仕事忙しいのと
家の引越し重なってなかなか書けない・・・
かつて俺は孤児で自分が誰かもわからないまま彷徨っているところをワイルド・ドッグに拾われファングとともに後継者として育てられた
だが結論から言えば氷牙は失敗作であった
人としての感情を十二分に持ってしまい躊躇なく人を殺すことができなくなってしまったのだ
そのためドッグはファングを後継者と決め俺はファングの影として育てられたのだ
氷牙は徹底的に人としての感情を封じ込まれ戦闘技術を叩き込まれていった
それは地獄のような日々で心すら壊れてしまいかねない日々であった
そのため氷牙は自身を守るために無意識下でもうひとりの自分を作り出そうとした
感情を持たないロボットにように冷徹で残忍で好戦的な自分を作り出そうとした
だが、上手くは行かず代わりに生まれたのが後キンジが狂牙モードと名付けた一種の自己催眠だった、
これにより氷牙は自らの意思で一時的に感情を押し殺し戦意を向上させ殺意を生み出せるようになった。
この姿を見てワイルド・ドッグは俺を洗脳を完了したとみなし自由にしマッド・ファングというコードネームを付けた
そして俺はファングの影として忠実な戦闘マシンとして戦い続けた
ささやかな反抗であったのか直接殺す事こそ無かったが手足を切り落としたり拷問するのはザラであり何人もの人間を手にかけた
だが、そんな血まみれな日々もすぐに終わった
VSSEのエージェントによってワイルド・ドッグが倒されファングは行方不明になり俺はVSSEに囚われたが後に直接人を殺してはいないという事で司法取引と武偵になるという条件で放免された。
そしてキンジに出会い自分が何者であるかを断片的にだが思い出したのだ
「・・・・・・・」
「どうした?何も迷うことなんてないだろ?あるがままに戻るだけだ」
「・・・違う」
「かつてのよしみだけじゃない、俺はお前を高く評価しているんだ。ただドックは育て方を間違えた、お前の才能を引き出せなかった、それだけのことだったんだ」
「・・・黙れ」
「思い出せ、かつてのお前は最高の逸材だ、お前の実力はそんなもんじゃないだろう?」
「・・・黙れ」
「戻ってこい、お前は最高の戦闘マシン・・・マッド・ファングだ!」
「・・・黙れ!俺は武偵、九狂氷牙だ!マッド・ファングはとうに死んだ!」
「・・・そうか・・・ハァ・・・仕方ないか・・・」
そう言ってファングは何かリモコンのような物を取り出した
「あのバスには爆弾が仕掛けてある、ならこれは何かわかるよな?」
「なっ!?まさか・・・」
「今頃あのお仲間もバスに取り付いてる頃だろう?いいタイミングだ。お前をここに留めているものを全部吹っ飛ばしてやるよ」
そう言ってファングはボタンを押そうとするが・・・
「う・・・うああああああああああああ!!!!!!」
その前に氷牙は刀を取り思いっきり振って鞘をファングへと飛ばした
「フッ」
ファングは体を軽くひねって躱すが・・・
「アアア゛ア゛ア゛ア゛」
いつの間にか目前にまで氷牙が接近してリモコンを斬り飛ばした
「何!?」
すかさず氷牙の追撃が迫る
「シャァ゛ッ!」
「ガッ!?」
そしてファングの体を切りつけて地面に叩きつけた。
「ガ・・・ア゛・・・あ・・・あ・・・っ・・・はぁっ、はぁっ・・・」
「ぐっ・・・」
ファングがピクリと動く
「峰打ちか・・・本当に腑抜けになったなマッド・・・」
「・・・俺は武偵、九狂氷牙だ・・・マッド・ファングはとっくに死んだ!」
「そうか・・・まあ、安心したよどうやら牙は取り戻したようだからな・・・」
そしてファングは立ち上がり
「安心しろ、コイツはブラフだ、けど・・・早く行ったほうがいいぞ?そんなにお仲間が大事ならな」
「なっ!?てめえ・・・何をした!?」
「さあな?ただ今頃お仲間がどうなってるかな?」
そして突如ヘリが飛んできて
「じゃあまたな、マッド・・・いや、氷牙!」
「なっ!?待て!」
だが止めるまもなくファングはヘリに飛び乗り去っていった
「くそっ!急がねえと・・・キンジとアリアが・・・危ねえ・・・」
俺はすぐさまアリアたちの元へ向かうことにした
だが・・・俺が駆けつけた時には既に手遅れだった・・・
爆弾はレキが狙撃により橋の上から海へと落とし水中爆破させバスのみんなを救うことには成功したが・・・
その際襲撃を受けアリアは額に弾丸を掠めて意識不明になり武偵病院へ緊急搬送されたのだ・・・
夕方、キンジが武偵病院から出ると正門に氷牙が佇んでいた
「キンジ・・・」
「氷牙か・・・お前もアリアの見舞いか?あいつの部屋なら――」
「このヘタレ野郎が!」
ガッ!
氷牙はキンジの顔を思い切り殴った
「うっ!」
突然の事にキンジは吹っ飛ばされ尻餅をついてしまうが氷牙は歩み寄って胸ぐらを掴み上げ怒りのままの剣幕でキンジを問いただした
「何であんな中途半端な答えだした!アリアが期待していたのはヒステリアモードのお前だろう!」
「・・・・・・・」
「ヒステリアになってアリアと組めとは言わない!だけど組むからには仲間として信じてやれよ!助けてやれよ!・・・守って・・・やれよ・・・」
だが途端に氷牙の口調が弱々しくなる
「・・・・・・・」
「何でアリアを・・・仲間一人守ってやれないんだ・・・昔のお前は・・・こんなヘタレじゃなかっただろ・・・」
アリアを守れなかった後悔、それは氷牙も同じように痛感していた・・・
「・・・すまん・・・」
「頼むから・・・これ以上俺を失望させるな・・・これ以上・・・仲間を傷つけるな・・・お前は一体何に迷ってるんだよ!?目障りなもんがあるなら・・・そんなもんぶっ壊せ!蹴散らせ!かつての・・・俺のようにだ!」
「!!」
「その為ならいくらでも手助けしてやる!」
ああ、そうか・・・そうだったな・・・
コイツは・・・誰よりも仲間を思い・・・仲間が傷つくのを何よりも嫌う奴だった・・・
あの時だってそうだった・・・
数ヶ月前・・・
金一さんの葬式の日、キンジのもとには大勢の記者が押し寄せた、
事故を防げなかった「無能な武偵の弟」として・・・
当然記者たちは金一さんはもちろんキンジも、あろうことか他の武偵仲間達も徹底的に非難した。
それを聞いてブチ切れた氷牙はそこに居た記者達を全て病院送りにした。
そのせいで氷牙は記者たちの怒りを買い標的は全てキンジからそのまま氷牙へと移り氷牙は記者や世間に責められる日々を送ることになった
だが氷牙に味方したクラスメイトは記者や嫌がらせに来る者は狙撃科、強襲科、諜報科が片っ端から病院送りにし
電話やネットで責めてくる者は探偵科、情報科、通信科が然るべき処理後、社会的に抹殺していった
氷牙は仲間たちに何度も「お前たちも糾弾されるぞ」と止めるように言い聞かせたが、クラスメイトたちは「俺たちはお前に何度も助けられた!なら今度は俺たちがお前を助ける番だ!止めろと言われても勝手にやるぞ!」と言って聞くことはなかった
氷牙は協調性に欠け単独行動を取りがちだがそれは仲間を巻き込まないという思いやりの裏返しであり、一人で危険な所を受け持ったり先陣を切ったりと危険なポジションを進んで取るような奴で本当は人一倍仲間思いで、周りの皆もそれを自ずと察しているのか仲間からの信頼も厚い奴なんだ
そして半月も過ぎ病院送りにした記者やネット上から抹殺した者が数え切れなくなった頃にはキンジや氷牙の元には記者や誹謗中傷は跡形もなく消えた、皆武偵を敵に回すことを恐れたのだ。
そしてこの出来事が記者や世間に「武偵は凶暴な社会不適合者の集まり」そして「武偵を敵に回してはいけない」という認識を叩き込む事になった
そして元々狂牙モードの氷牙は戦闘センスはともかく戦闘スタイルに難ありとの事もあったのでこの出来事が決め手になり氷牙はAランクに降格することになってしまった
それでも氷牙は何も後悔はしていなかったし、クラスメイト達も氷牙の味方をする奴は大勢いたが、責める奴は一人としていなかった
氷牙はキンジを立たせると胸ぐらをつかんでいた手を離し
「キンジ・・・お前が武偵を否定したら・・・それこそ金一さんだって無駄死にじゃねえか・・・頼むから・・・これ以上・・・俺を失望させないでくれ・・・金一さんのことを冒涜しないでくれ・・・何より・・・アリアを・・・仲間を・・・自分を傷つけないでくれ・・・」
そう言って氷牙は去っていった