追撃を振り切ってハイウェイを爆走してると氷牙がそう言えばと思い出し
「っとそうだ・・・レキ、ちょっと俺の内ポケットの携帯出してくれ。さっきから何度も俺の携帯鳴ってたけどあれキンジからか?」
「私も何度もコールがありました。おそらくキンジさん達だと思いますが・・・」
レキは自分の携帯と俺の内ポケットからも携帯を出し履歴を見た
「これは・・・私も氷牙さんも登録してない番号から何度もかかっています」
「俺もレキもってことは間違いなく居合わせた通信科にでも俺達に連絡を頼んだんだろうな・・・すぐにかけてくれ!」
そして電話をかけると相手はすぐに出た
『九狂君!やっと繋がった!!』
知らない声だが俺の事を知ってるってことはやはり武偵校の誰かか・・・
「ああ悪いな、さっきまでカーチェイスやってたもんで電話に出れなかった」
と、電話に出れなかった理由を簡単に説明すると
『え?』『カーチェイス!?マジで・・・』『ホントにあり得た・・・』
後ろからもヒソヒソと何か聞こえてくるんだが・・・
「おい聞いてんのか!?てかお前誰だよ?」
『あ!はい!こちら通信科の鷹根です!今、遠山君達と新幹線のぞみ246号に乗り合わせているんですが・・・新幹線がジャックされました!』
「知ってるよ、今そっちに向かってる!キンジ達はどうした?」
『遠山君と神崎さんはジャック犯を追って新幹線の屋根に行きました。白雪さんと不知火君は車内の防衛、武藤君は車両の運転、理子さんは罠にかかり席から動けないでいます』
ほう・・・なかなか適任な布陣だな・・・さてはアイツなってるな?
「キンジに伝えたい事がある!アイツに繋げるか?」
『はい!10秒ください!』
そう言うと鷹根はこの通話をキンジの無線へと繋げた
一方キンジは
「動くなよ?できれば撃ちたくないんでね」
キンジは屋根の上で何か装置を使って信号らしきものを飛ばしていたココに背後から忍び寄り銃を突きつけるとココは抵抗する事も無く手を上げた
「どうだいココ?爆弾を解除してくれるのなら今回は大目に見てあげてもいいよ?」
ヒステリアモードのキンジはそう言って余裕な顔でココに取引を持ち掛けようとしたが・・・
『おい!聞こえるかキンジ!!』
突然、無線から氷牙の声が聞こえた
「この声・・・氷牙か!?」
『ああ!大体の事情は聞いたよ!!今レキとそっちに向かってバイク飛ばしてる!!そっちの状況は!?ココはどうした!?』
やっぱり向かって来てたのか・・・でも・・・
「大丈夫だ、もうココは捕まえた。屋上で通信してる最中に後ろから銃を突き付けたらあっさり降参したよ。今爆弾を解除してもらえるよう取引を持ち掛けてる所だ」
『――ッ!!なに呑気な事してんだ!早く手錠掛けて絞め落とせ!!』
氷牙は血相を変えて叫ぶが
「――?必要ないだろ?それにレディーは丁重に扱わないとね」
キンジはそんな胸焼けがする程甘すぎる事を言っていた
『お前馬鹿か!!そいつは敵だぞ!!レキを撃った奴だぞ!!』
「許せないのは分かるよ、でも今は俺に任せてくれ、爆弾は必ず解除させるよ」
『――ッ!!この大馬鹿が!!お前何処まで甘いんだ!!」
「キヒッ!確かにヒョウカの言うとおりネ、すぐ撃たないなんテ、ヒョウカと違ってお前ほんと女には甘いネ!」
「それが俺の性分何でね。さあ、言う事を聞いてもらうよココ。これからはどんな時でも背後には気をつけるんだね」
『この馬鹿野郎!!―――――――
「キヒッ!!――――――
『「「お前(アンタ)こそ後ろに気を付け(るネ)(なさい)ろ!!」」』
とココと氷牙と・・・後ろからも似たセリフが聞こえた
「え?」
キンジは後ろを振り返ろうとすると・・・
『ココは――
キンジの背後には青竜刀を振りかぶったもう一人のココが迫っていた
二人いるんだよ!!』
「キヒッ!!」
「―――ッ!?」
そしてココがキンジめがけて青竜刀を振りかぶった
――バンッ、ギィンッ――
だがその直前にココの青竜刀が弾かれ、その隙にキンジは横に転がって逃げた
「チッ!仕留め損ねたヨ!!」
そう言ってココ達とキンジが銃弾が飛んできた方向を見ると
「油断してんじゃないわよ!バカキンジ!!」
ハッチからアリアがガバメントを向けていた
「これは・・・ココが二人・・・そういうことだったのか・・・」
『キンジ!?おいキンジ!!まさか死んだか!?』
耳に付けた無線から氷牙の声が響く
「・・・ギリギリ生きてるよ、あと1秒遅かったら死んでたけどね」
『チッ・・・いっそ死んでくれよ・・・この甘ちゃんが・・・』
「そう言うな・・・アリアが助けてくれなかったら死んでたんだからな?しかし参ったよ・・・まさかココが双子だったとはね・・・」
そう・・・これが『万武の武人』ココの正体、一人の人間があれもこれも達人レベルでこなせるわけが無い。しかもココは14歳、全てに経験を積むにしても時間が足りなさすぎる。だからココ達はそれぞれの得意分野を分担し顔が瓜二つな事を利用して一人の人間であるように見せかけ『万武』を演出していたのだ
「チッ!キンチだけならもう勝負はついたのニ・・・アリアもヒョウカもレキも・・・本当に厄介な相手ヨ・・・」
「それに引き換えキンチは楽勝ネ、さっきもさっさとキンチがココを撃ってれば勝負はついていたのにネ、本当にキンチはヒョウカと違って平和ボケした腑抜け上りの甘ちゃんで助かるネ」
「やっぱりキンチを先に攻めた方がよかったネ、何事も順序は踏まないとよくないヨ」
『「「・・・順序?」」』
「まずはキンチを捕まえてそれを餌にアリアを引き入れるネ、そうしたらヒョウカに取引を持ち込むヨ、キンチとアリアの身の安全と引き換えに・・・藍幇に忠誠を誓えとネ、そしたらレキもおまけで付いて大収穫ネ!!」
「俺達を引き入れるために外堀から埋めようって訳か・・・」
『言ってる場合か?外堀ってひょっとしなくてもお前だぞ・・・お前が一番チョロそうに見られてるんだぞ・・・』
「これから超能力者達は役立たずなるヨ、そうなれば銃使いの価値増すネ。キンチは超能力者と違うけど高い戦闘力を秘めたいい駒ネ、ヒョウカも超能力者の類だけど、この世界で唯一璃璃色金の影響を受けない最強の超能力者ネ!キンチとヒョウカ、この二人を欲しがらない奴なんていないネ」
「キンチ、ヒョウカ、藍幇に忠誠を誓うなら金も、地位も、女も、お前達の望む物を望むだけくれてやるネ、一生贅沢三昧で酒池肉林の桃源郷に招待するヨ」
ココがそう言うとアリアはキンジをギロリと睨んだ
「・・・あいにくだがそれは俺には逆効果だ・・・そもそも俺は武偵でね。テロリストまがいの構成員になる気はない」
もしそうなったら武偵校のOBや教官に地の果てまで追い回されて私刑にされた後、死刑コースだ・・・ならここで一思いに殺された方がよっぽどマシだ・・・
「ヒョウカはどうするネ?お前が来るならお前にもレキにも望むままの地位と報酬を出すヨ?お前はこんな甘ちゃんの下で燻るような駒じゃないネ、元傭兵のお前なら鞍替えなんてよくあることヨ」
ココがそう言って勧誘すると
『そうだな・・・行ってやってもいいぞ?』
何と氷牙は乗り気であった
「なっ!?おい氷牙!?」
「ちょっと!?アンタ本気で言ってんの!?」
『俺は自分を過大評価する気はないが・・・こんな腑抜け上りの甘ちゃんの下につく奴なんてどうかしてるよ』
「・・・・・・・・・・・・・」
確かにその通りだ・・・水投げの時だってキンジが女に手を上げられない甘ちゃんのせいで氷牙を助けられなかった・・・そして今だってココが女だからって理由で乱暴できずに捕らえるチャンスを逃した・・・こんな奴じゃ愛想を尽かされても当然だ・・・
「決まりネ!何が欲しイ?金カ?地位カ?女カ?」
『俺がお前等から欲しいのは・・・』
氷牙がそう言ったところで・・・
――ドォォンッ――
線路の上を並走して走る高速道路から一台の大型バイクが線路に飛び降りてきた・・・そこに乗っているのは・・・
「『お前達藍幇構成員全員の首』」
無線とリアルから氷牙の声が重なって聞こえてくる・・・
・・・あれは氷牙とレキだ!!
そして氷牙とココ達の目線が合うと・・・
――バァンー―
「阿っ!」
レキの狙撃により片方のココのアキレス健が撃たれ
――バララララッ――
「我阿阿ッ!!」
もう片方のココには氷牙のMP5Kの弾幕が体中に直撃して
――ドォンッ――
バイクは線路に着地すると速度を落として新幹線と並走した
『悪いな、俺は好きでこんな甘ちゃんの下についてるどうかしてる奴なんでな・・・』
『ココ・・・どちらがどっちなのかは分かりませんが私を撃った借りと氷牙さんを吹き飛ばした借りを返しますよ』
「アキレス健の狙撃に全身に掃射なんて・・・二人共えげつない事するわね・・・まあいいわ、二人共逮捕よ!!」
そう言ってアリアが手錠をかけるとあっという間にココ達を無力化し逮捕した・・・
そしてそれを見ていただけのキンジは・・・
(また・・・氷牙達に助けられた・・・俺は二人に助けられてばっかりだ・・・)
アキレス健を撃って立てなくするのも・・・全身に銃弾を浴びせて動けなくするのも・・・確かに相手を無力化するには手っ取り早く的確な方法だ・・・だが俺はこんな手段思いつきさえ出来なかった・・・それどころか女性だからなんて理由で最初からアリアを参戦させず戦力を落とし、敵であるココさえも守ろうとした・・・その結果がこれだ・・・アリアや二人が来てくれなかったら・・・俺は今ごろやられていた・・・
(本当にこんな俺がこいつらの・・・『バスカービル』のリーダーなんて・・・・・)
やる資格があるのか・・・そう考えていたら・・・
『おい!キンジ!氷牙!聞こえるか!』
突然、無線から武藤の血相を変えた声が聞こえた
「――!?どうした武藤?」
『ヤバいぞ!!速度が上がらねえ!!このままじゃ爆発しちまうぞ!!』
「なっ!?もう限界なのか!?」
『それもあるけど・・・乗客や積み荷がある分速度が落ちるんだ!』
「くそっ!どうすれば・・・」
『・・・・・・キンジ、策を出せ』
氷牙が突然突拍子もない事を言った
「何?」
『聞こえなかったのか?打開策を出せって言ったんだよ』
「・・・何で俺に言うんだ?」
『そりゃお前が俺達のリーダーだからな』
「だけど俺に・・・リーダーなんてやる資格は・・・」
『・・・・・・無いって思ってるのか?・・・ならキンジ?何でお前が俺達の・・・『バスカービル』のリーダーに抜擢されたかわかるか?』
「・・・・・・俺が戦闘陣形上での・・・隊長だから・・・だろ・・・」
『あのなぁ・・・言っちゃなんだがお前も含めて俺もレキもアリアも白雪も理子も武偵校屈指の問題児だぞ・・・誰の指図も受けず、問題ばっかり起こして、命令違反も単独行動も当たり前にやって言う事なんざ聞きやしない・・・そんな俺達が・・・何で揃ってお前をリーダーに推薦したのか・・・お前だけには従うのか・・・わかるか?』
「・・・・・・確かに・・・どうしてだ?なんで皆・・・俺について来てくれるんだ?氷牙もそうだ・・・なんで藍幇からあんな破格の好条件出されても即蹴ってまでこんな甘ちゃんに・・・俺についてくるんだ?」
『それはな・・・お前が本物の甘ちゃんで本物のバカだからだよ・・・』
「え?」
『甘ちゃんだから絶対に誰も見捨てない、絶対に誰かが死ぬ命令は下さない・・・バカだからどれだけ途方もなく困難な道だったとしても絶対に実現するまで諦めず、全員で生きて帰る道を選び続ける・・・そんなお前だからこそ俺達はお前に惹かれたんだ!!最後まで決して諦めず仲間たちと共に不可能さえも可能にしてみせる・・・それは俺にもアリアにも出来ないお前にしか出来ない事だ・・・』
「俺が・・・お前等と・・・不可能を可能に?」
『お前自身は自覚してないだろうがお前にはあるんだよ!シャーロックやあかりのよう・・・人を引き寄せる天性ともいえる求心力が・・・その人をそいつ以上に理解して実力を引き出すカリスマ性が・・・俺達みたいな癖のある連中さえも率いる・・・優れたリーダーシップってやつがな・・・それがお前が俺達のリーダーたり得ている何よりの証だ!』
「・・・・・・本当に・・・こんな甘ちゃんな俺が・・・お前等のリーダーでいいのか?」
キンジがそう尋ねると
『当たり前じゃない!リーダーなんだからもっと胸張りなさいバカキンジ!!』
『私は一生キンちゃんに付いてくよ!!』
『ガンバだよキー君!!』
『キンジさん・・・指示をお願いします!』
『キンジ!時間がねぇ!策があるなら早く言ってくれ!!車輌の事なら何だろうとやってやるぜ!?』
『腕の見せ所だよ!遠山君!!』
無線からみんなの声が聞こえた・・・
そして誰一人として・・・キンジを否定するものはいなかった・・・
「・・・・・ッ‼‼‼」
『キンジ・・・お前が女に甘いのは筋金入りだろうよ・・・なら代わりに全部守ってみせろ!俺達を指揮して・・・使えるものは全部使って仲間も敵も全部助けてみろ!!お前はもう迷わない、もう逃げないんだろ!?』
それを聞いてキンジは
「――――ラァッ‼‼‼」
自分の顔を思い切り殴ると皆に指示を下した
「みんな聞いてくれ!!爆弾は先頭、16号車にある!!車内に残ってる奴等は乗客や積み荷を15号車より後ろに避難させるように誘導しろ!そうしたら後ろの車両を切り離すんだ!そうすれば軽くなった分、速度は稼げるし乗客も全員逃がせる!!」
『本気かよ・・・面白え策じゃねえか!!切り離しは任せとけ!!』
『了解だよ!遠山君!乗客は後ろに避難させる!!』
『氷牙!!15秒で後ろを切り離した状態でも走れるようにセットする!遠慮なくやってくれ!!』
『キンちゃん!私も内側から手伝うよ!氷牙君!タイミングはそっちで決めて!!』
『ああ!!分かった!!』
そう言って皆行動に移った
そしてキンジも
「ほらココ!車内に来い!爆弾の解除方法教えてもらうぞ!?」
とココ達に問い詰めたが
「フンッ!言うと思うカ?」
ココ達は憮然とした顔でキンジを睨んだ
「言わないなら言わせるまでさ」
そう言うとココは鼻で笑って
「ハッ!女に手を出せないお前が出来るのカ?」
とキンジを見下していた
「確かに俺には出来ないよ・・・」
「そうネ!お前何も出来ないネ!」
甲高くそう言ったココに・・・
「でも俺達は出来るぞ?」
「「エ?」」
キンジは耳に着けている無線に指を当てると
「氷牙?ココ達の尋問を任せたいんだが・・・出来るか?」
『おういいぞ?切り離し終わったらやるから待っててくれ』
氷牙がそう言った途端
「「――――ッ!!」」
二人のココの顔が引きつった
「ま、待つネ!!アイツに尋問させるなんてお前それでも人間カ!?」
「嫌ならどうする?俺が相手の内に自白してくれるなら今回は見逃してやってもいいよ?ダメならこのまま氷牙と交代だ。あいつの尋問は完全に拷問な上は内容がえげつないからね・・・」
なにせあいつが尋問(拷問)すると犯人を心身共にズダボロになっても容赦なく責めて・・・どんなに遅くても次の日には犯人共々血塗れになって自供取って出てきたからな・・・
しかもその拷問を受けた犯人はその後取り調べを受けるとその度に真っ青に震えながら
「ゼンブイイマス・・・コロサナイデ・・・」
と呟き続け驚くほどに迅速に調書が取れてるらしい・・・
その様子には綴さえもドン引きしたほどだからな・・・
「キンチ!ココ達に死ねというのカ!?」
「そうだね・・・正直、今のうちに・・・廃人になる前の五体満足でいる内に自白することをお勧めするよ・・・」
自分で言っておいて何だが・・・氷牙の実績をよく考えてみると・・・
流石にキンジも自分の発言にドン引きした・・・
『おいコラ・・・好き放題行ってくれるが殺しはしねえよ・・・俺は武偵だしな』
「ホ、本当カ?手足を斬り落としたりしないカ?」
「殺さないというのは肉体的にだけカ?精神的に殺す気じゃないのカ?」
『まああれだ、キンジに免じてバイクにワイヤーで繋いだ後、時速400キロの持久走で勘弁してやる』
「「―――ッ‼‼‼お前悪魔か!?」」
実質ただの引き回しじゃねぇか・・・
『確かに、風雪ちゃんが言うには8分の1くらいは悪魔だそうですけど?』
「まあ・・・安心するといいよ、本当にヤバくなったら俺が助けてあげるからね」
とキンジは呆れながらフォローしておいた
『そこは変わんないのかよ・・・ホント筋金入りだよな・・・』
「ああ、筋金入りだ。一生直らないぞ?そう決めたんだからな・・・」
ああ!そうだよ!俺はもう迷わない!もう逃げない!とっくの昔にそう決めたんだ!!敵も味方も助けるなんて甘ちゃんだっていうなら・・・それで結構だ!甘ちゃんのままでも・・・仲間たちと一緒に・・・全部助けてみせてやるよ!!
キンジはそう決意を新たにするとココ達を連れて車内へと戻っていった
『ああそうだ。ちなみにだキンジ?』
「何だ?」
『手っ取り早く終わらせたいなら爆弾、俺が洗面所ごとくりぬいて海に投げ飛ばしてやるぞ?』
『『『それはやめろ!!!』』』
こればかりは全員が猛反対した・・・
お前なら本当にやりかねないけどくりぬいた瞬間爆発したらそれこそ終わりだろ!!
次回オリジナル展開入れる予定です
感想お持ちしています