緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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2ヶ月くらい行きそうで行かなかったからじれったかった・・・


38話<金氷狼解散事件>

再び半年前の年末・・・

 

 

 

「ん・・・・」

平賀ちゃんの工房から帰って眠りに就いたあと目が覚めると日はすっかり昇っていた

「時間は・・・もう昼過ぎか・・・飯食ったら何か適当なクエストでも探しに行くか・・・」

そう思い俺は湯を沸かすとテレビをつけた

そして・・・言葉を失った・・・

 

『――先日のアンベリール号沈没事件で殉職した遠山金一武偵、今世間では事件を未然に防げ無かったこの武偵について評論が進んでいます』

『居合わせたのに事故を防げないなんて使えない武偵ですね』

『乗客を全員逃がすのがやっとだったんでしょう?』

『無能な武偵に武偵資格を与えるなんて・・・』

 

なんだ・・・

何を言ってるんだこいつらは・・・

金一さんが・・・死んだ?

金一さんが・・・無能な武偵?

事故の原因は金一さんのせい?

 

ふざけるな・・・

 

「ふざけるな!!!!」

そう叫んで俺は力任せにテレビを蹴り飛ばしてぶっ壊した

 

――ピンポーン――

 

するとチャイムが鳴った

そうして出てみればそこにいたのは・・・

「よう・・・氷牙・・・」

「キンジ!?どうしたんだよ!?そんなにやつれて何があった・・・いや・・・言わなくていい・・・今知ったよ・・・」

「そうか・・・悪いんだが・・・ちょっと匿ってくれないか・・・寮前には記者が詰めかけてるし・・・俺の部屋も記者からの電話が鳴りっぱなしでさ・・・」

「ああ・・・とにかく入れ!」

 

そしてリビングに通すと・・・

「お前目の下に隈できてるぞ・・・もう何日も寝てないんじゃないのか?」

「ああ・・・ここ数日・・・あまり眠れなくてな・・・」

「・・・ちょっと待ってろ」

そう言うと氷牙は台所に行き・・・しばらくするとコーヒーの入ったマグカップを持ってきた

 

「ほら・・・とりあえず・・・これ飲め・・・」

そう言ってマグカップを差し出した

「ああ・・・すまん・・・」

そう言ってキンジは中身を飲むと淡々と話してくれた・・・

金一さんは乗客全員を助け出したあと逃げ遅れ一人犠牲になった事

責任問題を恐れた管理会社は事件の原因は事前に防げなかった金一さんにあると一方的に責任をなすりつけられた事

そして金一さんが死んでから・・・多くの記者が押しかけ・・・

金一さんやキンジを無能な武偵とその弟として非難し続けているのだと・・・

「ふざけんなよ・・・それが命懸けでみんなを助けた人間に対する態度かよ!」

「なあ・・・氷牙・・・俺・・・武偵辞めようと思うんだ・・・」

「なっ!?お前本気で言ってんのかよ!?」

「ああ・・・武偵って・・・いくら頑張っても報われない・・・いくら命かけても認められないって分かっちまった・・・俺・・・そんな仕事に嫌気が差しっちまったんだ・・・」

「そんな事無い!あいつらがおかしいだけだろ!必ず理解してくれる奴は・・・」

「いいんだ・・・もう決めたことだ・・・手続きもあるけど・・・再来年の3月には・・・武偵免許を返還して・・・この学園を去るつもりだ・・・」

「お前・・・それでいいのかよ・・・そんなの金一さんが望んでると思ってるのかよ・・・」

「悪い・・・俺は兄さんみたいに振る舞えるほど器用じゃないんだ・・・報われないと分かっていながら・・・理解されないと知っていながら続けられるほど・・・人間できてないんだ・・・」

「キンジ・・・」

「悪かったな氷牙・・・初めて会った時・・・どうしてお前が俺に殺意を持っていたのか・・・その理由がやっとわかったよ・・・半年足らずだったとは言え・・・未来の相棒がこんな意気地無しじゃ・・・そりゃあ殺意も沸くよな・・・」

「――ッ!!違う・・・俺だって・・・」

俺だってお前と組んでいてわかったんだ・・・本当はそんなこと・・・

「じゃあ・・・レキにも宜しくな・・・お前ら二人なら・・・俺なんかいなくても・・・いいコンビになるよ・・・」

もういい・・・早く・・・早く効いてくれ・・・

そしてキンジはコーヒーを飲み終えると

「コーヒーありがとな・・・でも・・・なんだ・・・これ?このコーヒーうまかったど・・・なんか・・・力が抜けてくるな・・・」

ようやく効いてきた・・・そう思い氷牙は顔を上げた

「ああ、ようやく効いてきたか・・・それなりに強力なやつなんだが・・・ホントお前薬が効きにくいな・・・」

「え・・・?」

 

キンジはカップを落とし

 

――どさっ――

 

ソファーに倒れた

 

そして氷牙はキンジに毛布をかぶせて

「こんな事したのは最初はお前を寝かせてやるだけだったんだが・・・目的が変わったよ・・・本音を言えば俺はお前に武偵をやめて欲しくない・・・でもお前がそう決めたのなら俺は止めない・・・だからこれは相棒としてお前を送り届けるせめてもの餞別だ・・・」

 

キンジは薄れゆく意識の中、尋ねた

「氷・・・牙・・・な・・・にを・・・」

「今は休め・・・目覚める頃には全ては悪夢で終わってる・・・」

そう言って部屋を出ていく氷牙を見届けながらキンジの意識は遠くなっていった

 

 

 

 

 

 

そして寮玄関前にて・・・

 

「何なんだよあいつら!」

「次々とやってくる・・・これは当分引きそうにないね・・・」

武藤と不知火が玄関で立ち往生していたがそれも当然だった

寮玄関前には・・・多くの記者が詰めかけていたのだ・・・

これがキンジのやつれた原因であり・・・

金一さんを冒涜している奴らだ・・・

「二人共・・・そこをどけ・・・」

俺は前に出ると・・・

「九狂くん?どうしたんだい?外に出るのかい?」

「待て氷牙!正面から出ると記者に捕まるぞ!ほとぼりが冷めるまでは―――」

武藤は言葉を止めた・・・

なぜなら氷牙の目は赤く禍々しく光ってるように見えたからだ・・・

「お前・・・氷牙・・・なのか・・・?」

だが氷牙は何も答えずドアを開け正面から出て行った

 

「誰か出てきたぞ!」「ねえちょっと!君武偵だよね?」「先日の沈没事件についてちょっと聞かせてよ!」「あんな不甲斐ない武偵のせいであんな事になって君はどう思ってるの?」

 

そして氷牙はあっという間に記者たちに囲まれて質問攻めにされた

「・・・・・・・・・・・・・」

だが氷牙は俯いたまま何も言わない

 

「ねえ何か言ってくれない?」「君の無能な仲間のせいであんな事故が起きたんだよ?」「説明する義務ってものがあるでしょ?」「謝罪の一言もないの?」「誠意を見せてよ?」

 

「・・・・・・わかりました・・・」

 

「そうそう、分かればいいんだよ」「武偵ってのは庶民の道具なんだから」「ほら?説明してよ?」「というかあの武偵、弟がいるんでしょ?そいつ連れてきてよ」「ほら?謝れよ」

 

だが氷牙は逆に記者たちに質問した

「その前に・・・生放送で放送してる方っています?」

「え?うちはそうだけど?」

それを聞いて氷牙はニヤリと笑うと・・・

「じゃああんたは最後だ」

 

そう言って氷牙は顔を上げ・・・

 

――バララララララッ――

 

何のためらいもなく記者に向けて発砲した

「ギャァアアアア!!!」

「ふむ・・・威力は少し落ちてるが集弾性と弾速は充分・・・だけどまだ改良の余地はあるな・・・」

 

「ヒ、ヒィッ!?」「な、何するんだ!?」「俺たちは一般市民だぞ!」「誠意を見せるんじゃないのかよ!?」

 

「ああ・・・見せてやるよ・・・恩を仇で返しやがった上に死者を冒涜するような輩に対する・・・武偵流の誠意ってやつをな!」

そう言って氷牙は銃を構え

「武偵を敵に回したこと!後悔するんだな!」

そう告げた・・・

 

これが後『金氷狼解散事件』と呼ばれる決して口に出すことを禁じられた事件の幕開けだった

 

 

そして恐怖を感じた記者たちは

「ダメだ!逃げろ!」「こんなの聞いてないよ!」「こいつイカれてるぞ!」「た、助けてくれぇ!」

 

皆一斉に逃げ惑うが・・・

「ダメダメ・・・こんな事して・・・逃げるなんて・・・余計に殺意が沸いてくるよ!!」

そう言って記者たちを追いかけ

そして全員に容赦なく銃弾を拳を蹴りを浴びせ続けていった・・・

 

 

 

 

 

「うう・・・」「あ・・・ぐ・・・」「あ・・・」「が・・・は・・・」「た・・・す・・・」

記者たちが呻き声をあげる中

返り血で血塗れになった氷牙は最後に残しておいた生放送していた記者に銃を向けた

「ヒ、ヒィッ!?」

「お前で最後だな・・・」

「な、なんだよ・・・それが武偵のする事かよ!俺たちを守るのがお前らの仕事だろうが!」

「ああ、善良な一般市民ならどんな奴でも命懸けで守ってやる・・・けど、危害を加える奴には容赦しない・・・よく覚えとけ・・・武偵に喧嘩売るなら・・・命捨てる覚悟で来い!」

 

――バララララララッ――

 

「ギャァアアアアア!!!!」

 

そして最後の一人に向け発砲しカメラも同時に破壊し放送は途切れた

 

その直前にカメラに一瞬だけ映っていた氷牙の顔は・・・

 

笑っていた・・・

 

 

 

そして記者達を全て片付け終わると同時に

 

「氷牙ぁ!!」

突如呼ばれた声に玄関を見てみれば・・・

「氷牙・・・お前・・・」

ようやく目を覚ましたキンジが駆けつけていた

「ああ・・・キンジ・・・来たか・・・」

「来たかじゃねぇ!民間人にこんなことしやがって・・・何考えてんだよ!!」

キンジは氷牙に歩み寄って問い詰めるが・・・

「言っただろ・・・相棒として・・・お前を送り届けるせめてもの餞別だってさ・・・」

「・・・え?」

「これで・・・世間の標的は金一さんやキンジから全部俺に移る・・・もう金一さんやお前が責められる事はないさ・・・だから後のことは心配しないで・・・お前の行きたいようにしろ・・・」

 

「――――ッ!!」

 

それを聞いたキンジは絶望したような顔で氷牙を見た

(そうだ・・・コイツは・・・誰よりも仲間想いで仲間に傷つける奴には容赦しない奴だったじゃないか・・・コイツにあんなこと言えば・・・こうなることは・・・分かってたじゃないか・・・)

「俺の・・・せいなのか・・・俺が・・・こんな――」

 

「キンジ?どうし「くぉらぁ!!九狂ォ!!お前なんて事しくさったんやァ!!!」

問いかける間も無く氷牙は血相を変えて駆けつけた教官達によって拘束され連行されいった・・・

 

 

その後、事態の重さから見て氷牙は良くて退学、悪ければ少年院送りと見積もられたが、仲間たちが総出で氷牙を擁護したこともあったためか・・・今回の事件を一切口外しないことを条件に最終的には3ヶ月の停学と後それがランク考察に響いたのかAランクへの降格という異例とも言える軽度の罰で済んだ・・・

 

だがこの事件を境に・・・キンジは探偵科へ転科しEランクに落ちて抜け殻のように腑抜けになり・・・まともに戦うことなどできなくなってしまい・・・

 

俺達『ゴールド・フェンリル』は・・・解散した・・・

 

 

 




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