口が形を変え、柄もまるでバイクのハンドルのような形をしていた

「どれ・・・」

そう言って氷牙は大剣を持ち

 

――ドルルルルルルッ――

 

柄を捻ると剣は推進剤噴射機構から大きな唸り声と爆炎を立て、皆の視線が一気に集中した

「うわっ!?おいおい・・・比叡山の時よりも出力上がってないか?音も爆炎もあの時よりもすごいぞ!?」

「ああ、俺も機関部の設計携わって出力も上げてもらったからな。・・・うん、なかなか重みもあるしいい感じだ」

「切れ味を捨てて強度を第一に作っているからもう刃はナマクラなのだ。だから斬るよりも叩き潰すように使うのだ!代わりに推進剤噴射機構の性能と出力もほぼ要望通りに出来てるのだ!後は実際に使ってみて欲しいのだ!」

「ああ、要望通りの改造ありがとね平賀ちゃん」

「礼には及ばないのだ!あややも人間外の武器を作るという貴重な経験が出来たのだ!」

「そりゃ何よりだ」

氷牙は大剣を軽々と振り回すと背中に背負った

「お?なんか大剣背負うとハンターっぽいな?」

「そうか?なら学祭中も背負ったままでいるか」

そして平賀ちゃんは「そうだ!」っと言った感じにまたしても頭に見えない豆電球を灯すと

「あと氷牙君!この剣の銘を考えてほしいのだ」

「この剣の?」

「そうなのだ!この剣はもう氷牙君のために作った氷牙君だけが扱える氷牙君専用の剣なのだ!だから名づけも氷牙君がしてほしいのだ―!」

「そうだな・・・じゃあ何か考えとくよ」

「のだー!決めたら教えてほしいのだ―!」

と言って両目を瞬かせると平賀ちゃんは武藤達の方へ行った。たぶん今の・・・ウィンクのつもりだったんだろうな・・・出来てないけど・・・

 

 

「そう言えばレキと凛香はどうした?一緒じゃないのか?」

「ああ、二人共、理子や白雪と一緒に衣装合わせで隣で着替えてるよ。そろそろ終わるんじゃないか?」

そう言うと・・・

「キンちゃん?氷牙君?さっきすごい音がしたけど何かあったの?」

と言って白雪が入ってきた

 

「あ、どうかなキンちゃん?私の先生姿、どこかおかしくない?」

そう恥ずかしそうに聞きながらキンジに見せてきた白雪の装いは、白いブラウスに紺色のタイトスカートに黒ストッキング、髪も後ろに結って眼鏡をかけ、もともと母性もあるからまるで本当に小学校の新米教師みたいだ。

 

けどな白雪・・・そのブラウスで背筋伸ばすな・・・薄手で細身のブラウスで背筋なんぞ伸ばしたらただでさえ大きい胸がぱっつんぱっつんに張ったブラウスで余計強調されてるぞ・・・

キンジもそれに気付いたのか

「いや、似合ってる、小学校の先生っぽいよ」

と直視しないように横目に答えた

そしたら白雪もデレデレとした笑顔を持っていた出席簿で隠しながら

「だめだよ・・・今だけは・・・先生じゃなくて白雪って呼んで・・・これは私と遠山君の・・・二人だけの特別授業なんだよ・・・」

と呟いていた。脳内で何の特別授業してるんだお前は・・・

 

一人トリップしている白雪を放ってキンジが作業に戻ろうとしたら

「凜香さん、足元だけでなく頭上にも気を付けてください」

「う、うん・・・ち、ちょっと動きづらいな・・・」

続いてレキが凛香の手を引いて教室に入ってきた

 

「お、レキ、凛香も着替え終わったか?」

「はい、凜香さんの着替えが少し時間がかかりましたが問題ありません」

白衣と萌葱色のブラウスを着て眼鏡をかけて研究員の服装のレキに手を引かれて教室の扉をくぐってきた凛香に全員が目を釘付けにされたがそれも仕方がない事だった

 

凛香の装いは・・・

 

蒼を基調とした精緻な装飾が施された司祭のような衣装にウェディングドレスのように白く長いスカート

唯一さらけ出されている肩や腕には、こちらも精緻な装飾の施されたマントのように大きな蒼いストールを纏いその身を守護するかのように包み込んで

頭部は権威を示す宝冠のような装飾が付いた顔の部分だけが半透明なヴェールで覆われて神秘的な雰囲気を醸し出していた

 

「衣装デザインは俺が凛香の雰囲気を元に書き上げた。おかげで凛香のイメージも損なわない女神像になっただろ?」

「ええと・・・どうかな?」

そう聞くとクラスの皆は

 

「女神だ・・・」「女神様よ・・・」「女神・・・」「武偵校に女神が舞い降りた・・・」

 

と口を揃え、まさに女神以外の何でもなかった

 

「良かったな?第一印象は好調だ」

「うん、でも・・・」

「でも?なんだ?」

凛香は苦笑いをすると

「結局女神の格好になったのはいいけど私は何をどう振るまえばいいのかな?」

「理子の漫画からでも適当にイメージ見繕ってふるまっとけ。どうせ本物の女神がどうかなんて誰にも分んねえんだからな」

「うん・・・そうするよ・・・それともう一つ疑問なんだけど・・・」

「なんだ?」

「この格好で飲食店の仕事ってできるのかな?こんな引きずりそうなスカートやぶつけそうな大きいストールを身に着けていたら・・・調理は無理だし・・・接客は動きづらいし店内も狭いから邪魔になるよ・・・」

「何言ってんだ、凛香は宣伝兼受付担当だよ。当日はその格好で店先立って注目集めて客を呼び寄せてくれ。大体どこの世界や宗教にウェイトレスやコックの仕事をする女神がいるんだよ?」

「ええと・・・いいの?」

「別に構わないだろ?」

クラスの連中にも構わないか尋ねると

 

――こくこく――

 

と全員が頷いた

「てなわけで全員も了承済みだ」

 

 

 

そして

 

――ドガンッ――

 

と誰かが踵に拍車が付いたレザーブーツでドアを蹴り開けて・・・

 

ジャキッ、ジャキッと金属音の混じった足音を立てながらこちらに来て

 

机を挟んでキンジの前に立つと机に手をついて百円玉を置き

 

「マスター、いつもの」

 

とキンジに注文してきた

 

「・・・・・・ここはバーじゃない。飲みたきゃ下の自販機まで自分で買いに行け、理子」

キンジが顔どころか目もくれずにそうあしらうと理子は

「ぶー、キー君ノリ悪い―!せっかく西部劇風の登場したのにー」

確かにここまでの流れは見事に様になってるよ、衣装も見事に着こなしてるしな・・・

 

理子の装いは

拍車が付いたレザーブーツを履いて、頭にはテンガロンハット、胸の前で結んだ生成のブラウスに革紐が付いたデニムのミニスカートを着て、腰の拳銃も衣装に合わせたリボルバーとまさに女版の『ガンマン』の装いになっていた。

だがそんなヘソ出して足も出して胸元も出してのヒステリア誘発要素満載の服装じゃキンジは余計に関わろうとも見ようともしないだろうな

 

「ところでキンジ?お前さっきから何してんだ?」

キンジは先ほどから警官の制服を揉んだり、バッジを引っ張ったり、擦り付けたりという意味が分からない作業に勤しんでいた。

 

いや・・・よく見ればキンジだけじゃない・・・周りの皆も同じ様な作業に没頭している。ようやくトランス状態から帰ってきた白雪は出席簿の角をヤスリで削っているし、武藤に至っては消防服をバーナーで炙っていた

「規則読んでないのか?衣装に使用感や細かい傷をつけてるんだよ。『汚れやヨレといったリアリティーが無いのは論外』らしいからな」

「そうか・・・確かにそんな新品じゃ着られてる感じ出ちまうだろうしな・・・・」

「それを言うならお前もその服新品だろ?ちゃんとやっとけよ?」

「ふむ・・・・」

氷牙は少し考えた後何かを閃いたような顔をして窓から教室を出ていこうとした

「おい?どこ行く気だ?」

「ちょっと試験も兼ねて衣装に味出して来る」

そう言って窓から飛び降りると行ってしまった

「味出してくるって・・・あいつどこに何しに行く気だよ?・・・・・・それと一応言っとくがアリア?それで隠れてるつもりなら残念だがツインテが隠れてないぞ?」

そう言うとドアの陰から片方だけはみ出ているピンクの紐みたいのがギクッ!?っと反応した。あれはどう見てもアリアのツインテだ

 

「ほら、観念して来なよ!大丈夫!可愛いから!」

「い、い~や~よッ~!!」

そう駄々をこねながらも理子に引っ張り込まれたアリアの服装は

しましまソックスにブラウスにスカート、背中にはリコーダーが挿してある赤いランドセルを背負って、極めつけは胸元には「4年2組かんざきアリア」とかいた花の名札

元々の背の低さと子供っぽさも相まってどこをどう見ても完全に小学生であった・・・

 

その姿を見た瞬間、

教室にいたクラスメイトの数人は足をつねったり腹を押さえて必死に笑いをこらえ

「く・・・・っほん、アリア、諦めろ。真面目にやらないと教務科に懲罰される前に蘭豹に処刑されるぞ、その服装のままで」

キンジは笑いを咳でごまかしてアリアを説得し

「え、ええと・・・似合ってはいるし違和感もないから恥ずかしがらなくてもいいと思うよ?」

凛香も一応褒めてフォローはしているようだがアリアにとっては似合っているから余計に恥ずかしいことに気付いていないんだろうか・・・

そして教室の中まで連れてこられ頭から煙を出さんばかりに顔を真っ赤にして俯かせたアリアに

「はーい、あなたのクラスとお名前は?」

白雪も口元を引きつらせながら先生の役を活用してアリアに問いかける。

ちなみに規則で「教室で衣装を着たら最低一時間はその役を振舞って練習する事」と定められているので相手が振舞ってる以上こちらも振舞って返事をしなくてはならない・・・

 

アリアは顔を真っ赤にした顔を上げるとスカートの裾を両手で握りしめ

「よ、よよよ、4年2組ィィッッ!!かんざきアリアァァッッ!!」

 

『ぶはぁっ!!』

 

その自己紹介でついに我慢の限界が来てクラスの連中が爆笑した

「笑うなぁ!!!全員風穴ぁ!!!!風穴センセーション!!!!!」

アリアは顔を更に真っ赤にして涙目でガバメントを乱射するが衣装の関係で予備マガジンが無くすぐに弾が切れて、羞恥心にも限界が来たのか・・・

 

 

「う・・・・ううううう・・・・・ううううう・・・・うわがにゃあああああああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 

 

奇声を上げながら猛烈な勢いで脱兎のごとく走り去ってしまった・・・

 

・・・あれ大丈夫なのか?アリアあの格好のままこんな夜中に外出たら本物のお巡りさんにマジで補導されるぞ・・・

そう思いはしたが誰も追いかけようとはしなかった・・・皆、自分の衣装の仕上げが残っているし・・・わざわざ自分から藪蛇に手を伸ばす勇気も暇もない。

 

唯一心配した凛香も

「いいの?追いかけないくて?」

「放っておいても明日には戻ってきます。万が一帰ってこなくても蘭豹先生が地の果てまで追いかけて処刑された後にここへ連れてこられます」

とレキに説明されていた

 

まあ、アリアもそうだけど氷牙もどこへ行ったかは知らないが明日の朝までには戻ってくるだろう

キンジもそう結論付けると作業に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝

 

「おっし!全員衣装の準備出来たか!?」

教室に蘭豹が入ってきた

 

昨夜の準備会も既に片付けも終わり、下げた机は全て戻し、皆それぞれの衣装を着て机に座っていた

 

だが・・・

 

アリアはどうにか登校できるまでには落ち着いて帰ってきた・・・その代わりどうしてか理子が何か落ち着きがない・・・それに・・・

「なんや?九狂の奴どうしたんや?」

ただ一人、氷牙の席だけは誰も座っていなかった

 

キンジが手を上げ

「それが・・・昨日の夜に衣装に味を出しに行くと言って出ていったきり帰ってこないんです・・・部屋にも帰ってないらしくてレキや凛香にも何の連絡もなくて・・・」

そういうと蘭豹は顔を引きつらせた

「・・・・・・まさかあのアホ・・・」

「蘭豹先生?何か心当たりがあるんですか?」

「ああ・・・実はな・・・」

蘭豹が何か言いかけたところで

「すいません、遅れました」

そう言って教室のドアが開き氷牙は帰ってきた

 

 

 

「ああ、遅いぞ氷――ッ!!」

氷牙を見た瞬間、キンジを初めそこにいたクラスメイトは全員ギョッとしたが当然だった・・・

 

なぜならそこにいた氷牙は

 

顔は眼帯を外して傷も黒目も露わにしてコートもあちこちに汚れや傷がつき右袖は肘から先がグローブごと引き千切れて無くなっており、悪魔の腕をちっとも隠すことなくさらけ出していた

 

だが何よりも怖いのは・・・

 

 

 

 

 

頭から爪先まで全身が血塗れになっている事だった・・・

 

 

何というか・・・とんでもなくサマになっており本当に悪魔どころか神でさえもハンティングしてしまいそうで怖ささえ感じられた

 

「お前なんで血塗れになってんだよ!?」

「いやー、強襲クエストはしごしてさ、ヤクザとマフィアの事務所やアジト何個か殴り込んだんだよ」

「やっぱしか!!今朝メール見たら強襲クエストが大量に受理されてまさかとは思うたがやっぱしお前か!!」

「大丈夫ですよ。壊滅はさせたけどあいつらのおかげで衣装ある程度汚れて傷ついたからちゃんと半殺しで勘弁してあげましたよ」

「・・・そいつらはそんな理由で壊滅させられたのかと思うと不憫で仕方ないよ・・・」

 

 

 

ちなみに余談だがこの近辺のヤクザやマフィアの多くの事務所やアジトが一夜にして壊滅させられたという出来事は裏家業の連中に瞬く間に知れ渡り

目撃者や被害者は揃って「唸る・・・魔剣・・・赤い・・・悪魔・・・」とうなされる様に呟いたことからこの事件は後『紅蓮の悪夢』と呼ばれ裏社会に名を残すことになる・・・

 

 

「ま、おかげである程度は傷もついたしハンターなら返り血で血塗れになるもんだし悪魔なら尚更だろ?どうだキマッてるか?」

「・・・キマリすぎだ!!恐ろしすぎて客が逃げるだろ!!てか一応飲食店で血塗れって衛生法的にアウトだろ!」

「じゃあ俺厨房は入れないのか?」

「当たり前―――いや・・・ちょっと待て・・・」

 

キンジはそこでハッとして考えた・・・

 

忘れがちだが氷牙の家事スキルは白雪並み・・・特にスイーツ系の腕は本場のパティシエ顔負けで白雪と共にこの喫茶の飲食メニューも担当している程だ・・・

こいつを厨房担当から外すなんて学祭が始まる前から売り上げを落とすようなものだ・・・売り上げが落ちるということは変装が不十分とみなされ連帯責任でただでさえよろしくない俺の内申も落ちる・・・それどころか下手すれば懲罰フルコースもあり得る・・・

 

そんなデメリットを瞬時に叩きだしたキンジは

「・・・昨日お前が何をしていたか俺達は何も知らないし見てないし聞かなかった・・・お前の体や衣装が血塗れになっているのはただの血糊だ・・・そう言うことにするぞ・・・」

クラスの連中も満場一致で見て見ぬふりをすることに決めた。

 

「了解、じゃあ後で衣装洗って血糊付けておくよ」

そう言って氷牙は机に向かい

 

その途中で

「そうだ、平賀ちゃん」

「何なのだ?」

「この剣、使い勝手は上々だ。しばらくはこのままでも問題ない。それとこいつを受け取ったときにお願いされたこの剣の名前、使ってるうちに不思議と思い浮かんだよ」

「ホントなのだ!?」

 

 

「ああ、こいつの銘は―――――

 

レッドクィーンだ!!」

 

 

 


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