緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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ほとんど返信できてませんが全部ありがたく読ませてもらってます


81話<ワイルドカード>

「なあ氷牙・・・俺・・・昨日寝てからついさっきまでの記憶が無いんだが・・・何か知らないか?」

体育館に向かい一足先に向かっていた理子や白雪そして、ようやく意識が戻ったキンジと合流するとキンジがジト目になって俺に問いかけてきた

 

「なんだ?無意識で登校していたのか?寝ぼけてたんじゃねえの?」

「なんで俺・・・背中に箒突っ込んで案山子みたいになってたんだ?」

「新手の姿勢矯正じゃねえの?」

「ちなみに、馬車に繋げられて引き回された挙句磔にされる夢を見たんだが・・・」

「ただの夢だろ?」

「後なんでか本当に制服も体中も引き回されたみたいに砂埃だらけのすり傷だらけなんだが・・・」

「喧嘩が朝の体操代わりな武偵校じゃみんなそうだろ」

「ていうか今朝はアリアに蹴られまくってた気がするんだが・・・」

「それこそいつもの事じゃねえか」

 

「じゃあ・・・なんでその子がさも当たり前のようにお前の隣にいるんだよ!!」

 

そう言って凛香を指しながら俺に問いかけてきた

「何言ってんだ?こいつは今日から転校してきた姫神凛香、バスカービルの専属衛生武偵だろ」

「いや聞いてねえよ!!この数時間でいったい何がどうなったんだよ!?」

「お前ずっと寝てたから聞いてなかっただけじゃねえか。リーダー不在だったため副リーダーのアリアの権限でとっくに了承済みだから今更どうにもならないぞ?なのでただあるがままを受け入れろ。ちなみに理子と白雪には事前にメールで一通りの説明は送って既に了承も得てる」

「なあ・・・バスカービルのリーダーって一応俺なんだよな!?」

キンジは叫んでいたが氷牙は完全に聞き流していた

 

「あちゃー!こんな可愛い転校生がくるって分かってれば今日はちゃんと登校したのに!!あたし理子!よろしくねりったん!!」

そう言いながら理子は凛香の手を取ると有無を言わさず握手を交わした

「う、うん・・・ところでりったんって・・・もしかして私?」

「そだよ?あ、別の呼び名がいい?りんりん、はもういるし・・・りっかー、じゃ怪物になっちゃうし・・・凛ちゃん、は別のキャラになっちゃうし・・・」

「・・・りったんでいいよ、よろしくね理子さん」

「・・・理子ちゃん」

「え?」

「さんなんて他人行儀NGだぞ!理子ちゃん!理子の事はそう呼んで!」

「え、ええと・・・理子ちゃん」

「うん!バスカービルにようこそ!んで?なんてりったんひょーたんのジャケット着てるの?」

「う、うん・・・さっきレキさんと一勝負してね・・・そのせいでブラウスボロボロになっちゃたんだ・・・着替えようにもまだ替えが無くて・・・」

 

「ふーん・・・しっかしー・・・これはこれは・・・・」

理子の視線は凛香の顔よりも少し下に向いていて

「?」

凛香もその視線の先を見てみれば・・・

 

前のボタンをきっちり閉じたせいで締め付けられ寄せられた胸は唯一開いた胸元にこぼれそうなほどの谷間を作っていた

 

「―――ッ!!」

凛香もそれに気づいて顔を真っ赤にして慌てて両手で胸元を隠した

「雪ちゃんにも引けを取らないグラマーボディに裸ワイシャツならぬ裸ジャケット!おまけに長い袖からわずかに覗く指先!!見事だよ!!これはシャッターチャン――ジャキッ、ガキンッ――す・・・」

理子がデジカメを出した瞬間カメラには氷牙のパイソンが、こめかみにはレキのドラグノフが突き付けられた

 

「やってみろ?まあシャッターが落ちた瞬間にはこいつの撃鉄も落ちるがな」

「理子さん?よろしければ貴女もボロボロにして差し上げますが?」

 

「や、やめときます・・・」

そう言いながら理子はゆっくりとデジカメをしまった

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

だが氷牙とレキは銃を下ろさず理子を睨み続けた

「あの・・・ひょーたん?レキュ?銃下ろしてほしいんだけど・・・」

 

「「胸元の小型カメラ」」

 

「・・・・・・・はい・・・」

胸元に隠してあった小型カメラを出して氷牙に渡した

 

「デジカメがフェイクなんてのバレバレだ!」

「私たちの前で盗撮がしたいなら校長並のステルス技術でも身に着けてから出直して来てください」

と言って理子を引き下がらせた

 

「え、ええと・・・理子ちゃんて・・・いつもこうなの?」

「油断しちゃだめだよ?私も去年、体操服とか水着写真たくさん撮られたから・・・私、星伽白雪、よろしくね姫神さん」

「凛香でいいよ、よろしくね白雪さん」

そう言って今度は白雪と握手を交わした

 

そして・・・

 

「そういえば氷牙?お前その首の包帯どうした?昨日はそんなのなかっただろ?」

「ちょっと首筋に2匹がかりで噛みつかれてな」

「?野良猫にでも噛まれたのか?にしては大げさじゃね?」

「気にするな、てかそれ以上追及したら今度はお前の17年間の記憶全部リセットしてやる」

「怖ぇよ!どうする気だよ!?聞きたくねえけど!!」

「じゃあもう何も聞くな」

 

 

二人のやり取りを見て凛香は、ふふっと微笑むと

「猫2匹ね・・・それなら正確にはハイマキもいるから全部で3匹なんだけどね」

それを聞いてもしかしたらと察した白雪は

「・・・ねえ、もしかしてだけど・・・ひょっとして凜香さんって氷牙君の事・・・」

「・・・うん。それでさっきレキさんと勝負して・・・専属衛生武偵になるのと一緒に側妻として同居する事を認めてもらったよ」

「え!?・・・レキさんよかったの?まだ結婚して一か月も経ってないのに凜香さんとも同居なんて・・・」

「構いません、私も考えて出した答えです。それに・・・本妻は私です」

「レキさん・・・ほんと良くも悪くも氷牙君に似て逞しくなってきたね・・・」

「それに今度の事を考えれば戦力は増やしていきたいところです。それが衛生科というなら申し分ありません」

 

そう言うと氷牙も近くに来て尋ねた

「戦力か・・・そういえばよ?ウルスも戦役に参加しているんだろ?ウルスからの戦力援助とかは期待できないのか?」

レキは首を横に振り

「無理でしょう。今のウルスには援助を寄越すほどの余裕はありません。この戦役中はまずあちらから動くことはないと思います。ただでさえ・・・私の事でそれどころではないと思いますから・・・」

「レキの事で?」

「お忘れですか?私が武偵校に来たのはウルスの血を途絶えさせないために強き血統を持つ婿を探すためだったんですよ?ウルスからも代理宣言を委託され後、「強き血を引く婿は見つかったのか?」と聞かれたので「私は氷牙さんと契約して嫁になった、反対するならば璃巫女の地位も使命も捨てる。追放するも勘当するも好きなようにすればいい」と言って以降音沙汰がありません」

「・・・ウルスの皆さん慌てまくったんじゃねえか?」

「ええ、ウルスの璃巫女が名も使命も捨ててでも悪魔と契約して嫁ぐなど前代未聞の出来事でしょうから・・・今頃どうするべきか揉めていると思います」

「あれか?どこぞのドラマみたいに「どこの馬の骨とも知れない奴に娘をやるか!!」とでも言ってたのか?」

「いえ、まさか悪魔の血を組み込むとは誰も思っていなかったようで、「今すぐにでもウルスの一員として正式に迎え入れよう!」という声と、「血統は魅力的だが迎えるには危険すぎる!血統だけを貰い、受け入れるのは止めるべきだ」という声で対立しています」

「・・・まあ、結婚に反対はされていないみたいだし・・・それだけども良しとしとくか・・・しかし、武偵校もそうだけど・・・どいつもこいつも俺が悪魔だって判明しても大した変化も無いまま軽く流しやがるんだからホント皆図太い事この上ないよな・・・」

そう呟くと白雪も苦笑いして

「というより納得してたよ・・・「むしろあいつがただの人間だったほうがビックリだ!!」ってみんな言ってた・・・」

「まあ強いて変化があったと言うなら、SSRからスカウトが何度も来てうっとおしいくらいだ。白雪からも言ってやってくれないか?俺は転科する気は無いってよ」

「それだけど・・・実は言うと私からも氷牙君を説得するように言われてるんだ・・・だから簡単には引き下がらないと思う・・・レキさんも凜香さんも気を付けてね?契約者や超能力者ってバレたらSSRに目を付けられちゃうから・・・」

「うん、と言ってもそんなに使い勝手のいい力じゃないし使っても性質上そう簡単にはバレないから心配ないよ」

「私も魔力を帯びた目や魔弾を見られない限りは気付かれる心配はありません、人前で使う気はありませんので当面は大丈夫です」

 

そう言って二人は心配ないと答えるが

「・・・・・・・・・・・」

確かに二人も超能力者や契約者とバレたらどうなるかわかったもんじゃない・・・そして俺に目がいってる間はレキや凛香が超能力者だとバレる心配はない・・・なら・・・今は俺だけに注目させた方がいいか・・・

そんな二人を見て氷牙はそう思っていた

 

 

 

そして・・・

 

 

――ドォン――

 

蘭豹がM500を天井に向けて発砲してあたりを静まり返すと

「ガキ共ォ!!そんじゃあ変装食堂での衣装決めをすんでぇ!!」

そう叫び、周りからは一斉に「いよいよか・・・」という緊張感が走った

「っと・・・流石にみんな緊張感があるな・・・」

「無理もないだろ?このクジ引きである意味命運が決まるからな・・・」

 

変装食堂、軽くいってしまえば仮装喫茶みたいなものだが俺達がやるのは仮装ではなく変装、つまりはクジを引いて決まった衣装の職業を演じそれらしく振舞い完全になりきる必要がある

そして武偵校からすれば一般の人に俺達の変装術と潜入術がどれ程の物かアピールするものでもあるため、なんちゃってや着ただけと言った中途半端なものは絶対に許されない

もし生半可な変装でもしようものなら教務科総出の懲罰フルコースがお待ちかねだ・・・

キンジの言う通り・・・ある意味ではこれは命を懸けたクジでもあるのだ・・・

・・・まあ、こんなんでいちいち命懸けてたら命が幾つあっても足りないとは思うが・・・実際の変装や潜入だって敵地でバレたら死に直結するんだ・・・訓練の一環にもなるんだから武偵校としては大いに推奨してるんだろうな・・・懲罰フルコースも含めて・・・

 

 

そしてクジの入った箱を持った1年が来た

「ささ、師匠引いてくだされ」

と言ってキンジにクジの箱を差し出す・・・つーかあれって・・・

「あれ?陽菜ちゃんじゃん?」

風魔陽菜、キンジの戦妹で諜報科の1年だ、ちなみに名前で分かるがかつて北条家に仕えた忍者、風魔小太郎の子孫でもある

「おお、九狂殿、久しぶりでござる。色々と話は聞いたでござるよ」

「ああ、7月に会った時には悪かったな。けど何となく気付いてはいたんだろ?」

「うむ、様子がおかしいと思って調べてみたときには驚いたでござる。まさか記憶喪失になっていて・・・それどころかそれが判明して尋ねに行ってみれば今度は右腕と左目を無くして・・・その驚きも冷めぬうちに今度は悪魔の末裔と判明して人間を辞めて腕と目を取り戻して・・・レキ殿と夫婦になって・・・本当に九狂殿と関わると驚いていてばかりで休まる暇がないでござる・・・」

「・・・風魔、こいつと付き合うならいちいち驚いてちゃ身が持たないぞ?1年の時からこいつに常識ってものは通用しないからな・・・」

そう言いながらもキンジはクジ箱に手を突っ込んだ。てか常識が通用しないのはお互い様だろ・・・

「いいのが出ろよ・・・出なかったらこの場で拳銃自殺してやる・・・」

そんな必死の願いの元出てきたのは・・・

 

『ホスト(夜王風)』

 

「・・・・・・・・・・」

「お!ハマり役じゃね?学祭の間はずっとヒスッてればそのままでも万事OKだろ!きっとドンペリコールとシャンパンタワーが絶え間なく流れ続けるぞ!売り上げトップもいただきだな!!」

「いいねー!アフターの調整は理子にお任せあれだよ!ちゃんと時間調整すればキー君なら一晩で5,6件はいけるでしょ!」

「出来るか!!チャンジだ!!」

そう言ってキンジはクジを床に叩きつけた

「もったいねえな・・・せっかくのキングカード捨てやがって・・・」

「俺にとっちゃ屑カードだよ!!」

「チェンジした場合1枚目は無効、次が強制でござる」

そう言われ2枚目を引く

 

『警官(巡査)』

 

「よし!これならできる!そこら中にいるしな」

 

 

 

 

 

続いて白雪がくじを引き

 

『クィーンズブレイド、トモエ』

 

職業じゃなくてキャラ名指しかよ・・・

「ねえ?これってどういうキャラ?」

原作を知らない白雪は俺達に尋ねるが

「あー・・・ある意味本当にクィーンカードを引いたというか・・・そのキャラなら普段そのままでもハマり役だな・・・」

「ホントに?じゃあこれやろうかな」

氷牙のアドバイスで白雪は乗り気になったが

「いや・・・悪いこと言わん・・・やめとけ・・・」

すぐに反対された

「え?なんで?そのままでも合うんでしょ?」

「・・・理子、お前の携帯に動画とかあるか?」

「ほいきた!こんなんでーす!!」

そう言って理子が白雪にどんなキャラか動画付きで説明した

「あ、巫女なんだ!だったら私にぴったり・・・」

 

「ここからが見どころだよ!まず鎧、第一崩壊!!」

 

そう言って服がボロボロになり足腰や胸元が丸見えになる

「・・・え!?」

それを見た白雪の顔が赤くなる

 

「続いて第二崩壊!!」

 

服はさらにボロボロになり下は鋭く食い込んだ褌が丸見え、上も際どいところギリギリを残して丸見えになる

「え!?え!?」

白雪に顔がさらに真っ赤になる

 

「そして最終崩壊!!!」

 

DVD版になれば消されそうな都合よく射している光が大事な部分を見えないようにしていたが褌一丁以外の何でもなかった

「――――――――――」

白雪の頭から煙が上がる

 

「極めつけに聖なるポーーーーズッッ!!!!!!」

 

こちらもいずれ消されそうな光が大事な場所を見えなくしていたがこちらに向かって足を大きく広げたポーズをとっていた

そして白雪の頭がボンッという爆発音を上げると共に

「チ、チェンジで!!!」

そう叫んで慌ててクジを引きなおした

そして2枚目には

 

『教師(小学校から高校まで任意)』

 

と書いてあった

「よかった・・・これなら出来そう・・・」

 

 

 

 

「次は理子だよー」

そして「ドロー!」と叫びながらクジを高く引き上げる

そこに書かれていたのは・・・

 

『泥棒』

 

「まじかよ!?そのまんまじゃねえか!!理子の奴エースカード引きやがった・・・」

「えー、これじゃあやりがいなーい!チェンジ!」

と言ってクジをぽーい、と後ろに投げ捨てた

「おいおい・・・それ捨てんのかよ・・・」

「いいのかよ?それお前にとっちゃキングどころかエースカードだぞ?」

「勝負は僅差で勝ってこそ面白いんだよー?いきなりエースなんて場が白けるだけじゃん」

「お前は何と戦ってるんだか・・・」

そして「君に決めた!」と叫び再び引き直したクジに書かれていたのは・・・

 

『ガンマン』

 

何で女子用の箱に「マン」で終わる役があるんだよ・・・

「おー!やるやる!!こういうの待ってたんだよー」

 

 

 

 

 

続いてレキが引く

「これは・・・どういう人物でしょうか?」

そう言ってレキが見せてきたクジに書かれていたのは・・・

 

『エヴァンゲリヲン、綾波レイ』

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

キャラを知っている氷牙達は想像してみる・・・

 

――『私には他に何も無いもの』――

――『私が死んでも代わりはいるもの』――

――『さよなら』――

 

そして氷牙はレキの肩に手を置くと

「――レキ!チェンジしような!!」

「何故ですか?」

「理由は聞くな!とにかくチェンジしろ!!いいな!?」

と有無を言わさず変えるよう言った

「・・・わかりました」

そしてレキもよくわからないままクジを引き直した

「そんなに私には似合わないんでしょうか?」

と呟いていたが・・・

(逆だよ・・・似合い過ぎて怖いんだよ!!)

俺達は心の中で叫んだ

そして引き直したクジは

 

『科学研究所職員』

 

何とも微妙な結果だった

「・・・まあやってみます」

 

 

 

 

続いてアリアが引こうとするが

「すぅー、はぁー・・・」

アリアはまた爆弾でも解体するように深呼吸しながらクジに手を伸ばす

変装が苦手なあいつだ・・・そりゃ必死になるだろうが・・・

「アリア、意気込んでも何も変わらないと思うぞ?」

「わ、わかってるわよ!でも心の準備ってもんがあるのよ!」

そう言ってアリアが恐る恐る引き上げたクジに書いてあるのは・・・

 

『アイドル』

 

「まじかよ!?いっそバスカービル全員でスクールアイドルでもやるか?」

「いやいや、ひょーたん!スクールアイドルなら9人いなきゃ!!りったん入れても女子5人だったらシンデレラでしょ!んでキー君とひょーたんはsideM担当で!!」

「あ、アイドルって・・・あのテレビとかに出てる・・・歌って踊るあれよね?」

「そうそうこんなの!」

と言って理子の携帯に映された動画には

 

『みんなのハート打ち抜くぞー!ばーん!』

 

と高校生くらいのアイドル衣装の青髪の女の子が指で銃の形を作りこちらに向けてウィンクをした

 

――ぼぼぼぼぼぼぼっ――

 

それを見たアリアの顔が0.1秒で真っ赤になったところで画面のアイドルが

 

『ラブアローシュート!』

 

と言って第2撃を放ったところで

ボンッと今度はアリアの頭から爆発が起きた

「ち、チェンジよ!!」

と言って箱の底を抜かんばかりの勢いで手を突っ込んだ

「ち、チェンジした場合1枚目は無効、次が強制でござる」

と風魔に引かれながらも引き直したクジに書かれていたのは・・・

 

『小学生』

 

「「ぶはっ!!」」

 

それを見た瞬間理子と氷牙は同時に吹き出した

「無理!!限界!!それハマりすぎ!!!エースどころじゃねえ!!ジョーカー引きやがった!!ははははははははは!!!」

「あひゃひゃ!!やったよアリア!!これ以上にないハマり役だよ!きゃはははは!!!」

理子はクジを引いた体制で凍結してるアリアの足元を転げながら大笑いして

白雪は笑いをこらえているのか土下座してるみたいにうずくまって床をぺしぺしと叩き

氷牙に至っては爆笑しながら床をドッカン、ドッカン殴り陥没させていった

凛香も笑いをこらえてるのか少し苦しそうに腹を抱えて・・・平然としてるのはレキくらいだぞ・・・

「くぉら!!九狂ぉ!!ただでさえボロい床これ以上ボロくすんなや!!」

蘭豹に怒鳴られ床を殴るのを止めた氷牙は腹を抱えながら必死に声を絞った

「り、理子ぉ!!」

そう叫ぶと理子も腹を抱えながら返事した

「は、はいさぁ!なにぃ?」

「あ、アリアの衣装は、ははっ、お前に一任すはははははっ!!!」

「お、お任せあれぇっ!!最高に可愛くしてあげるよアリアちゃん!きゃははははっ!!」

そこまで言ったところで二人とも我慢の限界がきて腹を抱えて笑い続けた

ちなみにキンジも呆然とした後、ワンピースを着てランドセルをしょって名札を付けて黄色い学帽を被りペロキャンを銜えた鋭い目つきの小学生を本当につい、思い浮かべてしまいわずかに笑いかけたところで

 

『ハッ!』

 

マグマの様にグラグラと煮えたぎっているアリアの殺気と怒りに気が付いた

「認めない・・・認めない!認めない!!こんなの絶対認めない!!!文句がある奴は全員死刑にしてやる・・・」

 

「お・・・おい・・・アリア・・・さん?」

キンジが恐る恐る声をかけるもアリアは口を歪めて何か呪詛のような恐ろしい言葉をつぶやき続けた

 

「そうよ・・・みんな死ねば証人もいない!!そうすれば全部無かったことになる!!みんな死ねばいい・・・そうよ・・・死ね・・・死ね・・・死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ!!!!」

 

「お、おいアリア!!落ち着け!!お前目がイッてるぞ!!」

キンジの静止も聞かずアリアはガバメントに手を伸ばすと

「みんなまとめて風穴!!風穴マジック!!!!風穴マスターピース!!!!」

そう涙目でわめきながらガバメントをぶっ放すアリアを後ろから白雪が左右からはキンジと理子が押さえつけ

風魔も涙目でマキビシと煙幕を張りつつも逃げ

氷牙に至ってはいつの間にかレキと凛香を連れて体育館の外に既に退避済みだった

「止めろアリア!蘭豹がいるんだぞ!俺達まとめて処分されるだろ!!」

「諦めようアリアちゃん!!理子が最高に可愛い小学生アイドルにしてあげるから!きゃはは!!」

「誰がアリアちゃんよ!こんなの無しよ!!世界が認めてもあたしが断じて認めない!!」

と駄々をこねていると防弾扉の陰から申し訳なさそうにこちらを見ている凛香と目が合い

「そうだわ!凛香!あんたの力でこれ無かった事にしなさい!!」

そう叫ぶも凜香は苦笑いをして

「ごめんね・・・無かった事には出来ないし・・・この人数全部には無理・・・」

と希望は儚く散らされアリアの駄々っ子は一層にヒートアップしていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、外に逃げた氷牙達と風魔は

 

「なんだか悪いことしちゃったかな・・・?」

「気にすんな、こんなの日常茶飯事だ」

「アリアさんと付き合うなら時には軽く流すのも大事ですよ?」

「あはは・・・本当に二人共逞しいね・・・」

と凛香は苦笑いをすると

 

「あの・・・九狂殿・・・」

後ろから何とか逃げてきた陽菜ちゃんが話しかけてきた

「ん?陽菜ちゃん何?」

陽菜ちゃんはクジ箱を出すと

「後は凛香殿と九狂殿だけでござる」

と言ってきた

「あ、そうか。俺達まだ引いてなかったな」

「じゃあ私からいい?」

まずは凛香が引く

 

『聖母』

 

「ええと・・・私は何をどう演じればいいのかな・・・」

「素のままでもいいんじゃないか?後は聖書にでもあるマリア様みたいな恰好してれば雰囲気だけでなりきれると思うぞ?」

「なんだか楽できそうでアリアに悪い気がするから引き直すよ・・・」

凛香は申し訳なさそうにして引き直すが・・・

その発言と行動がすでに聖母オーラを発している事に本人は気付いていないのだろうか・・・

 

そうして引き直すと次に出たのは・・・

 

『女神』

 

「・・・なんだかさっきとあまり変わらない気がするよ・・・」

「むしろ余計に普段のままでいいんじゃねえの?後は適当にローブでも着てればそれっぽいだろ?てかお前生まれる前は女神だろ?」

「そうなんだけど・・・実はその間の事はほとんど記憶にないんだ・・・」

「え?」

「あの頃は本当に何もない・・・空虚みたいな存在だったんだ・・・還ってくる魂をただ浄化する・・・それは考えることすらも何も無い、それどころか何かを考える必要すらない。そんな何も無い日々を延々と過ごしていたから私にはその時の記憶が何も無かった・・・ううん・・・記憶に残すに値するものが何もなかったんだ・・・もし君というイレギュラーが無かったら・・・私はきっとこの先何千年、何万年も何も変わらずにそんな”無”だけがある日々を送っていたと思うよ・・・

だから君に巡り合えて・・・凛香って名前を貰った時は凄く嬉しかったんだ・・・何も無い私に初めて名前という自分だけの何かができた。初めて自分の名前という記憶するに値する何かができた。初めて君についてという考える何かができた。そして君を追ってこの世界に生まれ育って・・・君を見守ることで私に私だけの人格ができて・・・君を見ていくうちに次第に君に惹かれて・・・気が付けば君に会いたい、傍に行きたいと考えるようにまでなった・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「だから私は君が好き。君は何も無かった空っぽな私をこんなにも満たしてくれた。これからは君の傍で君が私を満たしてくれたように私も君を満たしてあげたいんだ。」

凛香が笑顔で俺にそう改めて告白すると

 

「出来るのですか?」

レキが俺の右腕に絡みつきながら聞いてきた

「――?レキ?」

「さっきから聞いていれば、まるであなた一人で氷牙さんを満たしてあげるような言い方ですが・・・本当にあなた一人で満たせるのですか?」

と言って凛香を見据えると何故か凛香もすかさず俺の左腕に絡みついてきた

てか凛香・・・お前今ブラしてないだろ・・・俺の左腕・・・ムニュムニュと柔らかいもので挟まれてるんですけど・・・

ちなみに右腕もプニプニとした柔らかくも張りのあるものが当たってますけどね・・・

「・・・試してみる?」

「望むところです。今夜にでも相手になりますよ?」

「ふふっ、負けないよ?貴女を思ってずっと身を引いていたけど側妻になった以上これからは遠慮なく彼を愛させてもらうから」

どうやら互いに火が付いたらしく二人とも心からの笑顔で対抗心を燃やした

何というか・・・よく言えば仲の良い喧嘩友達って感じで大いに結構なんだが・・・

「あのー・・・二人共?俺の意見は?」

そこに俺の意思は無視されているような気がするのは俺だけでしょうか?

「氷牙さん、先ほどの取り決めは覚えてますか?」

「いや・・・もちろん覚えてるよ・・・」

平等かつ今以上に愛する事・・・つまり・・・

「苦労は倍だけど頑張ってね?」

・・・二人同時って・・・俺・・・根こそぎ絞られるんじゃねえのか?

 

まあそれでも嫌ではないし、当然頑張りますけどね・・・ええ頑張りますよ!!マジで!!

 

 

そして・・・

 

「あの・・・九狂殿・・・話し中に申し訳ござらんが・・・後は九狂殿だけでござるよ?」

さっきから蚊帳の外だった陽菜ちゃんがようやく声をかけてきた

「ああ、ゴメンゴメン。じゃ最後は俺か」

と言ってクジに手を入れて引き上げる

「えーっと・・・なになに・・・」

 

『ファイナルファンタジーⅩ アーロン』

 

「うーん・・・大剣なら調達のツテあるし・・・ある意味ハマり役だけど・・・」

顔の傷と目、そして腕を考えるとやはりキャラ名指しの類は出来れば避けたい・・・

「チェンジするよ」

そう言ってもう一度クジに手を入れた

「チェンジした場合1枚目は無効、次が強制でござる」

「ああ、わかってるよ」

そして引き上げた2枚目は・・・

 

『最強の悪魔ハンター』

 

確かに念願通りキャラ名指しではなかった・・・けど・・・

 

「これ・・・俺がやっていいのか?」

 

 


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