緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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55話<今を生きて君と明日へ>

「ようレキ・・・」

「キンジさん・・・こんにちわ・・・」

寮の玄関から出てみればちょうど出かけようとしているレキと鉢合わせた

そしてレキは制服を着て・・・

もしかして・・・

「もしかして・・・氷牙のところに行くのか?」

「・・・すみません・・・まだ・・・」

レキは静かに首を振った

「・・・そうか・・・」

 

シャーロックとの戦いから一ヶ月・・・7月もとうに終わり、夏休みも残り10日を切った・・・

ようやく俺達の周りも落ち着いて、俺達もあの出来事についてそれぞれ自分なりの折り合いをつける事が出来た・・・だけど・・・

 

「・・・今日はアリアが行ってるはずだから・・・心配するな・・・」

レキは・・・あの日以来一度も氷牙の所には行っていない・・・レキだけは・・・あの日からずっと立ち止まったままだったのだ・・・

「・・・はい・・・ありがとうございます・・・」

そしてレキはキンジに一礼すると行ってしまった

 

 

 

 

 

「・・・レキの奴・・・どうして会いに行ってやれないんだ・・・いったい何がアイツを縛り付けてるんだ・・・」

そう思っていたら突如キンジの携帯が鳴った

「ん?アリアから?」

通話ボタンを押して出る

「もしもし?」

『キンジ!今すぐレキを連れて来て!』

「――?どうしたんだ?」

『大変よ――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レキは校舎の階段を上がりながらこれまでの事を考えていた・・・

 

この数ヶ月は色々あった・・・

楽しかったこと・・・

嬉しかったこと・・・

悲しかったこと・・・

辛かったこと・・・

本当に色々あった・・・

 

今思えば本当に毎日が充実していた・・・

 

氷牙さんと一緒にいるだけで・・・本当に毎日が満たされていた・・・

 

だけど私はずっとそれに気付く事が出来ず・・・ようやく気付けた時には全てを失くしてしまっていた・・・

 

失くしてしまうまでずっと気付けなかったこと・・・今ではとても後悔している・・・

 

だから・・・私は貴方の元には行けず・・・ずっとこうして・・・

 

 

 

――ガチャ――

 

 

 

 

そして屋上に着くとレキはドアを開けた

 

そしたら・・・

 

「――――!!!」

 

ドアを開けた瞬間レキは我が目を疑った。屋上には先客がいたのだ・・・

しかもその人物は・・・間違いなくこちらに気付いているはずなのに背を向けたまま振り向こうともせず空を見上げたまま動かない・・・

まるでそちらから話しかけて来いと言わんばかりだった・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・」

やがてレキはそこにいた人物の後ろに立つと声を掛けた

 

「・・・こんなところで・・・何してるんですか・・・」

 

声を掛けられるとその人物も背中を向けたまま返事をした

 

「・・・人を・・・待っているんだ・・・」

 

「人を?・・・ここで誰かと会う約束でもしていたんですか?」

「いいや・・・約束はしていない・・・気が向いて俺の所に来てくれるのを待っているんだ・・・でも今まで待っていた場所じゃいつまで待っても来てくれないと思ってさ・・・ここで待つことにしたんだ・・・」

「それで・・・こんな所で待っていたんですか?・・・人なんて滅多に来ないこの場所で・・・」

「人は来ないけどいい場所だぞ?日当たりもいいし、静かだし・・・なにより・・・」

「何より・・・なんですか?」

 

 

その人物はゆっくりとこちらを振り返り

 

 

 

 

「レキと初めて会った場所だからな・・・」

 

 

 

 

その人物・・・氷牙はそう返答した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――氷牙がまた病院から逃げ出したわ!!』

「なっ!?本当かよ!?アイツ本当に最低半年は絶対安静の患者なんだよな!?」

 

そう・・・あの後、救助隊の必死の処置、そして救護科の懸命な治療もあって氷牙はどうにか一命はとりとめた

そして面会が許可されたのはその数日後の集中治療室で全身に包帯を巻いてあらゆる医療器械に繋がれた状態でのことだった・・・

 

「ケガの具合はどうだ?」

「最悪だよ・・・完治まではざっと数年・・・矢常呂先生にも「なんで生きてるんですか!?」って言われっちまったよ・・・」

そう言って右目だけでこっちを見た

 

「氷牙・・・お前、左目・・・もう・・・」

「ああ・・・刀が眼帯貫通して眼球に入っちまったらしい・・・もう2度と見えないだろうってな・・・まあ、あと数センチ深く入っていたら即死してたらしいから・・・生きてるだけ儲けもんだな・・・」

「それに右腕も・・・」

「まあ・・・脱出するためにやむを得なかったってところだな・・・今まで何人もの人間の手足を斬り落としていたんだ・・・これも因果応報ってやつだな・・・」

 

「ホントに体中ボロボロだな・・・生きてるのがありえねえって言われてもしょうがないよな・・・」

「いいさ・・・これでいい・・・傭兵、マッド・ファングは死んだ・・・これからは俺は武偵、九狂氷牙として生き直す。その代償と比べれば安いもんだ・・・」

・・・あの日、ラッシュ大尉の計らいでマッド・ファングは死んだことにしてくれたのだ・・・

救出されるなり事情を知って激怒したラッシュに「そんなに死にたいならばマッド・ファングは俺が死なせてやる!そしたら生まれ変わって九狂氷牙としてとことん生き抜いてみせろ!」と説教されてしまい傭兵、マッド・ファングは今回の事件で死亡したことにされてしまったのだ

 

「これからは俺は武偵、九狂氷牙として生きていく・・・多分俺は生まれ変わったんだ・・・生まれ変わったなら・・・まずは誰だって自分の足で立ち上がることから始めなきゃな・・・」

「リハビリ・・・相当長いしキツイそうよ?」

「なめんなよ?夏休みが終わるまでには復帰してすぐに返り咲いてやる!」

「言ったな!ならまずはさっさとケガを直せよ?そしたら俺達も全面協力してやる!付きっきりでリハビリしてやるからな!どんなにキツくてもお前が泣き事言っても俺達は絶対にやめねえぞ?」

「ああ、望むところだ!どんなにキツくても・・・お前らがいるなら・・・俺は・・・俺達はどんなことだってできるさ!」

氷牙はそう言って・・・まるで子供のように無邪気な笑顔を浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だからって・・・入院してわずか一ヶ月で脱走できるまでに回復するなんて異常すぎよ!アイツほんとに人間よね!?』

「とにかく探すぞ!レキならさっき会ったからまだ近くにいるはずだ!俺はレキに伝えるからアリアは先に捜査網を敷いてくれ!!」

そう言うとキンジもレキを追いかけるように校舎へと走っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・氷牙さん・・・私の事を・・・恨んでいますか?」

「恨んでいる?どうして?」

「・・・貴方が記憶を失くしてから・・・私は貴方の記憶を取り戻すことばかりを考えていました・・・」

「ああ、そのためにずっと俺の傍にいてくれた・・・そしてずっと俺を支えてくれた・・・感謝してもしきれないよ・・・」

「・・・不安だったんです・・・今思えば私のやったことは正しかったのか・・・もしかしたら私はただ貴方を苦しめていただけなのではないか・・・そしてあなたはそんな私を恨んでいるのではないか・・・そう思うと・・・怖くて今までずっと貴方に会いに行けませんでした・・・」

そう・・・それがレキが氷牙の所に行かなかった理由だ・・・

氷牙はもしかしたら記憶を失くしたままでいたかったのかもしれない・・・

氷牙はもしかしたらレキを恨んでいるかもしれない・・・

そう思うと会いに行くのが怖かった・・・

 

「・・・恨んでなんかないさ、だから俺はここに来たんだ・・・レキに会って今のお前を否定するためにな・・・」

「え?」

「初めて会った日から・・・俺は毎日のようにここに来た・・・またここでレキに会うために・・・ここに来れば・・・必ずレキはいた、ここにいれば必ずレキは来てくれた・・・だから今日、レキに会うために俺はここにいた・・・そしてレキは来た・・・」

「・・・そうでしたね・・・約束も交わす言葉も無いのに・・・私がここにいれば必ずあなたが来た・・・私がここに来れば必ずあなたがいた・・・」

レキは本心では氷牙に会いたかった・・・

だからここに通い詰めていた・・・

かつては、ここに来れば氷牙がいた・・・ここにいれば氷牙が来た・・・

そんな過去にすがり付いて・・・

 

「けどよ・・・所詮それは過去の出来事だ・・・今じゃない・・・今のお前はかつてのキンジと同じように・・・今から目を背けて逃げてるだけじゃねえか・・・今更、過去の記憶にすがっても・・・もう過去には戻れない・・・もうここで俺には会えない・・・」

「・・・でも・・・今日・・・貴方はここにいてくれました・・・」

「ああ、そして今日が最後だ・・・ここで待っても、もう俺はここには来ない・・・ここに来ても、もう俺はここにはいない・・・だから・・・過去ばかり見るのはもう止めろ・・・」

「なら・・・一つだけ教えてください・・・貴方に会いたくなったら・・・これからはどこに行けば貴方に会えるんですか?」

そう尋ねると氷牙は・・・

「んなもん簡単じゃねえか、電話なりメールなりすりゃあいい、そうすりゃ俺が今いる場所教えてやるし、そっちの場所教えてくれれば俺がそっち行ってやる」

「あ・・・・・」

あまりにもあっけらかんとした返答にレキも気が抜けてしまい・・・

「まあ、連絡する手間が増えて面倒かもしれんが待ち合わせるのはそれが普通・・・」

氷牙も言葉を止めた、なぜなら・・・

「はい・・・それでも構いません・・・それで貴方に会えるなら・・・それだけで十分です・・・」

そう言いながらレキの目からは涙が流れていたのだ

 

 

 

「また・・・泣いてるのか?また・・・俺のせいで・・・泣かせたのか?」

氷牙はレキの目元を指で拭いながら訪ねた

「はい・・・でも・・・今ならどうして泣いてるのかわかります・・・貴方とまたここで会えた・・・そんなささやかで当たり前だと思っていた日常をもう一度取り戻せたから・・・それが嬉しいからです・・・」

「そっか・・・ならよかった・・・」

そう言うと氷牙は優しく微笑んだ

 

 

「お帰りなさい・・・氷牙さん・・・」

 

 

「ああ・・・ただいま・・・レキ・・・やっとここに・・・帰ってこれたよ・・・」

 

 

そしてレキは・・・あの時と同じように俺の胸に顔を埋め泣いて・・・

俺は・・・ただレキの頭を優しく撫でていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくするとレキは落ち着いて俺に礼を言ってきた

「ありがとうございます・・・思い出してくれて・・・生きてくれて・・・」

「ああ・・・そしてもう2度と忘れない・・・もう2度と手放さない!この記憶も、この居場所も、この想いも、この命も・・・もう2度と失くすもんか・・・それに・・・やっと全部思い出したんだ・・・やっとこいつを渡せる・・・」

そう言って氷牙はレキにボロボロになった袋を渡した。

 

その袋・・・レキにも見覚えがあった

「これは・・・あの時ハイマキが下げていた・・・」

「ああ・・・あれから色々あってな・・・やっとこれを取り戻せた・・・やっと何なのか思い出した・・・そして・・・やっとレキに渡せた・・・」

「これを・・・私に?」

「ああ・・・開けてみろ・・・もともとレキのための物だ・・・」

そう言われレキは袋を開け中身を取り出した

そこには・・・

 

「あ・・・これは・・・」

 

シンプルながらも意匠のデザインなヘッドホンが入っていた

 

「氷牙さん・・・これは・・・」

氷牙は恥ずかしそうに頭を掻きながら

「以前・・・俺がぶっ壊したままだったろ・・・あれからずっとしてないじゃねえか・・・仕草見てわかるよ、ヘッドホン無くて落ち着かないんだろ?だから・・・さ、レキに合いそうなの用意したんだ・・・」

これを手に入れるためにアドシアードで資金を稼ぎ、中空知さんにレキの使っていたヘッドホンについて詳しく聞いて、それを扱っている場所を聞いて・・・そして特注して届くまで半月近くかかって・・・そしてようやく手に入ったと思ったら盗られて失くして・・・戻ってきたら何なのか忘れて・・・

「いろんなことがあって・・・渡すのにこんなにかかって・・・こんなに傷だらけになっちまったけどな・・・」

確かにヘッドホンはハイマキに引っ張りまわされたためか細かい傷や汚れがあちこちに付いていた

幸い防弾・防刃・耐衝撃製の特注品なためこれくらいでは機能的には何の問題もないが贈るにしては見栄えが悪かった

「・・・・・・・・・・」

「引き回されて・・・傷も付いちまったし、汚れっちまった。贈るにしちゃ見栄えが悪いことこの上ない・・・だけど・・・代わりが見つかるまでの間でいい・・・受け取ってくれないか?」

 

レキは首を横に振ってヘッドホンをぎゅっと抱きしめ

「これで・・・これが・・・いいです・・・」

「え?」

「氷牙さんが・・・私のために選んでくれて・・・あんなに必死になって取り返そうとしてくれた・・・これが・・・いいです・・・」

「レキ・・・」

 

そしてレキはヘッドホンをすると

 

「似合い・・・ますか?」

「ああ・・・すごく似合ってる」

「・・・はい・・・氷牙さん・・・ごめんなさい・・・」

突然レキが謝ってきた

「――?何で謝るんだ?」

「・・・本当はあなたがウルスの契の義について知らないことは知っていました」

と答えた

「・・・え?」

「本当ならあのまま貴方は何も気づかぬまま終わらせることもできたんです」

「・・・じゃあなんで偶然とはいえ俺の求婚を受け入れた?・・・風の命令か?」

俺はレキに尋ねた

するとレキは首を横に振り

「私が風に命じられ貴方のために命を捨てようとしたとき、貴方は私のために本気で怒ってくれました。そしていつも私のことを本気で心配して、どんな時だって私のために必死になってくれました。今思えば、それが・・・とても嬉しかったんです・・・だから・・・私は・・・貴方とならば・・・そう思い、受け入れました」

 

・・・え・・・?

 

「そして・・・突然求婚した時も家に押しかけた時も過程はどうあれ貴方は私を受け入れてくれました・・・こんな私を受け入れてくれた貴方に私は自分でも知らぬ間に心惹かれていたのです・・・」

 

・・・なんだよ・・・じゃあ・・・

 

「そしていつしか私はこう思うようになりました。私を・・・この命を俺の物だといってくれたのが――」

 

いつの間にかレキは・・・

 

「――『氷牙さんで本当に良かった』と――」

 

紛れもなく自分自身の意思で俺に好意を寄せていたのか。

 

「レキ・・・お前・・・今・・・」

笑った・・・のか・・・

「ですから・・・これだけは自信を持って言えます、風やウルスの命令に関係なく・・・私は氷牙さんを愛しています・・・」

そう言ってレキはぎこちなくも確かに笑顔を作っていた

 

そして俺は・・・確信した

・・・ダメだ・・・落ちた・・・と

ああ、間違いない・・・

初めて会った頃、俺はレキのことはなんとなく放っておけない電波系な痛い子だと思っていた・・・

でも本当はそんなのどうでもよかった・・・

こんなふうに相手を思いやってくれる優しさ・・・無表情だけど時折見せるぎこちない仕草・・・

そんなところに俺は惹かれていたんだ・・・

だからこそ今ならはっきりとわかる・・・

風とかウルスとか契の義とか掟とかそんなことは関係ない!

俺は・・・

 

「・・・先に・・・言われっちまったな・・・」

「え?」

「ああ・・・俺も・・・レキが好きだ・・・だから・・・今度は・・・風とかウルスとか関係なく・・・本当に恋人になって・・・ずっと俺の傍にいてくれないか?」

「・・・はい・・・喜んで・・・」

そう言ってもうそれ以上の言葉はいらなかった。

レキは俺に寄り添い、俺はレキの髪を優しく撫でた

そして俺たちの顔の距離は次第に近くなり、いつしかお互い目を閉じた頃には

二人の唇の距離は0になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――直前で

「・・・レキ」

「・・・はい」

本当に言葉はいらなかった・・・

氷牙がコルトパイソンを

――ドォン――

レキがドラグノフを

――ドキュン――

それぞれ真横に構えて撃った

――ガァン――

氷牙の弾丸が屋上出入口のドアノブに当たるとその衝撃でドアが大きく開き

――ドダダダダッ――

「ぐぇ!?」「どわっ!?」「ふみゅ!?」「ほわっ!?」

理子を筆頭にキンジ、アリア、白雪と屋上に倒れこんできた

「そんな気はしてたよ・・・」

俺はレキから離れると理子達に歩み寄り

「さて・・・一応そこで何をしてるのか・・・言い分を聞かせてもらおうじゃないか・・・」

と、問いかけた

 

「ぐ、偶然だよ〜偶然通りかかったら二人がいただけだよ〜」

 

「ほう・・・じゃあそのビデオカメラはなんだ?」

理子の右手にはビデオカメラが握られていた

「あ、あれーなんでこんなところに?」

 

「大方、冷やかしとからかいの種があると睨んで面白半分で来たんでしょうね」

「ご、ごめーん!で、でもほら!告白シーンもばっち・・・り・・・」

よく見るとカメラのメモリー部分は撃ち抜かれていたように穴があいていた

おそらく先ほどのレキの銃撃でメモリー部分だけを撃ち抜いたんだろう・・・

「遺言はそれで終わりか?ああ、もちろん階段下に隠れているお前らも同罪だからな?」

そう言ってドアの向こうを睨んだ

『ギクッ!』

そう・・・階段下にはクラスメイトたちがまだ数人隠れていた

気づかないと思ったか!

「も、もしかしてひょーたんもレキュも・・・怒ってる?」

 

「ああ、すっごく怒ってる」

「ええ、とても怒ってます」

二人共笑顔と無表情なのが逆に怖い・・・

 

「ま、まて・・・氷牙、レキ・・・話し合おう・・・」

 

「ああ、はなしはしよう」

「ええ、はなしはしましょう」

 

よ、よかった・・・まだ弁明の余地は・・・

「今から皆さんを解放します。1分後に撃ち始めますのでそれまでにせいぜい遠くへ逃げて見せてください」

「全然よくねぇ!!そっちの放すじゃねえよ!」

「安心しろ、一人だろうと逃がしはしないからよ」

「尚更よくねぇ!何も安心できねえよ!!」

「今とても調子がいいんです、今なら絶対半径を書き換えられそうな気がします」

「ヤ・・・ヤバイ・・・二人共マジで怒ってる・・・」

「落ち着いてキンジ!ならまずはレキを押さえ込んで・・・」

「ちなみにレキを押さえ込もうなんて考えてる奴いたら前に出ろ、手負いの俺だが全力で相手してやる」

「アリア・・・最強最悪のガーディアンいますけど!?」

「やっぱり・・・全力で逃げるわよ・・・」

 

「さて・・・それじゃあ・・・ゲームスタートだ!」

そう言って氷牙は蘭豹みたいにパイソンを空に向かって発砲した

――ドォン――

氷牙の号砲と同時に

『うわぁぁぁぁぁ!!!!』

クラスメイトたちが一斉に逃げ出した・・・

氷牙はパイソンをしまうとMP5Kを構え

「ったく・・・ほんとに退屈しないやつらだよ・・・」

レキもドラグノフを構え

「ですが今は標的です、一人たりとも逃がしません」

「ああ!水差された礼はしてやる!・・・それとだ・・・なあレキ?」

「なんですか?」

氷牙は少し照れくさそうに

「もうすぐ夏休みも終わりだけどさ・・・その前にまた・・・夏祭り行かないか?今度は潜入とかじゃなくて・・・二人で遊びにさ・・・」

とデートの誘いをしてきた

そうしたらレキは少し顔を赤くして

「はい、喜んで」

と笑顔で返事をした

氷牙も少し顔を赤くして

「ああ、それじゃあ・・・楽しみにしてるよ」

そう言って俺は階段を数段降りたところで

 

「氷牙さん!」

レキに呼び止められた

「ん?どうし――」

振り返ると――

「んっ!?」

レキが俺の首に手を回して唇にキスしてきた

そして唇が離れると・・・

「――レキ・・・」

「・・・約束です・・・私も・・・楽しみにしています」

「ああ・・・約束だ・・・」

「それと・・・もう勝手にいなくなったりしないでください・・・」

「・・・それは・・・もう一回してくれたら守れそう」

「・・・1回だけでいいんですか?」

「今はね・・・後はこれから何度でも」

そう言って二人はもう一度キスをした

 

「約束です・・・もう・・・勝手にいなくなったりしないでください・・・」

「ああ、ずっとレキのそばにいる…ずっとレキを守って見せるよ・・・」

 

この先どんなことがあるかはわからない・・・

 

俺がこの世界に生まれた本当の意味は今でも不明なままだ・・・

 

そして俺の奥底に眠る殺意と戦意の衝動は未だに燻り続けている・・・

 

もしかしたら俺はいつか自分を抑えきらなくなるかもしれない・・・

 

もしかしたら俺はいつか本当に殺人狂になり果てるかもしれない・・・

 

だけど・・・今俺の隣にはこんなにも頼もしく愛しい人がいる・・・

 

それだけで俺はどんな事があっても乗り越えられる!

 

彼女が傍にいてくれるだけで・・・俺は何だって出来る!

 

だから生きてみよう・・・彼女がそばにいる限り・・・俺は武偵として、人として、レキのパートナーとして、レキの恋人としてとことん生き抜いて見せよう!

 

レキと共に・・・武偵、九狂氷牙として・・・とことん生き抜いて見せる!!

 

「行くぞ!さっさと終わらせて新しい浴衣買いに行くぞ!」

「はい!」

 

そうして武偵、九狂氷牙はレキと共に前へと歩き出していった

 

 




これにてひとまずの区切りとします!
2学期以降も執筆予定ですのでまだまだ付き合えると言えるくらい寛大な方がいれば
今後ともよろしくお願いします!

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