緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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生きてます。
続ける気もあります。
ただ筆がすごく遅い・・・



120話<普通の終わり>

「では今日の授業はここまで。委員長。号令を」

「はい。起立―――」

 

 

 

 

今日の授業も終わり帰り支度をしていると

「なあ、九狂?気が向いた時だけでもいいから野球部に来てくれないか?」

「何度も言うけど俺は部活入る気は無いよ」

 

「なあ?凜香さんやレキさんの事詳しく教えてくれよ?絶対に芸能事務所に情報売ったりしないからさ?」

「できるか」

 

「そう言えば聞いた?この前氷牙君達と喧嘩した二人、停学開けて登校し始めたんだって」

「ああ、でも人が変わったみたいに大人しくしてるって話だな」

「教員もあのことに関しては何も触れないよね?」

「そりゃそうでしょ?触れたところで良い事なんて無いだろうからね」

「ホント事なかれ主義この上ないよね?」

「あんな大人にはなりたくないな」

「だよねー」

菊代との会食から数日が経ったが、あれから鏡高組は不気味なほどにナリを潜めている。あの身代わりヤンキー達も奴らの狙い通り勝手にヤクザを名乗っていただけとみなされ、それからというもの停学明けて登校して来ても大人しくしているそうだ。

おかげであの騒動もすっかり過去の話になって今では雑談の一つにまでされてしまい。この数日、俺達は平和で普通の高校生活を送っていた。

だがもちろん調査は継続しているし油断はしていない。経験上この静けさが嵐の前の静けさであることなど痛いほどに分かっているのだから・・・

 

そして雑談も終わり部活だバイトだと次々と教室を後にしてゆき

「んじゃ、帰るかキンジ」

俺達も帰るかとキンジに声をかけるが

「ああ、悪いけど今日は先に帰っててくれ。今日の放課後、萌に勉強教えてもらう約束なんだ」

なんでも彼女は全国模試で89位を取るほどの秀才でこの前助けてくれた礼にと最近では弁当だけでは飽き足らず放課後には勉強まで教えてもらっているそうだ。武偵校でも成績ワーストなお前にはそいつは渡りに船だろうな

「そうか、まあ頑張って偏差値上げてもらえよ?あとそのまま狼になって朝帰りしてもいいけどそうしたら責任はとれよ?」

「え!?そ、そんな・・・で、でも今日お父さんもお母さんもいないから妹が寝た後でよかったら・・・」

萌は顔を真っ赤にして狼を招き入れる気でいた。

「いや・・・お前らなぁ・・・」

 

氷牙は一人先に帰ろうと荷物をまとめると

「おい、遠山、九狂」

突如、担任に呼び止められた。

「すまないがこの後校長室に来てくれ。校長から話があるそうだ」

「校長から?呼び出される心当たりは・・・ありすぎてわからねえな」

「まあ行ってみるか・・・すまん萌。すぐに終わると思うから少し待っててくれ」

「うん、じゃあ校門の所で待ってるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結論から言います。貴方達への依頼をキャンセルします。これまでの調査費用、違約金も割増しで全額お支払いいたします。後の手続きは私がいたしますので速やかにこの学校から転校してください」

「・・・依頼をキャンセルですか」

話があるからと校長室に呼び出されて何かと思えばいきなりの依頼キャンセル。だが依頼人側からのキャンセルなど別に珍しい話ではないしその際に一番の問題になるそれまでの調査でかかった経費についても違約金含めて全て払うと言っているのだ。普通なら「はいそうですか」となってこの仕事もこれでお終いだ。だが・・・

「今更「はいわかりました」とか言うと思うか?数日の調査だが間違いなくあんたはヤクザとグルだって確証もあるんだぞ」

ここまで容疑者がクロという確証が取れていれば話は別だ。むしろこの校長だけでも今すぐ逮捕に踏み切ってもいいくらいだ。

「ああ、今更キャンセルなんてこれまで通りヤバい事は揉み消して無かった事にするつもりだろうがそうはいかないぞ。今までヤクザと手を組んで甘い汁を吸っていたツケを払う時だな」

校長は机に肘をついて俯いたまま

「・・・何の事ですか?わが校に後ろめたい事などありません。これまでも・・・これからもね・・・」

そしてキンジの携帯が鳴った。

 

「ん?電話?萌から?」

着信画面を確認して電話に出ると

『あ・・・もしもし・・・遠山・・・君?』

通話先から萌の声が聞こえた。だがその口調・・・それに・・・

「・・・どうした?校長との話ならもう終わるよ。それとも何か急用でもできたのか?」

『う、うん・・・今すぐ遠山君に伝えることがあって・・・』

「そうか・・・なら俺からも今すぐ萌に伝えることがある」

『う、うん・・・何?』

 

「心配するな。すぐに助けに行く。それにどうせ聞いてるんだろ?お前ら鏡高組の連中だな?彼女に傷一つでもつけたら容赦しないぞ!!」

中空知レベルとまではいかないが武偵やってれば電話越しだろうと相手の口調と周囲の雑音を聞き分ければ状況は大体把握できる。萌は車で移動中、かなりの恐怖状態だ。それに両隣に誰かいる。十中八九、鏡高組の連中に誘拐されたんだ!!

『あ・・・きゃっ――』

直後、携帯越しに揉み合うような音がして通話が切れた。

 

「奴らが動いたんだな?そして萌が攫われた」

「ああ、けど場所は分かってる。鏡高組本家だ!!急ぐぞ!!」

「言われるまでもねえよ。けどその前に校長。この誘拐、お前もグルだな?彼女を攫うために俺達をここに呼び出したってわけか」

「・・・何の事ですか?私は何もしてません。何も知りま――ゴッ――!!――ぶがっ!?」

氷牙は校長の顔面に左ストレートをぶちかまして椅子から転げ落とした。

「下らねえ芝居に付き合ってるほど俺は寛大でも暇でもねえ!!どのみちこれから鏡高組へ殴り込みついでの強制捜査だ。そうなりゃ全部暴かれるだろうよ!!」

「ああ、いっそあんただけでも逮捕に踏み切ってもいいが・・・今はそれどころじゃないんでな。今のうちに身の回りの整理でもしておくんだな」

俺達は部屋を出ようと校長に背を向けるが

「ま、待て!!」

校長は机に手をついて立ち上がると、どこから取り出したのか拳銃を俺達に突き付けた

「いいか!このまま学校を去れ!!そうすれば金も欲しいだけ払う、彼女も手荒なことはせずに解放する!!」

 

「へぇ・・・」

氷牙は面白いじゃねえかと言わんばかりの顔で校長に歩み寄った。

「なっ!?お、おい!!動くな!!本当に撃つぞ!!お前達が武器を持ってない事はわかっているんだ!!」

「動いて欲しくないなら撃つぞとか言う前にさっさと足でも撃て、銃は脅しに使う物じゃなくて撃つ物だ」

 

銃口にほぼ0距離まで顔を近づけると

「で?どうする?俺を撃つか?いいぜ?撃てるもんなら撃ってみろよ?それが俺達を止めれる唯一の方法だ。この距離なら素人でも外さないだろ。それに殺したってその後は鏡高組の連中が上手い事隠滅してくれるだろうよ。けど撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ。まあ俺は銃を持ってないから撃つことは無いが仕留められなかったときは・・・わかってるよな?」

校長をこれでもかと言わんばかりに挑発した。

そんな光景にキンジは何も言わず何もしようとせず。ただまたかと呆れる様にため息をつくだけだった。

 

 

そして何時まで経っても何もしてこないので埒が明かず校長に向けて強めに殺気を放つと

「ひっ!?」

校長は反射的に引き金を引いてしまい

 

――ダァンッ――!!

 

銃声が鳴り響き

「あ・・・ああ・・・・」

校長の手がガタガタと震えた。だがそれは銃を撃った事でも人を殺してしまった事からくる震えでも無く・・・目の前にいるのが人間の姿をした決して手を出してはいけない化物で・・・そんな相手を敵にしてしまった故の恐怖からであった。

 

氷牙は被弾して軽くのけぞった体を戻すとプッと噛んで止めた銃弾を吐き出し

「悪いな、言い忘れた。これくらいでくたばれるなら俺は残機が後99人いてもとっくの昔にゲームオーバーだ」

「あ・・・あは・・・・」

そして校長は泡を吹いて気絶した。

 

「おし、終わった。さっさと萌を助けに行くぞ。そしたら殴り込みついでの強制捜査で証拠押収して終わりだ」

「ああ、急ごう」

そうして俺達は校長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、遠山君!!九狂君!!」

校門前を通ると何人かの生徒が集まってざわついていて、俺達に気付くとすがるように駆け寄ってきた。

「大変だよ!!さっき校門前に車が急に止まって・・・そこから強面の男性が出て来て萌さんを無理やり連れて行ったんだ!!」

校門前を見ればそこには萌の鞄が落ちていた。それを見て氷牙は

 

「・・・そうか。それで俺達にどうしろって言うんだ?」

「え!?そ、それはもちろん望月さんを助けてほしくて・・・」

「助けて欲しい、ね・・・お前ら、無理やり連れて行かれたって言うからには当然現場を見たんだよな?」

「そ、そうだよ!!みんなの目の前での出来事なんだ!!間違いないよ!!」

「へえ?これだけの人数が見ていたのに誰も助けも止めもしなかったのか?」

「え?そ、それは・・・・」

「どうなんだ?誰か止めようとしなかったのか?」

そう聞いて周りを見渡すと全員俺から目を逸らして黙り込んだ。

 

「・・・なら誘拐現場を見たんだ。当然誰か警察くらい呼んだんだろ?」

「え、ええと・・・」

「おい?誰か呼んだんだろ?」

再びそう聞いて周りを見渡すも誰も何も言わない。

 

「つまり・・・クラスメイトが誘拐のされるのを何もせずに見ていたっていうのか?そして今なお誰も何もしてないのか?それで挙句の果てには俺に丸投げか?・・・お前ら言ってたよな?この学校の教師はみんな事無かれ主義で見て見ぬふりの他人任せばっかりであんなのにはなりたくないって。今のお前ら、まさにそんなのじゃねえか」

皆がその通りだと思ったのか全員俯いてしまった。

 

「し・・・仕方ないじゃないか・・・僕らは九狂君や遠山君みたいに強いわけでも勇敢なわけでもないんだ・・・」

 

 

「甘ったれてんじゃねえクズ共が!!!!!!!!!」

 

 

ついにブチ切れて怒鳴り声をあげると全員ビクッと震え、中にはへたりこんでしまったものまでいた。

「力が無い!?勇気が無い!?ならお前等はそれを得るために何かしたのか!?自分の保身ばかり考えて何もしない奴には何も掴み取れねえよ!!惨めに下向いて努力すらしない奴が自分勝手な事を言うな!!!いつまでも自分以外の誰かが何とかしてくれるなんて考えてんじゃねえ!!!」

一喝すると氷牙もこれ以上は付き合ってられないと皆の間を通り抜けて行こうとすると

「九狂君・・・僕らも・・・僕も・・・君みたいに強くなれるのかな・・・」

1人の生徒がすれ違いざまに問いかけてきた。

 

「知るか、本気で変わりたいと思うなら自分で決めて自分で動け。だが一度決めたことを途中で諦めて投げ出す様なら何もしないクズ以下の口だけのクズだ。お前はどうだろうな?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

男子生徒は何も言わずただ悔しそうに拳を握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう兄貴、氷牙」

「氷牙さん、キンジさん」

「待ってたよ2人共」

鏡高組本家前にたどり着くとそこに1台の外車が停まっていてその傍にはレキと凛香が、ボンネットには赤いプロテクターを纏った金三が腰かけていた。

「金三?レキに凛香までなんでここに?」

「ほらよ。お前等に届け物だ」

金三が車のトランクを開けた。

「俺達の武器に防弾制服か?わざわざ持ってきてくれたのか?」

「喧嘩なら俺も混ぜろ。それにいくらお前らでもたった2人、それも丸腰でヤクザの本拠地に殴り込むなんて阿保すぎるだろ。まあ武装したってたった5人でヤクザの本拠地に殴り込みなんてそれはそれで馬鹿だけどな」

「ただの5人の人間ならな。けど5人共ただの人間じゃねえだろ」

「少なくとも俺は人間だ・・・」

 

「「「「それは無い」」」」

 

全員で否定した。いつになったらキンジも自分が人間辞めてることを認めるのやら・・・

 

 

そしてキンジと氷牙は制服を着替えるとキンジは手にベレッタを、氷牙はレッドクィーンを肩に担ぎあげた。

流石にディストルは間に合わなかったか・・・まあ仕方ねえ。あれだけ壊して追加で難題まで吹っかけちまったからな・・・

 

普段の武装と着慣れた防弾制服に久しぶりに袖を通したキンジ、氷牙。そして金三、レキ、凛香の5人は門の前に立ちはだかると

「普通の日常は終わりだ。ここからは俺達の日常・・・いつも通り派手に行くか!!!」

 

氷牙は先陣切ってレッドクィーンを振りかぶり正門をぶち破った。

 

 

 

 

 


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