緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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先日引っ越してネット環境まだ万全じゃないけどタブレットからの無理やり投稿です


28話<狼姫の戸惑いと変化>

理子との打ち合わせから数日後

 

キンジはというと・・・

どういうわけか武藤と共に保健室のロッカーに隠れアリアや理子、レキといった女子たちの健康診断を覗いていた・・・

しかも女子は全員下着姿で武藤にとっては眼福だがキンジにとっては苦行でしかなかった・・・

だというのに・・・

(アリアを見ただけでこんな簡単になっちまうなんて・・・)

と自己嫌悪になりながらもいつの間にかヒステリアモードになっていた

そんな中、理子が・・・

「ん?おやぁ?おやおやぁ?」

何かに反応した

「おおーっと?レキュどうしたのー?縞々なんて可愛らしいの穿いちゃってー!?」

そう聞いてちらりと見れば・・・

確かにレキの下着は青の縞々で可愛らしいデザインだった

「・・・・・・」

「この前までは白木綿ばっかりだったのに急にお洒落するようになっちゃってー!!」

確かにレキがお洒落するところなんて見たことないな

「もしかして恋ですか?誰か見せる予定の人がいるの!?これなら喜んで見に来てくれるよー!!」

それを聞いた周りの女子が

「あれ?理子ちゃん知らないの?」「レキって氷牙と出来てるんだよ」「今氷牙の部屋に二人で同棲してるんだよ」「しかも二人で子作りの計画も立ててるって話だよ」

なんて答えたもんだから・・・

「な、な、な、なんとぉー!?是非とも詳しく聞かせてもらおうじゃないのぉー?」

理子は目をキラキラ光らせながらレキに詰め寄った

「・・・・・・」

だが相変わらずレキは無言のまま窓の外を見つめ微動だにしない

―――と思っていたら

――ダッ――

急にこっちに走ってきて

「お、おおっ!?」

――バンッ――

いきなり俺たちの入っていたロッカーを開け放った

「!?」

そして左右の手で俺と武藤を引っ張る

「ま、待てレキ!謝るから―――

だが女子たちが悲鳴を上げ俺たちが言い切る前に

 

――ガッシャァァン――

 

突如ガラスが割れ何かが保健室に飛び込んできた

「――!?」

ドオンっ!という衝撃がロッカーを襲いロッカーが吹っ飛んだ

キンジはレキが引っ張り出したおかげで助かったが武藤は出遅れてロッカーごと吹っ飛ばされてしまった

「武藤!」

「―――ッ!」

武藤は激痛で顔をしかめたが武偵の意地で銃を構えた

だがその先にいたのは・・・

「――嘘だろ・・・」

銀色の巨大な狼だった

「コーカサスハクギンオオカミ、ヨーロッパ東部から中央アジアに生息する絶滅危惧種です」

そんなヤツがどうしてここに・・・

それに首に何か大きな紙袋が引っかかっている

(あれはなんだ?)

「グルルルル・・・」

狼は喉を鳴らしてこちらを威嚇している

・・・下手に動けば防弾制服を着てない女子たちに危害が及ぶ・・・

ヒステリアモードのキンジはそれを懸念して手が出せない

そんな硬直状態が数秒続くと

ギィィィィィッ―――

突如響いたなにか急ブレーキがかかる音の後に

――ガッシャァァン――

再びガラスが割れる音がして

狼に続いて今度は人が飛び込んできた、それは――

「おいこら犬!もう逃がさねえぞ!」

氷牙だった

「氷牙さん!?」

「ん?レキか――って、え!?」

氷牙は目を見開き

「な、なんて格好してんだよ!服着ろ!」

慌てて目をそらした

「グルルオウンッ!」

その隙を逃さず狼は氷牙に飛びかかるが

「――ッ!!ラァ!」

氷牙のカウンターが入り狼を吹き飛ばした

「クッ・・・氷牙か・・・」

「――ッ武藤!?大丈夫か!?」

「ああ・・・それより油断するな!あいつまだ来るぞ!」

狼は立ち上がると

「グルルゥッ!」

首に引っかかった袋を食いちぎろうとしている

どうやらあの袋が邪魔で動きづらいようだ

「あ、バカ!やめろ!」

氷牙が慌てて止めようとする

あの慌てよう・・・あの袋、まさか爆弾か!?

俺もすかさず狼を取り押さえようと駆け出すが

「ガウッ!」

狼は女子たちの方へと駆け出してゆく

「なっ!?待て!!」

氷牙は咄嗟に銃を構えるが――

「氷牙!ダメだ!」

ここじゃ流れ弾が無防備な女子たちに当たる!

「―――チッ!!」

氷牙もそれを察して引き金は引けなかった

「グォン!」

そして狼は窓から逃げていった

「クソッ!待ちやがれ!」

氷牙が窓から飛び出し追う

そしてアリアが叫ぶ

「あんたも追いなさいキンジ!ここはあたし達が!」

俺は頷き立ち上がる

「使えキンジ!そこの茂みの向こうにある!」

武藤がそう言って投げてきたバイクのキーをキャッチしながら俺は外へと飛び出した。

 

「畜生、見失った!!」

 

そう言って氷牙は茂みに倒れていた隼をすぐさま起こす

地面にはまだ新しい急ブレーキの跡があった

さっきのはそいつか・・・

キンジも武藤から借りたバイクBMW・K1200Rに乗り

「ここからは足で探すしかないな」

「キンジ!草の根分けてでも探し出すぞ!」

「あ、ああ・・・」

氷牙のやつ・・・何をそんなに必死なんだ?

「私も行きます」

そう言って二人の前に現れたのは、ドラグノフを背負った下着姿のレキだった

「レキ!?戻れ!あと服を着ろ!」

氷牙はそう言ってまた目を逸らした

「あなた達ではあの狼を探せない」

キンジも目を逸らしつつ

「氷牙、悔しいがレキの言う通りだ。あの狼を探すには彼女の力が必要だ・・・」

「・・・わかったよ、せめてこれを着ろ・・・」

そう言って氷牙は自分の上着を脱いてレキに着せた

「・・・はい」

そう言ってレキは氷牙の防弾制服に袖を通し氷牙の後ろに乗った

 

そして二人はアクセルを捻り狼を追いかける

 

「クソ!どこ行ったんだ?」

「人工浮島の南端、工事現場です」

「どうしてわかる?」

「工事現場内に足跡が見えました」

「流石視力6.0の狙撃科Sランク・・・」

そして俺たちは工事現場へと向かっていった

 

「足跡・・・どうやらここにいるみたいだな」

「最後に確認できたのは8階です」

俺たちはエレベーターに乗り

「俺とキンジが8階に行って探す、レキは上から探してくれ」

できればレキは後方支援に置いておきたい・・・

「わかりました」

そう言ってレキはドラグノフを背中から前へと持ち直す

それを見たキンジは少し――暗い気持ちになる

「レキ、麻酔弾でも持ってるのか?」

「いいえ通常弾で仕留めます」

「・・・できれば殺したくはないが・・・仕方がないか・・・」

今回のように標的が猛獣で十分な準備ができていない場合、最悪、目標を射殺しなくてはならない

非情だが仕方がない・・・あんな猛獣を野放しにしたら一大事になる

それに・・・既に武藤があいつの襲撃によって負傷した・・・

つまりは・・・あいつは射殺されても止む無しな事をしてしまったのだ・・・

だが氷牙はMP5Kを構えると

「いや・・・トドメは俺がやる・・・二人共可能な限り陽動を頼む・・・」

「・・・わかった・・・」

偶然とは言え半年ぶりに結成した『ゴールド・フェンリル』の仕事が・・・まさか狼殺しとは・・・皮肉なもんだ・・・

 

 

 

そして氷牙とキンジは8階で降り

「ここの連絡通路から右の棟か左の棟にいったようだが・・・」

「二手に別れよう、キンジは右棟、俺は左棟を探す」

「了解、幸い壁はまだ作られてないから離れていても姿は確認できそうだしな」

 

そう言って二手に別れ氷牙は狼を探すが・・・

(気配もしないな・・・ここはハズレか・・・それともよほど上手く隠れているのか・・・)

キンジの方はどうだ・・・ここからじゃ少し遠いがかろうじて姿は見えるな・・・

「ん?」

まっすぐ進んでる?それに足元を何度も見て・・・

――まさか!?

「キンジ!罠だ!」

そう叫び俺はキンジのいる棟へと跳びながらMP5Kを構えた

おそらく足跡があるんだろうがこんなやり手の狼が足跡をタダで残すわけがない!

誘い込むためにわざと残したんだ!恐らくは途中で同じ場所を踏みながら引き返して隠れている!背後で隙を見て仕留めるためにな!とすれば隠れているのは・・・

「そこだ!」

と言ってキンジの後ろにあったブルーシートに向けて発砲

「グォン!」

すると着弾の直前にそこから狼が飛び出してきた

「なっ!?罠か!?」

「キンジ!避けろ!」

狼はキンジに向かって突っ込んできたが氷牙のおかげで不意打ちは免れたキンジは寸での所で躱し

「シャラァ!!」

そこに氷牙のカウンターキックを喰らい吹っ飛ばされた

「かわいそうだがここまでだな」

すかさず体勢を立て直したキンジが銃を構えると

「グルッ!」

真っ向から2対1は不利と悟った狼は資材の隙間を走り抜け向かいの棟へと跳んでいこうとするが・・・

「許せとは言わない・・・」

そう氷牙は言い、パイソンを構えた

だが狼が跳んで氷牙が発砲する直前

 

――ドォン――

 

突如響く銃声

「なっ!?」

 

――チュイン――

 

だが弾は狼を掠めただけで地面に着弾した

「今のは・・・レキか!?まさか・・・レキが・・・外した?」

そして狼は階段を登って上へと向かっていった

「―――――――」

氷牙も目を見開いて信じられないといった顔をしている

だが

「氷牙!マズイぞ!あいつレキをやる気だ!」

キンジがそう言った事により氷牙は我に返り

二人はレキの元へ急いだ

そして二人がレキのもとへ駆けつけた時には・・・

狼はレキに今すぐにでも襲いかかれる間合いにいた

「グルルル・・・」

狼はレキを威嚇する

「・・・・・・・・・・・」

だがレキは銃を肩に担ぐと狼に近づいていった

「なっ!?レキ!近づくな!俺が止めを刺す!」

氷牙はすかさずレキと狼の間に割って入り狼にパイソンを向けた

だがレキは氷牙の手を掴んで止め

「必要ありません、もう仕留めました」

「何言ってる!あいつは無傷だし、さっき狙撃外してるじゃねえか!」

「いいえ、外してませんよ」

「え?」

狼はレキを毅然とした態度で睨んでから・・・

――どぅっ・・・――

その場に倒れた

「な!?」

そしてレキは狼の前にしゃがみこむと

「脊椎と頸椎の中間に銃弾を掠らせて瞬間的に圧迫しました。今、あなたは脊髄神経が麻痺して体の自由が利かない」

「そんな神業・・・羽田テロ以来療養に徹していたらしいが・・・狙撃科Sランクの腕は完全復帰したようだな・・・」

そうキンジは賞賛するが氷牙は

(こんな神業やってのけるのに普段は静止してる的にも当てられないなんて・・・)

と頭を悩ませていた。一体レキは何を抱えているんだ・・・

「ですが間もなく動けるでしょう。それでも戦うならかかってきなさい。逃げたければ逃げなさい。ただし次はどこに逃げようと私の矢があなたを撃ち抜きますし・・・」

途中で氷牙に目線をやると・・・

「かかってくるならフェンリルの牙があなたを貫きます」

 

そして狼を強く見つめると

 

「主を変えなさい、今から私達に」

 

そう言うと狼はやがてよろよろと立ち上がりレキに擦り寄って服従を示した

「すげぇ・・・一発で服従させた・・・」

キンジが唖然とする中

「・・・で、そいつどうするんだ?」

氷牙はレキに問いかける

「飼います」

「飼うって・・・本気か?」

「その為に捕まえましたから」

「寮はペット禁止だぞ?」

「武偵犬ということで許可をもらいます」

「いやそいつ狼・・・」

「お手」

「ワフ」

と言って狼はレキの手に自分の前足を乗せた

「変わり身早いな・・・・ま、いいけどさ・・・どうせ俺の部屋で飼う気だろ?ちゃんと面倒見ろよ?」

「はい」

そして氷牙は狼を見て

 

「おい・・・つか待て・・・お前・・・あの袋どこやった!?」

そういえばいつの間にか狼の首からはあの袋は消えていた

「こいつが首に下げてた袋、あれお前のだったのか?」

「この狼を追っていたのは・・・猛獣駆除の依頼を受けていたからではないのですか?」

「いいや違う!!」

 

 

数時間前、学園島某所

 

氷牙はバイクでとある店に頼んだ品を受取に行っていた

「よし!やっと手に入った」

そして氷牙の手には一つの紙袋が下がっていた

こいつはアドシアードが終わってすぐ注文したのだが注文してから届くのに随分時間がかかったけどようやく今日届いたのだ

あとはこれを・・・

「でも・・・どうしようかな・・・」

そういえばその辺り考えていなかったな・・・

「やっぱストレートに行かなきゃ分かんないだろうからな・・・直に行くしかないか・・・」

そうと決まればまずは・・・

そしてバイクに戻ろうとしたところ

 

――ドンッ――

 

「うわ!?」

突如路地から出てきた銀色の何かにぶつかった

「な、なんだ!?」

路地裏から出てきたのは・・・

「グルルッ・・・」

銀色の大きな犬(狼)だった

そして狼の頭にさっきまで氷牙が持っていた紙袋の手提げ部分が引っかかっていた・・・

「あ!おい、返せ!」

「グルッ」

狼は落とそうと首を振るが

――ズルッ――

そのまま手提げが首までずり落ちてしまった

こうなったらもうアイツだけじゃ取れないぞ

「ったく取ってやるから大人しく―――」

だが狼はどういうわけか・・・

「グォン!」

そのまま全力で走り去っていった

「ああ!?おい待ちやがれ!」

だが待ってくれるわけがないあっという間に遠くへ行ってしまった

「てめぇ!なんてことしやがる!!」

そして俺はバイクに跨り

「つーか・・・何なんだよこのデジャヴ感はぁ!!」

そう叫びながらあの狼を追った

 

 

 

 

 

「コイツに荷物取られて!それ取り返すために追ってたんだよ!こいつ途中で落としやがったな!」

氷牙は膝をつき頭を抱えた

「・・・ああ・・・なんて事だ・・・」

その後氷牙はレキを送り届けたあと来た道を徹底的にただでさえ血のように赤い目を血眼にして探していったが結局見つかることはなく泣く泣く帰宅していった

 

 

 

 

 

 

その夜

『この・・・ド変態!出歯亀武偵!』

そんなアリアの叫びと銃声が今日も変わらずキンジの部屋から響いてた

「ハァ・・・またあいつらか・・・よく飽きないな・・・」

夜になっても氷牙は落ち込んでいた

「・・・・・・」

レキもあの袋の中身がなんなのか気にはなっていたが氷牙は一切教えてはくれなかった

それよりも何故だかもっと気になって仕方ないことがあった

「ところで氷牙さん」

「ん?」

「氷牙さんも保健室に入ってきたんですよね?」

「う・・・それは・・・」

「私達がいるのを知ってて入ってきたんですか?」

「え?」

「どうなんですか?」

レキが詰め寄ってくる

「あの・・・レキ?」

なんでそんなこと聞いてくる?

「・・・・・・・」

「ひょっとして・・・怒ってる?」

「いいえ、それでどうなんですか?」

「いや・・・でも・・・」

「どうなんですか?」

レキがずずぃっと更に詰め寄ってくる

「いや、違うよ!本当にあいつ追いかけて飛び込んだだけだったんだし、それに状況が状況だったからほとんど見てなかったよ!」

「・・・そうですか」

それを聞いて何故かレキは少し残念そうに引き下がった

「あ、でも・・・」

「?」

「確か青の縞々だったか、あれ結構可愛いかったぞ?」

「―――――ッ!」

――ジャキッ――

「・・・あの・・・レキ・・・さん?」

「・・・・・・・」

「どうしてドラグノフを俺の頭に突きつけてるんでしょうか・・・」

「・・・・・・・」

「やっぱり・・・怒ってる?」

「いいえ」

「じゃあなんで銃向けるの?」

「怒っていません、ただ無性に撃ちたくて仕方なくなりました」

それを世間じゃ怒ってるって言うんです・・・

というか本人は褒めたつもりだろうがあんなこと言えば誰でも怒る

「待て・・・話し合おう!きっと話せばわかる!」

「ええ、はなしはします」

話は通じた!よかった・・・

「今から貴方を解放します。30秒後に撃つのでそれまでにせいぜい遠くに逃げて見せてください」

全然よくねぇ!!そっちの放すじゃねえよ!

それは狙撃科のやる『放し』だ・・・

相手を一時的に解放してある程度時間がたったら相手を狙撃する・・・

ちなみにレキと『放し』をして逃げられた人間は猶予が5分あろうと1人もいない・・・

「あと20秒・・・」

てか、説明してる場合じゃなかった!既にカウント始まってたよ!

ヤバイヤバイヤバイ!!

どうする・・・今、俺にはギャルゲーよろしく選択肢が3つある・・・

①ここから全速力で逃げる

・・・無理だ・・・今のレキが好調なら俺の脚力でもあと20秒足らずじゃレキの射程圏外にはとても逃げられない・・・直線で移動してるならレキにとっちゃ止まってるも同然だしな・・・

②なんとかレキを説得する

・・・論外だ・・・今言ったように圧倒的に時間が足りない・・・

③接近戦に持ち込んでレキを押さえつける

・・・消去法でこれしかない!誰だよ三択なんて言った奴!

「時間切れです」

レキがドラグノフを構えてきたが俺は逃げずにドラグノフの銃口を上に向け

レキの小さくて華奢な少し力を入れれば壊れてしまいそうな体を抱きしめて銃を封じた

 

「―――――ッ!!」

そしたらレキはジタバタと暴れ始めた

なっ!?レキのやつどうしたんだ!?

「―――ッ!――ッ!」

「お、おい落ち着け!」

だがレキは一向に落ち着こうとせずにさらに暴れる

俺はそんなレキを抑えようとしていると足を引っ掛けて倒れそうになる

「う、うわっ!?」

俺はレキをかばおうと咄嗟に両手でレキを強く抱き寄せた

「あっ・・・」

そしたら右手が何か柔らかいものに触れた

「んっ!?」

そしてレキの顔が近づいてきたと思ったら口が何かで塞がれて

――ドターン――!

倒れてしまった

 

と同時に

「氷牙!頼む!匿ってくれ!」

「キンジ!待ちなさい!」

キンジとアリアが部屋に飛び込んできた

そして部屋を見て

「「――あ・・・」」

キンジとアリアが止まった

 

そして俺は目を開けると・・・

まず目の前にはレキの顔があった

と言うか俺の視界はレキの顔で埋まっていた

そして唇には何か柔らかい感触があり

ついでに右手にも小さくて柔らかい感触があった

 

簡潔に言ってしまうのならば・・・

俺はレキを抱きしめてキスをしてついでに右手はレキのスカートの中に突っ込んでいたのだ

どうやらさっき倒れそうのなった時にレキを抱き寄せてこうなったようだな・・・

・・・おかしいな!?こういうラッキースケベはキンジの専売特許じゃね!?

 

「・・・・・・ええと・・・お邪魔だったかな・・・」

「え、ええ・・・そうみたいね・・・」

キンジとアリアは踵を返して部屋を出ようとする

「ま、待て!なにか誤解して―――」

俺は慌てて上半身を起こして呼び止めようとする・・・

だが聞く耳持たず二人は部屋を去っていった

そして・・・

「氷牙さん・・・」

レキが俺を呼ぶ

ああ・・・俺・・・終わった・・・

「・・・言い訳はしない・・・もう抵抗も逃げたりもしない・・・撃ちたければ遠慮なく撃て・・・」

こうなりゃもうヤケだ・・・どうにでもなれ・・・

するとレキは意外な行動に出た

「・・・あなたを撃ちたいという気持ちは消えました・・・ですがかわりに何か別の気持ちがいっぱいです・・・」

そう言ってドラグノフを置き

―ポスッ―

「え?」

レキは俺の胸に顔を埋めてきた

「え?え?」

「しばらくこのままでいさせてください・・・そしたら許してあげます」

「・・・・・・・」

・・・やっぱり怒ってたじゃん・・・

が俺は何も口にはせずただレキを受け入れた

 

 

 

 

 

レキside

 

怪我が治ってからというもの狙撃の腕が不調です

先日、久しぶりに狙撃科棟に向かい射撃を行いましたが・・・自分でも信じられないくらいの命中の悪さでした・・・

200メートルの静止ターゲットにさえ・・・私の撃った弾が掠らせるのが精一杯でした

周りからも

「レキ!?どうしたんだ!?」「なんだこの命中率は!?」「まさか怪我の後遺症か!?」「ああ・・・狙撃科期待のホープが・・・」

と嘆きの声が聞こえてきます

ですが腕そのものの調子はむしろ好調です

指先の感覚も冴えていますし動きも思い通りに動きます

「・・・・・・・・」

気を取り直しもう一度ドラグノフを構えました

ターゲットに狙いを付け・・・

(私は一発の銃弾・・・銃弾は心を持たない、故に何も考えない・・・ただ目的に向かって飛ぶだけ・・・)

先程と同じようにそう唱え引き金に手をかけました

ですが・・・

 

――本当にそうでしょうか?――

 

(――ッ!!)

再びそんな言葉が頭をよぎり、手が震えました

 

――心が無いならどうして私は泣いたりしたんでしょうか?――

 

それは紛れもなく私自身の声でした・・・

私は一発の銃弾・・・そうあるべきなのに・・・それを否定する自分がいる・・・

そして気付けば視界はぼやけ・・・撃った弾はターゲットを外れて飛んで行きました・・・

その後何度撃っても同じように頭に言葉がよぎりまともに当てる事はできませんでした・・・

 

ですがあの日・・・

 

「じゃあもし理子が飛び出してきたら足止めしてくれ、腕治ったばかりでまだ本調子じゃないとこ悪いが・・・頼むぞ」

「・・・了解です・・・」

氷牙さんに理子さんを捕まえる手伝いを頼まれたとき

この時も、正直不安でした・・・今の私はまともに当てることさえできない・・・

今回も当てられる自信がありませんでした・・・

もし外れたら・・・氷牙さんの足を引っ張ってしまう・・・

そう思うと銃を持つ手は震えていました・・・

そしたら氷牙さんは・・・

「大丈夫だ、もし外れても俺がフォローする、だから気にせず撃て」

そう言って頭を撫でてくれました

そうしたら心が落ち着いて震える手が少しだけ収まりました・・・

「・・・はい」

そして私は配置につき心の中であの時のもう一人の自分に答えるように念じました・・・

(私はもう銃弾ですらないのかもしれません・・・ですが今だけでも構いません・・・せめて氷牙さんのゆく道を照らす一筋の光にさせてください・・・)

そう思い銃を構えた途端・・・

不思議と感覚が一層冴えてターゲットが止まっているかのように鮮明に見え、手の震えも止まり0.1ミリの精密な動きも思いのままに動きました

それはまるでターゲットに銃口をほぼ0距離で押し付けて撃っているような・・・まるで頭の中の理想図がそのまま実現した気分でした・・・

そして放った弾丸は狙い通りに、思い描くように飛んでワイヤーを撃ち切りました・・・

「この程度練習にもなりません」

今の状態ならもっと遠くのターゲットもいとも簡単に撃ち抜ける気がしました

だからこの程度はなんてことはないと氷牙さんには返しておくことにしました・・・

腕が不安定だということを悟られないためにも・・・

そして後日、再び狙撃棟に行き狙撃を行いました

ですが・・・あの感覚を呼び起こすことはできず私の撃った弾がターゲットに当たることはありませんでした・・・

あの感覚は・・・いったい何だったのでしょうか・・・

 

 

そして今日の昼・・・

 

突然保健室に飛び込んできた狼、明らかに敵意をむき出しでこちらに危害を加える気でした

そして、それに続くように飛び込んできた氷牙さんもあの狼を追っているようでした

まさか、あの狼の駆除?だとしたら彼は最悪あの狼を殺してしまう!

そう思った私はいてもたってもいられずドラグノフを背負うとふたりの後を負い半ば強引に同行しました

そして氷牙さんは・・・

 

――・・・トドメは俺がやる・・・――

 

案の定あの狼を射殺する覚悟でした・・・

あなたは殺してはいけない・・・それはあなたのゆく道ではない・・・ですが私が殺せばあなたはきっと自分を責める・・・

ならば・・・殺さずに動きを封じる他ない・・・

けど麻酔弾もない状況でそのための方法は一つしかない・・・

けど・・・今の私の出来るでしょうか・・・

(それでも・・・私は・・・あなたの行く道を照らす一筋の光に・・・)

そう思い銃を構えました

そしてまたあの感覚が蘇ってきました

感覚が冴え渡り世界が止まって見え手も緻密に動きました・・・

(これなら・・・いける・・・)

そして放った弾丸は狙い通り狼の脊髄を掠め一時的に麻痺させることに成功しました

 

ですがその後不思議な気分に悩まされていました・・・

 

氷牙さんに下着姿を見られたと改めて考えると・・・何か胸のあたりが濃いモヤがかかったような・・・

そんな例えようもない気分になりました・・・今までそんなことなかったのに急に・・・

 

――急にお洒落するようになっちゃってー!――

 

確かに理子さんに言うとおりいつからか下着を気を使って選ぶようになりました

ある日、日用品の買い出しで下着も替えをと思って買おうとしたとき

何故かいつも買っている物よりも隣にある柄物に目が行きました

自分でもどうしてそんな物に目が行くようになったのか・・・

 

――お洒落とかしてみたらどうだ?きっと似合うと思うぞ?――

 

きっとああ言われたからでしょうか・・・

確かお洒落の基本は下着からと聞いたことがあります・・・

そして気がつけばいつもの物ではなく柄物を数種類買っていました

 

――これなら喜んで見に来てくれるよー!!――

 

そう言われて・・・もしかして氷牙さんもキンジさんと同じように私たちがいると知って見るために飛び込んで来たんでしょうか、なんて考えました・・・私はいくらなんでもと思いながらそれが気になって氷牙さんに詰め寄りました

そして違うと言われたとき・・・まあ当たり前かと思うと同時に、なぜか少し残念なような気がしました・・・

ですがその後氷牙さんが可愛いと言ってくれました・・・

そしたら頭の中で何かがぐるぐると目まぐるしく回って

気付いたら氷牙さんを撃ちたくて仕方なくなりました

だけど本気で当てる気はありませんでした数発掠めて撃っておどかせれば十分でした

それに、決して不快ではありません、むしろ・・・何なのでしょうか?わかりません

そして、氷牙さんが私を抱きしめた時にはなぜか頭の中が真っ白になりました

心臓が自分でも信じられないくらいに高鳴って・・・なにか体中を内側からくすぐられた気分になって気付いたら身体が勝手に暴れだしました・・・

そして氷牙さんとキスしたときは・・・一瞬心臓が止まったような気がしました・・・

そして心臓は高鳴ったままでしたが胸のモヤは晴れ渡るように消えました

その後氷牙さんの胸に寄りかかって心臓に耳を当てていたら・・・

とても心が落ち着いてきました。できればもっとこうしていたかったくらいです・・・

これは・・・もしかして・・・

 

――もしかして恋ですか?――

 

そうだとはわかりません・・・

でも・・・もしそうだとするなら・・・私は・・・

 

そして数日後

「じゃあ行ってくるわ、しばらく留守番頼む」

「はい、気をつけて下さい」

「・・・分かってると思うけど…ちゃんとご飯食べろよ?カロリーメイトばかり食うんじゃないぞ?」

そう言って氷牙さんは横浜へ行きました

今日から氷牙さんは屋敷のヘルパーに扮して2週間の潜入に向かいます

しばらく会えないと思うと少し胸が締められる気がします…

もしかしてこの気持ちも本当にそうなんでしょうか…

やはり何度考えてもわかりません・・・

ですから私はその答えを知るためにこの機会に氷牙さんと一度離れて2週間自分自身について考えてみようと思います・・・

…私は氷牙さんをどう思っているのか・・・そして氷牙さんは私をどう思っているのか・・・

その答えを知るために…

ですが・・・この時はまだ思いもしませんでした…

2週間後・・・まさか氷牙さんが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あんな変わり果てた事になるなんて・・・

 

 




引っ越してネット環境がタブレットしかないから上手く投稿できてるか不安・・・
何か変なとこあったら指摘ください・・・

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