緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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121話<殴り込み(一応)>

門をぶち破り鏡高組本家に派手な突入を仕掛けたがそこで俺達は戸惑いを隠せなかった。

 

「おい?誰もいないぞ?」

門をぶち破った先、敷地内には誰もいなかったからだ。てっきり銃を持った奴らが丁重に迎えてくれるとばかり思っていたのに・・・

「どういう事だ?まさかここじゃないのか?」

そして再びキンジの携帯が鳴った。

「いや・・・あってるみたいだ」

キンジが携帯を見せてきた。

 

差出人:望月萌

本文:そのまま中の大広間へどうぞ。鍵は開いています

 

「・・・どう考えても罠だな」

「それでも行くしかないだろ。念のため周囲を警戒しつつ進むぞ」

 

俺達は周りを警戒しつつ中へと入り靴も脱がずに上がり込むとそのまま大広間へと向かい

「・・・殺気が濃くなってきたな」

「ああ、かなりの数が隠れてやがる。俺達をただで返す気はねえだろうな」

だが、それがどうしたと言わんばかりに大広間のふすまを蹴破ると

 

その中央に後ろ手で拘束されて猿轡をされている萌と・・・菊代が転がされていた。

「萌に・・・菊代!?どういう事だ?何で菊代まで縛られ――ジャキッ――!!」

直後、別室や背後の部屋から銃や刃物を構えた配下たちが飛び出して俺達を取り囲み

大広間の奥、萌と菊代の後ろからは先日会食の時に顔を合わせた幹部たちが出てきた。

 

幹部たちが萌と菊代に銃を向けると

「武器を捨ててこちらに来てもらいましょうか?」

「これは・・・もしかしなくてもクーデターってやつか?」

「おや?察しがいいですね?驚いたりしないのですか?」

「元々違和感はあったんだ。先日の会食の時だって命令とはいえお前等は組長をあっさり1人にした。もしかしたら俺達が刺客かもしれないのにだ」

「ええ、むしろそうであってそのまま組長がやられていれば御の字でしたよ」

「まあ当然だろうな。ヤクザは舐められたら終わりなんだ。たとえどんなに手腕があろうと年端もない小娘の下につくなんて屈辱でしかないだろ?」

「当たり前だ!先代の娘だろうとこんなガキが組長だなんて俺たちがどれだけ笑いものにされていたか・・・」

「まあそれでも役立たずってわけじゃなかったのが不幸中の幸いだったな。先代からの人脈はもちろん、中国との太いパイプも作ってくれてよ。おかげで懐だけは潤ったな」

「その中でもなんだっけ?極道の子供を学校に通わせる計画だっけ?」

「ええ、あの計画は実に素晴らしい儲け話ですよ。子供にはまともな人生を送ってほしいなんて言う極道の親は全国にごまんといる。そんな人たちから仲介料を貰いあの学校を斡旋して、さらには子供の事をネタに搾り取る事も出来る。実に素晴らしい計画です!!」

「しかも最後はこの二人を連れてきてくれたんだから猴先生も大喜びだな」

「その上女二人のオマケ付きだ。こりゃ特別ボーナスものだぜ!!」

「女二人だと?せめて萌は解放しろ。彼女は何も関係ないだろ」

「バカか?こんなとこ見られて黙って帰すわけねえだろ?それに日本の女は海外では高値で売れるんだぜ?わざわざ金ヅルを逃がすかよ」

「これから長い旅になるんだ。仲間はずれにしたらかわいそうでしょ?まあいつ帰ってこられるかわからないけどね?」

「みんなで仲良く中国旅行に行きましょうか?もちろん嫌なんて言いませんよね?」

その目は「逆らえば萌と菊代がどうなるかわかってるよな?」と言わんばかりであったが氷牙は動じることなく

「別にそんな安い脅ししなくても喜んで行くぜ?俺達だって藍幇には用も借りも恨みも腐るほどあるからな。けど生憎と約束があってな?少なくとも来年の3月までは行くのを待たないといけないんだよ。その後だったらいいぞ?」

「何か勘違いをされているようですが・・・これはお願いではなく命令なんですよ?もう一度言いましょう。武器を捨てなさい!」

 

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

キンジは言われるがままに銃を床に置き、氷牙もレッドクィーンを放り上げ

 

「・・・迅雷!!」

 

――ドォォォンッ――!!

 

「へぶっ!?」

轟音が鳴り響くと同時に氷牙は一瞬で菊代達を拘束している縄をすれ違いざまに切るとヤクザと間に割って入り銃を向けていたヤクザを蹴り飛ばし

 

「ん!?」

「むう!?」

萌と菊代を持ち上げキンジの方へと放り投げ

 

――ドカッ――

 

「おわっ!?」

キンジは見えない何かに背中を蹴られ前へとつんのめり

 

――ドォォォン――!!

 

「へぶっ!?」

「ぐわっ!?」

「ごはっ!?」

 

放り投げられたレッドクィーンはその見えない何かに振られて周りのヤクザを蹴散らした

 

――ジジッ・・・――

 

そして電子音とともにレッドクィーンの柄から人の手が現れ、金三が現れた。

 

「な、なんだてめぇ!?」

「いつの間に!?」

「こいつどこから現れたんだ!?」

「ずっとここにいたよ。気づかなかっただけだろ」

配下の一人が金三の赤いプロテクターと俺のレッドクィーンを見てハッとして

「唸る剣に・・・赤い服・・・ま、まさか・・・いや間違いねえ!!こいつ悪夢だ!!紅蓮の悪夢だ!!」

そう叫ぶと周りの連中は青ざめ始めた。

「紅蓮の悪夢?」

氷牙が首をかしげると金三が

「お前が一夜で武偵島周辺のマフィアやヤクザの事務所やアジト片っ端から殴り込んでぶっ潰した事あっただろ?その出来事の名称だよ」

と説明した。

「・・・悪いがいつの話だ?そんなのしょっちゅうやってるからどれの事かわからん」

「お前ヤクザよりタチが悪いな・・・しかもこいつら俺だと勘違いしてやがる」

「まあ細かいことはいいだろ?どのみちこれからお前もこいつらぶっ潰すのに加担するんだからよ」

 

氷牙は幹部たちを睨むと

「く、くそ!!お前らやれ!!絶対に仕留めろ!!」

そう命じて幹部たちは奥へと逃げていったが追おうとはせず

「まずは人質の救助が先だ。キンジ!!萌と菊代を連れて・・・」

キンジは金三に蹴られてつんのめりながらも辛うじて二人を受け止めたようではあるがさすがに二人同時には受け止められずに後ろに倒れてしまったようだ

おまけに萌も菊代も受け身なんて取れるわけもなく。二人してその胸でキンジの顔を押しつぶしていた

しかも菊代に至っては放り投げた際、着物の帯を掴んだせいか空中で帯がほどけて着物が脱げてしまい下着姿になっていた。

さすが特級フラグ建築士・・・何時でも女絡むところにラブコメありだな・・・

「ったく・・・まあ兄貴もそれでなっただろ? 」

金三は呆れながらも手下達が撃ってくる銃弾をキンジの螺旋に似た技、綣局で次々と返してゆき相手に銃を的確に破壊してゆく

「何だ金三?お前もなってんのか?」

「当たり前だ!!ならなきゃ失礼だぜ!!」

「そりゃそうだな。これだけの芸術品に囲まれてるんだ。そりゃあ・・・」

「うわあああああ!!!!」

銃が使えなくなった手下の一人が近くにあった壺を投げつけてきて

 

「「うおおっ!!??」」

 

氷牙と金三はそれを慌ててキャッチし

ギロッと二人して投げつけた男を睨むと

「ひぃっ!?」

 

――バァン、バァン――!!

――バララララッ――!!!

 

「ぎゃぁあああああ!!!」

容赦ない銃撃を浴びせた

「てめぇ!!景徳鎮窯の壺を粗雑に扱うんじゃねえ!!」

 

「おい二人とも!!幹部が逃げていくぞ!早く追いかけて―――」

キンジが加勢に入ろうとするが

「――っ!!キンジ!!」

「――っ!!兄貴!!」

そう叫んで氷牙と金三がキンジを同時に蹴り飛ばした。

 

「がはっ!?」

そしてキンジが吹っ飛んだ先で

 

――ビシ、ビシィ――!

 

「ごほっ!?」

流れ弾が防弾制服に直撃した。

「キンジ!!無事か!?」

「兄貴!!傷はねえだろうな!!」

「な、なにしやがんだ!!蹴られて流れ弾喰らって無事じゃねえし傷ついてるよ!」

 

「「お前なんかどうでもいい!!」」

 

再びキンジを蹴っ飛ばすとキンジに当たった流れ弾の射線の先にあったランプの無事を確認して

「よかった!ランプは無事だ!!」

「光栄に思えよ兄貴!身を挺してエミール・ガレのランプを守ったんだからな!!」

 

「うぉらあああああ!!!」

続いて配下が刀を持って斬りかかってきたが

「ハッ!そんな素人な振り方で斬れるかよ!」

金三は裏拳で刀をへし折ろうとしたが―――

「ッ!!待て金三!!そいつは――」

「――ッ!!」

金三も気付いたようで人差し指と中指で刀身を傷つけないように受け止めると配下の顔面に正拳を入れた。

 

そして手放した刀を改めて見ると―――

「間違いねえ・・・こいつは菊一文字じゃねえか!!」

「やっぱりか!?まさかとは思ったがこんなところでこんな国宝にお目にかかれるとはな・・・」

間髪入れずに他の配下たちが日本刀を持って斬りかかって来るが・・・

「――ッ!!おい!!あいつが持ってるの・・・ありゃ虎徹だぞ!!」

「それだけじゃねえ・・・あっちは村雨、そいつは鳴狐・・・あいつのは正宗じゃねえか!!」

「いいか!絶対に傷つけんなよ!!全部が全部、後世に残すべき日本の宝だ!!」

「言われるまでもねえ!!テメエこそ傷つけやがったら腹切らせるぞ!!」

二人は刀を傷つけないように細心の注意を払いながら攻撃を捌き、配下たちを沈めていった。

 

 

 

そして美術品を守りつつ大広間の敵をすべて倒すと

「ぐずぐずしてる場合じゃない!!急ぐぞ金三!!」

「ああ!!兄貴!!そいつらは任したぞ!!」

幹部たちが逃げた方、屋敷の奥へと駆け出して行った。

 

途中、廊下の角を曲がると

 

――ジャキ、ジャキッ――

 

十数人の配下が隊列を組んでこちらにAK-47を向けて弾幕を張ってきた。

「待ち伏せか?けどそんなもん全部躱してや・・・―――ッ!!」

後ろを見ると二人共目を見開き氷牙はMP5Kを金三に投げ渡すと

「金三!!!一発残らず弾き返せ!!」

「おう!!!!」

そう言うと氷牙はデビルトリガーを発動して闇魔刀を構えて銃弾奪いで、金三も両手にMP5KとUPSを構えて銃弾撃ちで飛んできた銃弾を全て撃ち返し捌き切れない分は身を挺して受け止めた。

 

そして銃弾を撃ち返して待ち構えていた連中を蹴散らすと二人とも傷だらけになりながらも

「おい金三!!傷は無いか!?」

「ああ問題ねえ!!ルノワールは無事だ!!」

そう言って後ろの壁に掛けてあった油絵を確認した

 

 

 

 

 

「・・・あいつら、ここに何しに来たのかちゃんとわかってるのか・・・」

氷牙と金三が美術品を死守しつつ屋敷を制圧してゆく一方、キンジは呆れながらも後のことは二人に任せ、萌と菊代を外へ連れ出した

 

「あ、あの・・・遠山君・・・これって・・・」

萌が怯え切った表情でキンジを見ていた。まあ当然と言えば当然だ・・・

「・・・萌。信じられないだろうけどこれが俺たちの正体だ。俺達は転校生なんかじゃない。ここ、鏡高組の潜入捜査のためにあの高校に潜入した武偵なんだ」

「・・・武偵?遠山君が?」

「ああ、もちろん氷牙も・・・ここにいる菊代も元は武偵だ。けどドロップアウトして家業を継いでヤクザの組長になったんだ。・・・今はこのありさまだがな・・・」

菊代を見れば俯いたまま泣いていた。

誰も味方がおらず何もかも失って一人蹲って泣き伏せている・・・これじゃあまるで・・・

「滑稽だよ・・・あの時と・・・周りから目の敵にされていじめで丸裸にされて一人で蹲って泣くしかなかったあの頃と同じだよ・・・」

そう・・・何もかもが中学時代のあの頃と同じなんだ・・・

「なんでよ・・・なんでいつもこうなるのよ・・・」

「・・・自分の言葉も忘れたのか?ヤクザってのは裏切ってなんぼ。信じられるのは自分と金だけ。それがヤクザの世界だろ・・・今の自分を見てみろよ。武偵校を捨てて、俺を捨てて、ヤクザの世界で一人で生きて、挙句あっさり裏切られて捨てられて。今のお前には何が残ってる?誰がついてきている?ヤクザの組長って肩書も崩れ落ちて、高価な着物も脱げて・・・まさに裸の王様じゃねえか」

「仕方ないじゃない!!あたしにはそれしかなかったんだ!!パパが死んで一人娘のあたしは武偵校を辞めて組を継ぐしかなかったんだ!!あたしは一人で生きていくしかなかったんだ!!極道の世界で他人を踏み台にして使えるものは全部利用して一人で成り上がるしかなかったんだ!!」

菊代は堰が切れたかのように本音を吐き出した。

考えてみれば当然のことだ。彼女もまたヤクザの子供として迫害されて人生を振り回されていたんだ。そんな彼女が好き好んでヤクザの跡目なんか継いだと思うか?組長である父親が死んで跡目が決まっていない以上、当時幹部でもあった一人娘である彼女が跡目に収まるしかなかったんだ・・・彼女に選択の余地なんてなかったんだ・・・

 

菊代が一番にまともな人生を送らせてやりたかったのは・・・一番に救ってやりたかったのは・・・ほかでもない自分自身だったんだ・・・

 

「菊代ちゃんは・・・怖いんだね」

萌は自分のコートを脱ぐとそれを菊代に掛けた。

「・・・え?」

「菊代ちゃんが自分を偽り続けるのは弱さを認めるのが怖いからなんだね・・・けどどんなに怖くても自分自身を認めて向き合わないと何も変わらないよ?」

 

「そんなの・・・できるわけないでしょ・・・強くなきゃダメなんだよ!!弱さを見せたら、舐められたら終わりなんだよ!!自分が弱者なんて認められるわけ無いでしょ!!」

「私、間違いなく菊代ちゃんより弱いよ?それでも私が怖いの?」

「あんたこそあたしが怖くないの!?あたしは極道の人間だよ!?悪人なんだよ!?あんたを攫ってくるように指示したのもあたしなんだよ!?あたしはあんたに酷いことしたんだよ!?それでもあたしを信じるっていうの?あたしを許すっていうの?あたしを受け入れるっていうの!?」

「うん、私は菊代ちゃんを許すよ。それから私と友達になろう?私、菊代ちゃんは根はいい子なんだって信じてる。だから菊代ちゃんも私を信じて本音を聞かせて? 」

萌が菊代に手を差し伸べ、菊代も差し伸べ続けているその手をじっと見つめると

 

 

 

 

 

――ドォォォォォォォン――!!!

 

ドンパチ音が響き続ける屋敷内で突如り響いた大きな爆発とともに氷牙と金三が何かを抱えながら飛び出してきて萌の前に着地すると

「くそっ!!ロケットランチャーなんて使うんじゃねえよ!!!」

「まったくだ!!あいつら何考えてんだ!!!」

 

「氷牙!?金三!?」

「え!?九狂君に・・・君は?遠山君の兄弟?」

萌と二人の目が合うと

 

「「萌(女)!これ持ってろ!!」」

 

そう言って萌に

氷牙は右手に鮮やかな暖色系の色彩で描かれた皿を持たせ

金三は左手にバイオリンを持たせた。

「え?これって・・・」

「いいか!そいつは初代柿右衛門の皿だ!!絶対に傷つけるなよ!!」

「そいつはストラディバリウスだ!!少しでも音狂わせたらただじゃおかねえぞ!!」

そう言い残すと二人は再び屋敷に突っ込んでいった。

 

「え!?ストラディバリウスって・・・確か時価十数億円はするっていう?・・・それに初代柿右衛門の皿って・・・国宝の!?」

萌は目を見開くと右手と左手に何度も視線を行き来させて手に持っているものを穴が開く程に見つめた

何度も抑えようとするが手は一向に震えが止まらない。

無理もない話だろう・・・今、彼女の左手には十数億のバイオリンが、右手には国宝級の皿が握られているのだから・・・

「ど、どどど、どうしよう!?ね、ねえ菊代ちゃん!?こ、これどうすれば―――」

萌が視線を皿とバイオリンの間を何度も往復させながらテンバッていると

 

「ふっ・・・あはははっ!!あんた・・・テンバリ過ぎだよ」

菊代も色んな事に悩ませている事が馬鹿らしくなって笑い出した。

「わ、笑い事じゃないよぅ・・・これってとっても大事なものなんでしょ!?もしも傷つけたりしたらべ、弁償・・・」

「べつにいいよ。それ、もういらないから」

「え?」

「もういいよ。あたし、もう何もいらないよ。国宝級の美術品も、高価な着物も、組長なんて肩書も。もういらない。ううん、最初から欲しくなんてなかったんだ」

 

菊代は立ち上がると

「ありがとね。あんたのおかげで決心がついたよ」

萌に礼を言い庭の方を振り向いた。その先には・・・

 

 

 

 

 

「うわあああああ!!!」

「く、来るなぁ!!」

「こ、こいつら化け物か!?」

氷牙と金三が幹部たちを庭へと追いつめていた。どうやら屋敷は完全に制圧したようだ。

「おお、キンジ。終わったぞ。美術品は無事だ」

「全部きっちり守り抜いてやったぜ。久々に骨と意義のある仕事だったな」

氷牙も金三も返り血で血塗れになりながらもやり切った笑顔をしていた

 

お前ら・・・本当に何しに来たんだ・・・

 

 

だが幹部たちは既に庭に出ているキンジ達を見ると勝利を確信したように笑みを浮かべ

「は、ははっ!!油断したな!!こんなこともあろうかと狙撃手を配置しておいたんだ!!」

「全員外に出たのが運の尽きだな!!やれ!!全員撃ち殺せ!!!」

合図を送るが・・・

 

何も起きない

 

「なっ!?お、おい!?何してるんだ!!撃てっつってるのが見えないのか!!」

「・・・残念ですがあなた方が配置したスナイパーは全て私達が倒しました」

「4方1キロ圏内にしか配置されていなかったから見つけるのは簡単だったよ。全部で11人。5分もかからなかったね」

正門から狙撃中を抱えたレキと凜香が入ってくると青ざめながら俺たちの方を見た

「生憎うちには3キロ先の銃弾も撃ち抜ける優秀なスナイパーがいるもんでな?残念だがお前たちのクーデターもこれで終わりだ。諦めて投降しろ」

もう負けだと痛感したのかヤクザたちはがっくりと項垂れた。

 

 

 

 

そして菊代が項垂れるヤクザたちの前に立つと

「あんた達、まあ好き放題してくれたね?けどいいさ、極道ってのは裏切ってなんぼだ。裏切られる方が悪いし、あんた達にこの組は渡さないしね」

 

「「「・・・は?」」」

 

「鏡高組組長鏡高菊代の名において宣言する!!本日をもって・・・鏡高組を解散する!!あんた達も全員絶縁だ!!どこへでも失せな!!」

 

「「「―――ッ!!??」」」

 

たとえお飾りであろうと組長が解散といえばその言葉は絶対だ。奴らがクーデターを企てでも手にしようとしていたものはその言葉であっさりと消えてなくなってしまった。

「おいおい、いいのか?武偵校辞めてまで継いだものそんなにあっさり潰してよ?」

「ああ、元々継ぎたくて継いだものじゃないんだ。それに遠回りしたけど自分を偽るのはもうやめだ。あたしはあたしの生きたいように生きるよ。そのためなら邪魔なものは全部捨ててやる!!」

「何だよ?何があったかは知らないけど吹っ切れたいい目してんじゃねえか。少しは信用できるいい目だ」

 

菊代はキンジの方を向くと

「ねえ遠山。あたしもう一度武偵校でやり直せないかな?」

「ああ、あそこは来るもの拒まずだ。出戻りだって受け入れてくれるさ」

「うん!!」

菊代は憑き物が落ちたような顔をして年相応な笑顔を浮かべ

「それに、やっぱ今のお前の方がヤクザの組長しているよりもずっといい女だよ」

直後、キンジの一言で菊代は胸を押さえて顔を真っ赤にした

「――ッ!!遠山・・・それ反則だよ・・・」

 

 

それを見て氷牙達は・・・・

「あーあ・・・また増えたよ・・・」

「かなめがいなくてよかったな兄貴」

「キンジさんいつか刺されますよ?」

「もしくは風穴開けられちゃうね」

相変わらずの天然ジゴロに呆れるばかりであった

 

 

 

 

 

「く、く・・・・・くそぉぉぉぉぉ!!!!!」

呆れている隙をついてヤクザの一人が自棄になったのか隠し持っていた銃を抜いて菊代に向け

「――っ!!菊代!!!」

 

――ゴッ――!!

 

「ぶへっ!?」

氷牙と金三がすぐさまヤクザを殴り昏倒させたが

 

――バァンッ――!!

 

一瞬遅く銃弾は発砲された。

菊代が来ているコートは萌が着ていた普通のコートだ。防弾性なんて当然ない!!キンジは左手で菊代を抱き寄せると右手を銃弾へと伸ばし

 

――パシッ――!!

 

という音がして後は静寂が訪れ・・・

俺たちは再びキンジを呆れることになった。それは止まるところを知らない天然ジゴロに加えて・・・

「兄貴・・・そいつは俺もやったことがねえぞ」

「・・・なあキンジ・・・お前まだ自分がただの人間だって言い張るか?」

「・・・さすがに自信がなくなってきたな」

そう言ってたった今、掴み取って止めた銃弾を手放した。

 

いつかやると思っていたがついにやってしまった銃弾掴み。天然ジゴロ以上に止まるところを知らない人間離れにもはや呆れるほかなかった

 

「銃弾掴み(ゼロ)ってとこかな」

理屈は簡単だ。鐵さんが箸でハエを掴んだように、手を弾丸の動きに合わせて掴むんだ。当然だが人間がやっていい技じゃない

「言っとくが俺だって銃弾奪い(スナッチ)はデビルトリガー発動させなきゃできないぞ?」

「兄貴?撃っていいか?もっかい見たら俺もやってみるからよ?次俺撃てよ」

「そんなキャッチボール嫌だよ・・・」

キンジも自分で自分を呆れていたが氷牙は幹部たち全員を無力化させて気絶させると「さて・・・」と気持ちを切り替え

 

「それで?あとはお前らだけだろ?いい加減出てきたらどうだ?美術品がなければ今頃屋敷ごとぶっ潰してるところだったんだぞ?」

 

屋敷の方をにらむとやがて3人の男女が出てきた

1人目は眼鏡をかけたココ達にとてもそっくりな子。おそらくあいつらの姉妹だろう。4人目がいたのか

2人目は名古屋女子校特有の丈がかなり短くなっている防弾制服を着た大きな赤い目が特徴的なアリアよりも小さい少女。だが雰囲気やスカートから尻尾みたいなものが伸びているところから実力者であり人間ではないことはすぐに分かった。

そして最後の3人目、あれは間違うはずもない。藍幇大使、諸葛静幻。宣戦会議でアリアの殻金を持ち逃げした一人だ

 

「お久しぶりです。バスカービルの皆さん。GⅢさん」

諸葛が恭しく頭を下げると氷牙も怒りと殺意を抑えながら

「ああ久しぶりだな?それじゃあココやヒルダのようにぶっ殺されたくなければ今すぐ殻金を返してもらおうか?」

 

諸葛はふむぅと考えたのち

「そうですね・・・殻金はもう返しても構わないのですが生憎と今は持っていないものでしてね?どうでしょう?今日のところは戦う意思はありませんので引きませんか?代わりと言っては何ですが次に会う時には殻金と・・・ココ姉妹達の非礼の詫びを用意しておくことを約束しましょう」

 

「・・・本音を言うなら今すぐなぶり殺してやりたいところだが約束があるからな。3ヵ月は待ってやる・・・・・・俺はな?」

氷牙が話している隙に金三が流星を構え一番の強者であろう赤い目の少女に殴りかかろうとするが

 

「―――――――」

 

少女もまるで迎え撃つかのように赤い右目を更に赤く輝かせてゆく

「――あれはっ!!ダメ!!金三君止まって!!」

凜香が止めるよりも前に少女が赤い目を見開くとそこから赤い光線が飛び出し金三の体を貫いた

 

「がぁ・・・・」

そして光が消えると金三の胸に風穴が空けられ、金三はその場に倒れ伏してしまった

「金三!!!!」

「下がって氷牙!!あの技、間違いない!!彼女は本物の仏!!斉天大聖・・・孫悟空だよ!!」

 

 




香港に入ったら更新速度上げる予定です…(願望)

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