緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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やっとペースが戻り始めた・・・と思いたいです


111話<出歯亀退治>

――バババババッ――!!

 

GⅢはUPSをフルオートで発砲してきた。

向こうは13発、こっちのDEは8発、弾数じゃ分が悪い。

 

なら・・・

 

「連鎖撃ち(キャノン)!!!」

 

ビリヤードのキャノン・ショットの如く弾いた弾丸でまた別の弾を弾いてやればいい。そうすれば弾数の差を覆せる。

1発で2発弾き飛ばした分、1発攻撃用に回せた弾がGⅢに向かって飛んでゆくが

 

 

GⅢは慌てた様子もなくニヤリと笑みを浮かべるとそれを片手で逸らした。

あれは螺旋だ。それを腕だけでやりやがった!

「お前もそれをできるのか・・・」

「言っただろ?これくらいはちょうどいい玩具だって。本気で遊ぶなら・・・これくらいはねえとなぁ!!」

GⅢが翼を蹴るとその足元から・・・

 

「スティンガーミサイル!?」

 

驚く間もなくランチャーから爆撃機後方へと発射されたミサイルは加速しながら雲を迂回するように大きく円を描きキンジへと迫っていった。

 

「なっ!?何考えてんだ!!そんな事したらお前もただじゃ済まないぞ!!」

「知った事かよ!ほらキンジ!!何とかしねえとお前も木っ端微塵だぜ!!」

「ああクソッ!!お前本当にあいつそっくりだよ!!」

あれの最高速はマッハ2を超える。撃ち落とすには速すぎる。仮に成功しても距離が近ければ爆発で飛散した破片で致命傷を受ける。キンジは一か八かでミサイルに向かって飛び出すと

 

――ガスッ――!!

 

ミサイルにダブルスレッジハンマーを振り下ろし軌道を逸らすとあえて爆撃機の翼を貫通させて・・・・

 

――ドォォォォンッ――!!!!

 

翼の反対側で爆発が起きた。

 

「ハハッ!!まさか翼を盾にするとは思わなかったぜ!!」

「ああ・・・一か八かの賭け、成功したが・・・もう1度はできないな・・・」

キンジは直撃は免れたが代わりに爆撃機が大ダメージを受けたようで翼からは黒煙が噴き出していた。機体が揺れて高度も落ち始めている。もし今のをもう一度やったら・・・・

「そうかよ!!じゃあもう一発なんてケチくせぇ事言わねえで何発でもくれてやるよ!!」

再びランチャーからミサイルが発射された。

 

「なぁっ!?お前正気か!?今度こそ撃墜するぞ!!!」

「ハッ!!俺が正気だど思ってたならむしろお前が正気か?」

ミサイルは先程と同じように大きく円を描きながらこちらに戻って来る。あと数秒もしないうちに直撃するだろう。さっきの手はもう使えない。

(打つ手がない!!万事休すだ!!)

間もなく雲の向こうからやってくるミサイルに身構えるが・・・

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ミサイルは・・・来ない・・・

 

「な、何だ!?どうして来ないんだ?」

「・・・不良品かぁ?白けんなぁ・・・ならもう一発「させるかよ」――ッ!!」

上空から声が聞こえGⅢが咄嗟に後ろに下がると

 

――ドガンッ――!!

 

上からランチャーに大剣が突き刺さった。

「あれは・・・レッドクイーン!?てことは・・・」

そして一人の武偵がレッドクイーンより遅れてランチャーの上に着地した。

 

「よう、兄弟喧嘩は今どのへんだ?」

「氷牙!?お前なんでここに!?」

「氷牙・・・テメェ何しにきやがったぁ?てか・・・なんでお前頭から血流してるんだぁ?」

どういう訳か氷牙は頭から血を流していたのか髪の一部が赤く染まっていた。GⅢが訳を聞くと氷牙は額に青筋を浮かべ

「さて何でだろうなぁ?じゃあいまから説明してやるからGⅢ、お前は特によく聞けよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を少し遡り

 

「なるほど、そんな方法もあったんですか。本当に参考になります。見事な腕ですね」

お茶会の後、氷牙は今度は自分にも淹れさせて欲しいと自ら茶を淹れカナさんやレキ達を審査員にしたアンガスとのお茶についての評論会兼茶淹れ勝負に移行していた。

「いえいえ、九狂様の腕前と発想にも感服いたしました。私なら1万ドル出しても惜しくありません」

「そんな大げさですよ。それを言うならアンガスさんの腕前と知識、俺なら100万ドル出したって――」

 

――バサッ――

 

互いに高く評価し合う最中、アンガスの目の前に上から何かが落ちてきた。

 

何かと思って皆でアンガスの足元を見れば・・・

「・・・100ドル札の束?」

アンガスは足物に落ちてきた100ドル札の束を拾うと

「・・・本当に1万ドル出てきましたな。天も九狂様に1万ドル渡せと言うのでしょうか?」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

それを聞いて何かを察したのかレキと凛香、ついでにカナも氷牙から一歩距離を取り

「まてよ?てことは俺もアンガスさんに100万ドルを――バガンッッ――!!ゴッ!?」

上空から氷牙めがけて木箱が直撃した。

 

「く、九狂様!?」

そして砕けた木箱からは・・・100万ドル分の金塊が散らばった。

 

「いっ・・・てぇな!!!人の頭に木箱落しやがって!!どこの神だ!?」

中身が金とはいえ脆い木箱だったから頭から流血程度で済んだがこれがジュラルミンケースとかだったら俺でも即死だったぞ!!

頭から血を流しながら上を見れば

爆撃機がハッチから100ドル札をばら撒きながら上昇していった。

 

「100ドル札景気よくばら撒きやがって・・・この金塊もあそこからか?ここは欲望渦巻く極道の街じゃねえんだぞ・・・」

「GⅢ様・・・やはりお一人で決着をつけるつもりなのですね・・・」

「GⅢ?あれはGⅢの飛行機なのか?」

「はい、おそらくはあそこで遠山様と決着をつける気なのでしょう。この金塊や100ドル札もおそらくは自分が負けた時の為に私達への当面の資金なのでしょう」

「負けると分かっていても戦うってか・・・かなめといい、GⅢといい、バカの血筋は末代まで取れないな・・・それともあいつら兄妹の母親は死にたがりの血筋なのか?」

「そうではありません。GⅢ様は・・・長くないんです」

「何?」

「GⅢ様、かなめ様、人工天才は万が一反逆された場合に備えて生まれたときから定期的に何かしらの成分を接種しないと死ぬように設定されているんです・・・かなめ様はキャラメルに含まれる成分がそうだと判明してるのですが・・・GⅢ様は未だに判明していません・・・」

てことはマジで勝者のいない戦いになるわけか・・・

 

 

氷牙はため息をついて立ち上がると

「アンガスさん、悪いけど行かせてもらうよ?人の頭に金塊ぶちかましてくれたんだ。売られた喧嘩はきっちり買うタチだし・・・多分うちのバカもあそこにいるでしょうしね。ついでに迎えに行ってきます」

「仕方ありませんな・・・ですがどうやってあそこまで行かれるのですか?」

「簡単だよ。ヘリ借りますよ?」

「構いませんが速度が違い過ぎます。追いつくことは不可能ですよ?」

「ヘリじゃね。けどもっと速いモノが付いてるだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てなわけで売られた喧嘩を買いに来たぞ?」

負傷した説明を終えた氷牙は流血の跡が残る額に青筋を浮かべながらランチャーの上でGⅢを睨み付けるが

「ハハッ!!まさかあの木箱がお前に直撃とはな、お前本当に運がねえなぁ!?」

GⅢは臆する事も無く他人事のように笑い飛ばした。

「神には死神にすら嫌われているからな。俺の運の悪さは筋金入りだ」

「そうか?じゃあいい知らせだ。お前も今日から有名人だぜ?この戦いは米軍の偵察衛星で監視されてる。お前の顔もばっちり写ってるだろうよ」

「そうだ!!氷牙、お前は戦うな!!この戦いは衛星で見られて―――」

 

「衛星?そりゃあれの事か?」

氷牙が空を指すとその先はいつの間にか夜空に小さな太陽が現れたかのように火の玉が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び時間を遡り――

 

「あいつ等を追いかける前に・・・カナさん、貴女なら知ってるんじゃないですか?」

「何の事かしら?」

「とぼけないでください。俺たち以外にもこの戦いを見てる奴がいるでしょう?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「大丈夫です。声の聞こえる範囲に俺たち以外に人はいませんし。盗聴機があったとしても電磁波流してますから全滅してますよ」

 

テーブルにクトネシリカを置くとカナさんも納得した顔をして

「気付いていたのね・・・」

「ええ、姿は見えませんが何か見られている気がして仕方ないんです。もしかしなくてもGⅢ絡みの組織ですか?」

「正解よ。この戦いは米軍に偵察衛星で観察されているわ。脱走されてなおGⅢのデータを採取するために・・・そして・・・」

「キンジや俺のデータを取ろうって算段ですね?」

「その通りよ。二度とあるかもわからないGの血族同士の戦い。彼等からすれば貴重なデータを採取するまたとないチャンスでもある。そして可能ならば氷牙君の、悪魔の戦闘データも採取するつもりよ」

「ふざけてるな・・・・俺達は見世物じゃねえぞ・・・」

「私も彼等の見世物になる気は無いわ。だからここでは傍観者であり続けるのよ」

「カナさんはそれでいいかもしれませんが俺達はそうもいきませんよ。覗きをするような出歯亀野郎には一発ぶちかましてやるのがお約束でしょう?」

それに、この100ドル札の雨で俺達の姿も上手い具合に隠れられてる。仕掛けるなら今がチャンスだ。

 

氷牙は膝立ちに構えるとディストルを抜き空に向かって構えた。

 

だが・・・

 

「チッ・・・やはり遠すぎるか・・・」

魔力で強化した左目の視力をもってしても目標が遠すぎる・・・それにフルパワーで撃っても届くかどうか・・・

 

だがやるしかない。一か八かで引き金を引こうとすると・・・

 

 

レキと凛香が両側から俺の右腕に手を添えてきた。

「レキ?凛香?」

「照準とタイミングはお任せください」

「制御は私がやるよ。氷牙は全力でチャージして」

「・・・ああ!!」

レキは右側から俺の右腕を両手で押さえ、凛香もまた左側から俺の右腕を支えてくれた。

本当に頼りになる嫁達だよ。

 

レキは瑠璃色の瞳で空を見上げながら俺の腕を微調整し続け、凛香もまた俺がディストルに込め続ける魔力をギリギリまで制御して収束し続け

 

「今です!!」

 

レキの合図と同時に氷牙が引き金を引くと

 

――キュンッ――!!

 

ディストルの銃口から一筋の光線が空に向かって伸びた。

凛香の魔力制御により完全に一点に収束されたレールガンは銃口から50口径、直径12.7mm分の射線上の空間だけを貫き、それ以外は一切の破壊活動をせずに空へと伸びていった。

 

「確認は不要だ!次に移るぞ!!」

 

ここからでは成功したかどうかはまだわからない。結果が分かるまではあと数分はかかるだろう。

けど結果なんて決まってる。だってここにいるのは、アシストしてくれたのはこの世で何よりも愛しくて、何よりも頼りになる嫁達だぞ?

 

失敗するわけが無いだろうと俺達は行動を次へと移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、米軍基地にて

 

「GⅢ、GⅣ攻撃。GⅣは刃物で胸を貫かれました。ほぼ即死かと」

「了解。GⅣの死亡を確認。GⅠ、及びDの状況は?」

「GⅠ、D。共に離れた場所にいます。戦闘に加わる意思は皆無と思われます」

「GⅢ、GⅡと共に爆撃機に乗船。直後離陸。両名共デッキに現れました。ここで決着をつけると思われます」

「よし!GⅠ、Dの監視を外せ。メインカメラを爆撃機のデッキに回すんだ!!」

「了解!メインカメラを爆撃機デッキに集中させます!!」

「1秒だろうと撮り逃すな!!GⅢ及びGⅡのG同士の貴重な戦闘データを余すことなく記録しろ!!」

そうすると氷牙とカナは完全にカメラからフレームアウトしてキンジとGⅢが乗る爆撃機のデッキが拡大されると

 

偶然にもキンジが衛星へと目線を向け中指を立てた映像が映し出され

 

「――ッ!?こちらを見ている!?いや、偶然――」

 

その映像を最後に画面が真っ暗になり、中央にNO SIGNALという文字が現れた。

 

「なっ!?どうした!?」

「分かりません!!突然偵察衛星からの信号が途絶えました!!送信、受信、共に反応ありません!!」

「どういうことだ!?まさか妨害されたのか!?いや!!ありえん!!!三万メートル上空の衛星だぞ!!攻撃も出来なければ電波妨害も出来ないはずだ!!」

何がどうなったのかもわからないまま隊員たちはパニックになりながらも通信途絶の原因が何なのか憶測が飛び交い

やがて一人の隊員が一つの憶測を口にした。

 

「最後にモニターに映ったのはGⅡがこちらに向かって中指を立てた映像・・・これが本当に偶然か!?それとも・・・」

「まさか!?あの小僧本当に我々に気付いて―――」

「バカな!?肉眼で見えるわけが無い!!仮に見えたところでどうやって3万メートルも上空にある衛星に手出しを―――」

 

「・・・全ての監視部隊を撤退させろ」

 

司令官が撤退命令を口にすると隊員たちは一斉にそちらに目をやった。

 

「あれは警告だ。次は無いというな・・・我々は相手を甘く見過ぎていたんだ・・・」

そんな壮大な思い違いといくつかの偶然によりキンジの評価がある意味では悪い方へ上方修正された事に当人たちは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在――

 

氷牙達が去った後、二人残ったカナとアンガスがレールガンが飛んでいった空を見上げると、空に一つの火の玉が現れ、それは次第に大きくなっていった。

 

「どうやら命中していたようね」

「ええ、まさか人工衛星を撃ち落とすとは恐れ入ります」

「不可能さえも否定して可能に上書きしてしまう。本当にあの子達を見ていると感動を越えて恐怖を感じてしまうわ・・・」

 

カナも気持ちを切り替える様にお茶を飲み干すと

「それじゃあ、私もそろそろお暇するわ。貴方も迎えの支度しておきなさい?あの子達、絶対にGⅢを連れて帰って来るわよ?」

「ええ、勿論です。カナ様もお元気で」

カナもアンガスに見送られながらこの場から去っていった。

 

その道中でふと思ったことを口にした。

「あれ?でも待って?遠くにある物が大きくなるという事は・・・・・・」

 

 


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