緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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パソコン新調してしばらくネットつなげなかった…
しかもコミケ前に痛い出費です・・・


36話<受け入れてくれた場所>

 

「出来たのだー!」

「ああ・・・やったな・・・」

「氷牙君が手伝ってくれたおかげなのだー、新型の非殺傷弾完成なのだー!」

1年生の年末、俺と平賀ちゃんは工房に篭って新型の非殺傷弾の開発に打ち込んでいた

俺は武偵になってからというもの基本武器を使わない

狂牙の力で武器を持てばいつか相手を殺しかねないからだ・・・

(かろうじて残った理性で抑えても・・・手足切り落としたり後遺症残るくらいフルオートでぶちかましたりしてるんだ・・・もし理性が完全に崩壊したら・・・その時は・・・本当に誰かを殺すかもしれない・・・)

入学式での戦いは・・・MP5K1丁のみで戦ったのだが実際に人に向けては一発も発砲していない・・・蘭豹から「えげつない事しよって!」と言われたがあれでも相当狂牙の力を手加減して使っていたのだ

だからこそか入学して以降武器を持たないようにした

そしたら今度は、キンジや蘭豹に何度も「ちゃんと銃剣持て!」とこっぴどく言われてしまった・・・でも俺は武偵であるためには人を殺すわけにはいかない・・・

そこで銃剣を使うことになっても俺が武偵であるためにこうして平賀ちゃんとまずは俺に合った非殺傷弾を作ることになったのだ

 

「あとは実際に使って改良あるのみなのだー!」

「お疲れ様・・・流石に眠いわ・・・」

この弾丸を開発するため俺も平賀ちゃんもこの数日徹夜で地下に篭りっぱなしだったから・・・流石に眠い・・・

「あややも眠いのだー・・・眠るのだー・・・」

「ああ・・・俺も家帰って寝たら適当なクエストでこの弾丸試してみるよ・・・」

「のだ~・・・後で感想頼むのだ~・・・」

「ああ・・・じゃあ・・・お休み・・・」

「のだ~・・・」

そう言って平賀ちゃんは作業室に置いてある簡易ベッドで眠りに就いた

 

そして俺は弾薬を持って外に出ると

「がぁ!眩しい!目がぁー!」

流石に徹夜明けで数日ぶりの日光は目に堪えた

と言ってももう夕方だけど・・・

「とりあえず帰って寝よう・・・」

そう言って俺はおぼつかない足取りで寮に歩いて行った

 

途中で

『次のニュースです、先日のアンベリール号沈没事件で管理会社は事故の原因は事件を未然に防げ無かった―――

 

街頭テレビで何か言ってる気がしたが今の俺には理解できなかった

そして寮に戻り俺は眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・ああ・・・思い出した・・・この弾丸は・・・俺が武偵であるために平賀ちゃんと作ったんだ・・・そしてこれを初めて使った日は・・・あの日・・・全てが変わってしまったあの事件の―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――牙!氷牙!おい氷牙!!返事をしろ!!」

 

 

「う・・・」

目を開けると・・・目の前には俺の肩を揺すって呼びかけるキンジがいた

「氷牙!?目を覚ましたか!?」

「・・・キンジ?それに・・・ここは・・・」

辺りを見回すと・・・そこは先ほどの車輌科が襲撃された現場で俺はそこの道路の壁際に座り込んでアリアキンジ、そしてレキも心配そうに俺を見つめていた

「氷牙さん・・・大丈夫ですか?」

「あ、ああ・・・俺は・・・どうしてたんだ?」

「今朝緊急救助要請を受けて・・・制圧が終わった途端お前は頭を抱えて意識を失ったんだよ・・・」

「ねえ?・・・一体何があったの?」

「・・・・・・・・・・・」

氷牙は少し考えて・・・

「・・・俺にもよくわからん・・・ただ・・・終わったと思った途端、頭に激痛が走ってな・・・」

「そう・・・もしかしたら怪我の後遺症かもしれないわ・・・一度検査し直したほうがいいかもしれないわね」

「・・・それで・・・状況はどうなった?」

「もう粗方片付いたよ・・・事後処理は白雪が指揮を取ってくれてる・・・武偵たちは全員負傷してるが軽傷・・・犯人も全員重傷だが命に別状はなし・・・救護科の連中も「相変わらずえげつない事を・・・」ってぼやいてたよ・・・」

「・・・そうか・・・終わったか・・・それに・・・相変わらずってことは・・・俺は普段からこんな戦い方をしてるわけか・・・」

そう尋ねるとキンジは俯いて

「・・・・・・・ああ・・・どんな危険な場所にも真っ先に単独で先陣切って突っ走って・・・犯人どころか民間人にでも仲間に危害を加える奴にはやりすぎなまでに一切容赦しない・・・それが九狂氷牙が問題児扱いされる理由だよ・・・」

そう答えた

「・・・それが俺・・・か・・・」

(ずっと一人でやってきたからか・・・戦い方はあの頃のままか・・・だけど・・・)

一つだけ・・・どうしても分からないことがあった・・・さっき・・・傷ついた武偵たちを見て・・・犯人たちに強烈なまでに怒りと殺意が沸いた・・・

(マッド・ファングが仲間のために本気で戦うなんて・・・あの頃の俺だったら・・・仲間なんて利用するだけ利用して切り捨てていただろうな・・・)

何が俺をここまで変えたのか・・・その理由だけが・・・どうしても分からなかった・・・

そして氷牙は立ち上がり

「お、おい?どこ行くんだよ!?」

「まだ間に合うだろ?当初の予定通り授業に行くだけさ」

そう言って氷牙は血塗れのまま学校へと向かっていった

「おい、待てよ!お前血塗れじゃねえか!行くにしてもせめて着替えてから行け!」

そう呼びかけながらもキンジたちは氷牙を追っていった

 

 

 

 

 

 

「ええと・・・たしかここが俺の教室だったな」

「はい、私とキンジさんとアリアさんも同じクラスです」

更衣室に寄って着替えて教室に入ろうとするところで

「・・・・・・・・・・」

氷牙は一度止まった

 

「どうした?入らないのか?」

「あ、いや・・・そういえば俺・・・昨日大暴れして何人も病院送りにしたんだよな・・・」

「ああ、だからどうした?」

「俺・・・周りから敵対視されてるんじゃないかな・・・」

アリアは呆れながら

「はぁ?何かと思えばアンタそんなこと心配してるの?」

「え?」

キンジも遠い目をして

「あー・・・それなら多分大丈夫だ・・・入ってみろ・・・」

「あ、ああ・・・」

そして教室に入ると

 

ザワッ――

 

明らかに教室の雰囲気が変わった

みんなに氷牙気付いたのだ

そして・・・

「氷牙!!帰ってきたのか!?」

「きいたぞ?意識戻った早々派手にやったそうだな!?」

「目覚めるなり大暴れしやがって!後始末大変だったんだぞ?」

「その顔の傷、手酷くやられたな!そんなにデカイ仕事だったのか!?」

「今朝も派手にやったんだろ!?ほんと仲間に危害加える奴には容赦ないなお前・・・」

雰囲気から一目瞭然でわかる・・・みんな俺を歓迎してくれてる・・・あれだけ派手にやらかしたのに・・・被害にあった奴も含めて・・・誰も気にも止めていない・・・

「見ての通り・・・ここじゃ殺人未遂や乱闘騒ぎは日常茶飯事でな・・・次の日には笑い話の種になる様な場所なんだよ」

(はは・・・マジかよ・・・)

 

「氷牙?どうした?」

 

「あ、いや・・・いろいろあったけど昨日は済まなかった・・・今日から戦線復帰したから・・・よろしく頼む・・・」

そう軽く挨拶すると俺は席に着くことにした

(聞いた話じゃ確か俺の席は・・・あそこだったな・・・)

 

「・・・・・・・?」

 

クラスメイトたちも氷牙の振る舞いに何か違和感を感じたが・・・

「皆さんおはようございます」

高天原先生が教室に入ってきて中断された

「ああ、九狂君は今日から復帰でしたね・・・それじゃあ授業を始めますよ」

そう言われ周りからチラチラと注視されながらも俺は授業を受け始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして授業が始まってしばらくすると

(・・・・・・・・・そろそろか・・・)

授業の最中・・・皆が前に集中したり居眠りしたりし俺への注目が散慢し始めた頃合を見計り・・・

「・・・・・・・・」

俺はノートの一部を切り取り、そこに手早くメモを書くと小さく折り

 

――ピッ――

 

誰にも気づかれないように隣のレキの机の上に弾き飛ばした

「・・・・・・・?」

レキもそれを受け取ると目だけでチラリとこちらを見たが何食わぬ顔で前を見てる俺を見てすぐに目を前に戻してメモを開いた

「・・・・・・・・」

そしてそれを読み終えると・・・

メモを丸めて口に入れて飲み込んで・・・右手のペンに添えている人差し指で信号を打ってきた

 

《リョウカイ》と・・・

 

(別に飲み込むことないだろ・・・まあ・・・これで準備は大丈夫か・・・後は出たとこ勝負だな・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして昼休み

「キンジ!たしか午後は自由履修だったよな?」

「ああ、みんな訓練やクエストに行ってるよ」

「白雪も生徒会の仕事でもう行ったわ、あたしもこのあと強襲科に行くつもりだけど・・・」

「俺も強襲科に行ってみるよ・・・キンジ、アリア・・・付き合ってくれないか?」

「え!?お前・・・本気か!?」

「別にいいけど・・・大丈夫なの?一応まだ復帰したばかりでしょ?」

「大丈夫だ、1回模擬戦でもやって切り上げるさ・・・」

「そうか・・・なら付き合うよ。けど本当に無理はするなよ?」

そう言われ俺たちは強襲科へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

そして強襲科棟に入ると・・

 

 

ザワッ―――

教室の時のようにまた雰囲気が変わった

 

「九狂!帰ってきたか!じゃあ死ね!」

「よく来たな九狂!さあ死ね!」

「なんで生きてんだよ九狂!死ねよ!」

「その傷、派手にやられたな!死ねばよかったのによ!」

 

友好的に歓迎されてることは間違いなさそうなんだが・・・さっきからどいつもこいつも物騒な事言ってる気が・・・

「言ったろ・・・ここの「死ね」は「こんにちは」みたいなもんなんだよ・・・」

(・・・ホントに死ね死ね言うのかよ・・・)

 

「さてせっかく九狂が遠山と一緒に強襲科に帰ってきたんだ・・・」

 

『さあいっちょやろうぜ!殺してやるからよ!』

 

「お前らそれしかねえのか・・・」

「ハハッ・・・本当にとんでもない所だな・・・」

氷牙は苦笑した

(ああ・・・そうゆうことか・・・)

そして・・・今朝、傷ついた仲間を見て怒りと殺意が沸いた理由がようやくわかった

(ここはマッド・ファングを・・・こんな血塗れな俺を受け入れてくれた場所だったんだ・・・)

だからこそ・・・この場所を大事にしたい・・・この場所を壊そうとする奴は誰であろうと容赦しない・・・そう思うようになったんだ・・・

(俺はここに来て・・・変われたんだな・・・)

 

「おい氷牙?聞いてんのか?殺してやるから来いよ!」

 

皆が勝負を挑んでくるが氷牙は皆と向き合うと

「あー・・・スマンが俺は先に戦いたい相手がいるんでな・・・また今度にしてくれ」

と言って断った

「んだよ、しょうがねえな・・・じゃあそいつに殺されて死んでくれよー」

「戦いたい相手?誰よ?」

「すぐわかるよ、闘技場空いてるか?」

「ああ、今は誰も使ってないよ」

「じゃあ行くか」

 

そして氷牙が闘技場に入り続いてアリアも入ってゆく

キンジも続いて入ろうとしたが――

 

「キンジさん、ちょっと待ってもらえますか?」

「ん?どうし―――」

 

――ガシャン――

 

レキに呼び止められた直後、氷牙が出入り口の防弾ガラスの扉をロックして

 

――ドキュン――

 

レキが入口側のロック解除の端末を撃って破壊した

「――!?レキ!?氷牙!?」

「悪いな・・・レキ・・・こんなこと手伝わせて・・・」

「構いません、私はいつだって氷牙さんの味方であり氷牙さんと共にあり続けます」

「・・・ああ・・・ありがとな・・・」

そう・・・これがあのときレキに頼んだことだ・・・『強襲科棟で俺とアリアが闘技場に入ったら外から誰も入ってこれないようにしてくれ』と・・・

 

「レキ!何してんだ!?おい氷牙!ここを開けろ!」

キンジがそう叫ぶが俺はキンジに背を向けMP5Kをアリアに向け

「アリア・・・俺と戦え!」

と勝負を申し込んだ

「え!?あんた何言って・・・」

「言っただろ・・・戦いたい相手がいるって・・・お前と本気で戦いたいんだよ・・・」

そういう氷牙の右手には・・・既に刀が抜かれた状態で握られていた

 

「なっ!?マジかよ!オイ!みんな来い!九狂と神崎が戦うぞ!」

それを見て近くに居合わせた連中が他の連中を呼びに行った

 

「氷牙・・・冗談のつもりならタチが悪いわよ?」

アリアは警戒しながらも氷牙に忠告するが・・・

「言っておくが本気だ・・・俺は本気で殺す気で行く・・・だからお前も本気で来い・・・でないと・・・死ぬぞ?」

そう言うと氷牙は・・・

 

――ドンッ!――

 

突如視界から消えた

 

「なっ!?どこに!?」

キンジがガラスに張り付き叫ぶ

「アリア!後ろだ!!」

キンジの言葉に反応しアリアは咄嗟に頭を下げる

 

――ビュッ!――

 

するとさっきまで頭があった場所を刀が横切った

「――――――ッ!!」

キンジが叫ばなかったら・・・アリアは首を斬られていた!!

「氷牙!!お前アリアを殺す気か!!」

「ああ、最初に行ったはずだ・・・本気で殺すとな・・・」

そう言う氷牙からは・・・尋常ではないほどの殺意が溢れ出ていた・・・

 

―――ッ!!ヤバイ!!こいつ本気だ!!

 

「・・・・どうやら冗談でもなければ・・・逃げられる状態でもなさそうね・・・」

そう言ってアリアはスカートの中に手を入れると

 

「・・・いいわ・・・そっちがその気ならアタシも容赦なく・・・風穴開けてやるわ!」

ガバメントを抜いて氷牙に向けて発砲した

 




8月はコミケとアニサマ行くのでしばらく筆も更新止まります

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