緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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カジノ突入します
久しぶりに一万文字書けました!


46話<決戦~事の始まり~>

「両替を頼みたい。今日は青いカナリアが窓から入ってきたんだ。きっと、ツイてる」

キンジがそう合言葉を言うと窓口からは色とりどりのチップが数十枚渡されるとホールへと入っていった。

 

今日は7月24日、俺たちはカジノ警備に来ていた

結局あれからこの依頼は俺、レキ、キンジ、アリア、白雪の5人で受けることになり

配役はキンジは若社長で氷牙はその護衛、アリア、白雪、レキはカジノ側に従業員として潜入している

ここまでは当初の予定通りだ

朝の打ち合わせの時ラッシュ大尉と顔を合わせた時が少し修羅場だったがな・・・

 

 

今朝・・・

依頼の最終確認のために今回の特別依頼の依頼主・・・ラッシュ大尉と一度顔を合わせることになったのだ

俺たちが集合場所に行くとそこには軍服を着た者だけではなくスーツやレストランのウェイター、交通整理の警備員や一般人を装った私服を着ている者など様々な格好に扮した潜入捜査官が集まっていた

そして俺たちが入ってきたことに気付くと周りの連中がざわついた

 

「オイ・・・あの少年が・・・」「ああ、あいつが最強最悪と呼ばれた傭兵・・・」「あれが・・・マッド・ファング・・・」「本当に生きていたのか・・・」「ほかのガキどもは何だ?」「マッドの協力者らしい・・・あれでも皆Sランク級の実力を持つ武偵だそうだ・・・」

 

皆俺を警戒している・・・まあ・・・あの頃は相手が誰だろうとお構いなしだったからな・・・米軍の連中にも少なからず俺に恨みを持つ奴はいるだろうな・・・

そう思っていると軍服を着たドレッドヘアーの男がこちらに向かってきた

「氷牙君、久しぶりだな。話は聞いているよ。依頼中に負傷して顔に傷を負ったんだとな」

「・・・ええ・・・傷を隠すために眼帯をしていますがこの眼帯はこちら側からは見えるようになっていますので特に支障はありません」

 

そう会話を交わす中で俺とレキはマバタキ信号による会話をしていた

(レキ・・・この人が?)

(はい、米軍統合監察部特殊実行部隊大尉ウィリアム・ラッシュ、一度面識はありますが氷牙さんが記憶喪失だということは知りません)

(そうか・・なら適当に誤魔化してやりすごすか・・・)

 

「そうだ、君達にもこれを渡しておこう」

そう言ってラッシュが差し出したのは

「これは・・・イヤホン?」

「潜入時の連絡用に使う小型無線機だ。送受信範囲が少し狭いが建物一つなら問題はない。君たちも付けておくんだ」

「そうか・・・了解」

そしてインカムを付けると

 

『聞こえますか?氷牙君、お久しぶりです』

と女性の声が聞こえてきた

 

(――?誰だ?こいつも俺を知っている人間か!?)

「あ、ああ聞こえる。ええと・・・」

俺はレキを見ると

(エリザベス・コンウェイ中尉、ラッシュ大尉のオペレーターでコールネームはベス、直接顔を合わせてはいません)

 

「・・・お久しぶりです・・・コンウェイ中尉」

『ふふ、そうかしこまらなくてもベスで構いません』

(ふう・・・何とか通せたか・・・)

 

 

「では早速作戦の最終確認をする!!」

ラッシュがそう叫ぶとホワイトボードにこの辺り一体の地図が貼り出された

「皆も知っての通り今夜この付近でわが国の兵器の密売が行われる!今回の任務の目的は言うまでも無く、わが軍「ハーメルン大隊」が極秘開発しそして奴らによって流出させられた生物兵器「テラーバイト」の取引の阻止・及び国家反逆者の逮捕だ!」

 

「残念ながら取引現場の詳細な場所までは突き止められなかった。よって各所に人員を配置・潜入させ広域捜索を行う!取引現場を発見次第すぐに連絡!連絡を受け次第付近の隊員は直ちに現場に急行して本隊と合流し事態の収束、犯人の逮捕に当たれ!これ以上奴らに我が国の面子を汚されてたまるか!何としてもここで奴らの息の根を止めるぞ!!いいな!!」

 

ラッシュがそう言うと周りの軍人たちは一斉に敬礼して

『イエス・サー!!』

と返答した後それぞれが配置につくように四方に散っていった

流石軍人・・・こういう迅速な行動はお手の物か・・・

 

「俺は本隊の指揮に向かう!氷牙君たちも頼んだぞ!」

そしてラッシュも行ってしまった

 

「アタシたちもカジノへ向かいましょ」

「二人は客です。カジノの開店時間までは待機していてください」

「キンちゃん、先行ってるね」

アリアたちも行くとさっきまで数十人はいた広間は誰もいなくなりポツンと残ったキンジは・・・

「なあ・・・俺たちはだいぶ離れた場所なんだろ?なら別に連絡来ても行かなくてもいいよな?」

と言っていたが氷牙は

「”だいぶ”離れた場所ならな・・・」

否定するように答えた

「え?どうゆう事だ?」

「・・・あの校長は相当えげつない奴だってことだよ・・・」

そう言って氷牙はそのまま黒スーツに着替え始めた

「えげつないって・・・お前が言うのかよ・・・」

キンジは今更ながら単位欲しさにこの依頼を受けたことを後悔し始めてきた・・・

 

 

 

 

そしてカジノの開店時間に出発して入店し今に至る

 

「しかし、何ともカラフルなチップだな」

「ああ・・・ちなみにこれ全部で1千万円分あるらしいぞ・・・」

「まあ勝とうが負けようが後々全部回収されるんだ、なら開き直って思いっきり遊ばせてもらえ」

「そうは言ってもな・・・」

そんなゲーセンのメダル感覚で使えと軽く言うが1千万の金が動くと思うとやはり抵抗というものは少なからずある・・・

 

そう思いながら歩いていると・・・

「ドリンクはいかがですか?」

とやたら背の低いアニメ声のバニーさんが声を掛けてきたので

「あ、じゃあいただきま・・・」

と言って手を伸ばそうとするとバニーさんと目が合った。てゆうかこのバニー・・・

「アンタ何縮こまってんのよ?」

いつの間にか目の前にはバニー姿のアリアがいた

「お前こそ何してんだよ・・・」

「アタシはこのフロアのウェイトレス担当よ」

「お前が?お前ちゃんとウェイトレスやれんのか?てかここで油売ってていいのかよ?」

「やれるわよ!でも何でか誰もアタシに注文してこないんだもん!」

とアリアはご機嫌ナナメだったが俺たちは「あー」と納得した顔になった

(ま、そりゃそうだろうな)

(いくらパッドで水増ししてもこんなチビなお子様バニーがいたって誰も注文なんかしないだろうな)

 

「・・・今失礼なこと考えなかった?」

 

「「いいえ、全く!」」

キンジと氷牙は同時に答えた

ウサ耳付けてるからか?すごい地獄耳だな・・・

「そう言えば白雪とレキは?」

「レキなら上のフロア担当よ白雪は・・・」

「ん?おい・・・あれ・・・」

 

そう言われ氷牙の視線の先を見ると・・・そこには人だかりが出来ており・・・

 

「な、なんて恥ずかしがり屋さんなんだ・・・・・・すっげえ可愛い・・・」「来たかいあったな、見とれて大枚スッちゃたけど」「あ、胸元隠さないでー!こっち向いてー!」

 

などと盛り上がりながらケータイで写真を撮りまくっている男たちに囲まれ撮影されていたのは・・・

「あれ白雪じゃねえか・・・」

「なんであんなことになってんだ・・・」

「なんかアイドルの撮影会みたいだな」

それも仕方がない事でもあった

白雪は元々グラビアアイドル顔負けの顔立ちとプロポーションを持ち

そこに露出の多いバニー姿で出ればオオカミの群れにウサギ放り込むようなもんだ・・・

 

やがてそんな状態が続くと

「カ、カクテルウェイトレスの撮影はご遠慮ください!」

と他のバニーのお姉さんたちに連れられて白雪はバックヤードへ引っ込んでしまった

 

「あれじゃ警備にならねえよ・・・」

「・・・このフロアはアタシが張っておくわ・・・アンタたちは上のフロアも見たら適当に回ってちょうだい・・・」

「了解・・・」

そう言って俺たちは上のフロアへ向かっていった

何だか出だしから不安要素しかないな・・・

 

 

そして2階のフロア、特別会員制のフロアに俺たちは足を運んだ

入ると突然「わあっ」とずいぶん盛り上がっているテーブルがあるのに気が付いた

「あそこずいぶん盛り上がってんな・・・」

「観客も多いしな、有名人でも来てんのか?」

そんな好奇心もあり俺達も見物してみようと近づいてみると・・・

 

「って・・・あれレキじゃねえかよ・・・」

やたらと盛り上がっているテーブル・・・ルーレット台、そのディーラーを務めていたのは・・・レキだった

「それに・・・その後ろ・・・あの剥製の中にいるの・・・ハイマキだぞ・・・」

後ろの剥製コレクションをよく見ると・・・確かにその中に微動だにしないハイマキがいた・・・

「あいつ・・・ずっと剥製のフリしてる気かよ・・・」

「どこまで忍耐強く耐えるか・・・あれもある意味見物だな・・・」

 

(しかし・・・)

レキは結局バニーではなくチョッキにズボンというディーラー服で警備していた

下じゃアリアや白雪がバニー服に四苦八苦してたのに・・・あいつ、結構要領いいんだな・・・

まあこれはこれで男装も似合ってはいますけど・・・

(いや、待てよ?)

そうするとレキのバニー姿を見たのは俺(とキンジ)だけか…なんか・・・うれしいような・・・ほっとしたような・・・

 

そう思っているとまた観客が「わぁっ」と騒ぎ立てた

どうやらレキの奴先程から負け知らずで勝ちまくっているらしい・・・

「ははっ・・・この僕が一時間足らずで3500万の負けか・・・こんなに強くて可憐なディーラーは初めてだよ・・・正に君は幸運の女神かもしれないな・・・」

席に座っていた一人の男性がそんな世辞を言ってきた

あれどっかで見たな・・・確かテレビとかで有名な青年IT社長だ。まあ有名といっても女癖悪くてあっちこっちで美少女アイドルやタレントとスキャンダルになりまっくてのな・・・

 

「・・・次はさっきの負け分と同じ3500万賭けよう、ただし僕が勝っても配当金はいらない。君をもらおう」

 

「あ゛!?」

そう聞いて何故かすごい不愉快な気分になり自然と足が動いた

「お、おいまて!氷牙!何しに行く気だ!?」

「アイツを止める・・・」

目が座ってる!!こいつマジだ!!

「ま、待て!俺たちは警備で来てるんだぞ!!騒ぎは・・・」

「安心しろ・・・騒ぎは起こさない・・・・・・アイツが聞き分けのいい子でいるならな・・・」

そして氷牙はテーブルに向かった

 

 

「さあ、勝負と行こうじゃないか!」

「・・・申し訳ありませんが私は既にその人の物です」

「・・・なに!?」

そう言って若社長が振り返ったので俺は極力丁重に一礼した

 

「お初にお目にかかります。私、当カジノの警備担当の十臥と申します」

 

(氷牙の奴・・・偽名の準備も万全かよ・・・あいつ・・・間違いなくこうゆうの慣れてやがるな・・・)

だが内心ほっとしている。どうやら最初は極力穏やかに済ます気のようだ・・・

「・・・成程・・・幸運の女神は既に君の物か・・・ならば・・・」

若社長がさらにチップを上乗せした。その総数は・・・100枚はある

「これで1億だ!これで僕と勝負しようじゃないか!君が勝てばこれは君たちにあげよう!ただし僕が勝てば彼女をもらう!どうだ受けるか!?」

・・・論外だ・・・考えるに値しない

「申し訳ございませんがお断――」

断ろうとしたら突然

 

「ち、ちょっとすみません!!」

中年男性が飛んできて割って入り

「君、ちょっと来い!」

俺をバックヤードに連れ出した

「?」

確かこいつは・・・このカジノの雇われ店長だったな・・・

 

そして俺を連れ出すと

「あの勝負受けろ!!そして負けるんだ!!」

と頼み込んできた

「何故?」

「あの人は大手IT社長で大事なお得意さんなんだ!!芸能界だけじゃなく政界にも太いパイプを持っている・・・ただでさえ負けてるのにその上要望を無下にしたりしてこれ以上気分を損ねるとすごく角が立つんだよ・・・」

「だから勝負して花を持たせろと?従業員でもない俺と同じ潜入で警備してる彼女を賭け金代わりにして?実質負けても被害は彼女だけでそっちには何も損害はないのにな・・・」

「そ、それくらいいいだろう?お帰りいただいた後は知ったこっちゃないから好きにすればいい!そ、それに・・・私たちは君たちをここにいさせてやってるんだぞ?な、何なら全員今すぐ追い出してもいいんだぞ?勿論報酬も色を付けてやる・・・武偵ってのは金さえ払えば何でもする庶民の便利な道具なんだろう?」

「・・・弱みに付け込む気か?」

「何とでも言え・・・私の面目を保つためにもお前らには人柱にでも何にでもなってもらうぞ・・・」

そう言って店長は二ヤリとひきつった笑みを浮かべた

 

「・・・・・・・・ふざけるなよ・・・」

 

それを聞いて頭に気たので俺は店長にキツめの本気の殺気を浴びせた

「ヒッ!?」

 

「どうだ?本物の殺気は?一度入り込まれたら最後まずは思考を恐怖で支配され、そのまま体の動きを封じる・・・そしてその支配はやがては意識をも支配し、呼吸をも支配し・・・やがては命さえも支配する・・・」

「あ・・・あ・・・・」

店長の髪がどんどん真っ白になってゆく・・・恐怖で立ちすくみ、股間を濡らし、過呼吸が止まらない

「このまま浴びせ続ければ俺は指一本触れることなくお前を殺せる・・・でも俺はそんなことはしない・・・それに喜べ・・・あの勝負は受けてはやるよ・・・」

「あ・・・へ・・・?」

「そのかわり・・・武偵に喧嘩を売ったお前には・・・生き地獄を見せてやるよ・・・」

そう言って殺気を解くと店長はそのまま失神して氷牙はそれに背を向けるとホールへと戻っていった

 

 

「お待たせして申し訳ありません」

「フンッ、やっと戻ったか・・・逃げたかと思ったよ。それで・・・戻ってきたということは勝負をするということか?」

「はい、店長の許可も下りましたので受けさせていただきます」

「フッ、いいだろう!ならば勝負だ!!」

「お待ちください、そのかわりに条件がございます」

「・・・何だ?」

「簡単です。掛け金を10倍にすること、かわりに貴方が勝てば彼女に加えカジノ側からも通常通りに勝分をお支払いします」

「ほう・・・つまり僕が勝てば10億と共に幸運の女神が手に入るというわけか・・・」

「ええ、いかがでしょう?彼女にはそれ以上の価値があると思いますが?」

「いいだろう!!その勝負受けよう!!」

と言って若社長は懐から何かを取り出すとそこにペンを走らせた・・・

そこに書かれていたのは・・・9億の小切手だった・・・

 

「君は致命的な墓穴を掘ったな!!僕は逆境でこそ真の強さを発揮する男だ!!」

(言ってろ・・・)

「では勝負はこれまで通りルーレットで構いませんね?」

「ああ!何であろうともはや僕の勝ちは揺るがないがね!!」

(うぜぇ・・・さっさと終わらせたい・・・でないとこの殺意抑えるのも限界だ・・・)

「では、勝敗も分かり易く、次の球が赤か黒かの2択でかけましょう」

「いいだろう!僕は黒だ!!」

「では私は赤に」

そう言って掛け金を乗せると二人は席に着いた

 

 

さて・・・ここからが本番だ・・・ルーレットを観察して赤に入ればそれでいいが・・・もし黒に入りそうになったら・・・上手い事テーブルの下から衝撃入れて赤に入るように飛ばさなきゃいけない・・・

勿論普通に叩けばバレるので中国拳法の柔拳の要領で上手い事玉にだけ・・・それも不自然に見えないように弾かなきゃならない・・・

といってもそれくらいなら何度もやっているし今更そんなこと造作もない事ではあるのだが・・・

 

勝負の直前にレキが俺にマバタキ信号を出してきたのだ

(何もしないで見ていてください)

(え?)

(後は自分で何とかします)

・・・本気かよ・・・

(・・・わかった・・・けどヤバいと判断したら俺の独断で動くぞ?)

(・・・はい)

 

「それでは時間です」

 

そしてレキはタイミングを見計らったように玉をルーレットに向けて転がした

そして玉は何度かルーレットに弾かれて・・・やがて一つのポケットに入り止まった。その場所は・・・

 

「赤の13番です」

 

レキがそう言った瞬間周りのギャラリーは「うおおおっ!」と大いに盛り上がった

「そ・・・そんな・・・」

若社長は机に突っ伏した

レキ・・・さては狙って入れやがったな・・・赤でしかも13番って・・・俺の出席番号じゃねえか・・・

そう思いながらレキを見ると

 

(私は貴方の物ですから)

 

とマバタキ信号を送ってきた

 

 

「は、はは・・・十億越えの負けか・・・流石にこれは堪えるな・・・」

と言っていたが氷牙は目もくれず小切手をつかみ取ると

「申し訳ありませんがいくら金を積まれようと彼女はお渡しできません。お引き取りを」

(てかお前なんぞがいくら金を積もうが髪の毛1本だろうと買えるなんて思ってんじゃねえよ!わかったらとっとと帰れ!)

 

「ま、待ってくれ!これだけの金を落としたんだ・・・せめてメアドくらいは・・・」

「お引き取りを」

(帰れっつってんだろうが・・・いい加減にしねえと叩き出すぞ・・・)

 

だが何度突っぱねても若社長は

「せめて名前だけでも!」

としつこく食い下がろうとしてたら

 

「――――!!」

 

――ジャキッ――

 

いきなり氷牙がコルトパイソンを抜いて若社長に突き付けた

 

「え!?ひ、ひぃ!?」

「お、おい氷牙!止めろ!!」

 

「ま、待て!!わ、わかった!!か、彼女からは手を引くから・・・」

 

だが氷牙は聞く耳持たず

 

――ドゥン――

 

パイソンを発砲し

 

 

 

「ひぃぃっ!?」

 

 

 

「グォォー!?」

そして弾丸は・・・男の後ろにいた半月型の斧を持った全身真っ黒で腰巻きと首飾りをして犬、ジャッカルのような頭をした2メートル近い大男・・・のような物体の肩に当たった

 

「なっ!?」

「・・・カジノ側の仕組んだサプライズ・・・ってわけじゃなさそうだな・・・」

マグナム弾が直撃したジャッカル男の肩は大きく抉れたが弾丸はそのまま肩を貫通して壁に当たり、弾痕からは血の代わりに砂のような黄土色の粒が流れ出ただけで何事もなかったようにこちらに向かってきた

「気を付けてください。あれは人間ではありません」

「みりゃわかる!」

 

「な・・なんだこれは!?何かのイベントか!?」

そう若社長は叫ぶが

「なら大助かりなんだがな・・・・・・レキ!」

そう言うとレキはルーレット台の下からMP5Kを取り出すと氷牙に渡した

 

それを受け取ると氷牙は狂牙モードになりホール全体に殺気を向けた

 

『!?』

その殺気に気付いた客たちが一斉に氷牙を向くと

 

「お前等!死にたくなかったらさっさと逃げろ!!」

と叫んで

 

――バラララララッ――

 

天井に向けてMP5Kを乱射した

 

『う、うわああああ!!』

 

そして客たちは一斉に出口へと逃げ惑っていった

「お、おい氷牙!いくらなんでも荒っぽすぎるぞ!!」

そう異論を言うがレキは台の下からドラグノフを取り出すと

「この数相手です。悠長なことは言っていられません」

え?この数って相手は一体・・・

 

――ドサドサ、ドサ、ドササ――

 

天井から・・・次々とあのジャッカル男が落ちてきた

「何!?」

そして天井を見上げれば・・・同じようにジャッカル男が何人も天井に張り付いていた

撃ち落としたのと合わせてもざっと20体以上はいるぞ・・・

しかも撃ち落とした奴も平然と立ち上がってきやがった・・・

 

キンジは地上の敵に警戒しつつも天井に銃を向けるが・・・

「クソッ・・・ただの人間ならまだしも化け物がこの数相手じゃ・・・」

 

 

「伍法緋焔札――!!」

 

――バスバスバスバスッ――

 

突如幾つもの火球と銃弾がジャッカル男たちに降り注いだ

 

「みんな!そいつらに触れちゃダメ!呪われちゃうよ!!」

「何ボーっとしてんのよ!こうゆう時は敵が下りてくるのを待つんじゃなくて氷牙みたいに撃ち落とすか自分で上がるかすんのよ!!」

「アリア!白雪!」

そして中尉から無線が入った

『氷牙君!近くで取り引きが始まったようです!恐らくその騒動は注意を引く囮です!放っておけませんがそちらに避ける人員がありません!そちらで処理をお願いします!!』

「くそっ!やっぱりそうか・・・了解!こっちで何とかする!!」

『お願いします!あれは恐らく超能力者の傀儡です!気を付けてください!!』

そう言われ無線は切れた

 

「おい!どうゆうことだよ!?」

そして何もわかってないキンジが問い詰めてきた

「俺達はあの校長にまんまと掴まされたってことだよ・・・」

「掴まされったて・・・」

「あの校長は初めっからここでこうなるってこと知ってたんだよ!!つまり俺たちは初めっからあいつに躍らされてたんだよ!!それくらいわかれ!!」

「なっ!?」

そんな口論してるうちにアリアはテーブルを踏み台にシャンデリアに飛び移ると

 

その反動でぐるんとシャンデリアが回転し

 

――バッ、バババッ――

 

回転砲台と化したアリアはガバメントを撃ちまくりジャッカル男達を次々と撃ち落としていった

そんなことするもんだから空薬莢や流れ弾やそれが当たった壁の破片がどんどん降り注いでくる

「って、おい・・・派手にやるなぁ・・・俺も負けてられねぇな!!」

氷牙も左手にパイソンを右手にMP5Kを持つと

 

――ドゥン、ドゥン、ドゥン――

 

――バラララララッ――

 

落ちてこようとしたジャッカル男達を再び撃ち上げた

 

氷牙はアリアを見て

「アリア!ワルツは踊れるか?」

そう問いかけるとアリアは

「ええ!もう一曲いくわよ!!」

と答えてシャンデリアを更に回して

 

――バッ、バババッ、バババババッ――

 

氷牙が撃ち上げたジャッカル男達を再び撃ち落とし

その間に氷牙がマグナム弾を空中に放り上げるとパイソンのシリンダーを開き銃を上に向け片手で排莢し

 

――バララララララララッ――

 

そのまま体を一回転させMP5Kを発砲しジャッカル男達を再び撃ち上げると同時に放り上げた弾を器用にパイソンのシリンダーに充填した

 

「全員まとめて・・・風穴ルーレットよ!!!」

 

――バババババッ、ババババッ――

 

――ドゥン、ドゥン、ドゥン、ドゥン――

 

――バララララララララッ――

 

この挟撃にはジャッカル男達も耐え切れず次々と壁に叩き付けられていった

「お、おいアリア!氷牙!お前ら遠慮というものを知らんのか!俺たちは一応このカジノの警備に来てんだぞ!」

キンジがそう叫ぶと

 

――ガスッ――

 

「あがっ!」

「――ッ!?白雪!?」

気が付けば下にいたジャッカル男と応戦していた白雪が壁に叩き付けられていた

あれは・・・脳震盪を起こしてる!

「ダメです。あれに炎は聞いてません」

ハイマキが喉に何度も嚙み付いてもレキが頭を何発も撃ち抜いてもそこから黒い砂のようなものが飛び出るだけでジャッカル男達は何度も立ち上がり、先程アリアと氷牙にハチの巣にされたはずのジャッカル男達も立ち上がりこちらに向かってきた

「ダメだ!銃も効いてない!こいつら死なないぞ!!」

キンジがそう叫ぶが

 

「いや・・・そういうわけじゃない・・・周りをよく見ろ!」

「え!?」

氷牙にそう言われ周りを見ると

ジャッカル男は減って代わりに黒い砂の山、ジャッカル男であったと思しき物がいくつか出来ていた

「これは・・・何体かは倒したのか!?」

「ああ・・・それに手足を撃たれた奴は撃たれた場所の動きが鈍い、こいつら不死身ってわけじゃない多分痛覚がないんだ・・・だから死ぬ寸前までは平然として向かってくるんだ・・・」

「ええ・・・それに相手は傀儡です。人間の急所は通用しません。頭を撃ち抜いたくらいでは効果はありません」

「それなら・・・」

氷牙は上を見て・・・

 

「アリア!!そこからどけ!!」

「――ッ!!」

そう叫んで氷牙がパイソンを上に向けるとアリアも他のシャンデリアへと飛び移った

 

――ドゥン――

 

それと同時にパイソンを発砲し

 

――ガァン――

 

弾丸はシャンデリアの金具に当たると

 

――グァッシャァァァァン――

 

大きな音を立ててシャンデリアがジャッカル男の頭上めがけて落ちた

「これなら効いたか?」

下敷きになったジャッカル男は何度か痙攣をすると・・・

ざぁっと

そのまま黒い砂のようなものになっていった

 

「よし!これなら効く!アリア!レキ!物量で押せ!!」

 

「はい」

「分かったわ!!」

 

そう言って

 

――グァッシャァァァァン――

――ドガッシャァァァァン――

――グァッシャァァァァン――

 

アリアとレキはシャンデリアを次々と撃ち落とし

「ここまで来たらもう遠慮はいらないよな?」

 

――ドゴォォォン――

――ガゴォォォン――

 

氷牙は近くにあったルーレット台やスロットマシンを手当たり次第に蹴り飛ばしてジャッカル男たちを次々と押し潰し黒い砂に変えていった

 

「だからお前ら!俺達はここの警備に来てるんだぞ!!あいつらよりここぶっ壊してどうすんだよ!!」

だが氷牙達はそんなキンジの叫びなど聞く耳持たずカジノをぶっ壊してゆき

 

「「あいつで最後!」」

 

最後のジャッカル男に銃口を向けるが

「ォォォーン」

 

――ガシャァァァン――

 

ジャッカル男は遠吠えと共に窓から飛び出し水上を走って逃げて行った

「チッ!逃がすか!」

そう言うと氷牙も窓から飛び出し同じように水上を走ってジャッカル男を追った

 

「待て氷牙!深追いするな!!」

キンジは窓から身を乗り出そうとするが

「伏せてください、スナイパーが張っています」

レキに呼び止められた直後、窓にライフル弾が被弾して慌てて身を隠した

「クソッ!氷牙止まれ!!ハチの巣にされるぞ!!」

キンジが必死に叫ぶが氷牙はライフル弾を刀で弾きながら聞く耳持たずに追って行ってしまった

「ベスさん!アイツを呼び止めてください!」

『ダメです!あれは通話範囲が狭いんです!電波が届きません!!』

 

「・・・私はここから援護します。キンジさんは下のフロアに水上バイクがあるはずです。それで氷牙さんを追ってください」

「あれか・・・わかった!行くぞアリア!!」

「え!?あれで!?え、ええと浮輪は・・・」

「そんなもんあるか!」

そう言ってキンジはアリアを前に乗せて水上バイクで氷牙を追っていった

 

『レキさん!ヘリを急行させています!到着次第それに乗って二人を追ってください!』

 

レキはキンジとアリアを見て

「氷牙さんを・・・お願いします・・・」

そう小さく呟いてドラグノフを構えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにレキが迎えに来たヘリに乗って行った後

意識が戻った店長が店の惨状、そして氷牙があの若社長から9億近い金をせしめたことを知ったとたん

「ああ・・・お終いだ・・・私はもうお終いだ・・・はは・・・ははははは・・・」

と膝を付いていた所を駆け付けた警察に今のご時世でも違法なことをやっていたのがバレて逮捕されていったのはまた別の話だ・・・

 

 

 

 

 




次回でまずは一つケリ付けようと考えてます

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