超えるまでの間どうゆう訳か165~169を上がったり下がったりを数日間繰り返していてちょっと面白かったです
「記憶が・・・無い!?」
「ええ・・・検査の結果、今の九狂さんは記憶を喪失しています・・・」
「じゃあ・・・俺やアリアやレキのことは・・・」
「当然覚えていません・・・と言うより正確な期間はわかりませんが・・・少なくとも武偵校に入学以降の記憶は全て抜け落ちています・・・」
「そんな・・・」
「無理もありません・・・脳へのダメージを考えれば・・・もともと死んでもおかしくない重傷で・・・こうして数日で意識が戻っただけでも・・・十分奇跡なんですから・・・」
キンジたちは落胆するが・・・
「ふーー」
当の本人である氷牙は息を吐いて
「そうか・・・記憶が抜けてるのか・・・道理で身体に違和感があるわけだよ・・・
1年以上も記憶に空白があれば体に違和感も出るもんだ・・・」
と椅子にもたれかかり呑気なものだった
「それさっきまで錯乱して大暴れしてたやつのセリフじゃねえぞ・・・」
「ちょっと!当の本人なんだからもうちょっと緊張感と危機感持ちなさいよ!」
「というよりどうして九狂さんそんな落ち着いていられるんですか!?」
氷牙の反応にキンジやアリアはおろか矢常呂先生もこんな事ありえないという顔をしていた
あの後、氷牙はレキに付き添われキンジ達の元へ投降した
その時の氷牙はもはや異常とも言えるほど落ち着きを取り戻しており
蘭豹も氷牙の様子、そしてレキの話から手錠等の拘束をして下手に刺激するのは得策ではないと判断しキンジ達を見張りに付け氷牙を救護科へ運び精密検査を行い、その結果判明した事が・・・記憶喪失という診断だった
「慌ててもしょうがねえだろ・・・生きてるだけでも儲けもんじゃねえか・・・それに・・・」
俺は隣にいる少女を見て
(なんでかわからないけど・・・コイツがいてくれるだけで・・・どんなことがあっても大丈夫な気がするんだ・・・)
「それに・・・何だ?」
「いや・・・俺が武偵になってるとは・・・世も末だな・・・って思っただけだ・・・」
と俺は自分の顔写真が貼ってる武偵手帳を見ながらそう誤魔化した
(にしても・・・まさかマッド・ファングが武偵になるなんて・・・VSSEの奴ら・・・さては俺を武偵校に押し付けやがったな・・・それに・・・九狂氷牙なんて・・・何とも適当な名前だな・・・)
「安心せい、お前はウチの科でも飛び抜けた問題児や」
「ま、そうでしょうね・・・ちなみにあなたは?」
「ウチは蘭豹やお前の所属する強襲科の担任や」
「そうですか・・・ところで・・・なんで額に青筋浮かべて俺に殺意向けてるんですか?」
蘭豹は額に青筋浮かべて殺意を向けどう見ても機嫌がいいようには見えななかった・・・
「お前のおかげで仕事が増えたからや!十数人病院送りにした挙句街の一角瓦礫に変えおって!事後処理大変やったんやぞこのクソガキャ!」
――ズドォン――
そう言って蘭豹は片手で斬馬刀を振り下ろすが・・・氷牙はそれをヒョイと難なく躱し
「で?どうにかして記憶を思い出すことはできないのか?」
と蘭豹の事など眼中にないかのように矢常呂先生に尋ねた
「失った記憶を取り戻すには鍵が必要です・・・何か失った記憶に対する重要なキーワードが・・・それさえあれば後は連鎖的に思い出して行けるはずです」
鍵か・・・となると・・・地道に探してゆくしかないか・・・
「とにかくあなたはまだ病み上がりです・・・詳しい話は後日にして今日はもう休んでください。それと今までどおりの生活をしたほうが記憶も戻るかもしれません、大体の怪我は治っていますので退院許可は出しておきます」
「わかりました・・・といっても・・・俺はどこに帰ればいいんですか?」
「武偵寮のあなたの部屋です。私が案内します」
そう言って隣に座っていた少女が俺の手を握ってきた
「あ、ああ・・・そういえば・・・改めて聞くが・・・君は誰なんだ?」
「私は・・・レキ・・・貴方の・・・パートナーです・・・」
「パートナー?俺と君はパートナーだったのか?」
そう尋ねると
「ええ、言っておくけど武偵校じゃ貴方たちの事を知らない奴なんていないわよ?」
ツインテールの女の子がそう返した、あれ?たしかあの子・・・
「そうなのか?ところで君は?確か病室で一度会ったな・・・」
「アタシは神崎・ホームズ・アリア、あんたの主人よ」
・・・・え?今なんて言った・・・?
「はぁ?主人!?つーか・・・ホームズってまさか・・・」
「ええ!アタシはシャーロック・ホームズ4世!そしてアンタはアタシのドレイよ!」
この子シャーロック・ホームズの子孫か!で、俺はその奴隷って・・・
「・・・・・・・・・・・・」
さすがの俺もこればかりは処理が追いつかずにフリーズした・・・訳がわからない・・・記憶を失う前の俺はそんなアブノーマルな趣味でもあったのか?
「あー気にすんな・・・コイツの奴隷ってのは仲間って意味だから・・・」
フリーズしていたらネクラそうな男が説明してくれた
「え?あ、ああ・・・そういうことか・・・ところで・・・あんたは?」
「俺は・・・遠山キンジ、お前とは武偵校入学以来の腐れ縁で半年前までは俺もレキと一緒にお前とコンビを組んでいた・・・」
「コンビ?俺はあんたともコンビを組んでいたのか?」
「うん、3人で『ゴールド・フェンリル』って名前で当時は最強の1年生コンビって呼ばれていたんだよ」
と、黒髪の少女が説明してくれた
「そうか・・・ところで君は?」
「あ、ごめん、私は星伽白雪、キンちゃんの幼馴染で氷牙君とは武偵校入学からの付き合いだよ」
「そうか・・・ん?半年前までって言ったよな?何であんたはコンビ抜けたんだ?」
そう尋ねるとキンジは目を逸らし・・・
「・・・・・・・・悪い・・・聞かないでくれ・・・」
と答えた
「・・・・・・・・・・・・・・」
訳ありか・・・今の俺相手じゃ答えてくれないってわけか・・・
「わかったよ・・・なら代わりに・・・いくつか質問に答えてくれ・・・」
「何だ?」
俺は自分の顔を指して
「この傷は何だ?見た感じじゃつい最近出来たみたいだが・・・」
「お前は意識を失って記憶を失う直前に俺とアリアと・・・ここには居ないがもう一人の武偵とクエストをやってその際の戦闘で負傷した・・・その時の傷だ・・・」
「そうか・・・じゃあ続けて聞くが・・・」
これは一番・・・訪ねたかったことだ・・・
「そのクエストで俺は―――
俺は一度ひと呼吸入れて・・・
―――・・・誰かを・・・殺したのか?」
そう尋ねた
「「―――――ッ!!」」
そしてキンジとアリアの顔が引きつった
「・・・どうなんだ?」
「・・・いや・・・俺とアリアはお前が意識を失って記憶を失う直前までずっと一緒にいたが・・・お前は誰も殺してないよ・・・」
「・・・ええ・・・アンタは誰も殺してないわ・・・」
キンジとアリアはそう答えたが・・・
「そうか・・・」
(あいつら・・・何か隠してるようだ・・・だが殺してないってなら・・・そうゆうことにさせてもらうか・・・)
俺は・・・信じきることはできなかった・・・
「・・・氷牙さん」
そう考えているとレキが呼びかけてきた
(氷牙?ああ、そうか俺のことか、早いとこその呼び名にも慣れないとな・・・)
「ん?どうした?」
「・・・今日はもう帰って休みましょう・・・あなたはまだ病み上がりです・・・」
「・・・そうだな・・・じゃあ・・・案内頼めるか?」
「はい」
そう言って俺とレキは立ち上がると
「俺たちも行くよ。どのみち俺の部屋もお前の部屋の隣だからな」
キンジたちもそれに続くように立ち上がった
「それじゃあ、蘭豹先生、矢常呂先生、失礼します」
そう言って白雪がみんなを代表して頭を下げると俺たちは医務室を後にした
そしてみんなが出て行ったあと
「あいつ・・・危ないな・・・」
「ええ・・・どうゆう訳か今は辛うじて平静を装っていますが精神的にもかなり不安定なはずです・・・」
「それだけやあらへん・・・下手すればあのアホ・・・」
そして俺たちは武偵寮の自室らしき場所に着くと
「ここが氷牙さんの部屋です」
とレキがカードキーを渡して教えてくれた
「そうか、案内ありがとう」
そして俺は自分が住んでいたという部屋に入るが・・・
「っておい!狼がいるぞ!?」
「大丈夫です名前はハイマキ、ここには武偵犬として置いています」
「ヴォフ」
ハイマキは返事するように軽く吠えた
「狼なのに犬かよ・・・ま、無害ならいいけどさ・・・しかし・・・」
俺は部屋を見渡し・・・
「自分の部屋のはずなのに・・・他人の部屋みたいだな・・・」
「まあ無理もないさ・・・でも正真正銘お前の部屋だ、まあ何かあったら俺の部屋に来てくれすぐ隣だから出来る限りは力になるよ」
「ああ、わざわざ済まない」
「とりあえず今日はもう解散しましょ、普段の生活を送れば記憶が戻るかも知れないそうだから明日は学校に行って授業受けてみましょ」
「学校か・・・少なくとも今の記憶じゃ行った事がないな・・・どんな所なんだ?」
そう皆に尋ねると・・・
キンジは目を逸らし・・・
「あそこの「死ね」は「こんにちは」と同意語みたいなもんだ・・・」
「は?」
白雪は心配そうに・・・
「カツ丼食べても吐いちゃダメだよ?」
「はぁ?」
アリアはジト目で・・・
「襲撃されても返り討ちは跡が残らない程度にね」
「・・・・・・・・・」
レキは俺をまっすぐ見据え・・・
「あなたが望めば私がすべての敵に報いを与えます」
「・・・・・・とりあえず常識外れな場所なのはよくわかった・・・」
そう言うとキンジは・・・
「何度も言うがお前はその常識外れな場所で飛び抜けた問題児だったんだよ・・・」
と目を逸らしながらもつっ込んだ
「ま、後は聞くよりも実際に見て体感して理解するだけね。じゃあ私達は帰るわ」
「・・・ああ・・・アリアたちは女子寮か?」
「あたしと白雪はキンジの部屋に住んでるわ」
・・・へ?キンジの部屋に・・・住んでいる?
「・・・はぁ!?ここ男子寮だよな!?」
「ああ・・・一応な・・・」
「・・・お前・・・ハーレムでも作ってんの?」
そう聞くとキンジは
「違う!こいつらが勝手に居座ってるだけだ!」
と叫んだ
ん?待てよ・・・
「てことは・・・まさかレキもか?」
「違います」
あ、そうか・・・よかった・・・コイツはちゃんと女子寮に・・・
「私はこの部屋に住んでいます」
「・・・は!?」
俺は自分の部屋を指差し
「・・・ここに?」
そう尋ねると全員が首を縦に振った
「言っておくが俺はこいつらに押しかけられたんだがお前はレキを自分の部屋に引き込んだんだからな?」
「・・・まじで?」
「はい、今でも鮮明に覚えています。氷牙さんが私の部屋に来て「俺の部屋に来い」と言って私の手を引いてくれました。あの日から私の世界は変わりました」
「何やらかしてんだよ俺!」
衝撃の事実にそう叫んで自己嫌悪に陥ると・・・
「不都合でしたら・・・私は出ていきますが・・・」
とレキが何やら悲しそうに行ってきたので・・・
「あ・・・いや・・・いい、そのままここに住みつつけてくれ」
俺はすぐにそう言った
「いいんですか?」
「特に問題ないならいいさ・・・それに・・・」
どうしてか・・・俺自身・・・コイツにはそばにいて欲しいと願っている気がするんだ・・・
(コイツは・・・レキは・・・俺にとっては何だったんだろうか?)
レキにとってはパートナーだろうが・・・俺にとっては・・・多分パートナーだけじゃない・・・そんな気がするんだ・・・
(失った記憶が戻れば・・・その答えも・・・わかるんだろうか・・・)
その答えがどうしても知りたい・・・そう考えていたら
「それに?何よ?」
とアリアが尋ねてきたので俺は・・・
「いや、それが普段の日常ならそうした方が記憶ももどるかもって思ってな・・・」
とはぐらかしておいた
「レキさん・・・よかったね・・・」
「はい・・・」
「じゃあ私たちは帰るわ」
「ああ、じゃあまた明日」
「それでは・・・」
そしてキンジたちは帰っていった
なお部屋を出る際、白雪が・・・
「レキさん・・・氷牙君がああなって一番辛いはずなのに・・・伝えたい想いずっと仕舞ってでもそばにいるんだね・・・」
と悲しげに二人を見つめていた事には誰も気づくことはなかった