緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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125話<トラブルメーカー>

「出だしからいろいろあったけど・・・当初の予定通り、ホテルに荷物を置いたら夜までは自由行動にしましょう」

「そうだね、観光もして修学旅行Ⅱのレポートも書かないといけないしね」

「理子ショッピングいくー!!」

「レキ、凜香。どうせ無駄だと思うけど氷牙から目を離さないでくれよ?何かあればお前らだけが頼りだからな」

「はい、元より修学旅行中は一緒にいるつもりです」

「それに向こうから手を出してこなければ氷牙も絶対に手は出さないから藍幇が本当に敵対するつもりがないなら大丈夫だよ」

「お前は人の心配より自分を心配しろ。ここは日本じゃねえんだ。世界で日本ほど安全な国なんて無いんだからな」

俺達はホテルに荷物を置くと夜の会合まで自由に香港を回ることになった

 

 

 

 

 

 

 

「では、こちらになります」

「ああ、早速つけさせてもらうよ」

キンジ達と別れた後、俺はレキと凜香を連れてショッピングを回っていた

二人共、理子と同じくショッピングに行きたかったようだし俺も今使っている腕時計がガタが来ていたので買い替えかったところだ

「さすがブランドも安く売ってるな。だけど・・・」

「うん、だけど・・・」

「ええ、そうですね」

せっかくならばと奮発してブランドの高性能品を買ったのだが実物を見て一目でわかった

 

「見本だけ本物にして偽物を売るのは感心しないな」

 

それに偽物だって素人目にはわからないだろうが分かる奴なら一発で分かるほどの粗悪品だ。

店頭に並んでいるものは本物だが実際に客に渡す在庫品は偽物、なかなかにあくどい商売だ

 

「なっ!?お、おいあんた達!?妙な言いがかりは――」

図星を突かれたのか店長と思われる男性が慌てて俺達に食って掛かるが

「違うのか?じゃあこの時計今すぐ近くの質屋で鑑定してもらおうか?それで一発で判明するし別に本物なら何も問題ないだろ?それともそんなことされたら困る理由でもあるのか?」

 

そう言うと店長は逆ギレして

「おい、いい加減にしろよ!?こっちには藍幇っていう香港最大のマフィアがバックにいるんだ!!変な因縁付けるなら藍幇も黙っちゃいないぞ!?」

ここでその名前が出てきたことに少し驚きはしたが

「へえ?藍幇が?」

「ああそうだよ!!わっかたらさっさと出ていけ!!それと俺を疑うってことは藍幇を疑うってことだぞ?まさか本当に調べたりなんてしないよな!?」

氷牙は携帯を取り出すと先程ココにもらった番号に電話して

「――っていう藍幇のケツ持ちの店で買い物してるんだが―――ああ、そうだ。ちょっとトラブってな、何かあればすぐに連絡しろっていうから早速――」

「おいてめえ聞いてんのか!?どこに電話して―――」

 

「九狂様!!お待たせしました!!!」

 

店のドアが開きスーツを着た男達が店へ雪崩れ込んできた

 

「もう来たのか?早かったな?」

「な、何だお前ら!?この店は藍幇の――」

男達の一人が店長の口を塞いで、そのまま耳元で何か囁いた

「え?本物・・・それにこの人は藍幇の・・・客人・・・」

店長の顔はみるみるうちに真っ青になってゆき

「も、申し訳ありませんでした!!! 藍幇の客人とはつゆ知らず大変失礼いたしました!!!ど、どうか命ばかりはお助けを!!!」

男が手を離すと同時に地面に頭をめり込ませんばかりに土下座した。

 

「九狂様。弁明をさせていただきますが此度はこの者が藍幇の名を勝手に使っていただけで我々は一切関与しておりません。落とし前はつけさせますので後のことは我々に任せていただきませんか?」

「別に構わない・・・と言いたいが生憎そうもいかないんだよ。こんな偽物掴まされたんだからな」

高い金払って偽物の時計を買わされたんだ。このまま落とし前を人任せにして帰れるほど俺は甘くない

「仰る通りですな・・・おい!!!」

「は、はい!!!お金は全てお返しします!!!」

「金返すよりも本物があるならそっちを出せ。俺はここに買い物しに来たんだ」

「はい!!ございます!!すぐにご用意します!!」

「それとせっかくだから他にも買わせてもらうよ。迷惑かけられたんだしまとめて買うんだし当然サービスしてくれるよな?」

その後、沢山の本物を格安で買わせてもらった。いい買い物ができたな

 

 

 

 

 

次の目的地に俺達は昼食も兼ねて屋台が並ぶ大通りにやってきた。

ガイドブックに載っているような有名レストランももちろんいいがこういった屋台で現地ならではの味を楽しむのも旅の醍醐味だ

せっかくなのだからいろいろ味わって料理も勉強しておこう、

レキの舌を肥えさせて料理の腕を上達させるためにもな・・・

 

レキはまだまだ修行中のためか本当に当たりハズレの差が激しい

アレンジもせずにレシピ通りに作ればプロさながらの再現ができるのだが、少しでもアレンジを加えれば殺人料理へと変貌する。しかも厄介なのが判別の難しさだ。アリアの様に台所で爆発炎上起こして消し炭を皿に乗せて持ってくるなら判別できるのだがハズレ料理でも盛り付けは芸術の如く仕上げるので見た目や香りでは当たりかハズレか分からず結局食べるまでわからないのだ

そしてハズレ料理を引いた日には、

まず氷牙がそれがハズレであろうと根性で全て食べ尽くし、

その後昏倒、生死の境を彷徨い

凜香により治療・看病されて蘇生

という展開に間違いなくなるのだから・・・

いい加減少しは上達してもらわないとそのうち命が危ない

 

どんなに死にそうな修羅場も潜り抜け、死の運命すら否定した男が愛妻の手料理で死ぬなんて笑い話にもならないからな

 

そして3人で食べ歩きながら露店を回っていると

「おや?」

レキがとある露店の前で立ち止まった。そこでは乾燥させた葉っぱや果物といった乾物が種類豊富に並べられて売られていた

「これは・・・漢方薬の材料ですね。さすが漢方の本場です。日本では手に入らないような品ぞろえと品質ですね」

「おお、お嬢ちゃんお目が高いね。ならこれなんてどうだい?彼女2人もいるようなお兄さんにはお勧めだよ?」

店主が商品を一つ手に取って進めてきた

「そいつは?」

「こいつは精力剤の原料にもなるんだ。たちまち夜の帝王だよ!」

「・・・遠慮しとくよ。魔王でも根こそぎ搾り取られるんだから多分意味無い」

「そうかい?ならこっちはどうだ?こいつは媚薬の原料にもなるんだ。どんな淑女もたちまち女豹に早変わりだ!」

「・・・それも遠慮するよ。そんなことしたら色んな意味で喰い殺されるからな」

そんなやり取りをしている間にもレキは漢方を一つ、また一つと選別してはどんどん袋へと詰めてゆく。しかもその中には今店主に勧められた物も入っている・・・

「なあレキ?一応聞くがそれらを買って何を作って何に使う気だ?」

それで薬膳でも作るっていうなら別にいいんだがどうしてだろう・・・俺の第六感か何かが嫌な予感と危機を告げている・・・

「気になりますか?漢方薬の調合は救護科で履修していますので。今夜にでも実際に作って使えますよ?けどその時は凜香さんも一緒にですよ?」

「うん・・・もう大体わかった」

「あ・・・やっぱり私もなんだ・・・」

「嫌ですか?」

「べ、別に嫌じゃないけど・・・むしろ私だって歓迎だし・・・」

二人共・・・別の戦意が高揚してないか?まあそうなれば俺も俺でそっちの戦意も高揚するし頑張りますけどね・・・俺だって大歓迎だし・・・

 

そんなことを考えながら氷牙は食べ終わった串焼きの串を逆手に持つと思いきり振り下ろし

 

――ドスッ――

 

「ぎゃぁぁぁ!!!!」

 

先ほど買い物した荷物へと手を伸ばしたスリ男の手に突き刺した。油断してるとすぐこれだ

 

「通行人に紛れて忍び寄る足運びは慣れたようで及第点だが気配の消し方と目配りは落第点だな」

この後、再び藍幇に連絡するとすぐに駆けつけて男は連れていかれた

 

ちなみに漢方薬の会計の際、

「いいのか?こんなサービスしてくれて?」

「いいってことよ!!アイツこの辺りじゃスリの常習犯でな!捕まえてくれて感謝するよ!!持って行ってくれ!!」

「そうか、じゃあありがたく貰ってくよ」

「おう!!ありがとな!!それと今夜頑張れよ?」

そう言って店主は親指を人差し指と中指の間に入れて俺に突き出した。そういうのはどこでも同じなんだな…

 

 

 

 

買い物と食事を済ませ屋台通りを抜けると氷牙は次の目的地を提案した

「・・・次は服を買いに行こう。観光客はカモにされるみたいだからな。現地で買った服を着て歩き回った方がよさそうだ」

「それはそうなんだけど・・・気のせいかな?私たちの周りでトラブルが起こるのはそれだけが原因じゃない気がするよ・・・」

「狙われてるだけではなく普段から氷牙さん自身がトラブルを呼び寄せてるのですからあまり意味はないと思いますが・・・まあそれはそれとして服を買いに行きましょう」

 

俺たちは服を買いに近くのブティックへ入り

 

「じゃあちょっと着替えてみるね」

凜香とレキはせっかくなのでチャイナドレスを試着しようと試着室へ入りカーテンを閉めた

 

「――?」

 

氷牙はその時何か違和感を感じた

 

それに経験上こういう時は―――

 

直後にレキが試着室のカーテンを開き

「氷牙さん!」

「ああ、そういうことか!!」

俺はすぐに凜香の試着室のカーテンを開けた

「え!?ち、ちょっと氷牙!?」

凜香は今まさにブラウスを脱ごうと服をまくり上げる直前だった。ギリギリセーフだ

 

俺は凜香を下がらせ入れ替えるように試着室に入ると

 

――ガシャァァァン――!!!

 

試着室の姿見鏡へ正拳を入れ叩き割り

 

「ひ、ひぃぃ!?」

 

そして鏡の向こうにいた男の胸ぐらを掴んで引きずり出し、その手には案の定カメラが握られていた。

やっぱり3度目のお約束が意地でも入り込んでたよ!!

この店、試着室の鏡がマジックミラーになっていて向こうから客の着替えを盗撮していたんだ!!

 

店員を睨み付けると

「こんな手の込んだことしてるってことは店ぐるみだな?ずいぶんアコギな商売してるじゃねえか?」

 

その後、三度呼び出した藍幇も交えての話し合いの結果、寄せ餌のためにも商品自体はいい物だったので大幅に値引きしてもらえた。

1日に3度も立て続けに呼んだおかげで藍幇の連中も何人か「またかよ・・・」って顔してたけど生憎俺の周りじゃこんなトラブルは普段から日常茶飯事なんだよ・・・

 

だがそこで俺は失念してしまった

 

「まあ、3度目のお約束も乗り越えたんだ。今日はもう大丈夫だろ」

 

ほとんど無意識にこぼしたこの言葉、これもフラグであったこと・・・そしてそんなフラグに厄介ごとは意地でも割り込んでくるその執念深さを甘く見ていたことを・・・

 

その結果起こってしまった本日4度目にして最大のトラブル・・・

 

キンジがこの香港で・・・行方不明になってしまった

 

 




今更言うようですが、一級どころか特級トラブルメーカーにして神には死神にすら嫌われてるほどの不運な男、それが氷牙です

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