最近スランプか進まない・・・
後いつの間にかお気に入り300行きました
ありがとうございます!!
氷牙が無線機を握りつぶして通信が切れた後シャーロックはというと・・・
「ふむ・・・無線を壊してしまったか・・・少し煽りすぎたかな?」
「おい!シャーロック!お前さっきから誰と話しているんだ!?」
「そうだね・・・イ・ウーの新しいナンバー2になる男と・・・かな?」
「なっ!?新しいナンバー2!?ブラドに後任がいたのか!?」
「ああ、つい最近イ・ウーに入学したばかりだが実力は本物だ。ブラドよりも強いよ?もうじきここにやってくだろうから待っているといい」
それを聞いてキンジは顔をしかめた・・・
ブラドよりも強い男がこっちに向かってきている・・・
それに引き換えこっちは氷牙とは未だ合流できずレキは手負い・・・シャーロック一人だけでも勝てるかどうかわからないのに・・・ブラドよりも強いナンバー2が到着したらとても勝ち目はない・・・
もはや勝てる見込みがあるとすればナンバー2が到着する前にシャーロックを倒すしかない・・・こうなれば一刻の猶予もない!
「けど・・・そうだね・・・彼が来る前に継承を済ますとしよう」
そう言うと・・・シャーロックの体が緋色に光始め、それに共鳴するかのようにアリアの体も同じように緋色に光始めた
「な・・・なに、これ・・・」
そしてその光は次第に右手の指先に収束して行き二人の指先で小さな太陽のように輝いていた
「アリア君、僕はこれから君にこの光弾『緋天』を撃つ。これを止める方法はただ一つ、君も僕と同じように『緋天』を撃ち相殺することだ」
「え!?そ、そんなこと言われてもどうすれば・・・」
「アリア・・・たぶん、こうだぜ」
そう言ってキンジはアリアの右手を握った
「・・・キ、キンジ?」
「大丈夫だ・・・お前は一度、無意識だがこの技を使っているんだ」
そしてキンジは両手でアリアの右手を支えてシャーロックへと突き出した
「・・・いい仲間を、そして何より・・・いいパートナーを持ったね・・・アリア君・・・人生の最後に二人が支えあうホームズ家の象徴的ともいえる姿を見れて・・・幸せだよ・・・」
――パァッ・・・・・――
そして二人の指先から放たれた『緋天』は二人の間で衝突し・・・
―――静かに溶け合っていった・・・
やがて光が次第に収まってゆくと二つの『緋天』は消えてゆき跡に残ったのは・・・
「成功だ・・・暦鏡が発生した!!」
二つの『緋天』が衝突し相殺された後、そこには直径2メートルほどのレンズのようなものが空中に浮かんでいた、そしてそこに映っていたのは・・・
「あれは・・・氷牙!?」
どこかのパーティー式場と思わしき場所で氷牙が暴れている光景だった
「何だこれは!?まさか氷牙の奴どこかで戦ってるのか!?」
「違います・・・氷牙さんの顔をみてください・・・」
そう言われて氷牙の顔を見ると無くてはならない物がなかった
「な!?・・・傷が無くなってる!?」
映されている氷牙の顔には・・・今はあるはずの傷が無かったのだ
「おそらくあれは・・・過去の氷牙さんです・・・私達と出会う前の・・・マッド・ファングと呼ばれていた頃の・・・」
「ご明察だ!そう、これは過去の氷牙君、そして今彼がいる場所・・・アリア君、きみならよく知っているはずだ!」
そう言われて映っている場所をよく見るとそれは確かに心当たりがあった
「この場所・・・――ッ!!まさか!?3年前の――」
アリアがそう言うと・・・そこに1人の少女が写った
亜麻色のツインテールに紺碧の瞳と今とは髪も目の色も違うが見間違うはずがなかった・・・
「あれは・・・まさかアリアか!?」
「ええ・・・間違いないわ…あれはアタシよ・・・3年前のアタシだわ!!」
「そう・・・あれは3年前のアリア君、そしてここはアリア君と氷牙君が偶然出会ったパーティー会場だ、そして君はこの日何者かに撃たれた、だがアリア君の体からは銃弾は見つからなかったんだろう?当然の事さ、君の体には・・・まだ撃ち込んでいないのだからね・・・」
「え!?どういうことですか!?」
「結論から言おう・・・この日アリア君を撃った犯人・・・その犯人は・・・僕だ」
「「「!!」」」
「いや、正確にはこれから撃つ、この緋弾をね。そのための暦鏡だ、この鏡は・・・過去へ干渉することができる鏡なんだよ」
そう言ってシャーロックは懐から取り出した銃、アダムス1872・マークⅢに緋弾を装填して撃鉄を起こした
「継承した緋弾が覚醒するまで最低でも3年は肌身離さず保有しなければならない・・・だが、緋弾を狙うものから守り続けるには覚醒したものでなければならない・・・だからこそ今日までは覚醒した僕が持ち、今日からは覚醒したアリア君が緋弾を保有する」
「なるほど・・・タイムパラドックスを逆手に取ったわけですね・・・」
「その通りだよ、緋弾はこの世に1つしか存在しない、3年前は僕が肌身離さず持っていたんだ、アリア君の体内には存在しない、ならば当然アリア君の体を探しても見つかるわけはない・・・だが今日僕が3年前のアリア君に緋弾を撃ち込む事によって・・・ようやくアリア君の体内に緋弾が3年前から存在することになるんだ」
そして銃を鏡の向こうにいるアリアへと向けた
「や、やめろ・・・!!」
「大丈夫だよ、僕は銃の名手でもある」
「避けろ!!アリア――――!!!」
その声は届いたのか・・・鏡の向こうのアリアがこちらを振り返り、キンジと目が合った
――パァーーン・・・――
そして緋弾はアリアの背中、今のアリアの背中に銃痕があった場所に当たり鏡の向こうのアリアは倒れてゆくと同時に鏡は薄れ・・・消えていった
そしてシャーロックの顔は・・・緋弾による延命の力を失ったためか20代前半の青年から30後半の歳に急に老けていった
「いくつか説明しておこう・・・緋弾の継承者は肉体の成長が遅くなり髪と瞳が緋色になってゆく・・・今の君のようにね」
「・・・・・・・・・・」
「君たちはこれから緋弾を狙う者達との戦いに巻き込まれてゆくだろう・・・だが世界のために・・・どうか緋弾を守り続けてくれたまえ」
まるで使命を全うしたかのようにシャーロックは語り終えた
「ふざけんな・・・・」
キンジが拳を震わせながら立ち上がり
「ふざけんな!!シャーロック!!」
アリアが撃たれた怒りによって再びヒステリア・ベルゼが発動したキンジは怒りのままにシャーロックに飛び掛かった
しかし・・・
「ふむ・・・走りながら銃撃して牽制、間合いに入ったら銃を手放してローキックと見せかけてすかさず持ち替えたバタフライナイフで攻撃、と同時にそちらのお嬢さんの狙撃かな?」
と、キンジがナイフの間合いに入る前にこの後の流れを全て言い当てた
「「な?!」」
そしてその予想はことごとく当たり・・・牽制の銃撃を躱し、キックをいなすと、レキの銃弾をステッキに仕込んた剣で弾いた
シャーロックの超越した推理は未来さえも推理する・・・つまりは相手がどう行動するかシャーロックは正確に当てる事が出来る。それがどれほど優位に立てるかは論するまでも無い・・・
「僕の条理予知が外れたことはこの150年で一度しかない。緋弾を失って衰えてしまったとはいえ君たちの一手先の行動くらいは推理できるよ」
「なら・・・これならどうだ!!」
そう言ってキンジは右手のナイフを突き出した
爪先から指先までの全身の筋肉をほんの一瞬だけ同時に稼働させる、そうすればまず駆け出してる現時点で時速36キロに加え、爪先で時速100キロ、膝で200キロ、腰と背で300キロ、肩と肘で500キロ、手首で100キロ、全部合わせて時速1236キロ!瞬間的に・・・超音速の一撃を作り出す事が出来るんだ!
「この桜吹雪・・・散らせるものならッ!」
そしてナイフの背から放たれた円錐水蒸気と音速による衝撃で引き裂かれた右腕から飛び出た鮮血がまるで散りゆく桜吹雪のように飛び散りながらシャーロックに迫ってゆく
「散らしてみやがれッ!!」
――パァァァァァァァン!!――
いかにシャーロックといえども間近で放たれた音速の一撃を推理することは出来ても躱すことはできない
――バチィィィィッ!!――
・・・躱さない代わりにシャーロックは音速ナイフを指2本での白刃取りで止めた
「惜しかったね」
「いや!俺の勝ちだ!!」
そう言ってキンジは左手でシャーロックの右腕を掴むと思いっきり体を逸らして
「そうくることは・・・わかってたんだよ!!」
――ガスッ――
キンジの頭突きがシャーロックの世界最高峰の頭脳に炸裂した
「・・・・!!」
これは効いたのかシャーロックは右手の剣と左手で止めていたナイフを手放すと後ろに倒れてキンジもシャーロックが手放した剣を奪い取るといったん距離を取った
「見事だね…さすがの僕もこれは推理できなかったよ・・・」
そう言いながらシャーロックがふらつきながら立ち上がった直後
――カツン・・・カツン・・・――
奥から足音が聞こえてきた・・・
「おっと・・・どうやら彼が到着したようだ・・・」
「なっ!?」
「そんな・・・」
「間に合いませんでしたか・・・」
・・・時間切れだ・・・ナンバー2も到着してしまった・・・こうなったらとても勝ち目はない・・・完全に窮地に立たされてしまったキンジは・・・
「くそっ・・・どこ行っちまったんだ・・・お前ならこんな時は真っ先に駆けつける奴じゃねえか・・・氷牙ぁ!!」
そう姿が見えないかつての相棒の名を叫んだ直後・・・
「呼んだか?キンジ?」
奥から氷牙が出てきた
「氷牙!お前だったのか!!よく来てくれた!!」
そう言ってキンジは顔を上げた。
ナンバー2が到着する前に氷牙と合流できた!これならまだ希望はある!そう思ったからだ
・・・だがその希望はすぐに絶望へと変わった・・・
「ああ来たぜ・・・・・・お前たちを・・・追い返すためにな・・・」
そう言って氷牙はキンジに刀を突き付けたのだから・・・
「なっ!?」
「キンジ・・・アリア・・・レキ・・・警告だ・・・今すぐこの潜水艦から消え失せろ・・・」
「氷牙!?何言ってんのよ・・・冗談言ってる場合じゃないのわかってんでしょ!!」
「冗談ね・・・おい、シャーロック・・・俺が誰か言ってみろ・・・」
「ああ、改めて紹介しよう、彼がイ・ウーの新しいナンバー2だ」
「「「――ッ!?」」」
「そう言うことだ・・・わかったらさっさとここから消えろ・・・」
「なんだよ・・・それ・・・何の冗談だ!?氷牙!!!」
「・・・冗談言ってる場合じゃない・・・今そう言ったのはお前らだぞ?」
「・・・なんで・・・何でだよ!!何でイ・ウーに・・・犯罪組織なんかに下るんだよ!!」
「何で?言っただろ?俺は元々傭兵だ・・・俺の望む物を与え続けてくれるなら誰にでも従うさ・・・」
「お前・・・本気で言ってるのか!?」
「冗談言ってる場合じゃ――「・・・嘘ですね・・・氷牙さんは誰かに従う人ではありません・・・」
レキが急に口をはさんだ
「・・・・・・・・」
「え?どういうこと!?」
「おそらく・・・イ・ウーに入ったのは内部から壊滅させるため・・・そして私たちに刀を向けるのは私たちをこれ以上巻き込まないため・・・」
「な!?じゃあ・・・アイツ・・・」
「ええ・・・氷牙さんは・・・本気です・・・イ・ウーを道連れに死ぬつもりです・・・」
「・・・・・・・・・・チッ」
「舌打ち・・・肯定と受け取ります・・・」
「この・・・馬鹿野郎!!一人で抱え込んでんじゃねえよ!!そのために俺達がいるんだろ!お前も武偵なら・・・仲間を信じろよ!!」
キンジはそう叫ぶが・・・氷牙は俯いて・・・
「・・・仲間か・・・どの口が言ってんだよ・・・それに・・・俺はもうとっくに武偵じゃないだろうが・・・」
「え?お前何言って・・・」
キンジが問いかけた直後
――ドオォォォォォォォォォォォォン――
突如爆音と振動が潜水艦中から鳴り響いた
「なっ!?何だ!?」
「チッ・・・もう始まったか・・・キンジ!この先に脱出ポッドがある!アリアとレキを連れて脱出しろ!」
「氷牙!?」
「氷牙君・・・君はやはりこの選択をしたんだね・・・」
「なんだ・・・知ってたのか・・・ああ!この潜水艦に積んでいるミサイルを全部暴発させた!この潜水艦はまもなく消し飛ぶぜ!!」
「僕はこのイ・ウーに君の居場所を用意した・・・僕なりに君を受け入れる場所を用意したつもりだったのだが・・・君はまた居場所を捨ててしまうんだね・・・」
氷牙はシャーロックに刀を向け
「・・・俺の欲しい場所は・・・あんたとの死に場所だ!シャーロック!!ここで俺と共に果てろ!!」
「そうか・・・君は・・・ここで僕と共に死ぬつもりか・・・」
「それが・・・俺にできる唯一の償いだからだ・・・こんな殺人狂の俺にできるな・・・」
そう言いながら氷牙は左手でポケットから何かを取り出した
それを見たキンジも氷牙の左手に持っているものに気付いた
「――!?おい氷牙!それ・・・まさか・・・」
氷牙の手にあったもの・・・それは・・・『Razzo』だった・・・
「あの時と同じだな・・・こいつを投与すれば・・・」
「お前・・・やっぱり記憶が!?止めろ!その状態でそんなことしたら・・・今度こそ戻れなくなるぞ!!」
「・・・戻れなくなる?俺はもう・・・とっくに戻れないのわかってんだろ・・・」
「え?」
「もう分かってんだよ!!思い出したんだ!!俺はあの時、ブラドを殺したんだ!!俺はもうただの殺人犯だ!!もう武偵じゃないんだ!!」
「―――ッ!!違う!お前は紛れもなく武偵だ!!」
「何が違うんだ!お前らは俺の記憶を戻させるために俺に武偵をやらせていただけだったんだろう!!内心じゃずっと俺の事を殺人犯として見ていたんだろ!!」
「違うんだ!!お前は誰も殺していない!あの時、お前は確かにブラドを殺そうとした!だけど―――」
―――1ヶ月前
氷牙がブラドに向けて銃弾を放った直後
――ガキィィィン――
「―――ッ!?」
氷牙の弾丸がブラドの頭を撃ち抜く直前、氷牙の撃った弾丸が弾き飛ばされた
「氷牙!!!」
直後に真っ先に駆け出していたキンジがタックルで氷牙を押し倒し取り押さえた
そして取り押さえると・・・氷牙は抵抗する気配さえ見せずあっけなく大人しくなった
「今のは・・・あそこからか!?」
ここより1キロ先にある高層ビルその屋上に人影があった
「あれは・・・誰だ!?」
闇夜で遠すぎて顔は分からなかったがそこには狙撃銃を構えた桜色の髪の少女がいた
「・・・・・・・・・」
少女はキンジと目が合うと首を左右に振って・・・去っていった
あの子が・・氷牙を・・・止めてくれたのか・・・
「待って!キンジ・・・これ・・・・」
キンジは氷牙の顔を覗き込むと・・・
目は瞳孔が開き口元は笑っているかのように歪ませていた
なのに氷牙は・・・既に気絶していた
「とっくに意識がないわ・・・いつの間に・・・」
「こいつ・・・本能だけで動いてたってゆうのか・・・」
なんにせよ助かった・・・あの子が止めてくれなければ・・・氷牙は間違いなくブラドを殺し・・・二度と戻れなくなっていただろう・・・
「・・・それが真実か・・・」
「すまない!本当はあの時全部答えるべきだった・・・お前のことを思って詳細を伏せたつもりだったのに・・・まさかそれがお前を苦しめることになっていたなんて・・・」
「今まで黙っていてごめんなさい・・・でもこれがまぎれもない真実よ!」
「・・・・・・・・・・」
「わかっただろ!お前はブラドを殺してない!だからまだ戻れるんだ!まだ間に合う!帰って来い!氷牙!」
だが氷牙は・・・
「そうか・・・ブラドは生きてるのか・・・けど・・・生きてようが死んでようが・・・もう俺に武偵を名乗る資格は無い・・・」
「え?」
「ブラドと戦った時・・・俺がどんな気持ちだったか分かるか!?楽しかったんだよ!ブラドの体を切り刻む感触!苦痛にもがく叫びに歪む顔!恐怖に怯える顔!戦うことが・・・傷つけることが・・・楽しくて・・・気分が高揚して仕方がなかったんだよ!
こんな俺がまともだと言えるのか!?こんな戦闘狂が!こんな精神の持ち主が!こんな思考の持ち主が!今でも人を傷つけたくて・・・人を殺したくて仕方ないって衝動に駆られている俺が・・・殺し合うことに喜びさえ感じる・・・こんな俺が・・・武偵なんてやる資格あると言えるのか!?
・・・間違いなく俺はこのままでいればいずれ殺人中毒者になる・・・俺はそんなの嫌だ・・・だから殺人狂に成り果てる前に・・・せめてこいつらと刺し違えて死のうと決めたんだ・・・」
「氷牙・・・お前・・・・」
「早く脱出しろ!ここで死ぬのは俺とシャーロックだけで十分だ!」
「ふざけんな!そんなの許容できるか!お前はただ自分から逃げてるだけだ!」
「逃げてるだけ?お前が言うんじゃねえよ!金一さんが死んで世間から非難されてから腑抜けになって全てに目を背けて逃げたお前が言ってんじゃねえよ!」
「ああ!そうだよ!兄さんが死んでから・・・俺はずっと目を背け続けてきた!武偵からもアリアからも白雪からもお前からも!そして・・・自分からも!全てに目を背けてきた!だけどお前がいてくれたから俺は最後の最後で踏みとどまれた!そして今ようやく立ち上がれた!だからこそ決めたんだ!今度はお前が道を踏み外しそうになったら俺が助けようって!」
「――ッ!?何言って・・・まさかお前・・・」
思いもしなかった意外な返答に氷牙は驚いたが
「氷牙!!お前が道を踏み外しそうになったら俺達が何としても助けてやる!だから帰って来い!ずっと逃げてばかりいた俺が言ってやる!今お前が逃げようとしている先には・・・何もないぞ!後悔と虚しさばかりが残る・・・堕落の道だ!」
そう叫んでキンジは氷牙を真っ直ぐ見据えた。
それを見た氷牙はすぐに察しがついた・・・
「なんだ・・・キンジ・・・いい目じゃねえか・・・何があったかは知らないがようやく吹っ切れたんだな・・・」
「ああ・・・今更だけどな・・・全部お前のおかげだよ・・・ほんと・・・我ながら不甲斐ない事この上ないよ…」
「ああ・・・たぶん俺は…キンジを立ち上がらせるためにこの世界に生まれてきたんだ…そして俺の役目も終わった…もう俺がこの世界で生きる意味もない・・・」
「そんなことありません!!貴方は――「レキ!今すぐキンジ達と脱出ポッドに行け!!そして俺を置いて脱出しろ!!」
「ッ!!そんなこと・・・できません!!」
「いいから行け!俺を見捨てて逃げろ!!これは・・・命令だ!!」
「―――――――ッ!!」
レキがウルスに従い俺に仕えてるなら俺の命令は絶対だ・・・ならこう言えば・・・従わざるを得ないはずだ・・・
「氷牙・・・お前・・・」
「じゃあな・・・お前らと過ごした時間は・・・本当に楽しかったよ・・・」
そう言って氷牙は注射器を
――ドスッ――
自分の胸に注射した
「グッ!」
「――ッ!!氷牙!!」
そして氷牙は注射器を抜き捨てると胸を押さえた
「う・・・・がああああああああアあアアあ!!!」
ああ・・・これだ・・・あの時みたいに・・・心臓が一鼓動打つたびに感覚がさえわたって戦意が高ぶる・・・笑えるくらいに気分が高揚してる・・・同じだ・・・
だけど頭の中はどんどん空っぽになって・・・殺意と狂気で塗り潰されてゆく・・・これも同じだ・・・
そして目の前には・・・殺したくて仕方がない相手がいる!!これも同じだ・・・
全部同じだ・・・あの時の・・・ブラドとの死闘の時と・・・
何もかもが・・・あの頃そのままの再現じゃないか!!
「氷牙君・・・僕はもうじき死ぬと予知をした・・・だがどうして死ぬのか・・・それだけはどうしても分からなかった・・・だが今ようやくわかったよ・・・僕は・・・君に殺されて・・・死を迎えるんだ・・・」
氷牙は絶叫をあげた後、俯いた顔を上げた
「シャーロック・・・」
「さあおいで・・・遠慮はいらない、これが僕の最後の決闘だ。緋弾の力を失くした僕で済まないが・・・全力で相手しよう・・・」
氷牙は赤く光る目を見開きニィッと笑うと
「・・・死ねよ」
そう呟きシャーロックへと飛び掛かった
「――ッ!!ダメだ!攻撃はシャーロックの条理予知で全部読まれるぞ!」
キンジはそう叫ぶ、だが・・・
「ラア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
――パァァァァァァァーーー――
氷牙が刀を振るった直後突如潜水艦に銃声にも近い風切り音が鳴り響いた
「くっ!?」
そして右手の袈裟斬り、続いて左手の斬り上げ、そこからミドルキックと同時に回転切り、直後に後ろ回し蹴り、間髪入れずに逆手に持ち替えた刀で突きと剣術・体術を織り交ぜた氷牙の攻撃をシャーロックは辛くも捌いている・・・
「なっ!?シャーロックを…押している!?」
今の氷牙は暴走して「シャーロックを殺す」という目的の下に本能のまま動いている・・・殺意と狂気で塗り潰されたグチャグチャな戦闘思考と不規則でデタラメな行動パターンでシャーロックの推理を妨害し、さらに驚異的な速度で休むことなくシャーロックを攻め続け考える暇を与えようとしない・・・流石のシャーロックも推理する材料とそれをまとめる時間がなければ推理は出来ないようだ
「・・・・・・何よあの速度・・・あんなの・・・人間にできる動きじゃないわよ・・・それに・・・さっきから鳴り響いてるこの音・・・何?」
「この音・・・氷牙さん、まさか・・・ダメです!このままでは氷牙さんの体が持ちません!」
「――!?どうゆうこと!?」
「おそらく・・・今の氷牙さんは脳内リミッターが解除されています・・・だからこそ・・・あんな音速を超えた動きが出来るんです・・・」
人間は普段、神経や筋肉は2%程度の力しか出していない。体を壊したりしないように無意識で脳がその力を制御して抑えているからだ。
もしその脳内のリミッターが外れて力を100%発揮できれば・・・普段とは比べ物にならないほどに強くなるのは明らかだろう・・・
だがそんなことをすれば当然体は持たない・・・短時間でも体に相当な負荷がかかる、もし長時間続ければ・・・どうなるかは言うまでもないだろう・・・
「おい・・・それじゃああいつ・・・」
「はい・・・自分の攻撃の反動だけでも体に相当のダメージ受けているはずです・・・このままでは勝敗に関係なく・・・氷牙さんの体は・・・壊れてしまいます・・・」
そう言われて氷牙をよく見れば・・・氷牙が一撃入れようとするたび・・・爪先や刀の切っ先からは先程のキンジの桜花と同じように円錐水蒸気が発生し手足からは皮膚が破け血が飛び散り続けた・・・
「じゃあ・・・この音・・・まさか・・・」
ソニックブーム・・・音速を超える際に発生する衝撃波に近い轟音、普通はジェット機が最高速で飛んで初めて発生するもので地上で発生するなんてまずありえない・・・
「くそっ!!止めるんだ氷牙!!止めろぉぉぉぉぉぉ!!」
キンジは必死に叫ぶが氷牙はシャーロックを攻め続ける・・・
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
雄叫びを揚げながら戦う最中、氷牙の頭の片隅には僅かな理性が残っていた
(楽しい・・・戦うことが・・・傷つけあうことが・・・殺しあうことが・・・こんなにも楽しい・・・)
なんて・・・
なんて・・・
なんて・・・
なんて・・・
―――最低な気分なんだ!!
狂っている・・・こんな事を楽しく感じるなんて・・・狂っている・・・
やはり・・・俺はここで死ぬべきなんだ・・・完全に狂う前に・・・人の理性が残っているうちに・・・死ぬべきなんだ!!だからここで死のう・・・せめてこいつを・・・シャーロックを道連れにして・・・共にこの世から消え去ろう!!だから・・・もう何も考えるな!もう・・・全部捨てるんだ!!未来も過去も今も・・・そして、自分も!!
――全部捨てて・・・こいつら共々この世から消えるんだ!!
「死ね!!」
――コロセ・・・――
「死ねぇ!!」
――コロセ・・・――
「死ネぇ!!!」
――コロセ・・・――
「死ィネぇエえええエエ!!!!」
――コロシテクレ・・・――
やっと大詰めに入れます・・・
こうなったらやりたい放題行きます!!