緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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遅れながらも新年おめでとうございます

コミケと新年初売り行って来ての今年初の投稿です





51話<託された希望>

 

氷牙が下層へ飛び降りるとその先ではラッシュがフェンスの向こうで・・・

 

 

「貴様ぁ!合衆国への忠誠心はどうしたぁ!!」

 

そう叫びながらラッシュは半裸の大男にタックルを入れひるんだ隙に落とした銃を蹴り飛ばし背中に飛び掛かってスリーパーをかけた

「貴様も合衆国に忠誠を誓ったはずだろう!!」

 

ラッシュはそう叫ぶが・・・

「そんな昔の事は忘れた!」

 

大男はそう言ってスリーパーをかけていたラッシュを背負い投げた

 

「なんだありゃ・・・プロレスやってんじゃねえよ・・・」

そう言いつつも俺はフェンスに近づき、そこに張り付いている軍人の一人に問いかけた

 

「おい、これはどういう状況だ?」

 

「え?――なっ!?アンタ!その恰好は何だ!?」

そいつは俺を見た瞬間驚くが無理もなかった俺の体は返り血で血塗れなままなのだから・・・

 

「それに確かアンタ、ドッグと戦ってたんじゃなかったか!?」

「全部返り血だ、俺に外傷はない。それと・・・ドッグは自爆したよ・・・」

「――ッ!じゃあさっき落ちてきたエレベーター・・・まさか・・・」

「ああ・・・あの中にドッグがいるよ・・・」

 

「オイ!すぐにあの中を調べるんだ!ワイルド・ドッグの遺体があるはずだ!探せ!!」

そう言うと数人は瓦礫と化したエレベーターの中を調べだした

 

「で?そっちはどういう状況なんだ?」

「あ、ああ!大尉は・・・」

 

 

「オラ!ふらついてるぞ!」

「まだまだ・・・これからだ・・・」

そう言ってふらつきながらも立ち上がるが・・・

大男は立ち上がったラッシュの胸倉と片足を掴むと持ち上げて・・・

 

「げ!?あれはまさか・・・」

そして予想通り

 

『ボディィィスラム!!』

 

ラッシュを地面に叩き付けた

って、ベスさん・・・実況してる場合ですか…

 

 

「アイツが・・・ハーメルン大隊総隊長・・・グレゴリー・バローズ中佐・・・我が国の裏切り者のリーダーだ・・・」

「アイツがか・・・つうか・・・なんでこんなフェンスで仕切られた向こうでタイマン勝負してんだよ・・・」

「罠に嵌められたんだ!突然フェンスがせり出してきて大尉だけが孤立してしまった!破壊することも登ることも出来ずに我々は手が出せないんだ!」

 

「ふうん・・・」

氷牙はフェンスを見上げ観察した

確かに・・・これだけ高いと登るのも困難だな・・・おまけに頂点には高圧電流の流れた有刺鉄線・・・無理に登れば感電死どころか登ってる途中で恰好の的になって撃ち落とされるのがオチだ・・・かといって破壊しようにも相当の爆薬がいる・・・そんなもん使えば下手すればこの潜水艦ごと吹っ飛ばしちまう・・・これはこいつらじゃどうにもできないだろうな・・・・・・

 

 

 

そうしてる間にグレゴリーは大尉がダウンしてる隙に銃を拾いに行こうとするが

 

「テラーバイトやミサイルで何をするつもりだ!!」

そう言ってラッシュはすぐさま起き上がりスライディングからのカニばさみで転倒させ止めた

「滅茶苦茶にしてやるんだよ!この国を!」

ラッシュは立ち上がったところを掴みかかろうとしたが躱されてカウンターに・・・

 

『ラリアット!!』

 

流石に堪えたのかラッシュがダウンしてる隙にグレゴリーは銃を拾い近くにあったコンテナを掴んで持ち上げようとして・・・

 

(ってヤバい・・・アイツ大尉を押し潰す気だ!)

「チッ・・・しょうがねえな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして予想通りラッシュに投げつけ押し潰されるところだったが

 

――ゴガァン――

 

途中俺が蹴り飛ばしたコンテナにぶつかりコンテナは砕け散ってラッシュには破片が降りかかっただけだった

「何っ!?」

「大尉・・・さっさと立てよ・・・寝てる場合じゃねえだろ・・・」

「こ、これは・・・氷牙君か・・・すまん・・・助かった・・・借りが出来たな・・・」

『大尉!しっかりしてください!』

 

「小僧!!どうやって入ってきた!?」

「こんなフェンス・・・俺にいわせりゃちょっと高いハードル程度だよ・・・」

元々人間離れした脚力を持った氷牙にとってはこの程度の高さのフェンスなら飛び越えることくらいはさほど難しい事ではなかった。

そして氷牙は後ろを向くと・・・

「大尉・・・悪いがそいつはアンタの方で何とかしてくれ・・・俺はこっちを相手する・・・」

 

「え!?」

そして銃を構えると

「・・・居るんだろ?さっさと出て来い・・・ファング!」

 

 

「なんだ?気付いてたのか?マッド?」

そして俺の前に出てきたのは・・・

「よう・・・ファング・・・」

ワイルド・ファング・・・かつての俺の兄弟子が出てきた・・・

 

「なっ!?ワイルド・ファング!?いつからそこに!?」

「最初からずっといたよ、ただ中佐に手を出すなと言われたから出て来なかっただけさ。俺もこいつ・・・マッド以外には興味はないからな」

「なるほど・・・この状況も・・・お前らのお膳立てだったってわけか・・・」

「そう言うことだ!手を出すなよファング!こいつは私一人で十分だ!!」

そう言ってグレゴリーは再びラッシュに発砲するが

 

「クッ!」

ラッシュは近くにあった先程氷牙が蹴り飛ばしたコンテナの破片を掴み上げ前にかざすと

「いい加減に目を覚ませ!!こんな反逆が許されると思っているのか!?」

そう叫びながら破片を盾に正面から体当たりをして銃を手放させた

鉄板を捨て落とした銃を蹴り飛ばし再び飛びかかろうとしたが腰と股を持ち上げられ肩から後方へ投げ飛ばし

 

『ショルダースルー!!』

 

「こんな国滅んでしまえ!!」

ラッシュは資材の山へと突っ込んだが立ち上がりながら近くにあった木箱を持ち

 

「いい加減・・・大人しくするんだ!」

そう言って木箱でグレゴリーの頭を殴ったが

「そんな攻撃が効くか!」

グレゴリーは今度はラッシュの肩と股間を持ち上げ投げ飛ばした

 

『エフユー!!』

 

だから実況とかいいですから…

 

 

「おやおや・・・お熱い勝負だねぇ・・・俺達も負けてられないな、そうだろマッド――ドキュン――

最後まで言い切る前に氷牙はファングに発砲し弾丸はファングの顔を掠めた

「おいおい・・・マグナム弾で頭打つなよ・・・咄嗟に躱さなかったら頭消えてたぜ・・・それに、せっかく久しぶりの再会なんだからいろいろ話すこともあるだろ?」

「俺にはお前と話す事なんてない・・・それに・・・どうせお前も人間辞めてんだろ・・・」

「まあな、ドッグ程じゃないがたとえ直撃したって簡単に死にはしないぜ?それでどうだ?記憶喪失になったらしいが・・・お前にとっては3ヵ月ぶりの再会か?それとも2年ぶりか?お前が来たってことはドッグはやられた・・・いや、どうせやられる前に自爆したんだろうな」

「ああ・・・噛ませ犬らしい哀れな最後だったよ・・・それと安心しろ・・・もう全部思い出した・・・それに・・・お前のお望み通り・・・マッドに戻ったぜ・・・お前らを殺すためにな・・・」

「そうか・・・ならもう言葉はいらないな・・・遠慮なく殺しあおうぜマッド!最強の傭兵はこの世に2人もいらない!一人で十分だからな!」

「違うな・・・一人だろうといらねえ・・・お前はこの世に不要だ・・・そして俺も・・・共にこの世から消えるべき人間だ!」

そう言って氷牙はファングに飛び掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方・・・

 

 

「う・・・ぐ・・・」

レキは脇腹を抑えドラグノフを杖代わりにしながらも潜水艦内をよろよろと歩いていた

 

一向に痛みが治まらない・・・やはり・・・肋骨に亀裂か・・・それとも折れているか・・・・・・

 

(そういえば・・・骨折か・・・)

三ヵ月前は右腕を骨折して・・・今度は肋骨・・・思えば私はあの時から変わり始めたんだ・・・

(懐かしい・・・あれからもう3ヵ月も経つのか・・・)

この3ヵ月は本当に色々あった・・・

 

氷牙さんに頭を撫でてもらって・・・

 

氷牙さんに本気で叱ってもらって・・・

 

氷牙さんにこの命は俺の物だと言ってくれて・・・

 

氷牙さんにこんな私を受け入れてくれて・・・

 

氷牙さんにご飯を作ってもらって・・・

 

氷牙さんに綺麗だと言ってもらえて・・・

 

氷牙さんに手を繋いでもらえて・・・

 

氷牙さんとキスをして・・・

 

氷牙さんに感情を芽生えさせてもらって・・・

 

今思えばこの三ヵ月本当に毎日が楽しかった・・・氷牙さんが隣にいてくれるだけで本当に毎日が充実していた・・・

ずっとこんな日が続くと思った・・・でも・・・氷牙さんが記憶を失くして・・・あの日々があっけなく終わりを告げて・・・そしてようやく気付く事が出来た・・・

 

「氷牙さん・・・私は・・・貴方がいてくれたから・・・」

そう言いかけたところで・・・

 

――ふらっ――

 

レキの体は前に倒れ

 

――どさっ――

 

そのまま床に伏せてしまった

 

その直後

 

――カツン、カツン――

 

足音がする・・・誰かこっちに来る・・・

(まずい・・・どこかに隠れないと・・・)

だが気絶しそうなほどの激痛の中、気力だけで歩き続けていた体は思うように動いてはくれなかった

 

――カツン――

 

そして誰かがレキの前で立ち止まり

「・・・大したものだね、意識を保つために自分を撃つなんて・・・でもそれももう限界でしょ?」

そんな優しげな声が聞こえてきた

「だ・・・れ・・・」

レキは途切れそうな意識の中問いかけるが

「今の貴方に私が誰かは関係ないでしょ?じっとしてて・・・今楽にしてあげるから」

そう言ってその人物はレキの横にしゃがみ込むと

 

――ブスッ――

 

腹部に何か針のようなものを刺された感触がした

(これは・・・注射器!?まずい!!何か薬物を打たれ―――)

抵抗しようとするが時すでに遅く次第に意識は遠くなり・・・

「大丈夫、すぐに目は覚めるよ。貴方の役目はまだ終わっていない、そして彼もまた・・・」

 

「く・・・あ・・・」

レキは最後の気力を振り絞り顔を上げてその人物を見上げた

そしてそこにいたのは・・・レキと同じ武偵校の女子制服を着た桜色の髪を肩まで伸ばした、まるで聖母のような雰囲気を醸し出す優しくも悲しげな顔をした少女だった

 

「この先に下層へ降りる非常階段がある・・・そこのロックは解除してあるから目が覚めたらそこから下層へ行って・・・」

そして少女はレキの手に自分の手を置いて

「お願い・・・彼を助けてあげて・・・今彼を止められるのは・・・貴方しかいないの・・・」

 

そう言ったところで…レキの意識は一度途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――い――、――い!おい!しっかりしろレキ!!」

 

誰かが呼んでいる・・・誰・・・?

 

「うう・・・」

レキは声の主に返事をする代わりに呻き声をあげゆっくりと瞼を開けた

「レキ!気が付いたのね!」

 

「キンジさん・・・それに・・・アリアさん・・・」

「大丈夫か!?何があったんだ!?」

どうやら私は・・・気を失っていたようだ・・・

二人がいるということは・・・アリアさんの救出は成功したのか・・・

起き上がろうと体を動かそうとすると

 

――カラン――

 

足元に何か固いものが転がった

「ん?レキ?その注射器なんだ?」

「え?」

そう言われ足元に落ちていた注射器を見た瞬間

 

「――ッ!!」

最後にあったことを思い出しレキはブラウスを掴むと捲り上げた

 

「な!?おい!何して――え!?」

「ちょっ!?レキ!?アンタ――ッ!?」

そして捲り上げたレキの脇腹には・・・赤黒い痣が出来ていた

 

「お前それ銃痕じゃないか!!撃たれたのか!?」

「防弾制服越しに当たってるみたいだから貫通はしてないけどこの色・・・下手したら肋骨に亀裂入ってるわよ!!」

「この注射器・・・そうか・・・大したもんだな・・・気絶しそうなほどの激痛だったろうに・・・そんな状態で自分に鎮痛剤を投与したのか・・・」

 

「・・・・・・・」

痣の近くには注射を打った後があった・・・

あの人物が私に打ったのは・・・鎮痛剤だったのか?

何故・・・私に手当をしてくれたのだ?

そもそも・・・あれはいったい誰だったんだ?

しかし、今更考えたところで誰なのか確かめる術はないし、あの人物が言ったように今考えることはあれが誰かではない・・・私の役目もまだ終わってはいない!

それに、そのおかげか腹部の痛みもだいぶ和らいだ、これなら何とか動ける・・・

 

「そうだ!レキ!!氷牙はどうしたんだ!?それに・・・お前が下げてるその銃・・・氷牙が使ってるMP5Kだよな!?あいつに何があったんだ!?」

「・・・おそらく氷牙さんは・・・自分のしたことを思い出しています・・・」

 

「「―――ッ!!」」

そう聞いた瞬間二人の顔は引きつった

 

「まさか・・・あいつ思い出したのか!!ブラドとの死闘の事を!!」

「氷牙さんは下層ブロックへ行きました・・・彼はきっとここで死ぬつもりです・・・人殺しに堕ちた自分への罰と・・・せめてもの償いとして・・・」

「違う・・・違うんだ!!あいつは・・・」

「私はこれから氷牙さんを止めに行きます・・・」

「な!?その体じゃ無茶だ!立ってるのもやっとだろう!」

「それでも・・・です・・・私は・・・もう失くしたくないんです・・・」

そう言ってレキはドラグノフを杖代わりに立ち上がろうとすると

 

「レキ・・・行くわよ・・・」

アリアが肩を貸して立ち上がらせた

 

「アリア・・・さん?」

「こうなったのも・・・元はといえばアタシたちのせいよ・・・だから・・・アタシたちが責任とってアイツを止めなきゃ・・・」

「・・・・・・・ああ、そうだな・・・俺はアイツがいてくれたから道を踏み外さずに今ここにいれるんだ!なら・・・アイツが道を踏み外しそうなら・・・俺が絶対に止めてやる!」

「キンジさん・・・二人とも・・・ありがとうございます・・・」

「そうと決まればまずは下層への道を探すわよ!メインエレベーターは破壊されて使えないけどこのクラスの潜水艦なら他にも下層へ降りる階段や通路があるはずよ!」

「・・・・・・でしたら・・・この先に下層へとつながる非常階段があるはずです・・・」

「え?アンタどうしてそんなのわかるの?」

「・・・それは・・・」

「あれだろ?また風とかなんかだろ?アリア、時間がない!にかく先に行こう!」

「・・・ええ、そうね急ぎましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして少し離れた場所で・・・

「彼女は彼らと合流した・・・役者は全部そろった。私にできるのはここまで・・・後は頼んだよ・・・」

そう呟くと少女は誰にも気付かれる事なく潜水艦から姿を消した

 

 

 

 




休日明ける前になんとか投稿できました・・・

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